著者
井上 勝生
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本軍の討伐大隊長文書と戦死兵の石碑碑文、討伐軍兵士個人の従軍日誌複数などを見出した。朝鮮農民ら東学農民軍の抗日蜂起は、従来は注目されなかった中央部山岳地帯で一斉に始まった。この時に、広島の大本営こそが、農民軍主力ほか全部を包囲殲滅する作戦を立案し、派兵した。作戦の後半では、日本軍指導部から殲滅命令が続発されており、朝鮮農民軍数万人以上の厖大な死者を出した。この事実関係を解明・実証した。
著者
城戸 楓 池田 めぐみ
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.46013, (Released:2022-07-04)
参考文献数
31

昨今,これまで多くの研究分野において最も強力なツールの一つとして研究のエヴィデンスを支えてきた帰無仮説有意性検定に疑問が投げかけられている.本稿では,こうした帰無仮説有意性検定の際に信頼性を高めるために報告が求められる効果量を取り上げ,『日本教育工学会論文誌』において過去10年間でどの程度効果量が論文に記載されていたのかについて調査を行った.この結果,『日本教育工学会論文誌』では,2016年ごろより効果量について論文内で掲示される比率が増加していたが,海外での掲載比率ほど高まってはおらず,また近年では少し下落している傾向が見られた.また,教育システム論文では特に効果量が記載されない比率が高かったことが分かった.
著者
勝俣 鎭夫
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.172-189,277-27, 1983-02-20 (Released:2017-11-29)

In this essay, the author attempts to reply to the criticism levelled at him by Mr.Araki Moriaki in a recent article entitled "The Land Survey by the Sengoku Daimyo (戦国大名) and the Sakuai (作合) (Subletting Rent)" (see Shigaku Zasshi, Vol XC, No 8: Aug. 1981). In that article, Mr.Araki judged as empirically unprovable the key point to the author's Sengoku daimyo land survey theory (see Katsumata Shizuo 勝俣鎭夫, Sengoku-ho Seiritsu-shiron 戦国法成立史論) which states that the fundamental principle underlying said surveys was to negate tax unit managers' rights under the previous shoen (荘園) system to reap supplementary land rent income and incorporate such income into a system of monetary evaluation of land yields (kandaka-sei 貫高制). That is to say, as opposed to the author's schema which equates tax additions gained by land surveying (kenchi mashibun 検地増分) tax unit manager appropriation of supplementary land rents tax unit field management income, Mr.Araki attempts to resurrect his outdated formula which equates gains by surveying tax unit management income "off the record" fields (onden 隠田) hidden from the shoen tax system. In the present essay, the author, after investigating Mr.Araki's own empirical evidence, makes clear the impossibility of proving the existence of such a formula. Howeverr Mr.Araki is mistaken not only because of the low level of his empirical proof, but mainly because he ignores the great historical significance which lay in the Sengoku daimyos' method of "on paper" surveying (sashi-dashi kenchi 指出検地) in favor of "field" surveys (joryo kenchi 丈量検地), which, he purports, were carried out in order to discover previously concealed taxable land. Moreover, because it is now possible to conceive of Hideyoshi's cadastres (Taiko Kenchi 太閤検地), which were fundamentally "on paper" surveys, as having adopted the Sengoku daimyos' method for carrying out their own land surveys -that is, as a grand finale to the surveying done by those feudal powers -the time has finally come for a radical re-investigation of the long established explanation proposed by Mr.Araki concerning the origins of Taiko Kenchi.
著者
清田 雅史
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.562-574, 2019-11-15 (Released:2019-11-20)
参考文献数
87

冷水性サンゴ類やカイメン類の群生は,多様な生物に生息場所を提供し独特な生態系を形成するが,破壊されやすく回復に時間がかかることから脆弱な生態系(VME)と見なされている。公海着底漁業によるVMEの破壊は国連総会で大きな問題となり,地域漁業管理機関はFAOのガイドラインに沿って,既存漁場と未操業域の識別,商業操業の既存漁場内への限定,遭遇プロトコルや保護区の導入等により,VMEへの重大な悪影響の回避に取り組んでいる。我が国でも着底漁業が海底に与える影響を評価・管理する枠組みの構築が必要であろう。

3 0 0 0 幻想生物

著者
山北篤著 シブヤユウジ画
出版者
新紀元社
巻号頁・発行日
2010
著者
遠藤 誠之 玉井 克人
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

妊娠中に母体から胎児へ細胞が移行する現象を母体胎児間マイクロキメリズムと言います。その機序により、ある割合で子供が母親由来の細胞に対して免疫学的な寛容を示すことが分かっています。その場合、その子供は母親由来の細胞移植や、母親に特異的なタンパク質に対して拒絶反応を起こしません。我々は今回、この免疫寛容誘導効率を上げるための研究を行いました。妊娠マウスに間葉系幹細胞動員因子HMGB1を投与することで、母体血中から胎児へより多くの間葉系幹細胞が移行することを期待しました。その結果、免疫寛容誘導効率を約4倍増加させることができました。
著者
松原 聰 宮脇 律郎 横山 一己 清水 正明 今井 裕之
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
日本鉱物学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.124, 2003 (Released:2004-07-26)

東京都奥多摩町にあった白丸鉱山跡は,マンガン鉱物を含む露頭の一部が残存している.この露頭からは,過去にもいろいろな種類の鉱物,特にバリウムやストロンチウムを主成分とするケイ酸塩,炭酸塩鉱物が産出した.また,ガノフィル石のカルシウム置換体,多摩石(Matsubara et al., 2000)は前回の放流の際(1998年)に発見された.露頭は,黒色のブラウン鉱が縞状ないしパッチ状に入った全体的には赤褐色の壁で,周囲は砂岩である.通常このようなマンガン鉱体は石英に富む母岩(チャート)に伴われるが,現在見られる部分には,石英は存在しない.ケイ質放散虫もすべて曹長石化している.今回は,ブラウン鉱がパッチ状に入った部分を重点的に調査した.このような部分にも白色~淡黄褐色脈が無数に貫いている.白色脈は主に,ハイアロフェン,曹長石,方解石からできている.その他には,重晶石もふつうに見られる.やや少ないが,重土長石の場合もあり,稀にはストロンチアン石やキュムリ石の微細結晶集合も含まれる.淡黄褐色脈は,マースチュー石,多摩石,ネオトス石などからできている.やや濃い赤色の細脈や小さなパッチ状の部分はストロンチウム紅簾石である.ブラウン鉱は,ひじょうに細かい結晶の集合体で,結晶粒間には,ハイアロフェン,曹長石,マースチュー石,多摩石,ネオトス石などの極めて微細な鉱物が埋めている.薄片で観察すると,ブラウン鉱密集部の小さな空間を,屈折率が高く,多色性の明瞭な濃赤褐色の粒が満たしていることがわかる.これは,似たような色のストロンチウム紅簾石や赤鉄鉱とは明らかに異なる.薄片から一部を切り出し,ガンドルフィーカメラによってX線粉末回折値をとったところ,既知のガマガラ石(gamagarite)によく類似したパターンであることがわかった.そこで,EDSおよびWDSで化学分析をおこない,その結果からガマガラ石のFeをMnで置換したものに相当することが明らかになった.ガマガラ石は,南アフリカのGamagara Ridgeから1943年に記載されたひじょうに稀な鉱物で,理想化学組成式はBa2 (Fe3+,Mn3+)(VO4)2 (OH),単斜晶系の鉱物である.1987年にイタリアのMolinello mineから二番目の産地が発見されている.いずれもマンガン鉱床から発見されているのだが,MnよりFeの方が卓越している.白丸鉱山産のものは,実験式が(Ba1.92Na0.02Sr0.01Ca0.01)Σ1.96(Mn3+0.81Fe3+0.17Al0.01)Σ0.99[(V1.99Si0.01)O7.92](OH) 1.00(6ヶ所の平均値,水分は計算,V + Si = 2)で,明らかにMnが卓越している.格子定数は,a = 9.10(4) Å, b = 6.13(2) Å, c = 7.89(5) Å, β = 112.2(5)℃である.なお,今のところ見つかっている結晶粒は最大でも15μmであるので,単結晶解析は行っていない.このような組成のものは未知である.
著者
川崎 直樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.167-184, 2019-03-30 (Released:2019-09-09)
参考文献数
105
被引用文献数
1 2

自己愛の問題を抱えた人への理解と支援は,教育を含む対人援助の領域において重要な課題である。その研究の主流は実践事例に基づく理論的研究であったが,近年は実証的な知見も増加しつつある。本稿では自己愛に関する実践的な研究と実証的な研究の双方を概観しながら,理解や支援への示唆を探ることを目的とする。実践事例に基づく精神力動論的な議論から自己愛的なパーソナリティ構造に関する見解が提起されている一方で,DSMに基づいた臨床群対象の研究や,一般的なパーソナリティ特性に関する研究は,それを検証したり,簡略化したり,異なる視点を提供したりしている。それらを概観しながら,自己愛的な自己システムにある矛盾やその統合の過程,二者関係の中で生じる対人的・感情的な過程についての議論が行われた。
著者
竹谷 靭負
出版者
富士学会
雑誌
富士学研究 (ISSN:24330310)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.30-38, 2013-12-25 (Released:2022-12-19)
参考文献数
1
著者
西本 章宏 勝又 壮太郎
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.53-65, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
31

本研究の目的は,決済手段に対する消費者の心理的所有感が,決済手段の選択,支払意思額(willingness to pay: WTP),受取意思額(willingness to accept: WTA)に及ぼす影響について明らかにすることである。本研究では,2種類の決済手段(現金とスマートフォン決済)を対象として,2つの実験を行った。実験1では,参加者に架空の購買シナリオを読んでもらい,相対的に心理的所有感が低い決済手段が支払い時に選択されやすく,選択された決済手段による支払いの方がWTPは高くなることを明らかにした。実験2では,参加者に4種類の架空の売買シナリオのいずれか2つを読んでもらい,相対的に心理的所有感が高い決済手段が受け取り時には選択されやすく,選択された決済手段による受取の方がWTAは低くなることを明らかにした。
著者
北村(難波) 亜希子 藤田 小矢香
出版者
学校法人山陽学園 山陽学園大学・山陽学園短期大学
雑誌
山陽論叢 (ISSN:13410350)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.43-53, 2021 (Released:2021-09-11)

妊孕性知識と性的自己意識に影響要因を明らかにするため、平成29年12月看護系大学と看護専門学校の看護系女子学生の688名に性的自己意識と妊孕性を調査回収した18~24歳の386名(56.1%)を分析し1)交際経験あり321名(83.1%%)は平均交際2.45名、交際1~12名、性交経験196名(50.8%)のうち186名(94.9%)は避妊を実施し、避妊方法はコンドーム184名(98.9%)、低用量ピル(OC)11名(5.91%)、平均初交年齢17.7歳であった。2)性的自己意識は、「初交年齢」β=0.319(P=0.006)、「交際経験」β=0.128(P=0.046)、「不妊症原因の知識」β=0.143(P= 0.048)と正の相関があり、「クラミジア初期症状の知識」β=-0.208(P=0.000)、「HIV検査場所の知識」β=-0.257(P=0.032)と負の相関があった。妊孕性がもたらす影響を広く捉える性教育の充実と拡大が求められる。思春期からの過渡期にあり親密な人間関係の構築や性行動が開始される年齢までには正しい情報を収集し選択できるよう、妊孕性に関する知識や情報の充実とともに性的自己意識を高める必要が示唆された。
著者
勝又 里織 松岡 恵 関根 憲治
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1-2, pp.317-326, 2007-04-30 (Released:2017-01-26)

人工妊娠中絶術(以下「中絶」とする)を受けた女性が,中絶後に精神的に安定するためには,看護者のケアが必要とされている.しかし,一般に,女性に対する理解不足から,精神的な看護ケアは十分に行われていない.そこで本研究は,中絶後1カ月以内の女性の,中絶に関連した認知と感情を明らかにすることを目的とした.対象は,都内産婦人科診療所で妊娠初期に中絶を受けた女性のうち,同意の得られた者とした.方法は,半構造化面接法と自己記入式質問紙調査とした.面接時期は,中絶後1週間を目安に1回60分程度行い,さらに同意の得られた者には,中絶後1カ月を目安に2回目の面接を実施した.分析法として,グラウンデッドセオリー法を参考に継続的比較分析を用いた.対象者は,未婚で子供のいない20-23歳の女性6名(そのうち4名は1回のみ)であった.分析の結果,中絶後1カ月以内の女性の,中絶に関連した認知と感情として,中絶の重さの自覚,ちゃんとしていなかった自分,これからの自分,二人の中絶,親への思いの5つのカテゴリーが抽出された.カテゴリーの経時的な流れは,手術後,【中絶の重さの自覚】をし,その後,内省を始めた.その中で,【ちゃんとしていなかった自分】を自覚し,同時に,相手だけでなく二人で一緒に考えようと,【二人の中絶】と思うようになった.そして,落ち込んでいるだけでは何も変わらないと,【これからの自分】のあり方を考えた.さらに,中絶後1カ月の時期には,【親への思い】を持っていた.中絶を受けた女性は,命を殺した重みから,それを隠したい経験と考えており,孤立しがちな状況にあると推察された.孤立は,自分の内面を統合させられないとされており,看護者は,女性が孤立することがないようにする必要があると考えられた.