著者
阿部 智和 山口 裕之 大原 亨
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
Discussion Paper, Series B
巻号頁・発行日
vol.170, pp.1-37, 2019-03

セコマのビジネスモデルは、2000年代後半以降、高い差別性を有するものへと変化を遂げていく。コンビニエンス・ストアを運営するリテール事業だけでなく、物流・サービス、および原料・製造事業から構成される3事業体制が確立されていく。本稿の目的は、この動向を追跡することにある。具体的には、この期間のセコマの概要とおよび当時の競争状況について確認したうえで、物流・サービス事業、生産・調達事業、販売事業のそれぞれの動向を整理していく。
著者
野間 俊一
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.122-129, 2014-04-15 (Released:2017-06-03)
参考文献数
5

摂食障害治療にはさまざまな困難が伴う。摂食障害は栄養障害に対する身体管理を行う必要があるため,一般の精神科医から敬遠される傾向があるが,身体管理を最寄りの内科医に委ねることで精神科医の負担はずいぶん軽減するはずである。摂食障害に対して提唱されている複数の治療法の選択は難しいが,パーソナリティ傾向によって「反応・葛藤型」「固執型」「衝動型」に,症状発現の段階によって「急性期」「亜急性期」「慢性期」に分類することで,タイプと病期を目安にして治療法を選択することができる。摂食障害患者は一見病識を欠き治療意欲が乏しいと思われるが,それは彼らの自己愛のテーマとこの病気の嗜癖性のためである。彼らの自己愛を理解しつつ嗜癖としての食行動異常を安心して手放すことができるよう導くことが求められる。摂食障害治療では,身体面を含む現実状況へ配慮しつつ,彼らに安心を与える良好な治療関係を確立することが重要である。
著者
芦沢 直之 上野 知恵子 渡邉 久美
出版者
国立大学法人 香川大学医学部看護学科
雑誌
香川大学看護学雑誌 (ISSN:13498673)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-10, 2018-03-30 (Released:2020-07-23)
参考文献数
47
被引用文献数
1

精神科看護の臨床において,“不穏時の頓服”や“不穏時の危険行動への介入”など,「不穏」という専門用語は高頻度に用いられている.しかし,その示す範囲は看護師により差異がみられる現状がある.本研究ではRodgers BL.の概念分析法を参考として,精神科看護師が統合失調症の不穏をどのように捉えているのかを,質的に明らかにした.文献は,医学中央雑誌における1987年から2016年までの看護領域の原著論文で,「不穏」と「統合失調症」のキーワードで検索して収集した.このうち,不穏について具体的な記述を読み取ることができるもの,研究筆頭者が精神科看護師である31件を分析対象とした.不穏に関する記載箇所を抽出し,時間軸に沿って比較検討しながら分析した.分析の結果を,「先行要件」,「属性」,「帰結」について,臨床的に用い易いものとするため,それぞれ《サイン》,《症状》,《転帰》として記述した.《サイン》は,【生理的欲求の未充足】,【状況への不信,不満】,【妄想に支配された訴え】,【対応力の低下】,【看護師が察知する普段との違和感】,【身体的要因の増悪】の6要素が抽出された.《症状》は,【幻覚・妄想の増悪】,【不意な行動化】,【興奮】,【自己への危害】,【他害行為】の5要素が抽出された.《転帰》は,【行動制限】,【内服薬調整】の2要素が抽出された.本研究における,精神科看護師が捉える統合失調症の不穏とは,生理的欲求の未充足,状況への不信や不満,妄想に支配された訴え,対応力の低下,看護師が察知する普段との違和感,身体的要因の増悪などを前兆として,幻覚・妄想の増悪,不意な行動化,興奮,自己への危害,他害行為に至り,行動制限や内服薬調整を必要とする状態と定義された.
著者
町村 敬志
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.91-117, 2020-02-21 (Released:2021-09-24)
参考文献数
16

社会運動は何かを「変える」存在であった。だが社会学における社会運動論は、「なぜ運動は起きたのか」に比べ、「何を変えるのか」については十分な関心を寄せてこなかった。構造への接続を念頭に置きながら、社会運動の「効果」という論点を深めようとする場合、次の三つのアプローチの可能性がある。第一に、社会的争点の構造的布置とその変容を映し出すものとしての社会運動、第二に、マクロ-メゾ-ミクロを接合させるエージェントとしての社会運動、第三に、時間を超える構造化された効果としての社会運動である。本論が確認したことは、社会運動は、個人や親密圏のような「ローカルな局域」の水準にまず基礎づけられることで、むしろ、時間的幅をもつ構造的効果を有することができるという点であった。社会運動は、再帰的なローカルナレッジの担い手として、主体と構造の間を連接していく。
著者
西野 保行 小西 純一 淵上 龍雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.126-135, 1983-06-24 (Released:2010-06-15)
参考文献数
8

Development of Railway rail used in Japan (1872-1930's) is traced by verifying the rolled mark and the cross-section of individual rails remaining in various forms and in various places. In this 2nd report, rails used by railways other than the national railways are described: rails of private railways, tram rails, light rails, imported used rails and others. Most of these were imported from overseas until 1920's: from U.S.A., U. K., Germany, Belgium and other countries. As for cross-sectional design, the American practice had been widely accepted until the Japanese original sections 40N, 50N and 50T were proposed and adopted as the standard in 1961.
著者
宇内 康郎 伊東 昇太 古川 正 本田 常雄 中野目 有一 河合 真 北村 勉 釜谷 園子 樋口 輝彦 大嶋 明彦 平沼 郁江 山下 さおり 崎岡 岩雄 村田 琢彦 白山 幸彦 小滝 ミサ 中村 良子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.18-29, 1998-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
41

最近, 精神・神経系と免疫系との関連や類似性が注目され, 免疫能と脳の局在との関係, 免疫細胞と神経細胞との関係が次第に明らかになっている.そこで今回は, 精神機能と免疫機能との関係を追求する一環として, 主として精神状態と免疫機能との関係を横断的に調査し, その後対象を中等度以上のうつ状態にしぼり, 縦断的に免疫機能と精神状態との関係を総合的に調査した.対象は昭和大学藤が丘病院を1991年11月から1993年3月までに受診した初診患者で, 自己免疫疾患, 感染症, がん, 肝臓疾患, 血液疾患, 皮膚疾患, アレルギー性疾患などを除外した17歳から65歳までの症例である.精神状態像との関係では16名 (男性12名, 女性4名) , うつ病の経過との関係では8名 (男性4名, 女性4名) が選ばれた.免疫機能の指標として, T細胞数, B細胞数, CD4, CD8, CD4/CD8比, Phytohemagglutinin (PHA) によるリンパ球幼若化検査, 更に精神状態との関係では液性免疫 (IgG, IgA, IgM, IgD, IgE) , うつ病の経過ではIL2レセプター数 (マイトジェン刺激後のリンパ球IL2レセプター数) , IL2反応能試験, NK細胞活性, 白血球数, リンパ球数が測定された.うつ病の評価はハミルトンのうつ病評価尺度が用いられ, 測定は初診時と状態改善時に行い, その期間は3週間から19週間に及び, 両時点においてうつ状態と免疫機能との関係を比較検討した.精神状態像と免疫機能との関係では明確な関係は見出せなかったが, うつ病の経過との関係では, うつ病時には, PHAによる幼弱化反応の減少が8例中7例に, またIL2反応能の低下, CD8の減少, CD4/CD8比の上昇が8例中6例に認められ, うつ病時には免疫機能が低下することが示唆された.以上の結果を現在までの報告と比較し, うつ病時に免疫機能が低下する機序について考案した.
著者
Takashi Kamiyama
出版者
The Plankton Society of Japan, The Japanese Association of Benthology
雑誌
Plankton and Benthos Research (ISSN:18808247)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.34-46, 2023-02-28 (Released:2023-03-02)
参考文献数
45

To evaluate the growth and feeding responses of the polyp stage of the moon jellyfish Aurelia coerulea to natural microzooplankton assemblages, bud production among A. coerulea polyps was monitored in field bottle incubation experiments using fractionated field seawater (<200-µm fraction) in summer. During this incubation period, feeding rates were measured twice by examining changes in the abundance of various microzooplankton taxa over two days. The number of buds increased with incubation period, reaching a mean of 5.8–9.3 buds per polyp after 16 days, at which point the carbon content of the new buds and the mother polyp was estimated to be 1.3–2.5 times higher than the carbon content of the initial polyp. Using these carbon content estimates, I calculated specific growth rates of 0.1–0.2 d−1 during the first 10 days. The results of the present feeding experiments suggest that polyps utilize diverse groups of microzooplankton and achieve relatively high carbon ingestion rates from ciliates, dinoflagellates, molluscs, and copepod nauplii. Total microzooplankton ingestion rates were estimated to be 4.05 and 3.27 µgC polyp−1 d−1 in the two experiments, respectively. These findings show that natural microzooplankton assemblages play a role as prey of polyps and can promote asexual reproduction of polyps under natural summer conditions.