著者
柊崎 京子 Kyoko Fukizaki
巻号頁・発行日
no.25, pp.37-66, 2009-03-31

介護過程の一連のプロセスのうち、介護過程の教育及び実習における介護過程展開で最も重要なのは、アセスメントである。アセスメントとは「判断」を導き出す過程である。よって、判断に至るプロセスの中に何を入れるか、どんな指標をもつかは、「判断」の信頼妥当性のエビデンス(根拠・明証性)を示すものである。本学では過去4回介護過程シートを作成してきたが、それはアセスメントの枠組みの理論的検討と、教育方法の検討という2 つの課題を前提とする模索過程の結果であるといえる。本稿では、本学における介護過程シートの変遷を整理することにより、介護過程の教育で何を課題にしてきたかを振り返った。その結果、アセスメントシート作成の土台としてきた視点には4点があることを確認できた((1)利用者の生活に目を向ける、(2)利用者の要望や意向を大切にする、(3)利用者との関係形成や自己覚知の視点を学生がもてるようにする、(4)思考過程の流れに沿ったシートを作成し、シートに思考手順の説明文を記す)。また、2008年試行版シートは、情報の分析・解釈・判断の過程で何をどのように行うかの手順や、判断の指標を学習者に示す方法でシートを作成した。最後に本稿のまとめとして、本学における介護過程シートの変遷や、2008年試行版シートの作成趣旨とその試行結果を踏まえ、今後の改訂に向けた課題と方向性を整理した。
著者
手嶋 泰伸
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究員の研究目的は、現在まで本格的な分析の行われてこなかった戦時期における日本海軍の政治史的動向を、特にその期間内の大部分で海相及び首相を務めた米内光政に着目することで解明し、戦時期の政治史研究の深化に実証的な貢献をなすことである。平成22年度においては、対米開戦の政治過程における海軍の役割と、ポツダム宣言受諾時の政治過程における海軍の役割について分析を行う予定であったため、防衛省防衛研究所図書館・国立国会図書館憲政資料室を中心に、戦前期陸海軍の関係文書を調査した結果、以下2点が明らかになった。(1)対米開戦の政治過程における海軍の役割について第3次近衛文麿内閣において対米戦に消極的であった海軍が、何故東条英機内閣において急速に開戦に傾斜するのかということを、海軍の内部史料を収集・分析した。その結果、この問題における海軍の態度決定要因が「管掌範囲認識」と「執行責任のジレンマ」という2点にあることを明らかにし、それらが東条英機内閣で開催された大本営政府連絡会議により解消することで、海軍が開戦に傾斜するということを明らかにした。それにより、当該時期の意思決定システムが、消極的な海軍の影響を受けて曖昧になっていく過程が抽出された。(2)ポツダム宣言受諾時の政治過程における海軍の役割についてポツダム宣言受諾時の政治過程において、海軍(米内光政)の果たした役割について分析した。その際、米内の行動の基礎となる海軍内部の情勢を詳細に把握するとともに、陸軍内部の状況も同様の調査を行い比較検討することで、米内の行動の背景や要因を考察した。その結果、ポツダム宣言受諾時の混乱は主管大臣を尊重する米内の政治スタンスと、部下統制を非常に重視しつつも楽観する、米内の特殊な職掌認識にあったということが明らかになった。それにより、宮中グループを中心に分析されてきたポツダム宣言受諾時の政治過程の混乱の理解が、海軍の視点から深められた。
著者
大滝 倫子 篠永 哲
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.81-82, 1995
被引用文献数
1

A case of dermatitis due to slug caterpillar of Lotoia lepida, in Saitama Prefecture, was reported. Many small erythematous maculopapules with itching were observed on the forearm and cubital fossa.
著者
安藤 滋 小笠原 昭夫
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.137-144, 1970-08-01

A Pale Thrush (Turdus pallidus, ♀, 82.0 grams) was netted, in the Heiwa Park, Nagoya City, on Jan. 3,1969. She was immediately released with a transmitter and then tracked for four days. The location was determined every 30 minutes from sunrise to sunset during the period, and the home range and the activity related to light intensity were studied as determined by telemetry. The results obtained were : 1. The area of the home range was about 100m×100m. 2. The location of the roost changed every night but it was always in clamps of a broadleaved tree. 3. The light intensities for her first movement in the early morning as well as for the last movement in the evening were almost the same every day. The former was lower than the latter. The transmitter used was 17.5×16.0×20.0 (mm) in size and 8.5 grams in weight. The frequency of the carrier wave was 50.2 MHz. The battery life was about 10 days. The receiver used was designed especially for this study.
著者
福嶋 正巳 倉光 英樹 長尾 誠也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

鉄ポルフィリン触媒による臭素系難燃剤テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)の酸化分解に及ぼす腐植酸の影響について検討を行った。これまで研究を行ってきた塩素化フェノール類とは異なり、TBBPAは鉄ポルフィリン触媒による脱ハロゲン化が起こりにくく、主としてオリゴマーが生成する酸化重合が優先的に起こることがわかった。したがって、腐植酸を共存させたときには、TBBPAやBPsの酸化生成物と腐植酸とのカップリング化合物が生成し、その転化率は50-60%程度であった。また、藻類(P.subcapitata)成長阻害試験によりTBBPAのみを酸化した場合と腐植酸を共存させた場合に関する毒性評価を行ったが、腐植酸の共存によりTBBPAの毒性が低減することを明らかにした。
著者
斉藤 貢一
出版者
星薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

LC/TOFMSを用いた,痩身薬α-リポ酸のキラル分析法を構築した。本分析法は痩身目的のサプリメント製品の表示違反を判定することが可能となった。DART-TOF-MSによる脱法ハーブ製品中の合成カンナビノイド系および合成カチノン系薬物の迅速スクリーニング法を検討した。本分析法は,大麻との識別も可能であった。乱用の恐れのある医療用薬物として鎮痛薬・鎮痛補助薬30種を選定し、LC/TOFMSを用いた分析法を構築した。前処理に新規に開発した固相分散抽出法を選択することで、除タンパクを必要とせずに試料精製を迅速に行えるようになった。
著者
藤永 芳純
出版者
大阪教育大学道徳教育教室
雑誌
道徳教育学論集 (ISSN:09102132)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.61-72, 1985-03-30

悪は善と違って否定的なものであるだけに、なかなか正面から論じられることがない。しかしリアルな人間としては、善よりは悪の方によほど近い存在ではないだろうか。本論は日本古代思想における悪を考察しようとするものであるが、現代のわれわれの生きかたにつながるものが見いだしうるはずである。
著者
唐渡 興宣
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.1-34, 2007-03-08

本稿はこれに先行する私的所有論の続編をなし,所有論の体系的展開の一環を構成するものである。本源的所有の二次的,三次的構成において,共同体的土地所有と共同体から分離・排除された諸個人が作り出す用具の所有との分裂が土地所有解体の歴史的出発点をなす。土地所有は商品交換を土台とする私的所有に対立的に展開する。近代的土地所有は貨幣関係を基礎とした契約関係という法的関係(=承認関係)に規定された人格的関係において成立する。土地所有の史的成立はこうした人格的関係の成立の解明であり,それは封建的取得構造からブルジョア的取得構造への大転換に媒介されている。その転換は農業資本主義の成立として現れた。本稿は封建的経済構造に支えられた封建的土地所有の史的展開を解明した上で,その土地所有の解体の機序をなすのが労働地代から貨幣地代への移行とそれに伴う領主直営地における賃労働の発生である。それが領主直営地における借地化と領主的囲込みを発展させた。この過程における領主と農奴との関係としての封建的承認関係の解体は農奴の借地農への発展と農業資本主義を事実的に成立させていった。
著者
内村 太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

斜面崩壊事例の大部分を占める小規模な表層崩壊に対象を絞り、安価で簡便な無線モニタリング装置を開発し、斜面災害の前兆を監視して警報を発する実用的なシステムを構築した。これまでに開発してきた、土壌水分量と斜面地表面および内部の傾斜変位に基づく斜面の無線センサーネットワーク機器の機能、信頼性を向上し、国内および中国四川省の地すべり、崖崩れ、堀削工事の斜面に適用し、実証を行った。実測データの分析から、傾斜変位に基づく警報基準を検討した。また、斜面の土壌水分量の増加や、不安定化を検知するための指標として、弾性波速度の低下を利用する手法について基礎実験を行った。また、室内実験に基づき、斜面の降雨と土壌水分量の推移を関係づける水理特性のモデル化、土壌水分量と変位・崩壊危険度を関係づける変形特性のモデル化を行った。
著者
丸中 良典 新里 直美 中島 謙一 楠崎 克之 芦原 英司 細木 誠之 宮崎 裕明 山田 敏樹
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アルドステロンが、管腔側膜結合型プロテアーゼ発現・活性を亢進させることにより、ENaCの管腔側膜上滞在時間を増大させることを明らかにした。1)アルドステロンの投与の有無により管腔側膜結合型プロテアーゼ(channel activating protease : CAP)の発現が促進されることをウエスタンブロッティング法を用いて確認した。この結果、アルドステロン投与により、CAPの発現および活性とも、増大することが明らかにした。2)上記の結果、アルドステロン投与によりENaCのクリベッジが促進され、リサイクル効率を増大させることを明らかにした。
著者
Seiya Hirohama Dai Takeda Mamoru Iwasaki Kazushige Kawamura
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
JOURNAL OF CHEMICAL ENGINEERING OF JAPAN (ISSN:00219592)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.588-593, 1996 (Released:2005-03-15)
参考文献数
9

The activity coefficients of HSO3– and H+ were determined in concentrated aqueous solutions of NaCl in order to provide a theoretical basis for using sea water as a solvent in flue gas desulfurization processes.The activity coefficient of HSO3– was determined at 313 K and 323 K by measuring the pH of mixtures of NaCl, H2O and small amounts of NaHSO3 at a known partial pressure of SO2. The activity coefficient of H+ was determined over a temperature range of 296 K–333 K by measuring the pH of mixtures of NaCl, H2O and small amounts of HCl.As the ionic strength increased, the activity coefficient of HSO3– decreased while that of H+ increased. The Pitzer Equation could correlate the activity coefficients of both species with reasonable accuracies for practical use.
著者
BRINE John ヴァジェニン アレクサンダー 岡本 清美 モズゴヴォイ マキシム
出版者
会津大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、コンピュータ理工学の学生が複雑な専門的文章を読む際に助けとなる、モバイルデバイス上での読解注解ツールを開発した。WikiGlossは学生が文書をインプットして、読解の話題と関連するWikipediaにリンクし、情報を増加する。タブレット上で注解が読解内の選択した文章上で立ち上がり、学生に文脈内の意味を与えて理解を助ける。モバイルデバイス上で使用中、読解文章に付随したWikiGlossツールは、文章と他のアプリケーション、例えば意味検索の辞書等との置き換えを回避することができる。
著者
山下 重一
出版者
日本古書通信社
雑誌
日本古書通信 (ISSN:03875938)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.6-8, 2001-06
著者
三上 直之
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.84-95, 2007-03

This article discusses the challenges faced by the participatory technology assessment (pTA) in Japan, which is now reaching the practical stage after a decade of introduction, trial and experiment. From November 2006 to February 2007, the prefectural government of Hokkaido held a consensus conference on whether the government should promote or regulate the cultivation of genetically modified (GM) crops in the region (GM Consensus Conference). Within the nation, the Conference was the first pTA event in practical use that has a close linkage to actual policy-making. Through the preliminary case study on GM Consensus Conference, the author found that the method of consensus conference functioned effectively in the real-world settings, especially in eliciting the points of controversy on the introduction of GM crops in Hokkaido. The case also suggested that pTA would be connected loosely to the formal policy decision processes through deliberative councils (shingikai), and that we should consider pTA as a tool for the general public to express their views on technology and seek to finance those parties (NGO/NPOs, universities, mass media, etc.) who are trying to organize pTA events in cooperation with the government or local authorities.