著者
三浦 宏文 小松 督 飯倉 省一 下山 勲 TADASHI Komatsu
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1992

本研究は,宇宙機(宇宙ロボット,人工衛星など)の姿勢制御に関するものである.平成4年度は微小重力を模擬するために,剛体を6自由度で支える実験機構を設計し,作成した.平成5年度は主に垂直成分の微小重力模擬装置の制御について詳細な研究を行った.これまでは,微小重力を3次元的に模擬するのは難しいので,空気軸受けなどで2次元的な支持装置を作って実験するのが普通であった.そこで,本研究では,特別の創意工夫によって,3次元的に空中に浮遊する物体の模擬装置を開発した.姿勢についてはジンバルによって3方向に自由に,重心周りに回転できるような構造にし,重心の移動に関しては,水平方向には空気軸受けによって2次元の自由度を与え,垂直方向にはカウンタバランスを備えること(平成4年度)、およびロードセルを備えて加速度を検出してフィードバックをかけること(平成5年度)で重さをキャンセルした.空気軸受けのための空気は,ボンベを装置に搭載することによってチュウブによる外乱を防いだ.宇宙機の姿勢制御には,本研究ではまったく新しい方法を提案しようとしている.それは,宇宙機を複数個に分割し,それらをユニバーサルジョイントで結合し,このジョイントには内力が発生できるようなアクチュエータが備えられていて,相対運動を引き起こすことによって全体の姿勢を制御しようというものである.平成4年度は、おもにこの研究を行い、最終年の平成5年度はロードセルによる微小重力制御系についてのより実用を目指した研究を行い理論と実験の良い一致を見た.
著者
新家 憲 郭 桂芬
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.181-192, 2001-12-30

中国黒竜省の三江平原は年間降水量がわずか500〜600 mmである。さらに降水が一様でなく60〜70%が7〜8月に降る。冬と春はほとんど雨が降らない。夏に降った雨を地下に保持しておくため、高圧空気で地下ダムを人工的に作ることを試みた。人工の地下ダムをつくるには水平の土壌空洞を地下につくる必要がある。そこで本報では、まず種々の土壌の通気係数を測定し、通気係数がどのような値の時に水平の空洞が生じて土壌が破壊するかを明らかにした。主な結果として、通気係数kの値が10^1 m^2/sMPaのとき、空気圧送によって土壌が流動現象で壊れるかV型に壊れるかの境界である。通気係数kの値が10^1〜10^<-1> m^2/sMPaの値の時、空気圧送によって土壌はV型の破壊が起り、10^<-1>m^2/sMPa以下では空洞の形成が起った。10^<-1> m/sの値は、この境界値と考えられる。本報の目的である白漿土のB層および草旬土のCgl層に空気圧送によって、水平の空洞を形成しようとする時、k値が10^<-1> m^2/sMPa以下になるためには、両層とも土壌水分が30% d.b.以上である必要がある。
著者
和田 有史 野口 薫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.582, pp.33-38, 2000-01-21

本研究は重みづけモデルを検証した.重みづけモデルとは, S効果(Kappa効果)において"物理的な力の表象"が時間評価に対して重みづけ的に働くと仮定するモデルである.実験では, 斜線上に三つの円を以下のように呈示した.一つめの円と二つめの円は坂を降るように呈示した.三つめについては二つめ, 三つめ間の時程(1550, 1850ms), 三つめの円の移動距離(短, 長), その方向(登り, 降り)の要因を操作した.課題は二つめ, 三つめ間の時程の長さを評価することであり, 出力は予め学習したshort, medium, longの時間弁別であった.結果は, 円に対する重力と, 上に牽引する力の表象が時間知覚に影響することを示しており, 重みづけモデルを支持した.
著者
山本 宏
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

針葉樹5種の各部成分化合物を、樹病感染時と健康時で比較した。また、それらの主要な化合物の病原菌成長への影響を調べ、次のことがわかった。1.ヒノキアスナロ樹皮成分は、高級脂肪酸メチルエステルから、漏脂病に罹病後にはabietinolやabieta-7,13-dieneのジテルペンとなった。2.ヒノキ樹皮成分は、ジテルペン二量体や高級脂肪酸から、漏脂病に罹病後にはtorulosolやferuginolなどのジテルペンとなった。材成分では、罹病後より酸化が進んだ構造のテルペンが得られた。3.樹脂胴枯病ヒノキ樹脂の主化合物はtorulosolとcupressic acidであり、樹脂胴枯病ローソンヒノキ樹脂の主化合物はacetyl isocupressic acidとisocupressic acidであった。前者2ジテルペンは病原菌菌糸成長を促進し、後者2ジテルペンは抑制した。4.キバチにより変色したスギ材の特徴的な化合物はabieta-7,13-dieneとacetyl-sandaracopimarinolであった。5.漏脂病ヒノキの樹皮化合物の樹木分布を調べると、目立った増加をしめすt-communic acidが感染段階をしめす基準物質となることがわかった。6.樹脂胴枯病に感染したローソンヒノキの樹皮と材かち、抗菌性テルペンtotarol, nootkatin, nootkatone,13-hydroxynootkatoneを分泌していた。ローソンヒノキはテルペンに基づく防御メカニズムを有していた。7.樹脂胴枯病に感染したレイランドヒノキ樹脂からがcommunic acidやtotarolのジテルペンを単離した。これらは病原菌の菌糸成長を抑制した。レイランドヒノキはテルペンに基づく防御メカニズムを有していた。
著者
塩見 淳 中森 喜彦 酒巻 匡 高山 佳奈子 安田 拓人 堀江 慎司 塩見 淳 中森 喜彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

組織犯罪の刑事的規制に特殊な配慮が必要であるとしても、伝統的な刑法の枠組を越えて犯罪の成立を早期化したり、国際協調の名の下に国内の人権保障の水準を切り下げたりするのは大きな問題であり、また、犯罪収益の剥奪といっても無原則に行われるべきではない。組織犯罪を捜査、起訴、審理する際の手続についても、制度趣旨等の根本理解に立ち返って慎重にその内容を確定すべきである。これらのことが明らかになった。
著者
岡部 篤行 佐藤 俊明 岡部 佳世 中川 貴之 今村 栄二 松下 和弘 長野 一博 石渡 祥嗣 飴本 幸司 林 良博 秋篠宮 文仁
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.30-39, 2006-09-30 (Released:2009-02-13)
参考文献数
5

当報告書は,無線LAN位置システム(以下システム)を放し飼いニワトリの軌跡追跡に適用可能かどうかを調べた結果を報告するものである。システムは,連続的な地面上にいるニワトリの位置を1 mのグリッド交差点上の点として表し,ニワトリの軌跡はその点列として表す。システムは,ニワトリの位置を1秒ごとに記録することができる。実験は8羽のニワトリと2羽のホロホロチョウを170 m×90 mの広さの公園に放って5日間にわたりその軌跡を観察した。分析に利用可能なデータは3日間得られた。システムによって得られる位置のデータは雑音を含むため,位置データは確率変数として扱った。データ分析により,位置の精度は,確率0.95で2.6 m,すなわち,真の位置が,観察された位置を中心に半径2.6 mの円の中にある確率が95%であると判明した。ニワトリの生活圏は,その場所にニワトリがいた確率密度関数として表現した。その関数はバンド幅が2.6 mのカーネル法で推定をした。軌跡は移動平均で推定した。実験の結果,システムは放し飼いニワトリの軌跡追跡に適用できることが判明した。
著者
中山 浩太郎
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.24, 2010

筆者らは,Wikipediaを解析することで大規模な連想シソーラス「Wikipediaシソーラス」を構築してきた.バージョン3では,連想関係だけでなく,半教師あり学習によるクラス分類や,Web検索を利用した精度向上アルゴリズムなどを摘要している.本発表では,構築手法とアルゴリズムの詳細について,デモを交えて紹介する.
著者
川原 尚子
出版者
近畿大学商経学会
雑誌
商経学叢 (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-61, 2010-07

本稿はアメリカ証券取引委員会(SEC)によって2010年2月8日に解釈通達された「気候変動関連開示に関する委員会指針」を評価している。本稿では, まず, この解釈通達の背景, 目的, 気候変動問題の開示規則, および解釈通達で示された気候変動開示の項目を検討し, 次に, 10-K様式に代表される公開会社のSEC開示書類での適切な気候変動関連開示を議論し, 最後に, 4つのアメリカ大企業の10-K様式での気候変動関連開示を検討している。解釈通達は公開会社の気候変動関連開示を既存の規則の要請を満たすよう支援することが期待されている。しかし, 公開企業の気候変動関連情報開示の程度は経営判断にゆだねられている。 (英文) This paper critically evaluates the interpretive release ("Release") entitled "Commission Guidance Regarding Disclosure Related to Climate Change" on February 8, 2010 published by the U.S. Securities and Exchange Commission ("SEC"). In this paper, firstly, the main background and the purpose of this Release, the rules requiring disclosure of climate change issues, and the topics of climate change disclosure which are described in the Release are reviewed. Secondly, the appropriate manner of the disclosure related to climate change in public company disclosure documents filed with the SEC represented by Form 10-K is discussed. Finally, the disclosures relating to climate change (Form 10-K) filed by the four largest American companies are examined. The Release is expected to assist public companies to satisfy the required disclosure related to climate change under the existing rules. However, the extent of information related to climate change disclosed by public companies remains a management decision on their part.
著者
小野木 重勝
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.196, pp.73-81, 95, 1972-06-30

有栖川宮邸は, 有栖川宮二品仁熾親王の殿邸であり, 明治4年以来殿邸にあてられていた芝浜崎町二番地の同宮邸が, 皇太后宮の御避難所にあてられることになったため, 明治8年7月に麹町区霞ケ関一丁目二番地の副島種臣邸1万1千93坪を買上げ, 同年8月28日に移転された。しかし, 既存建物が老朽化していたため, 明治13年より殿邸の改築が企てられ, 工部省営繕局の担当で工事が実施され, そのうちの洋館はコンドルの設計によるもので明治17年7月に竣工している。同年4月より宮内省内匠課の担当で着手した庭園工事は, 翌18年6月に完成し, 有栖川宮邸としての体裁を完全にととのえることになる。「コンドル博士遺作集」は「荘重なる復興式となし, 内部諸室の意匠も都て此方針に拠れり。本建物は蓋し皇族の御殿を純洋風に造りたる嚆矢にして, 永く後の模範となりたり」と伝えている。明治29年になって, 邸地が宮内省に買上げられ, さらに31年には建物など一切が買上げられ, 37年2月8日に宮家から引渡しがあり, 2月13日付で霞関離宮となったもので, 大正10年より同12年まで東宮仮御所となり, また, 大正13年より昭和12年まで日本館が, 帝室林野局庁舎として使用されたこともあった。