著者
澤田 和彦
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

平成6年度は主として以下の諸点に取り組んだ。1.ブチャーチン提督の秘書として長崎に来航したゴンチャロ-フの『日本渡航記』にうかがわれる、ロシア人の観た幕末の日本及び日本人観2.日本最初のプロのロシア語通辞・志賀親朋の生涯と活動3.コレンコ、グレー、ケ-ベルといった東京外国語学校、東京帝国大学のロシア人教師や、B・ピウスツキ、マトヴェーエフのような亡命ロシア人、ポーランド人の日本での事跡と日本観4.日本の環日本海地域と極東ロシア、サハリンとの関わり5.北洋漁業の盛衰平成7年度は前年度のテーマを継続しつつ、新たに以下の諸点に取り組んだ。1.二葉亭四迷、嵯峨の屋お室など、東京外国語学校魯語科出身者によるロシア文化紹介の仕事2.白系ロシア人が日本文化に与えた影響3.以上7点に直接もしくは間接に関わってくる、千島樺太交換条約と日露戦争の有する文化史的意義平成8年度は最終年度として、これまでの研究を整理、総括し、明らかにしえた点と問題点を検討して、研究成果報告書を刊行した。研究期間内に論文を日本国内で14本(1本は発表予定)、ロシアで3本、ドイツで2本、ポーランドで1本発表した。またウラヂヴォストークの国際会議で二度研究成果を報告した。さらに札幌、新潟、伊豆、大阪、長崎で調査、資料収集を行った。
著者
斎藤 成也 井ノ上 逸朗 吉浦 孝一郎 Jinam TimothyA 松波 雅俊
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-06-29

以下の地域の住民からDNAサンプル入手を試みた:(1)沖縄、(2)九州(なし)、(3)中国(隠岐諸島、鳥取県)、(4)四国(徳島県)、(5)近畿(なし)、(6)中部(なし)、(7)関東(なし), (8)東北(山形県)。具体的には、4人の祖父母がすべてその地域出身者である提供者50名をえらび、本研究について説明してインフォームドコンセントを取得し、DNAサンプルの供与を受ける。既存の全ゲノムSNP多型データを持つ研究機関などの協力も得る。沖縄地域は松波(琉球大学)が、九州地域は吉浦(長崎大学)・井ノ上(遺伝研)・斎藤(遺伝研)が、中国・四国・近畿・中部・関東・東北地域については、斎藤と井ノ上がサンプリングを担当した。全ゲノムSNP多型データが未決定の人間について、ゲノム規模SNPデータを決定する。一部個体についてはゲノム配列決定をおこなった。現代人のゲノムをすでに決定した日本の研究機関および海外の研究機関やゲノムデータの解析を大規模に進めている海外の研究者と連絡をとり、共同研究を継続した。
著者
千葉 恵
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

アリストテレスの哲学的思索の宝庫である生物学をめぐる近年の争点は目的因の存在論的身分である。或る人々は有機体の存在は質料因と始動因だけでは十分に説明できないと考え、他の人々はその本質の定義は目的因なしには不可能であるが、この両因による有機体の存在の十分な説明は可能であるとする。因果性(実在)と説明(言語)の関係をめぐるこの因難な問題接近の一基地を見定めたい。自然は複雑な構造を有し規則的で美しく無駄のない秩序を示す。人が人を生む複製機構の絶妙さこそ「最も自然なこと」であり、この自律的に形態発生する生物の秩序性の帰一的第一根拠が「実現さるべきもの」なる目的因である。目的は反省概念ではなく、理(設計図)の次元で資料に比と限界を与へ条件的に必然な質料を規定し(「理にも必然性はある」200b4)、時空特定可能な物理的次元で質料の自然的運動を引き起こす自然的原因である。熱冷等物理的必然運動なる自然学者の「自然的にある」は、理により形相づけられた質料の必然運動として、行為モデルに比され、解し直される。それ故質料の端的必然性は条件的必然性に「還元され」も「包摂され」(J.Cooper等)もせず、理上指定された質料が時空次元で一質料として独立した「自然的にある」必然運動を為すので、両者は同一事物の二次元の必然性である。(Phii8,9,PAil,De Anii4,GAiil,v8)生物の複製機構を範例とする「何故かくも自然は秩序正しいのか」という何故疑問に対する解が四原因論である。原因は実体の力の能動的・受動的発現と解される。始動因は場所上連続的な力の変動を生む物理的原因である。他方理にある善なる目的因は生成の完成状態なる形相因でもあり、受動的質料とそれに合着した始動因に秩序と方向性を賦与するその第一能動因、本質である。かくして目的因は質料・始動因と存在論的次元を異にしにそれらに還元されない。かく自然の帰一構造は原因論のそれとなる。(Phii3,7,Metv4)
著者
鳥越 俊彦 佐藤 昇志
出版者
札幌医科大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2000

HIVに対するprotein therapyを考案し,その基礎的研究を進めている.(1)HIV tat蛋白質の11アミノ酸から成る細胞膜透過ドメインと,GFP蛋白質との融合蛋白質を作成し,細胞内への浸透性について解析した.Tat-GFPは細胞膜を透過しなかったが,Tat-Survivin-GFP蛋白質は透過した.Tat濃度依存性,温度感受性を確認した.ドミナントネガティブSurvivin蛋白質を腫瘍細胞に浸透させたところ,細胞にApoptosisを引き起こすことに成功した.(2)つぎに,Tat細胞膜透過ドメインを含む合成ペプチドが細胞膜を透過することを共焦点レーザー顕微鏡によって確認した.HIV nef蛋白質が発現を抑制するHLA-A分子の細胞質内ドメインから,HIV nef蛋白と会合すると予想される領域を推定し,この領域とTatドメインとの融合合成ペプチドを作成した.現在,Nef発現細胞を作成し,この合成ペプチドがNefの作用を抑制するかどうか実験を行っている.(3)細胞のapoptosisを促進するミトコンドリア蛋白質SmacのN末端機能ドメインとTatドメインとの融合合成ペプチドSmac7-Tatを作成した.このペプチドは細胞内に浸透し,細胞にapoptosisを引き起こすことを確認した.HIV proteaseが発現しているHIV感染細胞内で活性化するような,HIV protease認識配列を組み込んだTat-smac7ペプチドを設計した.これがHIV感染細胞に対して選択的にapoptosisを引き起こすことができるかどうか,今後,検証する.
著者
大河内 博 岩崎 貴也 佐瀬 裕之 村田 浩太郎 高橋 善幸 井川 学 戸田 敬 藍川 昌秀
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

記録的短時間大雨による甚大な山地災害が多発している.地球温暖化に伴う海洋水蒸気量の増大が指摘されているが,山間部豪雨の生成機構は不明である.山間部特有な現象として霧の頻繁な発生がある.また,植物起源一次粒子,生物揮発性有機化合物からの二次粒子があり,重要な雲凝結核・氷晶核になる.酸性霧や大気汚染物質が森林生態系を脆弱化させ,被害を拡大させている可能性もある.本研究では,山間部豪雨の実態解明,森林大気特有の雲凝結核の同定を行い,霧発生や山間部豪雨に及ぼす影響を解明する.また,全国山間部の霧沈着マップを作成し,国内汚染および越境大気汚染の評価とともに,森林生態系の健全性との関係を明らかにする.
著者
中村 隆
出版者
名古屋工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

自動車のディスクブレーキパッドは,走行中もブレーキディスクと僅かに接触していて,これが引き摺り抵抗となっている.中央のスリット部に45° のスリットを加えた改良ブレーキパッドを開発した.市販ブレーキパッドと改良ブレーキパッドを厳しい摩擦条件で摩耗させた後,周速38 km/hで回転する鋳鉄製ディスクに近づけた時の垂直方向押し付け力と,接線方向の摩擦力を測定した.市販ブレーキパッドでは,引き込まれる力が発生した.改良ブレーキパッドでは垂直力は常にプラスであり,部分的な接触が始まる距離15 μmまでは接線力は0である.このパッドを使うことで燃費は2.5 %改善することが期待できる.
著者
早川 和生 大村 佳代子
出版者
三重県立看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

高年齢に達した一卵性双生児は、遺伝要因が全く同一でありながらペアの1方が認知症や糖尿病などを発症しても他方は健常なペアが多く見られることから、このペア内の差異の原因となる環境因子を解明することは予防医学の面で学術的にも社会的にも極めて重要である。本研究では、既に把握して研究協力を得ている60歳以上の高齢双生児を対象に各種臨床検査を含む総合的な健康調査を実施している。特に、生活環境因子の影響については、ライフヒストリーを中心に食品摂取、身体的運動、職業内容、家族環境等を詳細に調査している。また同時に、性格検査、人生満足度テスト、知能検査等の検査データを収集してきた。これらデータは、国際的にも稀有なデータベースとなることから予防医学の面で極めてユニークで貴重な研究となることが期待されている。平成28年度の研究計画では、エピジェネチックな遺伝子発現に関与する環境因子について前年度と同様にライフスタイル因子や性格環境因子についてはブレスローのライフスタイル指標を含めた詳細なデータを収集し遺伝疫学的分析を実施している。また、これらの分析研究については従来より共同研究を実施している大阪大学大学院異学系研究科附属ツインリサーチセンター(センター長:岩谷良則教授)との共同研究として実施している。また尾形宗士朗(日本学術振興会特別研究員)には、ライフスタイルや生活環境因子の遺伝疫学的解析に参画いただいた。これらの研究成果については、多面的な複数の学術的な国際雑誌への論文および学会発表として公表することができた。
著者
岸本 直文
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

急速に進歩する測量技術により、従来の測量図よりもはるかに精度高く墳丘の形状を把握できるようになっている。倭国王墓の変遷については、測量図による従来の比較作業から推移が見通され、また研究代表者は2系列があることや、さらに第3の系列の存在を指摘している。しかし倭国王墓の築造には、本来、個々に具体の割り付け設計があり、また数字による寸法が与えられたはずであり、精度の高い墳丘データがえられるようになったことで、設計仕様レベルでの比較検討が可能となっている。本研究は、最新データにもとづき前方後円墳の設計の実際を解明すること、また複数系列の存在を証明することで当時の王権構造に迫ることをめざすものである。
著者
船津 和幸 シャンカル ヴェーンカテーシュワラン 船津 恵美子
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

バーサ作のサンスクリット戯曲の特徴を翻訳研究として考察するなかで、バーサ戯曲の独創性と魅力はその短編性とナラティヴの相対化にあると理解される。それは見る側、演じる側の想像力に訴え、解釈の大いなる自由をゆだねる。そして、実際に、『打ち砕かれた腿』を脚本化するプロセスでその醍醐味を体験的に確認できた。最終的には、演出家シャンカル・ヴェーンカテーシュワランとの共同作業により、実験的なヴォイス・パフォーマンス『百と一の子守唄』としてインドで上演して好評を博した。
著者
山 祐嗣 山 愛美 橋本 博文 鈴木 紘子 眞嶋 良全
出版者
大阪市立大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2021-10-07

宗教的推論は、直感的システムと熟慮的システムを仮定する二重過程理論では前者によって行われると想定されてきた。しかし、日本人においては熟慮的システムと結びついていることが示されている。本研究では、この違いを、東洋人は、カルマを熟慮的に受け入れている(カルマ仮説)、あるいは熟慮的思考と直感的迷信を弁証法的に受け入れている (弁証法的共存仮説) 可能性と想定する。日・仏・英において、認知的負荷によって熟慮的システムを抑制する実験、熟慮的思考を測定する質問紙と宗教的信念の質問紙の相関を検討する実験、熟慮的な判断と直感的な宗教的モラル推論の弁証的共存を測定する実験を実施し、両仮説を検証する。
著者
平之内 俊郎
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

研究成果の概要(和文):主に以下の成果が得られた.(1) 混標数で十分たくさん1の冪根を含むような完備離散付値体に対するMilnor K群の構造の計算(2) p 進体上の楕円曲線の積に対するサイクル写像の像及びChow 群の構造の計算(3) 可換代数群に付随するMilnor型K群の構成と応用
著者
大森 啓太郎
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

これまでの研究により、犬におけるワクチン接種後アレルギー反応の原因アレルゲンは、ワクチン中に含まれる牛胎子血清(FCS)であることが明らかとなっている。本年度は、FCS中においてアレルゲンとなり得るタンパク質成分を解析した。【方法】ワクチン接種後にアレルギー反応を起こし、ワクチンおよびFCSに対するIgE抗体を有する16頭の犬の血清を用いた。ワクチンおよびFCSに対するIgE抗体はELISA法により検出し、次いでこれら犬の血清IgE抗体と反応するFCS中のタンパク質成分を、抗犬IgE抗体を用いたイムノブロット法によって解析した。【結果】ワクチン接種後、16頭中2頭がアナフィラキシーと考えられる呼吸器・循環器症状を起こし、14頭が顔面浮腫などの皮膚症状を起こしていた。これらアレルギー反応は、ワクチン接種後数分から20時間に認められていたが、即時型および非即時型反応のいずれを起こした場合にもワクチンおよびFCSに対するIgE抗体が検出された。FCS成分中アレルゲンのイムノブロット解析においては、ワクチン接種後アレルギー反応を起こした犬の血清IgE抗体が認識するさまざまな分子量のタンパク質が検出された。なかでも、16頭中14頭の犬の血清が約66kDaのタンパク質に対し反応していた。分子量からこのタンパク質が牛血清アルブミン(BSA)であることを疑い、精製BSAに対する血清中IgE抗体の反応性を検討したところ、16頭中4頭のみにおいて精製BSAに対するIgE抗体が検出された。【考察】BSAその他、複数の血清タンパク質がFCS中のアレルゲンとなっていることが明らかとなった。アレルギー反応の少ないワクチンを製造するためには、ワクチン成分からのFCSおよびBSAの除去が必要であるものと考えられた。
著者
松尾 知明 蘇 リナ 田中 喜代次 甲斐 裕子
出版者
独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

“年齢に関わらずできるだけ長く元気に働ける社会”の実現に向け、体力科学は貢献できる。しかし、現在の体力科学研究には“心肺持久力(CRF)”と“座位行動(SB)”に関して混沌とした状況がある。疾病予防策としてはCRF向上が必要とされてきたが、その改善は見られないまま、最近の主流はSB減少である。本研究では、労働者を対象とした疫学研究により、1)“低CRF”と“過大SB”それぞれの、あるいは相互的な健康への影響はどの程度か、2)SB減少を目指すアプローチはCRF改善を目指すアプローチの代替策になり得るか、の2つの課題に取り組み、体力科学研究から、労働衛生分野での具体的な疾病予防策提案を目指す。
著者
中井 英一 倉坪 茂彦 藤間 昌一
出版者
茨城大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

フーリエ級数の収束問題について、1変数の関数の場合には1960年代までの研究によりほぼ解決しているが、多変数関数の場合にはまだ分からないことが多い。近年では、Gibbs現象に加え、Pinsky現象、倉坪現象が発見され、多変数フーリエ級数の複雑さがより明らかになった。一方、ガウスの円問題は、円の面積とその円内の格子点の個数との誤差を評価する問題である。Gaussは、誤差のオーダーは円の面積の1/2乗以下であることを証明した。1915年、Hardyは、1/4乗に限りなく近いと予想した。しかし、現在でも未解決である。本研究では、この一見無関係と思われる2つの未解決問題の同値性を証明した。
著者
米倉 修二
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

舌下免疫療法(SLIT)を施行していない薬物療法の症例と比較すると、スギ花粉飛散期およびヒノキ花粉飛散期において、いずれもSLITを施行した群の方が症状薬物スコアは低値を示していた。花粉飛散期前後の採血から抽出した末梢血単核球をスギ花粉抗原で刺激し2型サイトカイン産生量の比較を行うと、薬物療法群に比較してSLIT群では有意にサイトカイン産生量の上昇を抑制していた。同様にヒノキ花粉抗原で刺激した場合でも2型サイトカインの抑制を認めたが、スギ花粉刺激時より抑制の程度は少なかった。スギ花粉とヒノキ花粉は共通抗原をもつが、Cha 0 3などヒノキ花粉特有の抗原の影響が示唆された結果であった。
著者
永澤 健
出版者
畿央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

下肢の筋群のみを対象にした座位姿勢の静的ストレッチングを食後に実施し,血糖値低下作用がみられるかどうか検討した.健常成人女性11名を対象とし,被験者は安静条件とストレッチング条件の2つの実験に参加した.各実験条件において,血糖値,血圧,疲労感および吐き気のVAS(Visual Analog Scale)を安静時,食後15分,30分,45分,60分,90分,120分の時点で測定した.ストレッチング条件では,試験食(エネルギー692 kcal,糖質78 g)を摂取した30分後に,椅座位での下肢の静的ストレッチングを5種目,計10分間行った. 安静条件の血糖値は,食後45分後に最も高値を示した後,時間の経過に伴い低下した.ストレッチング条件では,食後30分目の血糖値が最も高値を示し,ストレッチングの実施後に血糖値が低下した.ストレッチング条件の食後45分目の血糖値は,安静条件よりも有意に低値を示した(p<0.05).ストレッチング条件の血糖値は,食後30分目と比較して食後45分目以降に有意な低値を示した(p<0.01).一方,安静条件の血糖値は,食後30分目と比較して食後90分目以降に有意に低値を示した(p<0.05).疲労感,吐き気および腹痛のVASは,両条件ともに時間経過に伴う有意な変化を認めなかった.血圧についても同様に有意な変化を認めなかった.以上のことから,食後に行う短時間の座位の下肢の静的ストレッチングには,食後の血糖値を低下させる作用があることが示された.座位の下肢ストレッチは,食後に手軽に行うことができる運動であり,身体への負担が少ないため,食後の血糖値管理に活用できるものと考えられた.
著者
田中 宏明 花本 征也 小川 文章 山下 洋正
出版者
京都大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2018-10-09

抗生物質による水環境汚染は、世界的に解決すべき喫緊の課題となっている。我々は抗生物質の自然減衰に対して先駆的に研究を行い、英国テムズ川では、国内河川よりも抗生物質の減衰が大幅に速いこと、金属錯体形成反応や河床間隙水塊との水交換といった日本では観測されない反応や現象が生じていることを見出した。しかし、これらの反応・現象に対する知見はまだほとんどない。そこで本研究では、英国テムズ川を対象とし、現地調査、室内実験、数理モデルを駆使して、ⅰ)金属錯体形成反応を考慮した抗生物質の底質への収着のモデル化、ⅱ)河床間隙水塊を考慮した河川水-底質間の抗生物質の移動現象のモデル化、ⅲ)抗生物質の水環境中濃度予測モデルの構築を実施する。本研究は、新たな反応・現象のモデル化により、化学物質、特に現在、世界的課題となっている抗生物質管理に資する普遍的な環境濃度の予測システムを構築するものである。新型コロナウイルス蔓延のため、英国への渡航ができない状況が続いている。令和3年度は、これまで英国との交流のコアとなってきた、第23回日英内分泌かく乱物質・新興化学物質ワークショップが11月29日-30日にオンラインで開催され、それに参加するとともに、以下の内容を共同発表した。人に投与された医薬品の水圏への排出源は概ね明らかになっているが、家畜に投与された医薬品の水圏流出経路は国や地域によって異なっており、十分な知見は得られていない。そこで、本年度は動物用及び人用医薬品の河川調査を、全国各地の畜産地域において年間を通して実施した。また、昨年度構築した、畜産場・下水処理場・浄化槽を排出源とした医薬品の水圏排出モデルによる河川負荷量の予測値と、現地調査による観測とを比較することで、動物用及び人用医薬品の水圏流出量の予測可能性を評価した。
著者
永岡 紗和子
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、自閉スペクトラム傾向の高い若年層向けの強迫性障害の心理教育について描いた漫画を作成し、テキストによる心理教育との効果の比較を試みた。大学生56名を対象に質問紙調査を実施した結果、自閉スペクトラム傾向の高群は、テキストよりも漫画での心理教育の方が治療を理解しやすいと評価する傾向が示された。また、テキストのみの心理教育では、自閉スペクトラム傾向の高群は低群よりも理解度が下がる傾向が示された。これらのことから、自閉スペクトラム傾向の高い若者にとっては、治療を視覚的にイメージしやすい漫画での心理教育が、治療の理解を向上させる可能性があると考えられる。
著者
菅野 雅元
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

小児のアトピー性皮膚炎(AD)発症に関して、母乳による育児は賛否両論あるが、科学的には確定していない。 完全母乳栄養・育児(母乳のみで育児)の母子の出生コホート研究において、AD発症群と非AD群において、「母乳成分の何が違うのか?」という観点から母乳中の自己成分による炎症性サイトカイン産生誘導活性(DAMPs活性)の比較検討を行った。我々の結果から、その活性物質は飽和脂肪酸である事が同定できた。 では、飽和脂肪酸がどのような機構で皮膚や消化管に存在する自然リンパ球で炎症性サイトカイン産生を誘導・増強し、それがどのようにアレルギー疾患発症(特にアトピー性皮膚炎発症)に繋がるのかを明らかにした。