著者
加藤 精一
出版者
兵庫医療大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成19年度は,18年度に引き続き大阪大学で開発されているP2PフレームワークであるPIAXを用いて,望遠鏡のコントロールをネットワークを介して遠隔制御するソフトウェアの開発を行うとともに,こうした望遠鏡を提供するユーザとそれを利用するユーザがP2Pネットワークでコミュニティを形成した際に,お互いを信頼するために必要な基準を提供する仕組み提案した.以下具体的に述べる.(1)望遠鏡システムについて晴れている地点の望遠鏡を選択するために,各地の気象センサのデータを利用して予測し,空間的に補間することでセンサの無い場所の気象状態を把握できるようにした.(2)レピュテーションシステム望遠鏡を共有するようなコミュニティにおいては,各ピアが信頼できるかどうかをリソース提供側,使用側ともに判断する必要がある.我々はこれにWebのページランクなどで用いられるEigen trustモデルを元に,信頼できないピアを効率的に排除する手法の提案を行った.
著者
田代 信 玉川 徹 浦田 裕次 玉川 徹
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ガンマ線バーストは、宇宙でもっとも明るい爆発的天体現象である。遠方銀河中の超新星爆発にともなうジェットを起源とすると考えられているが、超新星爆発では説明がむずかしい例も多数あり、一筋縄ではいかない。本研究では、広視野硬X線望遠鏡でガンマ線バーストを探知するスウィフト衛星と同じ視野を自動的に観測する可視光望遠鏡を開発設置し、所定の性能を確認した。直接の検出例はまだないが、得られた走査観測データの公開をすすめている。
著者
萩原 秋男 小川 一治
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

1.実験林及び実験方法 19年生(1993年現在)ヒノキ林からサイズを異にする5個体を選び、2台の立木同化測定装置を順次、各個体に移し替えながら個体レベルのCO_2ガス交換速度を昼夜連続して測定した。また、測定個体の毎木調査(樹高、生枝下高、生枝下高幹直径、樹高の1割高での幹直径、地際から50cm間隔での幹直径)を毎月、実施した。2.結果 個体レベルで測定された年総光合成生産量p[kg(CO_2)tree^<-1> yr^<-1>]は個体の幹材積v[dm^3]が大きいほど大きく、両者の関係は以下に示す拡張されたべき乗式で表された。p=g(v-v_<min>)^h (g,v_<min>,h;係数) (1)上式は、個体幹材積がv_<min>に近づくにつれて、個体の年総光合成生産量が急激に減少してゼロとなることを示しており、v_<min>は林分で生存可能な最小個体の幹材積と見なすことが出来る。また、べき指数hの値はほぼ2/3となり、サイズの大きな個体の年総光合成生産量は個体の表面積にほぼ比例していると言えた。また、年呼吸消費量r[kg(CO_2)tree^<-1> yr^<-1>]は年総光合成生産量pに比例していた。r=kp (k;定数) (2)比例定数kの値は0.38となり、年呼吸消費量は年総光合成生産量のほぼ4割に相当していた。式(1)と式(2)を仮定することにより、年呼吸消費量rの個体幹材積vへの依存性は次式で与えられる。r=g'(v-v_<min>)^h (g'=kg) (3)実測結果は、式(3)に良く適合していた。以上の結果は、時間経過に伴う林分の物質生産機構の推移を、個体レベルでの物質経済の面から説明可能であることを示唆している。
著者
遠藤 辰雄 田中 教幸
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究の初年度では我々が過去に国内の遠隔地(幌加内町母子里北大演習林)において行なった酸性雪の観測の解析を進めた結果によると、硝酸塩も硫酸塩と同様に長距離輸送物質である可能性が示唆されている。そこで2年次において、これが長距離輸送物質であることを特定するために、充分なる遠隔地として北極圏のニーオルソンを選び、そこで降雪粒子と環境大気中のエアロゾルやガスの成分を調べてみた。その観測は1998年12月16日から1999年1月9日までと同年3月2日から同月18日までの擾乱の到来頻度の高い二期間に行なわれた。酸性雪の採取には地吹雪きの混入を避ける為に大型の防風ネット設置し、その中で蓋付きの受雪器を並べておき、降雪時のみ蓋を開けて受雪して,降雪が止むと蓋をしてドライフォールアウトの混入を辞ける様にした。さらに地上降雪観測として独自で開発した電子天秤方式の降雪強度計とTime-lapse-videoによる降雪粒子の顕微鏡写真の録画システムも防風ネットの中に設置した。まだロ―ボリュムエアサンプラーによる濾紙法で大気試料がそれぞれ採取され、環境大気のガス状成分とエアロゾルの化学成分がそれぞれ分析された。この時期の現地では珍しく比較的風の弱い状態の降雪が多く降雪粒子が長時間に亘って採取された。初めの12月〜1月の期間の分析結果では次のことが注目された。大部分の降雪粒子は風向が東南東で、雲粒付結晶であるが、風向が北西である時の降雪では雲粒の付かない雪結晶が多く観測されている。その降雪粒子の化学成分は、他と比べて、S042-が少なく、逆にN03-が多くなっているのが明らかな特徴である。この結果は、これまでの日本国内での観測結果と一致して矛盾はしていない。この風向から降雪をもたらす気流の起源を、考察してみると、現地から見て、東南東の気流はメキシコ湾流が北上して出きる北限のopen-seaからの気流であり、 水蒸気が豊富で過冷却の雲粒が高濃度で生成されていたもの考えられる。一方、北西の気流は現地から更に高緯度の北極海の結氷している氷原野からの気流であるので低温であることも含めて、水蒸気量はかなり希少であり、過冷却の雲粒はほとんど蒸発し、降雪粒子は気相成長のみで成長するために、雲粒の付かない綺麗な雪結晶が卓越するとが考えられ、その発生源が明確に特定できる。ここで得られた新しい知見は次の事柄である。長期間の降雪の末期では降雪に含まれるN03-が減少して検出限界にまで達してしまうが、その環境大気の成分変化を見るとHNO3ガスより粗粒子のエアロゾルに含まれるN03-が減少していることである。このことからガスの物理吸着機構よりエアロゾルのスキャべンジング効果がより効いていることを示唆している。
著者
森中 定治
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.137-148, 1988-07-10

バリ島には,Delias属belisamaグループに属する種として,Delias belisama balina FRUHSTORFER,1908およびD.oraia bratana KALIS,1941の2種が知られている.KALISはその原記載においてbalinaとのサイズや色彩の差による区別,bratana成虫の嗜好などについて簡単に述べている.しかし,両種の混棲状態や習性の相違などの詳細についてはほとんど報告がない.1984年に筆者はバリ島を訪れ,両種を採集する機会に恵まれた.以来,数度にわたってバリ島に旅行し,両種の成虫の採集および生態の観察を行った.その結果,これまでに知られていない若干の生態的知見が得られたので報告する.また,この両種の分類・命名の経緯,およびバリ島において互いに酷似する両種の分布,サイズ,形態の特徴についても実証に基づいて報告する.なお,成虫の形態の差異に関するより詳細な検討については,続報で発表する予定である.
著者
中山 幹康 RARIEYA Marie RARIEYA Marie Jocelyn
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

研究課題「持続的な開発と福祉に向けて:複合農業経営の新たな枠組み」の事例研究地域である西部ケニアのヴィクトリア湖流域に於いて,現地調査を実施すると共に,現地の関係機関を訪問し,情報を収集した.西部ケニアでは,従来観察されていた「大雨期」と「小雨期」のうち,近年では,本来は「小雨期」に該当する時期においても降雨が殆ど観察されないなど,気象の変化が観察されている.当該地域の農民は,そのような変化に対応すべく,各種の自助努力を試みている.人間の安全保障の観点からは,収入源を多様化し,特定の農業セクターあるいは作物に依存することに起因するリスクを軽減することが,賢明な対応と考えられる.そのために,当該地域における複合農業経営を推進し,気象状況の変化に適合し,リスクの低減を図ることが重要な課題になっている.設定した3つの事例地域(Vihiga District, Siaya District, Kisumu West District)において,土壌流出,害虫の蔓延,植物病虫害などの自然環境の悪化に加えて,資金提供メカニズムの欠如,市場へのアクセスの困難,インフラ整備の不足,情報へのアクセス不足などの社会的な条件が,気象条件の変化を克服し,円滑な農業経営を維持する上での障害となっていることが判明した.これらの制約要因には,農民の自助努力で克服可能な事柄も含まれるが,地方政府や中央政府による行政的な対応,あるいは国際社会による助力がその克服には不可欠な項目も少なからず存在し,従来的な「閉じた社会」の枠組みでは解決は困難であることが示唆された.
著者
伊勢田 茂光
出版者
広島大学歯学会
雑誌
広島大学歯学雑誌 (ISSN:00467472)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.49-57, 1993-05-06

本論文の一部は1989年6月11日の広島大学歯学会総会において発表した。
著者
難波 忍 和久津 隆司 亀田 卓
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SAT, 衛星通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.487, pp.25-30, 2001-11-30
参考文献数
17

IEEE Communications Society主催の通信全般に関する国際会議「The IEEE International Conference on Communications:ICC2001」が6月11日から14日までの4日間にわたってフィンランド・ヘルシンキ市内のフィンランドフェアーセンターにおいて開催された.ICCはGLOBECOMと並んで通信分野に関する世界最大の会議で年に1度6月頃に開かれている.会議は初日にチュートリアル(12), ワークショップ(2)が開かれ, 2日目以降はシンポジウム・ジェネラルセッション合わせて1日26件, 3日で78件がパラレルに行われるという大規模なものであった.本稿では, 会議の概要ならびに発表分野の動向について帰朝報告を行う.特に, 衛星通信関連, OFDM, 変調方式技術, 同期技術, マルチユーザ検出技術, ワイアレスLAN及びアドホックネットワーク, CDMA等の分野の研究動向について詳しく紹介する.
著者
野本 照子 内田 庸子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.1102-1102, 1987-09-25

東京女子医科大学学会第271回例会 昭和62年6月11日 弥生記念講堂
著者
太田 重久 鈴木 博孝 鈴木 茂 福島 靖彦 喜多村 陽一 勝呂 衛 山下 由起子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.1103-1104, 1987-09-25

東京女子医科大学学会第271回例会 昭和62年6月11日 弥生記念講堂
著者
丹比 邦保 秋好 広明
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.29-35, 1970-04-30

青刈法におけるトウモロコシの合理的な利用法を究明するため,播種期別収量曲線の推定を行なった。1.原則として,刈取期間は雄穂抽出期前から乳熟初期までとし,刈取間隔は5日とした。2.収量曲線は3.3m^2あたりの生草収量をy,刈取開始日からの経過日数をxとして最小自乗法で求めたが,いずれも一次ないし二次式であった。3.雄穂抽出期における1日あたり生草収量は4月下旬播種が最も高く,ついで6月播種,最低は8月播種であった。4.6月から10月まで連続利用するには,3月・4月・6月・7月および8月の播種があればよく,それらの刈取期間と収量曲線は次のようであった。3月31日播種:刈取期間は6月8日から7月8日,収量曲線はy=-0.18x^2+1.49x+13.76(0≦x≦6,1x=5日)であった。4月30日播種:刈取期間は6月29日から7月29日,収量曲線はy=-0.273x^2+2.106x+17.59(0≦x≦6,1x=5日)であった。6月11日播種:刈取期間は7月21日から8月25日,収量曲線はy=-0.455x^2+3.5x+8.4(0≦x≦7,1x=5日)であった。7月12日播種:刈取期間は8月20日から9月24日,収量曲線はy=1.408x+5.46(0≦x≦7,1x=5日)であった。8月6日播種:刈取期間は9月24日から10月29日,収量曲線はy=-0.257x^2+2.098x+8.29(0≦x≦7,1x=5日)であった。
著者
緒方 一喜 中山 孝夫
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.157-166, 1963
被引用文献数
1 1

1962年3月から11月にいたる間, 川崎市北郊の約42aの水田で, 防除を目的とした蚊の発生動態の調査を行なつた.調査中に得た種類は, 4属9種で, コガタアカイエカ, シナハマダラカが圧倒的に多く, 前2種より著るしく少ないが, キンイロヤブカ, コガタクロウスカがこれについで多かつた.水田では, コガタアカイエカとシナハマダラカが圧倒的であつたが, 用水路では, コガタクロウスカが優占種であつた.水田における蚊幼虫発生の周年消長を論ずる場合, 稲作作業歴から, 次の4期に区分して考えると都合がよかつた.第1期(苗代作りから田植まで : 4月13日〜6月11日).第2期(田植からパラチオン散布まで : 6月12日〜7月14日).第3期(パラチオン散布から中干し開始まで : 7月15日〜24日).第4期(中干し開始から落水まで : 7月25日〜9月13日).第1期は, まだ湛水面積が狭く, 季節も早く, 幼虫の発生は少ない.土塊の間の水たまりにキンイロヤブカが多かつた.第2期の後半にコガタアカイエカ, シナハマダラカの急激な増加がみられた.6月21日以降, 全水田に幼虫の発生がみられるようになつた.第3期は, パラチオン散布で始まる.これで全滅した幼虫も, 9日目にはほぼ元通り回復する.そして, 再び急激に増加するが, 中干し開始によつてここに第2のピークを作る.第4期には, 1〜5日間の中干しが合計8回行なわれた.中干の間に灌水が行なわれた時, 多数の幼虫が発生したが, 羽化にはいたらず次の中干しによつて死滅したようである.そして, 9月13日の落水で幼虫の発生は終りをつげた.すなわち, 水田における蚊の発生は水によつて大きく規制され, 7月下旬から始まる頻繁な中干しによつて, 成虫の発生を許す期間は6月中旬から7月下旬にいたる約40日間であつた.この間, 7月中旬に農薬散布が行なわれるので, 6月中旬から7月中旬にいたる間に対策を講ずればよいと考えた. 1つの試案として, この年の作業歴を基にすれば, 6月27日頃と, 7月6日頃の2回, 中干しか, 殺虫剤散布を行なえば, 充分な駆除効果を上げ得ることを確かめた.ライトトラップによる成虫の出現消長と, 水田の幼虫の消長との間には, そのパターンにかなりの相違がみられた.その因果関係を論じ, この年の長梅雨と低温が成虫捕集の時期をおくらせたこと. 7月下旬以降は中干しによつて成虫になり得ず, このために成虫の補給が絶たれたこと, によつて, 成虫では急峻な1つのピークができたものと考えた.
著者
石原 直 山口 浩司 割澤 伸一 ドロネー ジャン・ジャック 米谷 玲皇
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

21世紀の先端ハードウエア技術(先端ものつくり)の根幹を支えるナノテクノロジーは,ナノ構造が発現する新たな物性を利用して新しい"もの"を創造することが重要なポイントである.本研究では,ナノテク時代の機械工学「ナノメカニクス」を開拓することを目標に,三次元ナノメカニカル構造としてナノ振動子を取り上げ,振動子の設計法,三次元ナノ構造作製技術の開発,機械振動測定法の開発と共振特性の解明,およびそのセンシングデバイスへの応用などナノ振動子の創製とその機能化のための基盤技術の構築を進めた.
著者
藤岡 悠一郎
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は、南部アフリカに広がるモパネ植生帯における人間-環境系の持続性を気候変動、植生の動態、地域社会の脆弱性という3つの視点から検討することを目的としている。研究実施計画では、最終年にあたる2011年度には、アンゴラ、ナミビアの農村において、一か月程度の補足調査を実施すること、調査結果の総合分析を行うことを予定していた。当該年度には、研究対象国であるナミビアおよびアンゴラにおいて2011年12月からのべ3か月間滞在し、現地調査を実施した。ナミビアでは、調査村において前年度雨季の大雨洪水イベントの影響と人々の対処方法を明らかにした。2009年度、2010年度のデータをあわせ、計3か年分の大雨洪水イベントに関するデータを取得することができ、長期的な人間-環境系の動態を考える上で貴重な情報となった。また、村の植物利用に関する集中的な聞き取り調査を実施し、植生動態に関する人間活動の影響を明らかにした。アンゴラにおいては、西部を中心に南部から北部まで広域調査を実施し、地図上で選定した数ヶ村において植生の移行形態や農業の実態、洪水旱魃の状況に関する調査を実施した。この調査により、ナミビアからアンゴラにかけて広がる湿地帯の全体像が明らかになり、調査地の位置づけがより鮮明になった。また、アンゴラでは内戦の影響で基礎調査がほとんど実施されていないため、貴重なデータになると考えられる。研究内容の一部は、2011年5月の日本アフリカ学会、2012年3月の日本地理学会において発表を行った。
著者
小林 健彦 Kobayashi Takehiko
出版者
新潟産業大学附属研究所
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.38, pp.57-73, 2010-06

日本列島の中では、文献史資料に依って確認を取ることが可能な古代以降の時期に限定してみても、幾多の自然災害―気象災害、津波や地震災害、伝染病の蔓延等―に見舞われ、その度に住民等を苦しめて来た。現在の新潟県域に該当する地域に於いても、当該地域特有の気象条件より齎される雪害を始めとして、大風、大雨、洪水、旱魃、地震、津波、火山噴火、そして疫病の流行といった災害が発生当時の民衆に襲い懸かっていた。しかし、民衆はそれらの災害を乗り越えながら現在に続く地域社会を形成して来たのである。筆者は、従前より、当時の人々がこうした災害を如何にして乗り越えて来たのかという、「災害対処の文化史」を構築するのに際し、近年自然災害が頻発している新潟県域を具体的研究対象地域として取り上げながら、その検証作業を行なっているところである。本稿では、前稿に引き続き、室町時代の中期以降、中世後半期に至る事例の検出と、民衆に依る災害対処の手法とに就いて、更に検証作業を進めた内容を明らかにするものである。
著者
石橋 孝昭 金田 圭市 古屋 武志 五反田 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.146, pp.7-12, 2003-06-19
参考文献数
12
被引用文献数
2

本論文では,周波数領域ICAの成分置換問題について分割スペクトルのパワーと位相に基づく解決法を提案する.具体的には,2音源2マイクの場合を考え,音源の一つは第1マイク側に,もう一つは第2マイク側にあるという仮定の下で,分割スペクトルのパワー差と位相差を用いた成分置換の判定則を導出する.そして,この判定則に基づいて成分置換を修正する方法を提案する.この修正則は,通常のように音源が話者音声と雑音の組み合わせのときだけでなく,雨音源とも話者音声のときでも成分置換を高精度で解決し,しかも音源を順序通り正しく推定する特徴を持っている.そのため,目的音声のみを簡単に抽出することができる.提案法の有効性は実環境下での分離抽出実験によって確認した.この実験から,同時に,マイク間隔が広い場合にはパワーに基づく成分置換の解決法が有効であり,マイク間隔が狭い場合には位相に基づく成分置換の解決法が有効であることが分かった.
著者
石川 忠晴
出版者
東京工業大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

まず始めに、可視化技術を用いた雨滴観測システムを製作し、雨滴径と落下速度の関係に関して、野外での実降雨観測と人工水滴を用いた室内実験を行って定式化した。また雨滴体積、落下速度と音響強度の関係に関する基礎実験を実施し、音響雨量計のデータ処理ルーチンを確定した。続いて、データ処理及びデータ保存を高速化するように部品構成を検討した後、バッテリ-駆動型の野外計測用音響雨量計を3台作製した。この装置を東工大長津田キャンパス周辺に設置して降雨観測を行ったところ、10秒間雨量の時間変動が詳細に捉えられ、雨域の移動状況を把握することが可能であることがわかった。しかし、音響収録部分の設置環境や缶面劣化により、降雨強度と音響性の関係にズレが発生することも明らかとなり、何らかの補正を加えるための装置改良の必要性が生じた。そこで、音響雨量計と転倒升式雨量計という性質の異なる計測器の出力を同時にデータ解析し、音響雨量計のパラメータをオンラインでキャリブレーションできる処理ルーチンを開発した。この新しい方式(ハイブリッド音響雨量計)を使用して野外観測を実施したところ、降雨のミクロな変動が良好に捉えられることがわかった。最後に、本測定器の誤差(微少雨滴が捕捉できないこと、複数の雨音の重合による誤差)を数値シュミュレーションにより検討した。その結果、上記のハイブリッド方式により十分な精度で観測できていることが確認された。
著者
安岡 正人 土田 義郎 平手 小太郎
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

近代文明の発展と共に、我々の身の廻りにインセンシブルな環境因子が生成され、様々な環境改変を生じ、人間を含む自然生態系に大きな影響を与えている。このような現状認識に立って、超音波や超低周波等の聴覚では直接捉えることのできない環境刺激の人体影響を、脳波、筋電、心拍、マイクロバイブレーションなどの生理量を検出することによって、明らかにするための基礎研究を進め、検出の可能性を確認できた。一方、情報化社会の申し子ともいうべき電磁波について、利用面のみならず環境因子としての視点から、既往の研究を調査し、問題の所在を明らかにした。それによれば居住環境における電磁波の実態、特に人体影響や建築空間、部位という側面では、ほとんど研究が行われていないことから、今回測定機器を導入して実測に着手した。本年度に得られた実績は、微々たるものであるが、今後継続的に建築環境の調査を進め、予測計算手法の確立につなげて行く予定である。また、人体影響についても前段の研究をベースとした被験者実験を進め、評価基準を見い出して行きたい。電磁環境については、日本建築学会に設置された安岡が主査の同名の小委員会で、広く、研究成果を持ち寄り、建築における電磁環境学の体系化を図り、諸外国との連携も深めている。これらの研究をスタートさせる上で、研究助成によって導入された装置による基礎的研究の寄与する処は大であった。