著者
二五田 美沙 早田 恵乃 藤本 将志 大沼 俊博 渡邊 裕文 田中 祥子 鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.95-101, 2013 (Released:2013-12-28)
参考文献数
2

A patient with left hemiplegia following cerebral infarction could not maintain a sitting position. Treatment in this position was difficult for the patient because of a tendency to fall toward the paralyzed side (left side) when sitting, and associated anxiety. Therefore, with the aim of maintaining the sitting position, physiotherapy was started in this position for a week to treat hypotonia of the internal and external oblique muscles of the abdomen, longissimus muscle, and multifidus muscle, which was the primary condition. However, it was difficult to maintain a sitting position. Thus, we considered that it was necessary to treat hypotonia by placing the patient in a supine position to improve the ability to maintain the sitting position. After 3 days of practicing to turn to the non-paralyzed side (right side), and sitting-up exercises to increase the activity of the internal and external oblique muscles of the abdomen, longissimus muscle, and multifidus muscle, the patient was able to sit independently without support. To treat the condition and help maintain a sitting position, as well as to reduce the anxiety of falling, it is necessary to initially treat the patient in a supine position.
著者
吉村 泰幸
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.386-407, 2015 (Released:2015-10-29)
参考文献数
212
被引用文献数
1 1

近年,環境への負荷軽減に配慮した持続的な農業の推進が求められている中,高い乾物生産能力を持ち,水や窒素を効率的に利用するC4植物は,食用だけでなくエネルギー作物としても利用が期待される植物資源である.しかしながら,その特性を活用した研究は少なく,基礎的な知見も数種の作物を除いて十分でない.本研究では,雑草を含む多様なC4植物を有効に活用するための第一歩として,国内に分布するC4植物の一覧を作成した.国内には,真正双子葉類8科19属62種,単子葉類3科72属357種,合計11科91属419種のC4植物が分布することが確認された.1990年に報告された種数と比較すると,真正双子葉類で19種,単子葉類で157種増加した.真正双子葉類のキツネノマゴ科,ムラサキ科,ナデシコ科,ザクロソウ科,ゴマノハグサ科におけるC4植物の国内での分布は当時と同様に確認されなかったが,ハマミズナ科,キク科,フウチョウソウ科におけるC4植物の分布が新たに確認された.単子葉類では,トチカガミ科水生植物のクロモが水中の低CO2濃度条件下でC4型光合成を行うことが報告されており,C4型光合成を行う単子葉類は3科となった.C3-C4中間植物については,これまでC4植物と考えられていたザクロソウモドキがC3-C4中間植物であることが判明し,新たに5種の帰化種の分布が確認され,計6種となった.また新たに確認されたC4植物について,真正双子葉類の84%,単子葉類の46.8%が栽培種を含む帰化種であり,作物としての導入や輸入穀物原料等への混入を介してC4植物を含む雑草種子が国内に侵入している現状を反映していると考えられた.
著者
二村 昌樹 山本 貴和子 齋藤 麻耶子 Jonathan Batchelor 中原 真希子 中原 剛士 古江 増隆 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.66-72, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
12

【目的】アトピー性皮膚炎患者が抱えるステロイド外用薬を使用することへの不安を評価する質問票として,12の設問で構成されるTOPICOP(TOPIcal COrticosteroid Phobia)がフランスで開発されている.本研究ではTOPICOP日本語版を作成し,その実行可能性を調査した.【方法】原文から翻訳,逆翻訳の工程を経て日本語版を作成した.次にアトピー性皮膚炎患者(小児患者の場合は養育者)を対象にして,TOPICOP日本語版とともにその回答時間と内容についての無記名自記式アンケート調査を実施した.【結果】回答者は287人(平均年齢38±7歳,女性83%)で,TOPICOPスコアは平均41±18点であった.半数以上の回答者が,ステロイド外用薬が血液に入る,皮膚にダメージがある,健康に悪いと考え,特定部位に使用する不安,塗りすぎの不安,漠然とした不安を感じ,安心感が必要としていた.TOPICOPは全体の68%が5分未満で回答できており,87%が記入に困難は感じず,79%が内容を理解しやすいと回答していた.【結語】TOPICOP日本語版は短時間に回答できるステロイド不安評価指標で,日常診療や臨床研究に今後広く活用できると考えられた.
著者
鳥居 誠志 石岡 俊之 小池 祐士 濱口 豊太 中村 裕美
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.654-662, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
23

我々は,脳卒中患者の排泄動作のうち,ズボンを上げる工程の練習方法を考案したいと考えた.脳卒中片麻痺者を対象に,その工程の自立群15名と,監視群7名のズボンを上げる工程中の足圧中心動揺を測定した.足圧中心動揺の速度や範囲を,自立群と監視群で比較したところ,監視群の左右方向への動揺範囲が,自立群の動揺範囲より有意に大きかった.監視群では,左右方向に大きい動揺が生じる結果,転倒の可能性があると推測された.それにより,生活場面の排泄動作に監視を要していると考えられた.この結果をもとに,本研究が提案する練習方法には,左右方向への重心動揺を制御する支援があげられた.
著者
坂本 一寛
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.174-179, 2013-12-05 (Released:2014-02-07)
参考文献数
24

脳·神経系は極めて複雑であり,取り組むべき問題は無尽蔵にある.しかしながら,それ故に,何を研究すべきか,焦点を絞りにくい面もある.本稿では,脳·神経系の本質に迫るために検討するに値すると思われる諸問題を,
著者
横塚 美恵子 阿部 和也 今野 加奈子 石井 伸尚 竹本 晋也
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.289-292, 2005 (Released:2006-02-14)
参考文献数
11
被引用文献数
5 2

本研究の目的は,排泄関連動作における着衣を上げる動作の自立群と非自立群の立位バランスを比較し,さらに影響を与えている運動機能について検討することである。対象は発症から6ヶ月以上経過し,立位保持が可能な脳血管障害片麻痺者20名(平均年齢76.7±10.9歳)を,自立群13名と非自立群7名に分類した。立位バランス能力の評価はBerg Balance Scale(以下BBS)を用い,運動機能として下肢Br.Stage,非麻痺側及び麻痺側膝伸展筋力を測定した。その結果,自立群と非自立群の立位バランスの比較では,BBS総合点とBBS動的バランス得点において有意な差を認めた(p<0.05)。BBS各項目の中で「リーチ」「物を拾う」「振り向き」の3項目について,自立群と非自立群で有意な差を認めた(p<0.05)。さらに,立位バランス能力と運動機能の関係において,麻痺側膝伸展筋力(p<0.01)とBr.stage(p<0.01)で比較的強い正の相関を認めた。着衣を上げる動作には,動的バランスが関与し,麻痺側膝伸展力及びBr.Stageが影響していることが示唆された。
著者
兼子 諭
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.453-467, 2019 (Released:2020-03-31)
参考文献数
38

社会や社会集団の成員が,自然災害や戦争などの歴史的出来事を,直接経験していないにもかかわらず自らの悲劇として感じ語ることがある.だがその一方で,出来事など起きなかったかのように沈黙を貫く場合もある.これらの現象を記述し説明するのに社会学者も用いるのが「トラウマ」概念である.しかし従来の議論は,トラウマを隠喩として用いるだけで,分析のための独自の視点や方法を展開し損なっている.そこで本稿では,J. Alexander らによる「文化的トラウマ(cultural trauma)」論を検討して,国民国家のような「大規模」社会での集合的な「沈黙」や「覚醒」のダイナミズムを探究する際にトラウマ概念を応用する社会学的意義を示す.文化的トラウマ論が明らかにするのは,悲劇的な出来事に対する集合的な沈黙や覚醒は,出来事の客観的な性格から説明できるとは限らないということである.文化的トラウマ論に従えば,むしろそれは,その出来事がどのように解釈され物語られるかに依存する.悲劇的出来事に対する集合的な反応は,それが社会に深刻な苦悩をもたらす傷として語られるのか,それとも,最終的には進歩の機会として語られるのかに左右されるのである.文化的トラウマ論を土台にして本稿は,悲劇的出来事に対する集合的な覚醒や沈黙は文化的に枠づけられる「社会」現象として説明可能であり,個人の心理や精神には還元することはできないことを主張する.
著者
UESUGI Masaya
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan series B (ISSN:18834396)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.18-30, 2021-07-31 (Released:2021-08-03)
参考文献数
50
被引用文献数
9

Socio-economic residential segregation is an important issue of social concern and academic interest. Using population census data, we analyze the changes in residential segregation by finer occupational groups at the neighborhood level and their local spatial distribution in Tokyo from 1980 to 2005. This period was characterized by increasing economic disparities in Japan. We find that: 1) Multiple segregation indices provide evidence of some level of residential segregation by occupational groups at the neighborhood level in Tokyo. The level of residential segregation is higher for both ends of the occupational hierarchy than it is for other occupational groups. 2) While the overall level of residential segregation has continually declined, this does not necessarily translate into desegregation between opposite social groups. Furthermore, there are different patterns of changes in residential segregation, even between white- and gray-collar workers. Therefore, using finer or larger occupational groups leads to different insights on the changes in socio-spatial segregation. For the highest occupational group (managerial workers), the level of residential segregation from the lowest group was growing. However, segregation also increased from other occupational groups, except for a short period immediately following the collapse of the bubble economy in the early 1990s. Managerial workers were even more spatially concentrated in central areas of Tokyo, which were already highly concentrated.