著者
深見 純生 Sumio Fukami
雑誌
国際文化論集 = INTERCULTURAL STUDIES (ISSN:09170219)
巻号頁・発行日
no.39, pp.7-18, 2009-03-10

Although it is difficult to reject emphatically the theory that Hundian, the legendary founder of Funan, came originally from India, the probability seems higher that he was of Southeast Asian origin. The itinerary of Suwu, a member of the royal family of Funan, to and from India in the early third century CE demonstrates the unfamiliarity between the two countries. In which case, the founding of Funan, the earliest known case of state formation in Southeast Asia, assumed to have taken place around the first century CE, and also its development into the center of the Southeast Asian trade network in the third century, must have been a result not of Indian influence but of developments taking place in Southeast Asia itself. The "Indianization" theory, in the sense that state formation in Southeast Asia took place after its contact with Indian civilization, thereby loses credibility.
著者
黒田 英明 西廣 淳 鷲谷 いづみ
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.21-36, 2009 (Released:2009-10-14)
参考文献数
45
被引用文献数
7 2

湖底の土砂中に含まれる散布体バンクは,湖岸植生を再生させる際の材料として有用であることが示唆されている.本研究では,湖内における土砂の採取場所間の種組成および密度の相違に影響する要因を明らかにするため,霞ヶ浦内の12地点の湖底土砂の散布体バンクを実生発生法実験により分析した.散布体バンクからは,全国版レッドリスト掲載種15種,沈水植物15種を含む,合計92分類群の維管束植物および車軸藻類が確認された.土砂採取地点付近の湖岸あるいは堤防法面に現存する植生と,散布体バンクの種組成を比較したところ,その類似性は低かった.散布体バンク中の在来の水生・湿生植物の種数および個体数に対する,土砂採取場所付近における過去の植生帯面積および現在の底質土砂の平均粒径の効果を,一般化線形混合モデルを用いて分析した.その結果,土砂の平均粒径による有意な負の効果が認められた.また,沈水植物の種数および個体数に対して,1970年代前半における沈水植物帯の面積による有意な正の効果が認められた.植生帯再生事業に用いる材料としての湖底の土砂中の散布体バンクの有効性が支持されるとともに,事業に有効な散布体を含む土砂を探索する上で,過去に存在した植生帯の面積や現在の湖底土砂の粒径組成が有用な手がかりとなることが示唆された.
著者
丸山 浩平 森本 康彦 高橋 菜奈子 櫻井 眞治 宮内 卓也 小嶋 茂稔
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.2, pp.56-63, 2023-07-21 (Released:2023-07-21)

東京学芸大学では学生本位の学びの振り返りを促し,修得主義に基づく教員養成の実現を目指して「eポートフォリオ構築によるデジタル技術を活用した教育実習DX」を進め,本学附属学校園で行われてきた教育実習の教育実習日誌を電子的に扱い,実習の記録や指導・支援の記録を集約するシステム「教育実習日誌eポートフォリオ」(以下,実習ポートフォリオシステム)を開発した.そして実習ポートフォリオシステムを用いた附属学校園における教育実習の試行を実施した.本論文では,本学における教育実習日誌eポートフォリオの構築とその取組みの内容,試行に関する質問紙調査の結果について述べた.
著者
田熊 保彦 加藤 茂 小島 紀徳
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.85-92, 2005-03-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
34
被引用文献数
1

1970年頃まで使用されていた強力な毒性を有する有機リン系農薬は使用を禁止されたが,一部の農家などで未使用のまま保持され続けている。本研究ではパラチオン等の有機リン系農薬5種類をアルカリにより分解した。2種については室温でも十分速い分解速度が得られた。他の3種類については反応速度論的検討を行った結果,有機リン系農薬とアルカリとの反応は,それぞれに対して一次の二次反応であることがわかった。二次反応速度定数を決定し,さらにその温度依存性を定式化した。これにより,おのおのの農薬を十分分解するための条件を定量的に与えることができた。また,分子構造の違いが反応性に大きな影響を与えていることが確認できた。さらに,分解により生成した物質についてGC-MSを用いて定性分析を行ったところ,いずれも毒性が認められない分解生成物であった。以上のことから,アルカリによる分解は有機リン系農薬の無害化に有効な手段の一つであるといえる。
著者
中兼 和津次
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.2_85-2_98, 2018 (Released:2018-09-28)
参考文献数
25

現代中国政治・社会の統治構造の柱が,1)権力主義(権力の維持,拡大を最高目的とする思想と政策),2)エリート主義(意思決定は少数の選ばれた人間・集団によってなされるべきだとする思想と政策),そして3)実用主義(目的のためには手段を択ばないという思想と政策)という3つの大きな原理だと私は考えるが,それは空想から現実へと社会主義像が変転する中で生まれ,確立してきた原理であった.そのことを立証するために,1)ロシア革命とマルクス・エンゲルス,レーニンの空想的社会主義構想,2)スターリンによって実施されたソ連型社会主義経済の実態,3)中国に輸入されたソ連型モデルと毛沢東による修正,4)毛沢東の空想的社会主義理念とそれがもたらした結末,5)鄧小平による現実的経済体制の選択といった,社会主義像が空想から現実へと転換していく一連の過程とその結果について考察する.

3 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1896年03月31日, 1896-03-31
著者
金 俊佑
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.364-361, 2016-12-20 (Released:2017-10-17)
参考文献数
8

Generally, the compound abhūtaparikalpa is understood to be a karmadhāraya. This paper argues that abhūtaparikalpa is not a karmadhāraya but instead a tatpuruṣa. Vasubandhu paraphrases abhūtaparikalpa as grāhyagrāhakavikalpa in the Madhyāntavibhāgabhāṣya. This means that abhūta corresponds to grāhyagrāhaka, and parikalpa corresponds to vikalpa. This grāhyagrāhakavikalpa is annotated as a tatpuruṣa by Kuiji 窺基. The same interpretation of this compound appeared in the translation of Paramārtha. Sthiramati also annotates abhūtaparikalpa as a tatpuruṣa. He regards abhūta as an adjective which modifies dvaya, not parikalpa. Therefore, the compound abhūtaparikalpa should be understood to be a tatpuruṣa.
著者
園田 薫
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.91-108, 2019 (Released:2020-11-13)
参考文献数
32

日本企業で働く外国人が数年で離職してしまうのは,今なお残る日本的な雇用慣行に原因があると指摘されてきた.そうした既存研究では,外国人のキャリア選択を十分に検討していないだけでなく,日本企業で働く〈企業〉の選択と日本という場所で働く〈国家〉の選択が混同して扱われていた.そこで本稿では〈企業選択〉と〈国家選択〉という分析概念を用い,外国人が日本企業での就労を決定した主観的なキャリア選択の過程に着目することで,外国人の離職が生じる構造的要因について検討し,外国人の雇用をめぐる日本企業の現状と展望を産業社会学的に考察する.日本の大企業で働く新卒外国人へのインタビュー調査から,特に留学生において国家選択が企業選択に先立ち,日本企業で働く直接的な原因になっていることが明らかになった.そのなかにはさまざまな制約で日本以外の国で働く選択ができず,また日本企業以外で働く選択肢も失ったと感じ,「次善の策」として日本企業へ就職したと考えるものが多い.以上の結果は,日本企業と外国人の軋轢を生むのは日本企業の雇用慣行への不満や魅力の少なさではなく,必ずしも日本企業に関心のない外国人がキャリア選択の過程で日本企業への就職を選択しているためであるということを示唆する.外国人と日本企業の相互理解を深めつつ,意図せずとも日本の労働市場に留まる傾向がある留学生の企業とのマッチングを制度的に支えることが重要だと考えられる.
著者
三隅 一人
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.134-144, 2015 (Released:2016-06-30)
参考文献数
42
著者
日下田 岳史
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.603-615, 2022 (Released:2023-04-25)
参考文献数
35

高等教育の専攻の性別分離の遠因を「理系意識」の男女差に求め、小学5~6年生の女子が理系意識を持ちづらい要因を検証した。その結果、①算数の勉強への不安に由来するジェンダー・ステレオタイプの受容、②父親との接触頻度、③業績主義的価値観が、女子の理系意識の持ちづらさに関連しているということが分かった。教育機会の男女均等を目指すには、小学校教師の教科指導力という基本的な能力が重要であること等の示唆を得た。
著者
古村 健太郎 金政 祐司 浅野 良輔
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.si5-5, (Released:2023-04-19)
参考文献数
33

本研究の目的は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって,夫婦の相互依存性がどのように変化したかを検討することであった。分析対象は,2017年2月から2020年10月までの7時点縦断調査に回答した夫婦289組であった。スプライン成長モデルによる分析の結果,関係満足度や接近コミットメントは,夫婦ともにCOVID-19の流行までは減少していたが,COVID-19の流行後に妻では増加傾向を示し,夫では変化しなくなった。一方,回避コミットメントは,夫婦ともに,COVID-19の流行までは増加しており,COVID-19の流行後にさらに増加していた。また,COVID-19後の傾きと世帯収入や在宅時間の増加との関連を検討したものの,これらの間に関連は示されなかった。以上の結果から,COVID-19の流行は,収入やCOVID-19の流行による生活の変化に関わらず,夫婦の相互依存を強める機会になったことが示唆された。
著者
浅原 正幸 小野 創 宮本 エジソン 正
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.156, pp.67-96, 2019 (Released:2020-04-14)
参考文献数
65

Kennedy et al.(2003)は,英語・フランス語の新聞社説を呈示サンプルとした母語話者の読み時間データをDundee Eye-Tracking Corpusとして構築し,公開している。一方,日本語で同様なデータは整備されていない。日本語においてはわかち書きの問題があり,心理言語実験においてどのように文を呈示するかがあまり共有されておらず,呈示方法間の実証的な比較が求められている。我々は『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(Maekawa et al. 2014)の一部に対して視線走査法と自己ペース読文法を用いた読み時間付与を行った。24人の日本語母語話者を実験協力者とし,2手法に対して,文節単位の半角空白ありと半角空白なしの2種類のデータを収集した。その結果,半角空白ありの方が読み時間が短くなる現象を確認した。また,係り受けアノテーションとの重ね合わせの結果,係り受けの数が多い文節ほど読み時間が短くなる現象を確認した。