著者
河島 茂生
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

本発表では,ネオ・サイバネティクスの理論に依拠しながら,人工知能に関わる倫理的問題の整序-再編を目指す。社会的な領域では人工知能は公正さや公知性を保ちながら社会システムの継続・改善に資することが求められるのに対して,個人的な領域では人工知能の利活用というよりもオートポイエティック・システムとしての相手への配慮が引き続き求められる。人工知能が普及した社会では,こうした複眼的な倫理的観点が欠かせない。
著者
大須賀 敦俊 縣 直道 窪田 貴文 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-140, no.3, pp.1-7, 2017-05-09

仮想化を用いたクラウド環境では,ひとつの仮想マシン (VM) でひとつのアプリケーションを動作させる形態が一般的になっている.この特徴を活用し,クラウド環境に特化した OS の設計 ・ 開発が行われている.これらのクラウド特化型 OS は,ハイパーバイザと重複した機能をゲスト OS から取り除いた,軽量かつ省メモリな実装となっている.これらの OS は新規の設計となっているため,1) 既存 OS と同等の機能を利用できるとは限らないという機能性,および 2) 既存 OS とは別個に保守が必要になるという保守性の面において不十分である.本論文では,既存の OS に対する改変を最小限に留めつつ,クラウド特化型 OS と同等の性能を実現する方法として,既存アプリケーションを既存のカーネル内で実行できるようにするフレームワークを提案する.この方法では,プロセスによるオーバーヘッドを削減することで,クラウド特化型 OS に近い軽量化を行うことができる.同時に,1) 実装において既存 OS の機能をそのまま利用できること,2) 既存 OS コミュニティによりコア機能が保守されることを期待できる.Linux を対象にフレームワークの実現を行った.本フレームワークの有用性を示すため,LevelDB というキーバリューストアをカーネル内で実行したところ,プロセスとして実行した場合と比較して,スループットが最大 1.46 倍となった.
著者
徳永 勝人 松岡 瑛
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.61-65, 1999-01-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
14
被引用文献数
4

水溶性食物繊維 (難消化性デキストーン5.12g) を有効成分とする特定保健用食品 (混合茶340g, 缶入り, 一般名;「難消化性デキストーン」(Tea Containing indigestible dextrin), 以下KSと表記) の糖質および脂質代謝に及ぼす影響を, 健常人および高脂血症患者を対象に評価した.(1) 健常人40例において, KSは試験食 (うどん定食: 炭水化物105g, 580kcal) 摂取後の血糖上昇を対照の緑茶340g摂取時 (83.0±4.6mg/dl) の76%に, また血糖曲線下面積 (AUC: 105.4±6.5mgmm/dl) は70%に低下させた.低下効果は緑茶摂取時の血糖頂値が40例の平均値 (171.5±4.7mg/dl) より高値を示した18例 (199.1±4.2mg/dl) でより顕著に現れ, 血糖上昇 (107.3±4.8mg/dl) は68%, AUC (134.2±8.3mg mh/dl) は67%に低下した.(2) 高脂血症llb型3例, IV型4例および健常人3例にKSを毎食時1カ月間反復摂取させたところ, 血清中性脂肪値は全例で低下し, 開始時 (205.5±2) mg/dl) に比べ有意な低下 (141.6±19.5mg/dl) がみられた. 低下はIV型において顕著G5~58%であった.
著者
中迫 由実 瀬渡 章子 渡 綾子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.17, no.37, pp.1031-1036, 2011-02-20 (Released:2011-10-20)
参考文献数
8

The first purpose of this research is to comprehend the actual state of commute to elementary school in a group and adults’ neighborhood watch activities, the second purpose of this research is to gain data for considering about necessary requirement for carrying on the activities. It is necessary for volunteers’ continues activities that they boost exchanges in the community, and they advertise the effect including the improvement of their fear against crime their activities, and volunteers know each other better than they do now, and they create fabric to fulfill the above-described requirement.
著者
ティン ティン ウィン シュイ 山元 昭二 藤谷 雄二 平野 靖史郎 藤巻 秀和
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第36回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.4113, 2009 (Released:2009-07-17)

【目 的】 近年、ディーゼルエンジン由来ナノ粒子の毒性影響研究の必要性が、社会的に認知されるようになった。本研究では、ナノ粒子(粒径50 nm以下)を多く含んだディーゼル排気(NRDE)をマウスに曝露し、細菌細胞壁成分リポタイコ酸(LTA)投与との併用下で海馬における空間認識記憶学習と記憶関連遺伝子発現や嗅球での神経伝達物質レベルおよび記憶関連遺伝子発現について検討した。 【材料および方法】 動物はBALB/c 雄マウスを用い、NRDEの全身吸入曝露チャンバーで4週間(5時間/日, 5日/週)曝露した(モード粒径26.21 nm、重量濃度148.86μg/m3)。また、曝露期間中、計4回(1回/週)LTAを腹腔内に投与した。NRDE曝露後におけるマウスの空間認識記憶学習を調べるためにモリスの水迷路試験を行った。また、嗅球での細胞外アミノ酸神経伝達物質(グルタミン酸)レベル測定のために脳マイクロダイアリシス法との組み合わせでHPLC分析をおこなった。さらに、海馬および嗅球における記憶関連遺伝子のmRNA発現レベルをリアルタイムRT-PCR法によって解析した。 【結果および考察】 モリス水迷路試験において、NRDE+LTA群では、対照群(清浄空気のみ;LTA非投与)に比べて水面下に隠れたプラットフォームへの到着に長い時間を要した。NRDEのみの曝露群ではそれらに影響はみられなかった。また、海馬でのNMDA受容体サブユニットNR1, NR2A, NR2BのmRNA発現レベルは、対照群に比べてNRDE+LTA群で有意に高かった。嗅球において、NRDE曝露のみやLTAとの併用、もしくはLTA投与のみは、グルタミン酸レベルの有意な増加を引き起こした。又、NR1, NR2A, NR2BやプロテインキナーゼCaMKIV, 転写因子CREB1等のmRNA発現のアップレギュレーションがNRDE+LTA群において観察された。
著者
柏 祐太郎 大平 雅雄 阿萬 裕久 亀井 靖高
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.669-681, 2015-02-15

本論文では,大規模OSS開発における不具合修正時間の短縮化を目的としたバグトリアージ手法を提案する.提案手法は,開発者の適性に加えて,開発者が一定期間に取り組めるタスク量の上限を考慮している点に特徴がある.Mozilla FirefoxおよびEclipse Platformプロジェクトを対象としたケーススタディを行った結果,提案手法について以下の3つの効果を確認した.(1)一部の開発者へタスクが集中するという問題を緩和できること.(2)現状のタスク割当て方法に比べFirefoxでは50%(Platformでは誤差が大きすぎるため計測不能),既存手法に比べFirefoxでは34%,Platformでは38%の不具合修正時間を削減できること.(3)提案手法で用いた2つの設定,プリファレンス(開発者の適性)と上限(開発者が取り組むことのできる時間の上限)が,タスクの分散効果にそれぞれ同程度寄与すること.
著者
加藤 紫苑
出版者
京都大学文学研究科西洋近世哲学史研究室
雑誌
Prolegomena : 西洋近世哲学史研究室紀要 (ISSN:21858098)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.1-12, 2015-12-15

Where is the historical origin of anti -Kantianism in the aesthetics of German idealism? Frederick C. Beiser's recent book, Diotima's Children: German Aesthetic Rationalism from Leibniz to Lessing, doesn't treat this subject directly, but provides many profound insights into it. In this paper the author gives a summary of the book first, then explains some of those insights.
著者
池田 剛 宮下 裕幸 中野 大輔 野原 稔弘
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.130, no.5, pp.679-686, 2010 (Released:2010-05-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

Recent progress in glycobiology reveals that sugar-chains play a crucial role in cell-cell recognition among immunity, inflammation, and malignant tumor in the living body. To study the mechanism of action requires a sample of sufficient quantity. However, isolating a sugar chain and a glycoside in pure form, difficulty follows sugar chain composition again, and studies have been limited to a few sugar chains. Glycosides are a group of compounds known to be the active principle of a natural drug. We have isolated triterpene glycosides from a Leguminosae plant, which improved liver disorder, and steroid glycosides from a plant of the Solanaceous with cytotoxic activity against human cancer cell lines. A biological activity test suggested an important role of the aglycone part and the sugar chain part of those glycosides. Although many studies of sugar chains of glycoprotein and glycolipid are known, there are few examples of studies of the sugar chain function of a glycoside of a natural drug, and the role of a sugar chain of a glycoside for its pharmacologic action expression is unknown. Therefore, as a biological tool investigating the function of a sugar chain of a natural glycoside, we have begun to synthesize a useful “glycoside” which can be utilized as a lead compound having activity.
著者
松本 鈴子 中野 綾美 佐東 美緒
出版者
高知女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、母親が安心して育児ができ、次回の妊娠・出産へとつなげるために、心的外傷後ストレスを引き起こしている母親はどのような出産体験をしたのか明らかにし、出産後の母親の心的外傷後ストレス障害(PTSD)を予防するための対応策を看護の視点から提案することを目的とした。その結果、出産後1か月時に心的外傷後体験が高く、PTSDハイリスクであった健常新生児の母親とNICU入院児の母親は『母体の生命の危険』『耐えがたい疼痛』『母体の健康状態の悪化』などの恐怖や苦痛体験をしていたことが明らかになった。PTSDローリスクであった健常新生児の母親は「陣痛を耐え、乗り越えたことが自信や充実感になった」「信頼できる看護者や医師、家族がそばにいる支援が安心感やよろこびにつながった」と、母親が自分なりに出産体験を肯定的に受け止めていた。また、NICU入院児の母親の中に「予想していた以上の看護や医師の説明、何かあれば相談できる医療従事者、家族の支え」によって安心感や意欲につながっていた。そして、出産後6か月時にPTSDであった母親は両群の割合には有意な差がなかったが、健常新生児の母親2.9%(n=174)、NICU入院児の母親3.6%(n=111)であった。心的外傷体験にならないように予防的ケアすること、そして、母親の反応をアセスメントし、心的外傷体験や心的外傷後ストレス症状出現の早期発見、継続したケアをすることが大切である。
著者
岡田 裕美 渡辺 賢治 鈴木 幸男 鈴木 邦彦 伊藤 剛 村主 明彦 倉持 茂 土本 寛二 石野 尚吾 花輪 壽彦
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.57-65, 1999-07-20
参考文献数
19
被引用文献数
5 4

症例は60歳男性で平成9年6月3日腹部不快感を主訴に北里研究所東洋医学総合研究所を受診した。半夏瀉心湯の投与により腹部症状は軽減したが, 半夏瀉心湯の服用は6月より8月まで継続した。同年8月3日より悪寒, 発熱, 倦怠感が出現した。肝機能障害を指摘されたため, 半夏瀉心湯を中止し小柴胡湯を投与した。14日当院漢方科入院となり, 抗生剤, 強力ミノファーゲンCにて経過観察した。入院時の胸部レントゲンにて左上肺野にスリガラス状陰影を認めたため, 小柴胡湯を中止した。肝機能障害は改善したが, 呼吸困難が顕著となり, 捻髪音を聴取するようになった。胸部レントゲン, 胸部CTにて間質性変化を確認し, 9月5日よりPSLの投与を開始した。経過は良好で症状, 画像所見, 検査所見とも改善を認めた。DLSTは小柴胡湯, 柴胡, 黄苓で陽性だった。当初小柴胡湯による間質性肺炎を疑ったが, 小柴胡湯投与前の他院での胸部レントゲン写真でも左上肺野のスリガラス上陰影を認めたため, 本例は半夏瀉心湯が主でさらに小柴胡湯の投与により薬剤性の肝障害ならびに間質性肺炎を発症したものと考えられた。
著者
則 のぞみ 鹿島 久嗣 山下 和人 猪飼 宏 今中 雄一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J100-D, no.2, pp.194-204, 2017-02-01

ICU入室患者の死亡リスク予測問題において,疾病によってリスク要因がどのように死亡リスクに関係するかが異なる点を考慮するために,疾病ごとに個別化した予測モデルを構築する.疾病ごとの個別化に際して課題となるデータの疎性に対処するために,疾病の分類と電子健康記録の分類に関する二つのドメイン知識を取り込むマルチタスク学習手法を提案し,医療機関における実データを用いた実験で提案手法の有効性を示す.
著者
大山 七穂
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

平成12年度は、マスメディア(新聞記事)に表出された社会規範に関するメディア・フレームが人々の規範意識に影響を及ぼすものと考え、新聞の内容分析を行った。「成人の日」の社説と、「人生案内」というコラムへの投書とそれに対する回答の分析を行ったが、「大人」を大人たらしめる規範の希薄化と、投書内容の個人化および問題解決の脱規範化を見出すことができた。平成13年度はそれを受けて、意識調査を実施した。調査の主な目的は、現在の人々がどのような規範意識をもっているのかその意識構造を明らかにして、そこから社会規範の変化を検討するとともに、メディア・フレームがどの程度影響を及ほすのか検証することである。調査対象は、神奈川県の一般成人男女1500名であり、443名からの回答を得た。規範意識には、変わった側面もあり、変わらない側面もあった。日本の伝統的な社会規範は予想していた以上に保持されていたが、家族をめぐる規範や性規範には大きな性差、年齢差がみられた。規範の曖昧化、希薄化については、一部の結果からそうした傾向を認めることができる。若年層の方が、全般的に判断の根拠が不明確で、その時その場の自己欲求に左右されやすく、一貫性に欠けていた。メディア・フレームについては、残念ながら明らかな影響を析出することはできなかった。ただし、家庭や学校で教えられたとする道徳内容が主として旧来の規範であるという結果をみると、変わりつつある社会規範の判断枠組はメディアが提供している可能性が大きいといえよう。