著者
森田 果 尾野 嘉邦
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

日本の法学研究では,実証研究が少しずつ出現し始めてはいるものの,観察データに依拠したものが主で,実験データを利用した実証研究は少ない。そこで本研究は,実験データに基づいた実証研究を展開することを主要な目的とする。米国においては,どの裁判官がどの判決文を執筆したかが明らかなことから,裁判官の属性や当事者の属性が判決にどのような影響を与えるのかについての研究が盛んである。これに対し,日本では,このようなデータが存在しないことから,同様の研究が難しい。そこで,本研究では,日本においても実施可能な,実験を活用した司法政治の実証研究の手法を探っていく。
著者
飯田 直樹
出版者
地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は、小河滋次郎の児童保護に関する主張に光を当て、それが小河の社会事業思想の中核にあることを示す。その上で、その思想が具体化されたのは、小河が立案した方面委員制度よりも、むしろほとんど小河とは無関係と考えられていたセツルメントであること、また、小河の思想の影響を受けて、幼児保育がセツルメントの中心事業になることを明らかにする。さらに、小河の影響が、セツルメントを介して都市での露天託児実践や農村での農繁期託児所という領域にまで及ぶ事を示し、小河の思想に新たな意義を見出す。日本における福祉国家化が、児童保護の分野を軸に進行することを明らかにし、医療偏重の福祉国家史の刷新を目指したい。
著者
池田 千里 山本 誠一 田口 收 鯨井 千佐登
出版者
宮城工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

平成8〜9年度の2年間、計画に沿って以下の研究を遂行し、一部は図書、学術誌等で公表した。1.奈良〜平安時代にかけての、東北地方の鉄生産の代表的な遺跡として、青森県の杢沢、宮城県柏木、福島県武井の各遺跡に着目し、現地での文献調査や出土資料収集も行った。2.古代からの日本周辺地域との交流の歴史の中で、朝鮮半島からの九州および畿内、日本海沿いへの影響、特に伽耶地方の古代製鉄遺跡遺構のの分布・立地状況の確認、文献資料収集と現地研究者との討論を行い、東北への鉄文化や製鉄技術の移入の経緯を探った。3.鉄器文化の中で、近世まで継続してきた「刃物」に着目し、古来の「鉄系クラッド材」として、種々の鉄と鋼について、鍛造および圧延による接合加工(鍛接)を行った。結果として、接合界面に微細な動的再結晶の形成と鍛錬組織の繰り返しなどの、変形特性や接合性に及ぼす加工率、温度、強度差、含有成分等の効果について系統的な金属学的依存性が認められた。4.上記1、2、の基盤を背景に、遺構の製鉄関連出土の鉄滓について、地理的・歴史的特徴をふまえ、化学成分関係、顕微鏡組織など、材料工学的見地から、比較・検討を行った。その結果、各地域での製鉄技術や炉内反応の共通点、相違点を明らかにすることができた。すなわち、鉄かんらん石の存在は、鉄収率は大幅に低減させていること、酸化チタンも、スラグに移行するときにウルボスピネル(Fe_2TiO_4)やイルメナイト(FeTiO_3)などを形成し、これらの化合物の形態と分布の相異に関連性があること、などが明らかになった。さらに、出土層位が異なる鉄滓組織の比較によって、酸化チタンの含有量の比較ができ、たたら製鉄の操業レベルが時代とともに向上していること、が確認できた。
著者
川田 進
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究における最大の成果は、現地調査と文献調査を通して、四川省チベット地区における民族問題と宗教問題の現状を検証したことである。2年間にわたる研究成果の概要を以下に示す。1.四川省カンゼ州にて、現地調査を実施した。2004年8月、五明仏学院(四川省セルタ県)にて、中国共産党が行った宗教弾圧事件の調査を実施した。テンジン・ギャムツォ副院長へのインタビューを行った。ヤチェン修行地(四川省ペユル県)にて、カリスマ性を持つ宗教指導者を中心とした修行地の構造を調査した。アチュウ法王へのインタビューを行った。2.2005年12月、中国国家図書館にて、中国の宗教学・民族学・政治学に関する文献調査を実施した。3.陳暁東のルポルタージュ「ニンマの紅い輝き」を分析することで、五明仏学院事件の遠因を分析した。4.中国政府が掲げる民族政策・宗教政策の内容と東チベットにおける実情の相違を明らかにした。5.デルゲ印経院における政治と宗教の軋轢について、聴き取り調査を行った。6.インターネット上に構築された、中国人によるチベット仏教の受容状況について調査した。7.上記の調査に基づき、研究論文を6編執筆した。
著者
眞嶋 良全 鈴木 紘子
出版者
北星学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

偽ニュースは,社会に与える影響が極めて大きいにも関わらず,その受容と伝達の背景にある認知過程の検討が十分に行われていない。本研究では,1) 実証的信念との関連が指摘されている,認知的内省性,パターン錯覚,擬人観等の個人の認知特性が,同様に偽ニュースの受容と関連するかどうか,2) 文化伝達の領域で提唱されている最小反直観性(MCI) 説が偽ニュースの受容と伝達に対しても適用可能か,同様に信念の文化伝達への関与が指摘されている,3) 権威に対する信頼,議論に対する適切な理解,主張者の信念-行動間の一致が偽ニュースの伝達にも関与するかどうかという3つの観点から検討を行う。
著者
井上 英治
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、野生ゴリラの糞から抽出したDNAを分析し、おもに単雄集団を形成するゴリラで、複数の集団を含む地域集団(コミュニティ)のオスの遺伝構造を明らかにした。ニシローランドゴリラとヒガシローランドゴリラの分析の結果、未成熟個体の移籍の様式はそれそれで異なるが、両亜種とも地域集団のオスは遺伝的に多様であることがわかった。この結果は、ゴリラのコミュニティが父系的でないことを示唆している。チンパンジーはオスが集団に残る父系的な社会であり、ゴリラとチンパンジーの地域集団のオスの遺伝構造は異なると考えられる。
著者
御輿 久美子 赤松 万里
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

この調査は日本ではじめての全国的なアカデミック・ハラスメントの実態調査であり、当初の計画のとおり、平成14年度にアンケート調査を実施し、平成15年度に集計および解析をおこない、平成16年度には結果を冊子としてまとめ、NPOアカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク(http://www.naah.jp)の協力を得て大阪(平成16年5月15日)、東京(平成16年5月29日)、札幌(平成16年6月5日)において調査結果の報告をおこなった。当該実態調査研究においては、大学に対するアンケート調査と教員個人に対するアンケート調査の2種類の調査をおこなった。回収率は、大学に対する調査では51%(回答数114大学)、教員に対する調査では回答率38%(回答者数931人)であった。大学に対するアンケート調査においては、ほとんどの大学が性的でないハラスメントに関しては、相談窓口もなく防止体制も整備されていないこと、25%にあたる大学において性的でないハラスメントに関する紛争が発生していることが明らかになった。全国の大学に勤務する助教授、常勤講師、助手の教員層を対象に無作為抽出したアンケート調査では、アカデミック・ハラスメントに関する項目すべてに数%〜20%の該当者があり、全分野共通の12項目のうち8項目について、女性の方が有意に高率であった。また、回答者の4割にあたる人が、周囲にアカデミック・ハラスメントを受けていた人がいることを知っており、その総数は750人に達しており、構成層ではより下位の層が被害を受けやすく、また、分野によって発生している事象が異なることが示唆された。さらに、このアンケート結果から、アカデミック・ハラスメント環境指標算出し、アカデミック・ハラスメントがおこりやすい環境を把握する方法を考案した。
著者
桂 利行 斎藤 毅 斎藤 毅 寺杣 友秀 向井 茂 金銅 誠之 中村 郁 石井 志保子 石田 正典 G. van der Geer
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

代数多様体は、いくつかの多項式の共通零点として定義される図形であり、数学の基本的な研究対象である。本研究では、標数がp>0の世界で、代数多様体を研究し、a-数、b-数、h-数という不変量を定義して、それらの間の関係を明らかにし、応用を与えた。また、標準束が自明であるK3曲面という代数多様体を標数2、3で考察し、超特殊と言われる場合に、その上の非特異有理曲線の配置の様子を解明し、格子の理論と関係を明らかにした。
著者
篠田 英朗
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、国際安全保障における協働化/分業化の状況を分析するため、アフリカに展開する国際平和活動の調査・比較を行う。国連と地域機構・準地域機構が協力して行うパートナーシップ国際平和活動は、アフリカでのみ発展している。なぜか。この問いに答えるために、本研究は、国際安全保障の協働化/分業化の仕組みに着目する。国連PKOが遂行できない武力行使を伴う活動をアフリカでは(準)地域機構が担うことができるため、パートナーシップ平和活動はアフリカでのみ進んできた、という仮説を検証する。主要なアフリカの国際平和活動に焦点をあてて、理論・組織・情勢分析を通じて、国際安全保障の協働化・分業化を解明する。
著者
佐藤 寛之
出版者
東京理科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

ユークリッド空間における制約つき最適化問題の実行可能領域がリーマン多様体をなす場合には,その問題をリーマン多様体上の無制約最適化問題と見なすことができる.本研究では,大規模な最適化問題に対する有効な手法として知られている非線形共役勾配法のうち,ユークリッド空間において比較的弱い条件下で大域的収束性が証明されている Dai-Yuan 型の方法をリーマン多様体上に拡張することで,リーマン多様体上の新たな最適化アルゴリズムを提案した.また,リーマン多様体上の信頼領域法に基づいて,複数の長方行列の同時特異値分解アルゴリズムを提案した.
著者
池田 知哉
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

寒冷暴露(凍死)は特徴的所見に乏しく判定が困難な症例も多い.凍死を示唆する血液検査所見としてケトン体の上昇が報告されているが,低栄養でもケトン体は上昇し,低栄養と寒冷暴露の鑑別に適さず,新しい検査法が求められている.これまで我々は,寒冷暴露時にACTH(adrenocorticotropic hormone)の分泌細胞が出現することを明らかにした.この所見から,副腎皮質におけるコルチゾールが変化することが予測される.本研究では,「寒冷暴露に伴うコルチゾールの病態生理学的意義」を調べ,コルチゾールの動態が寒冷暴露の診断マーカとなり得るか明らかにし,法医学上の凍死診断の一助とすることを目的とした.
著者
今任 拓也
出版者
国立医薬品食品衛生研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福岡県下のA企業の男性被保険者3648名を対象に、エネルギー代謝に関連する遺伝子であるアドレナリン受容体β2、アドレナリン受容体β3および脱共役蛋白1の遺伝子多型(SNP)の測定を行い、BMIおよび肥満との関連に関する疫学研究を実施した。それぞれのSNPとBMIなどの基本属性・BMI27.5以上の肥満割合に有意な違いが認められなかった。さらに3SNPのリスクアレル数の総和をGenetic risk scoreとし、3SNP間の相互作用について検討を行なった。リスクアレルが0の群をリファレンスとすると、1つでもリスクアレルを持つ群では、BMI27.5以上の肥満割合は、約3倍有意に高くなっていた。
著者
西村 康 和田 晴吾 斎藤 正徳 中条 利一郎 鈴木 努 道家 達將 稲田 孝司
出版者
奈良国立文化財研究所
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

重点領域研究『遺跡探査』では、地下に埋没している遺跡・遺構のみならず、地上に遺存する文化財も含めて、それらが包含する歴史情報をもれなく収集するための、格段に進歩した遺跡探査専用の装置と方法を開発することを目的とした。目的を達成するためには、理工学の研究者と考古学を中心とする人文学研究者とが緊密な連携のもとに、共同研究をすることが必須である。そこで、総括班では装置の設計段階、遺跡の実際での実験的測定、応用測定において、両分野の研究者が検討あるいは共同作業をするための環境設定を優先事項として考え、研究会議などの機会を数多く設定してきた。研究では、1)地中レーダー探査、2)電気探査、3)磁気探査、4)超音波探査においてぞぞれ装置と方法を開発、5)化学・光学探査では熱履歴を特定する手法を考案した。一方、遺跡の実際における探査では、1)被熱の遺構を特定する手法として、磁気探査、帯磁率測定、磁化率測定を組み合わせる方法を開発、2)石造構造物を対象とする場合には、地中レーダー探査、電気探査、VLF探査の方法を用いれば、遺構が推定可能なことを実証、3)土層判別探査(含:金属有機物探査)では、パルス(チャープ)レーダー探査、FM-CWレーダー探査、電気探査と電磁誘導探査の方法を応用すれば、有効な成果が得られることを実証した。なお、総括班では研究の進行に伴う成果の公表を逐次発表するために、公開シンポジウムを開催、ニュースレターを刊行してきた。また、研究成果を世界にアピールすること、正当な評価を得ることを目的に、平成9年9月には伊勢市において『第2回国際遺跡探査学会』を開催したところである。
著者
伊藤 太一 楠見 淳子 松本 顕
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

近年我々のグループは刺胞動物のヒドラが眠っていることを分子レベルで実証し、これにより、睡眠の起源は動物が脳を獲得するよりも古いことが示された。そこで、次の問いとして、『神経系は睡眠に必須なのか』を検証する。ヒドラでは薬剤処理によって神経系を喪失させることが可能である。この全く動けない『寝たきり』状態のヒドラが眠っているのかどうかを分子レベルで判定し、睡眠には神経系が必須要素なのかどうかを判断する。これは、これまで当然と考えられてきた「睡眠は神経系が担う」という通説に挑む研究である。
著者
榎戸 輝揚
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-04-01

ブラックホールや中性子星の連星合体で発生する重力波の直接検出により、重力波天文学の時代が幕を開けた。本研究では、今後期待される、高速自転する中性子星からの定常重力波の検出に向け、さそり座X-1など、明るいX線源を定常モニタリングできる超小型衛星の開発を進めてきた。暗い天体に関する測定感度を優先する大型衛星では明るい天体の測定は難しく、観測時間の専有も難しいことから、超小型衛星による挑戦が期待できる分野といえる。提案時には、国際宇宙ステーションに搭載された大面積X線望遠鏡 NICER のX線集光系と、シリコン検出器を組み合わせた観測装置を想定していた。しかし、NICER による、さそり座X-1の観測データや過去の RXTE 衛星による観測などを踏まえ、準周期振動の検出には、よりエネルギーが高い領域において大きな有効面積をもつ検出器の方が適しているという結論にいたった。そこで、理化学研究所のガス電子増幅フォイル(GEM)を用いたガス検出器に、日本の「ぎんが」衛星などでも実績のあるX線コリメータを組み合わせた観測装置を採用することにした。そこで、理化学研究所の榎戸極限自然現象理研白眉研究チーム(2020年1月発足)と GEM を開発してきた玉川高エネルギー宇宙物理学研究室を中心に、衛星プロジェクト名を NinjaSat と定めてチーム編成を強化し、衛星バスは NanoAvionics 社とプロジェクトを進めることになった。開発においては、データ取得系のプロトタイプ基板を進め、X線コリメータの基礎開発を進めた。今後、本新学術公募研究での成果をもとに、実際に宇宙に打ち上げるサイエンスペイロードの開発と、打ち上げ後の観測運用の準備を進めていく予定である。
著者
市川 隆一 氏原 秀樹 田尻 拓也 荒木 健太郎 藤田 実季子 太田 雄策
出版者
国立研究開発法人情報通信研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2023-04-01

顕著な積乱雲発達時や線状降水帯下での豪雨リスク等、気象ジオハザード(Geohazard)軽減を目指して、地球の中性大気中の水蒸気の3次元構造を精度良くかつリアルタイムに把握・監視する技術の確立を目指す。具体的には、約1kmメッシュの多点稠密GNSS(全地球測位衛星システム)観測網と新開発の機動観測型超広帯域マイクロ波放射計等から得られた水蒸気情報に基づいて水蒸気トモグラフィー解析を行い、これを踏まえて高時空分解能で水蒸気の動態予測手法を向上させ、気象ジオハザード軽減に資する、豪雨発生の2時間ないし3時間前からの積乱雲の発生・発達を予測可能な手法の構築を目指す。
著者
林 宣宏
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

“HIVはその遺伝子産物であるNefによって、本来は感染宿主細胞(T細胞)が使用している弱い相互作用に介在して効果的に細胞機能を停止している”、という申請者の研究に基づく仮説と、独自の抗体ライブラリー技術を用いて、NefがT細胞の機能を停止するのを阻止することによる細胞機能の回復法を開発する。HIV-Nefの機能を制御するダイアボディ(2重特異性抗体)を近年新たに開発した抗ミリストイル基抗体と抗Nef抗体を使って作製し、エイズ治療のための分子標的薬プロトタイプを開発する。
著者
堀口 兵剛 大森 由紀 松川 岳久 小松田 敦
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2023-04-01

秋田県のカドミウム(Cd)土壌汚染地域において自家産米摂取により過剰なCd曝露を受けた農業従事者を中心に住民健康調査を実施する。調査は集落毎に地元自治会館において健康診断形式で実施する。受診者から末梢血と尿を採取し、骨密度測定を行う。腎機能、骨代謝、造血能などに関する検査及び血液中、尿中のCd濃度の測定を行う。一方、当該地域の医療機関において腎機能低下を示す患者を対象にCd腎症スクリーニングを補完的に実施する。これらにより、秋田県のCd汚染地域の全体像解明及びCd腎症・イ病患者の効率的探索と保健指導・診療の実施を図る。さらに富山県でもCd腎症スクリーニングの実施を試みる。
著者
石渡 賢治
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

芽殖孤虫は、成虫が確認されていない幼条虫であり、これまで人体例は世界で21症例程であるが予後の極めて悪い寄生虫症を起こす。うち7例が本邦例で最新症例は1989年に虎ノ門病院から報告されている。患者の高い致死率は、骨を含む全身の臓器で幼条虫が無秩序に増殖・転移し、さらに既存の抗寄生虫薬が効かないことによる。申請者は、世界で唯一人体例から分離した芽殖孤虫をマウスで継代維持し、腹腔内で増殖し、肝臓、腹膜、横隔膜および肺に病変を形成することを確認している。本研究は、マウス感染系と培養系で芽殖孤虫の増殖および転移様式の一端を明らかにし、同時に新規治療法を開発することを目的としている。