著者
佐藤 和紀 三井 一希 手塚 和佳奈 若月 陸央 高橋 純 中川 哲 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.353-364, 2021-12-20 (Released:2022-03-18)
参考文献数
24
被引用文献数
2

GIGA スクール構想の標準仕様にしたがってICT 環境が整備され,1人1台の端末を活用している学級へのICT 活用に関する児童と教師への調査から,導入初期の児童によるICT 活用と教師の指導の特徴を検討した.その結果,児童は1人1台の情報端末を日々の活動の中で,さまざまなアプリケーションを組み合わせて活用しながらクラウド上でコミュニケーションを取っていたこと,教師は学校内の情報端末の活用については指導できるが,家庭学習については自治体のルールや情報モラルの観点から指導できていないことが特徴として挙げられた.
著者
朝倉 俊成 清野 弘明
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.767-773, 2003-09-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
8
被引用文献数
2

インスリン製剤は, 凍結することで性状がどのように変化するか, また凍結したことがあるかどうかをどのように鑑別するかを見出す目的で, 凍結し溶解したインスリンを分析した.インスリン製剤を-18℃ で24時間凍結させ, 解凍後に性状変化を観察し, インスリン活性の変化の測定・インスリン関連蛋白分析などを実施した.その結果, 凍結による化学的活性の変化は見られなかったが, 凍結した注入器の多くは故障し注入不能となり, またインスリン結晶の凝集が見られた.このような変化は, 作用時間などに影響がでる可能性が高く, 適正なインスリン療法を行うには凍結解凍後のインスリンを使用しないことが大切である.療養指導では, 製剤が凍結したことがあるかどうかを鑑別する方法として, カートリッジ内の気泡発生の有無や白濁結晶の沈降速度の変化を確認するよう指導し, 注射毎に試し打ちを励行することもあわせた, 患者自身によるセーフティーマネージメントを養うための患者教育を進める必要がある.
著者
森田 敏
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.1-12, 2008 (Released:2008-02-08)
参考文献数
121
被引用文献数
57 72

近年, 登熟期の高温により米の品質や玄米1粒重が低下する, いわゆる高温登熟障害が頻発していることが指摘されている. 地球的規模の温暖化の進行にともない今後の被害の拡大と甚大化が懸念される. このため高温登熟障害の克服に向けて, メカニズムの解明と対策技術の開発が喫緊の課題である. 本稿では, イネの高温登熟障害の実態, 背景を示すとともに, 主な症状である白未熟粒, 充実不足, 胴割れ粒の発生と玄米1粒重の低下, 食味の低下のメカニズム, 耐性品種など発生回避技術の開発に関する知見を整理し, 今後の研究方向を論じる.
著者
岡本 陸 稲坂 晃義 宮崎 愛弓 長尾 徹
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.4_19-4_28, 2023-03-31 (Released:2023-03-30)
参考文献数
26

近年,デザイン非従事者がデザインのプロセスに参加するような考え方や活動が注目されてきているが,多くの人々がデザイン行為に対する自己効力感に課題を抱えていると考える。本研究の目的は,デザイン非従事者に,共創という状況の中でDual Focus の考え方を援用したリフレクションを行わせることが,デザイン行為に対する自己効力感にどのような影響を与えるのかを明らかにすることである。デザインを専門的に学んでいない大学生に対して,デザイン行為を伴うグループワークを実施させた後,Dual Focus を用いてリフレクションをした群(他者視点を介入させる群)と,用いずにリフレクションをした群(他者視点を介入させない群)の2つに分け,それぞれの効果を分析した。その結果,グループワーク実施後にDualFocus を援用したリフクションを行った群は,自己に対してより詳細に振り返る傾向が確認され,さらにデザイン行為に対する自己効力感の一部分が有意に向上していることが分かった。
著者
宮崎 敦広 松原 仁
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2012論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.6, pp.137-140, 2012-11-09

ポーカーのような不完全情報ゲームにおいては,得られている情報から優勢劣勢の判断をして行動を決定することが重要である.本研究では,テキサス・ホールデムというポーカーを題材に勝率を基にした優劣推定から行動を選択するコンピュータプレイヤを作成し,評価を行った.優劣推定の正解率から優勢と判断していい状況の基準を定めることができた.さらに勝率に加え相手の賭け金を考慮することによって,対人戦において失点を抑えることに成功した.
著者
松浦 律子
出版者
一般社団法人 日本活断層学会
雑誌
活断層研究 (ISSN:09181024)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.35, pp.29-39, 2011-09-30 (Released:2015-12-09)
参考文献数
31

Tensho earthquake is one of the most famous large inland earthquakes during the medieval times of Japan. It occurred on Jan. 18, 1586 in Chubu district. It was almost the equal size to Nobi earthquake in 1891, and we estimated its size is around M7.8-8.0. Many major active faults in Chubu district had been assigned as the source faults of this earthquake. However, the careful examination of the historical materials, and the precise analysis of the distribution of estimated reliable seismic intensities revealed that it is impossible to cause the damage of whole Tensho earthquake by a single earthquake of M8-class. The main shock occurred in the south-western part of Nobi basin. The source faults are narrowed down to some faults near Yoro and Suzuka mountains, and Ise Bay, or southern part of Yanagase, Sekigahara, and nearby faults, when we compare the intensity distribution with expected ones for several major fault groups in Chubu district. The famous destruction of Uchigashima Family in Kiun Castle and the crushing death of Mr. and Mrs. Ukon Maeda in Kifune Castle were caused by the different earthquake, which occurred on Jan 16, in some faults near Shokawa River, and its size was around M7.0 ±0.2. In order to reveal source faults of medieval destructive earthquakes, which usually have too few historical materials, we have to be careful to the credibility of information. Those written in later years may be modified through folklore transmission. Even in the primary historical sources such as a diary of an aristocrat or a letter by a missionary, hearsay information in remote area was left with true damages they really knew. Since there are much more destructive earthquakes than those known in the catalogue we have now, the trench results should not be restricted to select the candidate of earthquakes only from the current earthquake catalogue. For example, July 31, 1585, a very strong earthquake was felt in Mikawa, Ise, and Kyoto, and no destructive damage was known in Chukyo area. This must be the first candidate for the latest activity of Atera fault.
著者
森 まり子
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学文学部紀要 = JOURNAL OF ATOMI UNIVERSITY FACULTY OF LITERATURE (ISSN:13481444)
巻号頁・発行日
no.58, pp.71-105, 2023-03

本稿はウッドロウ・ウィルソンと18~19世紀英米の政治思想との関連を考察するものである。以下要約に代えて目次を掲げる。はじめに一 本稿の問題意識とウィルソンの青年期の思考の概観(一)ウィルソンの知的経歴 ―概略(二)ダヴィドソン・カレッジとプリンストン・カレッジ時代に吸収した思想(三) ギリシア古典に影響されたウィルソンの「民主主義」像とオスマン帝国観 ―概略二 民主主義と専制に対するウィルソンの考え方 ―フランス革命観三 古代ギリシアの勉強がウィルソンに与えた影響 ―民主主義と専制への考え方(一)ヘロドトスの『歴史』 ①民主制の特色 ②自由・平等・民主制の価値と自由を守る戦い ③ヨーロッパとアジアの二分法(二)ウィリアム・スミスの『ギリシア史』 ①古代ギリシアの民主主義と愛国主義(スミス執筆部分) ② コンスタンティノープル陥落、オスマン帝国治下のギリシア、ギリシア独立戦争(フェルトン執筆部分) (ⅰ)コンスタンティノープルの陥落 (ⅱ)オスマン帝国治下のギリシア (ⅲ)ギリシア独立戦争四 ウィルソンとオスマン帝国 ―東方問題とグラッドストンの人権外交をめぐって(一)ウィルソンのグラッドストンへの傾倒(二)グラッドストン「ブルガリアの恐怖と東方問題」の概要終わりに
著者
浪方 悠 大屋 聖郎 森野 杏子 竹下 諒 水野 廉 植地 貴弘 入福浜 由奈 柏 健一郎 三田 直人 中森 知毅 木下 弘壽
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.274-276, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
15

今回われわれはカルシウム拮抗薬, アンジオテンシン II 受容体拮抗薬, ベンゾジアゼピン系抗不安薬中毒によるショック状態に陥った症例を経験したので報告する。症例は61歳, 女性。ショック状態にて当院へ搬送された。聴取した病歴からカルシウム拮抗薬中毒が主病態であることが推測された。輸液に対する循環動態の改善に乏しく, ノルアドレナリンに加え, グルカゴン, グルコン酸カルシウムによる治療が奏功した。カルシウム拮抗薬中毒は徐脈, 低血圧の遷延によりしばしば致死的となり得る。薬剤の作用機序と疾患特異的な治療法を習熟し治療を行う重要性が示唆された症例である。
著者
Alan Hase
出版者
Japanese Society of Tribologists
雑誌
Tribology Online (ISSN:18812198)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.202-216, 2023-08-31 (Released:2023-08-31)
参考文献数
19

Due to the continuing decrease in the proportion of young people in the population, it is likely to become more difficult to secure the researchers who will lead the next generation. To overcome this problem, it will be necessary to arouse the interest of children and young people in science and engineering. Tribology is the study and application of the principles of friction, lubrication, and wear, and is an interdisciplinary discipline spanning many fields; consequently, the study of tribology can encourage interdisciplinary learning. Furthermore, tribology is an important discipline of itself because it has a direct relationship to issues of energy and the environment. Teaching tribology to young people and helping them to understand it could arouse their interest in a variety of aspects of science and engineering. The key is how to introduce the various academic aspects of tribology, a complex and mysterious discipline, in an engaging manner. The author has energetically striven to promote introductory education to enlighten the next generation about tribology by using a novel educational method that incorporates a problem-solving game. This paper describes the effectiveness of this educational method, the content of the developed teaching materials, and the results in educational practice.

4 0 0 0 OA 警察職員録

著者
宮島陸一郎 編
出版者
稲田政吉
巻号頁・発行日
vol.明治10年9月11日届, 1877
著者
村上 京子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.146, pp.90-102, 2010 (Released:2017-03-21)
参考文献数
13

ここ四半世紀の「日本語教育」誌に掲載された実証的研究105編を対象に,データ収集の方法,取り上げられた要因,分析方法について分類した結果,学習者のレベルや母語,学習環境間の比較が中心であることがわかった。これらのグループ間の差を調べることは現状の記述にはなっても,その差異を生み出す原因が何であるのかを探求することは難しい。なぜならば,その差異を生み出す原因をレベルや母語,学習環境に帰してしまうと,そこで追及が終わってしまうからである。一見,母語や学習環境は学習者の習得の差を生みだす直接の原因のようにみえるかもしれないが,実際にはその中に多くの要因が含まれ,相互に関連している。その要因を分析するためには,仮説検証アプローチ,研究成果の蓄積,研究デザインの共通枠組みの構築,個人差研究のダイナミックな視点が必要であることを述べた。
著者
土屋 巌
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.319-329, 2001-05-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
18

鳥海山(2236m, N39°06', E140°03')南斜面に散在する吹きだまり型の万年雪(多年性残雪)のなかで,「心字雪」はその字画のように数か所に分かれている.2画目「大雪路」下部の標高約1600mにある「心字雪(S5)」は長年月にわたって消失したことがないが,その雪氷現象についての観察結果を,周辺の他の万年雪の場合と比較検討した.「心字雪(S5)」は「氷河の国際分類」に基づいて小氷河に分類していたが(土屋,1974),1972~2000年期間に1996年が最大で1998年が最小であったなどの規模の年々変動,基盤地形と涵養機構との関連,形態的特色等を説明した.「心字雪(S5)」が最小規模のときに観察できた基盤地形は,ごく小型ながら典型的圏谷地形であることを説明し,氷体が13年以上かけて圏谷底まで運んだ一つの巨礫の履歴を示す写真記録等に基づいて関連現象を考察した.