著者
宮坂 正英 久留島 浩 青山 宏夫 日高 薫 小林 淳一 松井 洋子
出版者
長崎純心大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、ヨーロッパ各地の博物館、大学、図書館ならびに末裔宅に所蔵されるシーボルト関係文書並びにシーボルトが日本滞在中に収集した日本産業・生活文化資料を横断的に調査・研究し、シーボルトがヨーロッパでどのような構想をもとに日本を紹介しようと試みたのか、その一端を復元的に研究しようする試みであった。今回の調査でミュンヘン国立民族学博物館にシーボルトが死の直前まで行っていた日本展示の構成を具体的に示す目録が発見され、これをもとに展示品を抽出した。その結果、シーボルトの日本紹介は従来の美術・工芸を中心とした日本紹介と異なり、日本の産業とその産業に従事する日本人の生活文化の紹介に主眼が置かれていることが分かった。このことから、シーボルトが意図した日本紹介は、独自の発想にる異民族およびその文化の理解の方法に基づいて行われていることが分かり、今後シーボルトの民族学的な思想を解明する手がかりを得ることができた。また、本研究を通じて、ヨーロッパ各地の関係諸機関に分散して所蔵されているシーボルト関係資料を横断的に調査・研究する方法が必要不可欠であることが認識された。このためには、画像付きデジタル・データベースの共有化が最適であるため、最初の試みとして、ミュンヘン国立民族学博物館所蔵のシーボルト・コレクションおよびシーボルトの末裔フォン・ブランデンシュタイン家所蔵のシーボルト関係文書の画像付きデジタル・データベースの構築を開始した。
著者
寺岡 靖剛 永長 久寛
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

Sr_2AlNbO_6はペロブスカイト(ABO_3)型構造を持ち、Al^<3+>とNb^<5+>がBサイトを占有している。これら2種類の金属イオンは焼成温度の増加に従いBサイト内で規則配列し、結晶内に-Al^<3+>-O-Nb^<5+>-交互規則配列結合を形成する割合が高くなる。したがって、Sr_2AlNbO_6を用いることで化学組成や結晶系を変えることなく、金属イオン規則配列構造と触媒機能との相関を評価することが可能と考えられる。そこで、金属イオン規則配列構造に由来する協奏的触媒機能の発現に対する知見を得ることを目的とし、規則配列度の異なるSr_2AlNbO_6を合成し、結晶構造を評価した。さらに、結晶構造が吸収スペクトルや光触媒活性に与える影響を検討した。規則化度の異なる試料の吸収スペクトルからEg値を見積った結果いずれも4.1eVとなり、Eg値と規則化度との相関はみられなかった。一方、メタノール水溶液を用いた光触媒活性評価の結果、長時間焼成することでH_2生成活性は低下することがわかった。触媒の比表面積は約3~4m^2・g^<-1>と同程度であったことから、活性の差は比表面積では説明できないと考えられる。このような光触媒活性の低下はAg光還元反応にも同様に認められ、反応の種類に依存しなかった。以上の結果から、Sr_2AlNbO_6の光触媒活性は規則化度の向上により低下することが示唆された。このように協奏的触媒機能の発現には至らなかったが、バルクの金属イオン配列の規則化と触媒機能の関連を初めて明らかにした。またバルクの規則配列構造を反映した多金属協奏活性的構造表面の創製として、立方晶のBa_2CoWO_6と単斜晶のCa_2CoWO_6を比較した。その結果、Ca_2CoWO_6において(-201)面上の金属イオン規則配列構造を反映した表面構造が形成され、それが触媒活性向上に関連する可能性が示唆された。
著者
安浦 寛人 佐藤 寿倫 松永 裕介 井上 創造 池田 大輔 石田 浩二 馬場 謙介 吉村 正義 ウッディン モハマッド・メスバ 稲永 俊介
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

社会に不可欠になっている「価値」や「信用」を搭載するLSIについて、ディペンダビリティの定義と評価尺度を提案し、その阻害要因の明確化と要因間の関係の解明を行った。また、LSIのディペンダビリティを向上させる対策を提案し、ディペンダブルLSIの設計フローを提示した。独自技術によるICカードを大学の学生証・職員証として発行し、設計から運用まで一貫してディペンダビリティの一万人規模の社会実験を行える環境を実現した。
著者
Peng Melinda S. Chang Simon W.
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.1073-1089, 1997-12-25

マイクロ波放射系 SSM/Iから推定された雨量の同化は、領域モデルによる熱帯低気圧の数値予報に有益であることが示されている (Pong and Chang, 1996)。しかし、衛星がほぼ太陽周期軌道をとることと観測幅が狭いことにより、SSM/Iは熱帯を完全にはカバーしない。一つまたはそれ以上の熱帯低気圧がSSM/I の観測領域に含まれず、したがって予報モデルに同化するための雨量を推定できない場合が多くある。この研究では、雲頂輝度温度がら推定された雨量を同化する効果評価する。Manobianco et al. (1994)によって提案された、SSM/Iの同時観測による雨量に基づいて赤外雲頂輝度温度から雨量を推定するアルゴリズムを、1990年の台風Floの数値予報に適応した。赤外観測による雨量の同化は、台風Floの経路と強さの予報に正の効果があり、これはSSM/Iによる雨量を用いた Peng and Changの結果と定性的に同じであることがわかった。赤外輝度温度とSSM/I輝度温度が同時に観測されない場合には、赤外雨量をSSM/I雨量に関係づける解析アルゴリズムの精度が低下した。赤外雨量を、数日前に得られた赤外輝度温度とSSM/I雨量の間の関係式から計算した感度実験では、赤外雨量の精度と予報のスキルの改善率が共に減少した。
著者
山田 朋人
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

近年,世界各地で極端現象による被害が頻発しており,対策および予測精度の向上は喫緊の課題である.本研究は大陸スケールで発生した旱魃を対象事例とし,全球気候モデルにおける陸面初期情報が与える準季節スケールの予報スキルの評価を行った.人間活動の影響を考慮した陸面初期データを予報実験に用いたところ, 1988年夏に北米大陸において発生した旱魃の準季節スケールの予報スキルは向上し,高い精度で旱魃の事前把握の可能性を示した.また大陸河川の河川流量に与える陸面初期情報の影響についても検討を行い,人為的な河川流量の調整がない場合, 1か月先の河川流量の挙動は陸面初期情報に強く依存するという結果が得られた.
著者
市場 みすず 金沢 一 清水 昶幸 幸保 美枝子 千賀 慶太郎 田村 善藏
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.157-160, 1986-03-05

調剤室における落下及び浮遊粉じん中の薬物を光学,蛍光及び偏光顕微鏡を用いて非破壊的に同定することを試みた.粉じん捕集は1985年2月5日(火曜日)午前9時から午後5時まで行った.落下粉じんは,床上120cmに設置したメンブランフィルター上に捕集し,浮遊粉じんは,床上150cmにメンブランフィルターを装着したホルダーを設置して,550mmHgで吸引捕集した.捕集した粉じん(落下粉じん:0.36mg,浮遊粉じん:1.34mg)は,それぞれ光学,蛍光及び偏光顕微鏡の順に観察し,粒子の形状や色調などを別途に作成した標準標本と比較対照した.その結果粉じんから,中枢神経系用薬3種(アレビアチン,ネオフィリン,フェノバール),消化器官用薬3種(M.M.,S.M散,ペクシー),ビタミン剤2種(ハイボン,メチコバール)及び賦形剤3種(CMC,トウモロコシデンプン,バレイショデンプン)の計11種の薬物を同定することができた.賦形剤を除くすべての薬物は,化学イオン化質量分析において,標準標本に合致する分子イオン又はフラグメントピークが観測された.
著者
久恒 辰博
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

成体になっても、記憶をつかさどる海馬では、新しくニューロンが生まれ、新しく神経回路ができている。近年の研究から、この新しい神経回路は、社会コミュニケーションの成立に欠かすことができないエピソード記憶の形成や維持に探く寄与していることがわかってきた。そのため、新生ニューロンによって形成される新しい海馬回路を調べ上げること、すなわちアダルトニューロジェネシスによるヘテロ脳回路の動的アセンブルを明らかにすることは、コミュニケーションの脳内機構の理解につながる。本研究では新生ニューロンによって形成される新しい海馬回路を可視化することを研究目的とした。新生ニューロンを除去する方法としては放射線照射を利用し、新しい研究手法であるOpto-fMRIを用い、新生ニューロン回路のあぶり出しを行った。海馬新生ニューロン回路の生理的特性を調べるためにOpto-fMRI解析を行った。Thy1プロモーターの制御下で光感受性チャネルChR2(チャネルロドプシン2)を発現する遺伝子組み換えラットを用い、光ファイバーを海馬歯状回部位に挿入し、MRI装置内で青色半導体レーザー光源(473nm)のを用いて光刺激した。新生ニューロンのはたらきを調べるために、ガンマ線照射(10Gy)により新生ニューロンを除去した遺伝子組み換えラットを準備し、同様の実験を行い、結果をコントロールラットと比較した。光刺激の有無によるBOLD信号の変化を4.7Tesla小動物用MRI(Varian)を用いて導出した。これらのMRIデータを脳機能解析ソフトであるSPMを用いて統計学的に解析し、集団解析を行った。その結果、新生ニューロンを除去した放射線照射ラットでは、コントロールと比較して、CA3領域における有意なBOLD信号の低下が観察された。アダルトニューロジェネシスは海馬回路の機能的連結に深く寄与していることが示唆された。
著者
今中 國泰 西平 賀昭
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、顕在的・潜在的知覚と運動反応に関して、逆向マスキング下の反応時間と事象関連電位、偏側性運動準備電位から検討した。逆向マスキング下の反応時間課題では、感覚閾値付近の弱い刺激(prime)とその数十ミリ秒後に提示される強い刺激(mask)の2つの連続刺激を用い、それらに対してできるだけ早く反応するという単純反応時間課題を用いた。またprime刺激の検出率及び脳波事象関連電位を測定し、単純反応時間と脳内情報処理の時間関係を検討した。その結果、単純反応時間は逆向マスキング下ではprime刺激が顕在的には知覚されないにもかかわらず、prime刺激があるときの方がないとき(つまりmask刺激のみ)よりも反応が早く起こることが示された。またその短縮した単純反応時間は、刺激呈示から偏側性運動準備電位(S-LRP)立ち上がりまでの時間(対側性運動準備過程が始まるまでの時間)と相関性が高く、LRP立ち上がりから反応動作までの時間(運動準備過程に要する時間)とは関連性がなかった。この結果から、逆向マスキング下の反応時間短縮効果は、顕在化されないprime刺激によって知覚過程の活性化が生じ知覚情報処理時間が短縮したか、あるいはprime刺激の感覚入力が直接運動準備過程の情報処理を賦活させたか、これらのいずれかによって運動準備過程の早期化が起こったものと考えられた。事象関連電位からは、逆向マスキング下のprime刺激によりP100(1次視覚野付近の活動)は明確に生じたがP300(刺激の認知)にはprime刺激の影響は生じなかった。したがって、prime刺激は初期視覚過程の処理はなされているが認知処理は行われていないことが示された。本研究ではprimeの潜在知覚による反応時間短縮効果について、行動的指標に加え脳波事象関連電位からそれらの背景にある脳内情報処理過程を明らかにした。
著者
宮脇 敦史
出版者
秀潤社
雑誌
細胞工学 (ISSN:02873796)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.227-230, 2004-02
著者
小原 哲郎
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

パルスデトネーションエンジン(PDE)は,これまでのジェットエンジンの構造と大きく異なる.すなわち,PDEではエンジン筒内に燃料と酸化剤をパルス状に噴射させて,混合気を着火しデトネーション波を発生させ既燃気体をノズルによって噴射し推力を得るのが基本原理である.しかしながら,PDEはまだ構想あるいは試験段階にあり,実用化するには至っていない.そこで,申請者はPDEの開発に必要な基礎データを得ることを研究目的とし,本研究課題を遂行した.まず,研究の初年度において,PDEの試作機を構築し,実験を開始した.本年度においては系統的に実験を進め,主に以下の知見が得られた.(1)本装置におけるデフラグレーション波からデトネーション波への遷移過程(DDT過程)では,混合気の点火位置を管端より下流の側壁上で行うことで上流と下流へ伝ぱする2つのデトネーション波を生成し,特にスラスト壁付近で生じる過大デトネーションは点火位置から非常に短距離で生じることを明らかにした.(2)筒内に噴射するした際の混合気の初期圧力や当量比の影響について調べ,燃焼後の圧力変化について明らかにした.また,量論混合比においてDDT過程への短縮効果が大きいことを明らかにした.(3)本装置により作動周波数50Hzまでのパルス作動が可能なことを明らかにした.また,得られる比推力は作動周波数によらず一定となること,すなわち推力がサイクル速度に比例して増加することを明らかにした.(4)エンジン筒内に挿入する内部障害物はデトネーション波の伝ぱ持続性を高め比推力が増加すること,また管の長さの増加はノズルのように作用し比推力を増加できることが明らかとなった.
著者
高瀬 えりか
出版者
京都コンピュータ学院
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

研究の背景現在の情報教育において,プログラミング初心者が最初に学ぶプログラミング言語はC言語やJavaが主流である。これらの言語は英語圏の国で開発された言語で,日本語のネイティブスピーカーにとっては馴染みにくい。また,一つのソフトウェアを作成するためには膨大は技術習得時間・作品制作時間を必要としてしる。日本語プログラミング「ドリトル」は、中高生やプログラミング初心者向けの教育用プログラミング言語で、下記のような特徴がある。(1)日本語でプログラミング出来る(2)GUIの開発が簡単である(3)ゲーム作成やロボット制御プログラミングを比較的簡単に行える(4)インスタンスベースのオブジェクト指向言語であるこの言語を用いて、「複数のチームが小型飛行船をラジコン制御するためのソフトウェアを開発したうえで相撲競技(1対1で飛行船を対戦させることを行い勝負する」ことを指南する教材を教材を開発した。※相撲競技とは、情報処理学会主催の組込みシステムシンポジウム内で開催されている、MDDロボットチャレンジにて行われているエキシビション競技である。この競技が生徒の意欲的学習を促すのではないかと考え、研究に取り入れた。教材概要ハードウェアは、基地局PC、地上MPU (Micro Processing Unit)、2つ合わせて地上局とする。このPCからの入力を地上MPUを通し、無線で機体搭載MPUに送信する。飛行船はバルーンと、機体搭載MPUから成っている。無線で入力を受けると、機体搭載MPUに取り付けられたプロペラが回転し、飛行船が動作する。飛行船の浮力はヘリウムガスによって得て浮る。上昇・下降・前進や旋回の動作はプロペラによって行う。実際の授業では、飛行船を操作よるためのハードウェア環境は既に用意しておき、生徒が直接手を加えて改造するなどしないことを前提とした。本システムの飛行船制御用ソフトウェアは、ドリトルで作成した。実行画面では動作を入力はるためのボタンが配置され、ボタンをマウスでクリックすることで飛行船を操作できる。生徒には、このソフトウェアに手を加えることで、相撲競技で対戦するゲームに勝つための開発をさせる。
著者
横井 克彦 許斐 亜紀
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

わが国は超高齢化社会に達しており、微量元素、特に亜鉛による老化制御の可能性を検討した。亜鉛欠乏ラットには、脱毛、体重の低下、脂肪の減少が見られ、超高齢者の老化に類似した表現型であった。亜鉛欠乏ラットは、自由摂取対照群やペアフェッド対照群とは明らかに異なった肝臓タンパク質の発現パターンを示した。わが国では亜鉛や鉄の摂取が不足しており、微量元素補給による老化制御について検討を続ける必要があるだろう。
著者
久保 勘二
出版者
九州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

近年,筆者はトロポノイドの構造的な特徴を活かした機能性ホストの開発を行っている。これまでに,トロポノイドに種々のイオノファー(アームドクラウン,アザクラウンエーテル,大環状ポリアン,シクロファン)を組み合わせたトロポノイドイオノファーを合成し,その金属イオンに対する錯体形成挙動を評価した。今回,蛍光分子(アントラセン,ナフタレン),トロポン並びにジアザクラウンエーテルを組み合わせたトロポノオイドイオノファーを合成し,その光化学的性質と重金属イオンに対する錯形成評価を試みた。N-アンスリルメチル-N'-トロポニルジアザ-18-クラウン-6エーテルはメタノール溶液中9-メチルアントラセンの発光強度の400分の1という非常に弱い発光を与えた。この発光強度の現象は窒素原子から励起されたアントラセンヘの光誘起電子移動による蛍光消光により説明することができる。また,各種金属イオン存在下での蛍光スペクトルを測定したところ,N-アンスリルメチル-N'-トロポニルジアザ-18-クラウン-6エーテルは平衡定数・発光強度変化共に高い銅イオン選択性を示した。ビスアンスリルメチルジアザ-18-クラウン-6エーテルはカリウムイオン選択性を示すことから,N-アンスリルメチル-N'-トロポニルジアザ-18-クラウン-6エーテルは銅イオン蛍光分析試薬として利用できる。一方,トロポノイドアザマクロサイクルの分子集合体への応用として,トロポノイドアザマクロサイクルをコアに有する液晶化合物を合成した。ビストロポニルピペラジン誘導体はエナンチオトロピックにスメクチックC相を発現することを見い出した。さらに,そのX線結晶構造解析の結果から,ビストロポニルピペラジン誘導体は結晶状態で,分子長軸が層法線に対して30度チルトした層構造を形成していることを見い出した。