著者
佐藤 宗子 サトウ モトコ Sato Motoko
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.406-398, 2009-03

一九五〇年代から六〇年代にかけて、「少年少女」を冠した叢書が数多く刊行されている状況を概観し、そこに第二次大戦後の日本の文化・社会状況における、「少年少女」が「読書」することへの期待が内在しうることを確認した。とくに創元社刊行の「世界少年少女文学全集」をとりあげ、各巻の付録紙面や関連する版元の雑誌の特集号、第二部の内容見本など、全集本体よりむしろその周囲に注目する中から、「少年少女」が、戦後の状況の中で新たに区切られた「小学校高学年から中学生」の時期として明確に認識されていたこと、「家庭」と「学校」の二つの享受の場が両立して認識されていたこと、発信者側を含めた三者が子ども読者を囲い「読書」への期待を向けていたこと、発信者側が「教養」の「形成」を念頭においていたこと、子ども読者側もそれと連動した「読書」観を抱いていたこと、当時の読書指導との関連があることなどが明らかとなった。
著者
A Al-Mahboob
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

有機デバイスの根幹物質であるペンタセン(Pn)の、グラファイト(HOPG)およびルチル型二酸化チタン(110)(ルチルTiO_2)上における真空蒸着による薄膜成長を低速電子顕微鏡/電子線回折装置を用いてin-situ観察した。Pn薄膜は、基板や作成条件を制御により、デバイス特性上好ましいとされるstanding-up構造(立配向)を作成可能なことが報告されているが、真空蒸着では成長した薄膜結晶同士のお互いに阻害するために、輸送特性上好ましくないドメイン境界をもった多結晶となる。本課題では、Pn薄膜が速度論的にa軸に比べてb軸が優先的に成長しやすいことに着目し、基板、温度の最適化による解決を試みた。HOPG表面は、Pnの主骨格であるベンゼン環だけから構成される表面であり、Pnとの相互作用が強く働く系である。この表面上への室温における蒸着の結果は、第一層にPnの濡れ層が形成された後、様々な配向をとる多結晶状態となった。また、Pnの吸着、脱着が平衡状態となる90℃においても制御できなかった。一方、Pnと基板の相互作用が弱い系では、濡れ層から立ち配向への自発的な転移が、Pn間の強い配向安定性から起こることが報告されている。ルチル型TiO_2は、無機物であるためにこの系に該当すると予想され、また表面再構成の結果[001]方向に一次元の酸素原子列をもつ凹凸を持つため、種結晶の初期形成を制御が期待される。作成条件の最適化の結果、Pnは表面の原子ステップ上に沿った成長、および濡れ層から1層目から結晶方向の揃った立配向への転移が起こることや、b軸成長が支配的な成長モードであることを確認したが、もともと基板表面上に存在する格子欠陥や局所的なアイランド構造から形成された異なる配向も同時に確認された。この制御のためには、表面が原子レベルで綺麗な幾何構造をもっパターン基板を用いる必要があることがわかった。
著者
渡辺 公次郎
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、住宅・土地利用計画支援システムを開発することである。まず、徳島市周辺部を対象に、セルオートマトンモデルを用いて市街化を予測するモデルを開発し、それを用いて地区別に世帯数を予測した。次に、世帯数変化の特徴を明らかにするため、世帯数変化傾向を、小地域統計データを用いて分析し、変化の特徴を類型化した。これらの成果から、住宅・土地利用計画支援システムで用いる世帯数予測モデル開発に関する知見を示した。
著者
立岩 一恵
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.21-24, 1998-04-30
被引用文献数
3

Two kinds of marketed spices, cayenne- pepper powder (Shichimi- togarashi) and curry powder (Kare-ko), were tested as food for cigarette beetle larvae, Lasioderma serricorne (F.). When adults were introduced into newly purchased spices, second generation insects did not occur in most samples. Even 3rd or 4th instar larvae placed on the spices could not develop but died in the newly purchased spices. After one or three months of aging of the newly purchased spices, introduced adults produced second-generation adults, and larvae placed on the spices could emerge into adults. These results suggest that the newly purchased spices contained some factors to kill cigarette beetle larvae, and the factors would fade out during the aging periods of the spices under the air-exposed conditions.
著者
吉田 浩之 原田 隆史 来田 宣幸
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

中等教育の部活動の実態として教育目標とされている内容を, アンケート及びインタビュー調査によって定性的・定量的に検討し,部活動における具体的な教育目標の項目で構成される部活動の目的意識・行動達成度尺度を作成した.「競技力・専門性」, 「内面的成長」を含む10因子,45項目,5件法の尺度であった.45の項目は,部活動における具体的な教育目標であり,評価規準としての機能を持ち,生徒の教育目標到達度の評価を可能とした.また,本尺度をもとに部活動指導プログラムを作成し,中学校,高等学校の顧問教員を対象とした研修会で導入し,実践事例の検証を通じてプログラムの実効性を高めた.
著者
加藤 雅啓
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.79-91, 1972-07-25

1. The vascular structure of the rhizome, stipe, and rachis was observed for 41 species of the athyrioid ferns (Athyrium, Diplazium, Cystopteris, and their relatives), for the problematic genera for their athyrioid affinity (Acystopteris, Gymnocarpium, Hypodematium, Matteuccia, Onoclea, Stenolepia, and Woodsia), and for the several groups to which those genera have been related. 2. The vascular structures are common to all the athyrioid ferns in strict sense except for a few specialized cases. Among the genera cited above, Acystopteris, Gymnocarpium, Hyodematium, Matteuccia, Onoclea, and Woodsia have quite the same vascular structure as that common to the athyrioid ferns, with an exception of the dorsiventral rhizome of Hypodematium. The vascular structure of Stenolepia is distinct from that of the athyrioid ferns, resembling that of the dryopteroid ferns. 3. Based on the vascular structure as well as the other taxonomic characters such as the trichome, sorus, and spore, it is concluded that Acystopteris, Gymnocarpium, Hypodematium, Matteuccia, Onoclea, and Woodsia are all belonging to the athyrioid group, and Stenolepia is better placed in the dryopteroid group.
著者
中下 富子 伊藤 まゆみ 星野 泰栄 宮崎 有紀子 佐光 恵子 大野 絢子
出版者
上武大学
雑誌
上武大学看護学部紀要 (ISSN:1880747X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.17-33, 2006-03-10

現在訪問看護職が提供している在宅看護技術について実施頻度と難易度を明らかにし、今後の在宅看護・介護技術研修プログラム再構築の資料とすることを目的とした.対象は、G県内訪問看護ステーションの施設代表者及び訪問看護職とした.結果、在宅看護技術実施頻度の高位は、清潔、バイタルサイン、日常生活動作の基本的な看護技術とされる項目であった.在宅看護技術難易度の高位は、ターミナル状態や認知の問題へのケアといった精神的ケアの要求される項目及び医療処置といった技術性の高い項目であった.また、訪問看護経験年数と実施頻度との正の相関が大分類11ケア項目にみられ、経験年数が増すほど、ケアの実施頻度も増す傾向が認められた.実施頻度と難易度との負の相関がバイタルサインズ・問題兆候やターミナル状態のケア、医療処置にみられ、実施頻度の高い項目ほど難易度を低く評価している傾向が認められた.
著者
司 化 川西 直 森川 博之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処学会研究報告, ユビキタスコンピューティングシステム研究会 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
pp.159-166, 2007
被引用文献数
1

認知症患者は,「髭を剃る」,「お茶を入れる」などの日常生活動作を遂行する際に,次の手順でどの行動をするべきか忘れやすいため,専門介護者による介護を必要とする.だが,高齢化の進展に伴う認知症患者の急増に対し,専門介護者や介護施設のような介護資源の比較的な不足のため,認知症介護の介護負担が社会的な問題になりつうある.このような状況を背景とし,認知症介護を支援するコンテキストアウェアコンピューティング技術の応用が注目されている.我々は,認知症患者の日常生活動作を支援するシステムCoReDA(Context-aware Reminding System for Daily Activities)を提案する.被介護者の日常生活動作を支援するため,CoReDAはまず,無線センサノードを用いて被介護者の日常生活動作における道具使用情報を取得する.取得した情報に基づき,CoReDAはTD(λ)Q-Learningを用いて,被介護者の習慣や嗜好を考慮した,必要最小限の指示を計画・提供する.
著者
前川 義量
出版者
関西学院大学
雑誌
KGPS review : Kwansei Gakuin policy studies review
巻号頁・発行日
vol.6, pp.89-112, 2006-03-15

少子高齢化、家族構造の変化、女性の社会的位置づけの変化、景気の低迷、財政難等々、高齢者福祉政策にとっては非常に厳しい言葉を耳にする機会が多くなっている。高齢者福祉を担う社会福祉法人では、これらの社会事象によって大きな変換の時期が訪れている。また同時に認知症高齢者ケアのあり方がいま問われている。厚生労働省の認知症介護最新情報ネットワークによると、現在わが国には150万人を超える認知症高齢者の方がおられると言われている。その人たちを受け入れる主要施設である特別養護老人ホーム(以降特養という)のあり方について注目が集まっている。その中で、今もっとも大きな変化の一つに新型施設(高齢者福祉施設のユニット型)といわれる個室化が挙げられる。新型への移行の意義として、プライバシーの確保、利用者の相互交流、及び居場所の提供による利用者のストレス低減などがあげられる。しかし、利用者への個別対応が必要性視されたことにより、介護者へのインパクトは大きい。本論文では、現場で働く介護職員にスポットをあて、その職場環境を分析していきたい。高齢社会を担う専門職として社会福祉士と介護福祉士が法制化され、その養成が始まって約17年になるが、彼等を取り巻く環境がこのように変化していく中で、彼等の社会的そして組織的な役割は大きく変化してきたものと考えられる。そこで彼等が今、どのように社会から認知されているか、どのような変化の中で、そしてどのような環境下で労働しているかを検証し、今後彼等のおかれる社会的、政策的環境を考え、彼等自身にとって必要な変化を明らかにしたい。
著者
福岡 万里子
出版者
山川出版社
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.119, no.6, pp.1073-1098, 2010-06
著者
後藤 晃 下田 隆二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1.本研究は、我が国の公的研究機関のうち、特に国立の研究機関に焦点を絞り、そのイノベーション・システムにおける役割について、具体的な事例分析および論文、特許などの客観的なデータの計量的分析を通じ、実証的な分析を試みるものである。2.13年度においては、(1)12年度の研究調査研究、すなわち;(1)国立試験研究機関(国研)に研究費、研究者の推移、我が国の研究開発活動全般の中での位置付け、国研に関する各省庁の施策、関連の予算の推移を調査するための基礎資料の収集、(2)国研が保有する特許の現状、その実施許諾状況及び企業との共同保有の状況等の調査・分析、(3)工業技術院の筑波研究所学園都市所在の研究所の研究活動等、特に産業界への技術の移転状況、産業界との交流、協力関係などの調査、(4)国研に関する行政部局や政府関係機関への国研と産業界との関係等についての訪問調査、を踏まえ、調査・収集した資料・データに基づき、国研の研究活動とその産業界との関係について調査分析を進めた。(2)この結果;(1)国研の予算、人員については、過去20年間に亘って比較的安定的に推移し大きな変化がみられないこと、(2)新しい状況への対応のため研究機関の名称変更、統廃合等が若干みられるものの、平成13年度の独立行政法人化まで、組織的には大きな変化には乏しかったこと(3)基礎的な研究を行う大学、研究所を持つ大企業や先端技術開発を行うベンチャー企業等の民間との狭間で、これらとは異なる国研独自の役割が不明確となりつつあること、(4)国研保有特許のうちでは、国研と企業等とが共有している特許が実施に結びつき易い傾向がみられること、などが明らかになった。