著者
西村 一朗 畠山 絹江 中山 徹 小城 勝相 水野 弘之 小野木 禎彦 阿部 登茂子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

3年間の個々の研究を総括し、以下のような内容から、高齢者の状況、生活各側面での要求、問題点、将来への課題等についてまとめた。(1)食物関係高齢者は加齢に伴い、確実に骨密度の低下が進行していた。低骨密度、骨粗鬆症の高齢者が骨折を起こさないための環境づくり、支援が課題である。買い物、調理の楽しみを持続させ、高齢者の希望に叶った配食サービスなどの生活支援体制を整える必要がある。(2)衣服関係高齢者の体型分布の幅の広さから、高齢者用既製服の衣服サイズ、デザインが乏しいことが指摘される。高齢者の体型と既製服サイズの適正化について更なる研究が必要である。また、高齢者向けの衣服の売り場展開の検討も必要である。(3)住居関係マンションの共用部分において、手すり、エレベーターの設置が少なく、今後改善が望まれる。高齢期にはできるだけ住み慣れた自宅で過ごしたいと考える高齢者が多かったが、身体が不自由になったとき、看護・介護・ひとりで生活できないこと・体力に不安を感じていることがわかった。持ち家一戸建住宅において、居住者の高齢化に伴う家族人数の減少により、相対的に広い住宅の空洞化が進んでいる。高齢者の住環境への要求には、高齢期を反映した独特の住環境要求があるが、それらの要求と住空間との間に乖離が進展する中、それを取り除いていくことが重要である。
著者
吉田 紀生 丸山 豊 PHONGPHANPHANEE Saree 清田 泰臣 平田 文男
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.222-225, 2011 (Released:2011-09-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

Recent progress in the theory of molecular recognition in biomolecules is reviewed, which has been made based on the statistical mechanics of liquids or the 3D-RISM/RISM theory. The molecular recognition of a ligand by the protein is realized by the 3D-distribution functions: if one finds some conspicuous peaks in the distribution of a ligand inside protein, then the ligand is regarded as “recognized” by the protein. 3D-distribution functions can be obtained by means of 3D-RISM/RISM theory. Some biochemical processes are investigated, which are intimately related to the molecular recognition of small ligands such as water, ions, and carbon monoxide by a protein.
著者
東畠 弘子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.29-40, 2009

本研究は在宅の認知症高齢者の福祉用具利用時の事故・ひやりはっとの実態を知るためにアンケート調査を行い,その防止策について検討を行ったものである。全国福祉用具専門相談員協会会員全員を対象に行った結果から,事故・ひやりはっと134 件のうち最も多いのはベッド・付属品で,なかでも柵が43 件(32.1%)と多く,「柵を乗り越えて転落」(19 件14.2%),「柵の挟み込み」(18 件13.4%)が顕著であることが明らかになった。認知症高齢者に限定した福祉用具の事故・ひやりはっと調査自体,筆者が調べた範囲ではこれまで例がなく,「柵を乗り越えて転落」に見られるように,認知症高齢者にとっては転落防止のための柵が行動の障害となり,事故につながる可能性があると考えられる。ベッド柵で囲むなど家族からの福祉用具による身体拘束の依頼も多く,認知症高齢者のリスクマネジメントとして,福祉用具専門相談員はベッド柵の使用について慎重に考える必要があると思われる。国とメーカーは「柵を乗り越える」ことに対する注意喚起をする必要がある。
著者
杉原 久仁子 Kuniko Sugihara
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
桃山学院大学社会学論集 (ISSN:02876647)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.19-47, 2010-02

For the youth with dementia who has physical strength and physical functions, activities of daily living are almost possible in the early terms of dementia. Though it is difficult by the appearance for them to be recognized as the disabled, they need supports in outdoor actions. But their families cannot always respond to needs of supports. Therefore, the guide helper service as a public institution is necessary. In the present time, this service is not well known to families needing it, and they are not familiar with using guide helpers. Guide helpers also are faced with many problems. This paper, based on interviewing some guide helpers, aims to find problems with which they are faced in supports for outdoor actions, and examine skills which are necessary to accomplish tasks of the guide helper.
著者
畑山 満則
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

災害のイメージを共有し,災害後の対応も含めたリスク・コミュニケーションを実現にするため,災害想定下での訓練として各地で盛んに行われている防災訓練が有効であると考える.現状の防災訓練では,災害想定自体が参加者にとってわかりにくいものであり,さらに長期にわたって固定化されている場合が多いため,有効なリスク・コミュニケーションにつながりにくい状況にある.本研究では,この災害想定から住民参加型で行うことを提案する.このためには動的なシミュレーションと,その時空間での分析が必要となる.そこで,従来のGISでは対象とされていなかった動的なオブジェクトの記述と,時空間での接続関係のハンドリングを可能にし,さらに,複数の災害想定をパラレルワールドとして書き込める時空間GISの開発を目的とし以下の研究を行った.1)時空間地理情報スキーマの定義と概念モデルの構築空間スキーマ,時間スキーマについては,国際標準化がすでになされているが,時空間スキーマに関しては未だ検討段階である.時空間スキーマの理論的考察を行い,時空間情報の概念モデルを構築した.2)時空間接続関係のデータベースへの記述形式とソフトウエアへの実装1)での研究結果をうけて,時空間スキーマを構成する重要な要素である時空間の接続関係について,課題抽出を行った.3)時空間地理情報データ構造:KIWI+に関する考察時空間GISを構築するためのデータ構造として,提案しているKIWI+フォーマットに関して,上記の1)2)の結果を踏まえた見直しを行い,実装上の課題に関する知見をまとめた.
著者
上柿普史 中島悠太 馬場口登
雑誌
画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011)論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.1645-1652, 2011-07-20

映像の要約や編集などのアプリケーションでは,重要な領域を推定し,その領域に基づいて映像を処理することから,重要な領域の推定手法が必要とされている.一方,YouTube などにはモバイルカメラで撮影された映像が多く投稿されており,これらの映像には「自分の子供を撮影したい」などの撮影意図が存在する.このとき「子供の領域」のような撮影者が意図的に撮影した領域(意図領域)は撮影意図に不可欠である.本稿では,意図領域を重要な領域として推定する手法について述べる.提案手法では,撮影者はフレーム中で意図領域を適切に配置するようにカメラを動かすことから,撮影者の行動が反映されるカメラの動きと映像特徴のモデルを構築し,このモデルに基づいて意図領域を推定する.さらに,実験により提案手法の有効性を示す.
著者
小野智司 前田浩志 中山茂
雑誌
画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011)論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.1705-1706, 2011-07-20

ユーザとシステムとが協調して最適化を行う協調型進化計算を用いて,画像処理フィルタを設計する方式を提案する.本方式を利用することで,探索の序盤に専門家によるフィルタ構造の設計を行い,探索の中盤以降にシステムが詳細な構造や閾値の調整を行うような探索が可能となる.逆に,探索の序盤から中盤にかけてシステムがフィルタを自動的に設計することで,利用者の発想を支援し,探索の終盤に利用者がフィルタ構造を手動で調整することも可能となる.
著者
嶋田恭兵 東海彰吾 長谷博行
雑誌
画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011)論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.1715-1716, 2011-07-20

近年,様々な機能を有した携帯端末,スマートフォンが使用されるようになってきた.本システムでは複数のAndroid携帯端末を用いて時間と空間を共有した場の撮影を行うことで,様々な視点の映像を手軽に収集することが可能となる.構成は,1台のマスター端末からの開始・停止といった信号を複数のスレーブ端末に送信することにより同時刻での撮影を行い,命令やデータ保存はサーバで処理する.また,各端末の時計をNTPにより撮影前に合わせており,撮影映像利用の際にはフレーム同期の手間を軽減することできる.端末内には磁気・加速度センサが搭載されており,各端末の姿勢情報を得ることができる.将来的にこれら多視点の映像情報とセンサ情報を利用した映像統合処理を目指している.
著者
松崎隆 鈴木俊光 高橋和晃 矢口勇一 岡隆一
雑誌
画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011)論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.1717-1718, 2011-07-20

本論文では自由視点テレビのOcclusion問題を解決するための手法を提案する. 以前に高橋らが提案した自由視点テレビは3 台の未校正カメラによって撮影された時系列画像に対して, 各フレーム毎に2 次元連続DP(2DCDP) を用いたピクセル毎の物体の運動計測を行い, 因子分解法により被写体の3 次元モデルを復元するというものであるが, 3次元モデル復元の一般的な課題であるOcclusion問題が解決されていない. 本論文ではこのシステムのカメラ台数を6台にし, 2つの3Dモデルを復元し, それを合成することでのOcclusion問題の改善手法を提案する.
著者
田口 正樹 石川 武 山田 欣吾 石部 雅亮 村上 淳一 石井 紫郎
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、西洋と日本の歴史の中で法が有した統合作用を、そのさまざまな側面について検討した。その際、法そのものの持つ内実よりも、法が表出される様式、広い意味での法の「かたち」に注目するという視角を採用し、史料論および文化史の手法を参照しつつ、研究を進めた。史料論との関係では、古代末期・中世初期イタリアの文書史料、ドイツ中世中期の法書史料、西洋中世中期から初期近代(近世)にかけての法学文献とその体系、日本中世の日記を取り上げて、文字記録が支配と統合にとって有した意味、法書の国制像におけるラント法とレーン法の関係、lnstitutiones体系による法素材の整理と統合、京都を舞台とした「政治」の諸相などを解明した。文化史的研究に対しては、中世ドイツ人の国家像、中世中期ドイツの国王裁判、中世後期ドイツの貴族の実力行使(フェーデ)を考察対象として応接し、ローマ帝国を最終帝国とする歴史神学的世界観の意義、貴族間の紛争解決ルールの変容、フェーデにおける名誉や公衆の意義、などの問題が論じられた。更に転換期における法の「かたち」を、古代末期ローマ帝国の贈与に関する皇帝勅答、近世ドイツ都市における法類型、近世ドイツの大学における法学教育などを取り上げて検討し、皇帝政府による勅答を通じた諸利害の調整、中間権力と雑多な法を組み込んだ領邦君主の支配体制、近世の法学入門文献による法学諸分野の関連づけと歴史法学によるその改変などを明らかにした。最後に、「統合」そのものが現代世界において持つ意味と、日本の歴史上現れる「統合」の特徴的なパターンを、ドイツの社会学者ニクラス・ルーマンの後期の思考と日本古代から近代に至るまでの、公的ないし半公的な歴史叙述を対象として考察し、統合が構造的に生み出す排斥や、中心権力に奉仕する者たちの由緒の歴史という統合パターンを論じた。
著者
池田 真一
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

運動は筋インスリン感受性を亢進することで、メタボリックシンドロームや2型糖尿病の予防・治療に極めて有効であるが、その分子メカニズムは明らかにされていない。我々は、運動により骨格筋内の抗炎症性マクロファージであるM2マクロファージ数が増加し、これにより、筋インスリン感受性の亢進が起こっていると仮説した。C57BL6Jマウスに一過的トレッドミル走を施すと、骨格筋内のM2マクロファージ数は増加し、これに伴い筋インスリン感受性の亢進も認められた。しかしながら、運動前に全身のマクロファージを枯渇させる薬剤であるクロドロネートリポソームを投与すると、運動後に認められたM2マクロファージ数の増加、筋インスリン感受性亢進の両方が起こらなかった。このとき、いくつかのシグナル伝達経路の活性化を検討したところ、インスリンシグナル(Akt-AS160)やAMPK経路は運動やクロドロネートリポソームによる変化は認められず、PKC経路が運動により活性化されており、この活性化はクロドロネートリポソームにより抑制された。これらのことから、運動による筋インスリン感受性亢進は、M2マクロファージがPKC経路を介して引き起こしていることが示唆された。
著者
小野 哲也
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

放射線による腸死に対し幹細胞移植による治療の可能性を探るためマウスを用いたモデル実験を行うのが目的である。昨年の結果から胎仔期の小腸上皮細胞を用いれば幹細胞移植がより効率的に行える可能性が示唆されたので、本年度はまず小腸上皮細胞をsingle cellとしてより多く回収する方法を検討した。具体的には細胞が緑の蛍光を発するように改変されたEGFPマウスの17.5~18.5日齢胎仔小腸を用い、文献情報から得られたコラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、パンクレアチン、トリプシン、DNase I、EDTAの単独及びそれらの2つ以上の組み合わせた処理について検討した。また処理方法は0℃×60分、20℃×20分、37℃×20分についてチェックした。指標としてはsingle cell suspensionが得られるか、蛍光蛋白が細胞内によく保持されているか、細胞の収率はよいかの3点で行った。その結果、EDTA存在下でヒアルロニダーゼを37℃×20分処理後トリプシン+DNase Iを20℃×20分を行うのが最適であることが分かった。この時の細胞の回収率は0.3~1×10^5 cells/マウスであった。次にこの細胞を用い10Gy照射したマウスの尾静脈に投与した結果、マウスの生存期間は9~11日であった。これは何も処理しない時の生存期間とほぼ同じであり、生存率への影響はみられなかった。このとき小腸にはかなりの数の移植された蛍光細胞がみられたが、幹細胞から絨毛上皮に向けた直線状の細胞のつながりは見えなかったので、幹細胞をうまく移植できたかどうかは不明である。個体の腸死を回復させるためには今後さらなる検討が必要である。
著者
浅岡 雅子
出版者
奈良女子大学
雑誌
人間形成と文化 : 奈良女子大学文学部教育文化情報学講座年報 (ISSN:13429817)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.221-234, 1999

In this paper, I intended to emphasize the importance of general education in high school. The reform of education is being progressed for the coming 21st century. This reform is undertaking according to the conception of "Individualization". For the sake of this conception, general education in high school loses its part among the curriculum. I think that this tendency will fall the uniformity of high school and fail to form "culture" of students Because general education is thought to bring them culture". S.Katsuta described that "culture" is certain to attain "total development". "Total development" is connected to not only the intellectual development but also the development of the human feeling and morality. So he insisted that general education must be made much of rather than the vocatinal education in high school. For this reason I think that general education is indispensable for the high school education and youth education.