著者
鳥居 フミ子
出版者
日本歌謡学会
雑誌
日本歌謡研究 (ISSN:03873218)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.86-98, 1990-12-30 (Released:2021-03-31)
著者
田中 善大
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.71-81, 2017-01-31 (Released:2017-10-11)
参考文献数
13

指導的立場の保育士17名を対象にABC観察記録を含む応用行動分析の研修プログラムを実施し、指導的立場の保育士に対する直接の効果と指導を受ける立場の保育士(担当保育士)および対象園児に対する波及的な効果を調べた。参加者に対する効果を検討するために、参加者を対象とした質問紙調査を実施した。担当保育士および対象園児に対する波及効果を検討するために、担当保育士に対する質問紙調査と、対象園児に対する担当保育士の標的行動の記録を用いた分析を行った。その結果、参加者については、研修後に適切行動への言語称賛に関する助言が増加した。担当保育士については、その多くが、標的行動の記録およびABC観察記録を実施し、記録の有効性を高く評価した。対象園児の標的行動については、不適切行動よりも適切行動でより大きな改善が見られた。
著者
長谷部 育恵 楠見 孝
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.69-79, 2023-02-28 (Released:2023-03-31)
参考文献数
32

自分の脆弱性は低く見積もられる傾向がある.本研究では,脅威遭遇事例の被害者の違いによる受け手のリスク認知への影響を検討した.社会的比較理論の先行研究から,「親友の脅威遭遇事例のほうが見知らぬ一般人の事例よりもリスク認知を高める」(仮説1),「行動に落ち度のない他者の脅威遭遇事例のほうが,落ち度のある他者の事例よりもリスク認知を高める」(仮説2)と仮説を立てた.740名の参加者が食中毒に対するリスク認知を評定した後,脅威遭遇事例を読み,再度リスク認知を評定した.脅威遭遇事例に登場する被害者は,関係の有無(親友・一般人)と落ち度の有無の観点で操作した.その結果,行動に落ち度のない他者の脅威遭遇事例のほうが,落ち度のある他者の事例よりもリスク認知を高めた.さらに,相関分析の結果からは,類似した他者に同化して自己のリスク評定がなされると考えられた.被害者との関係性の有無による差はみられなかった.最後に,社会的比較理論の観点を中心に結果を考察した.
著者
八木 匡 瓜生原 葉子
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.26-36, 2019-02-06 (Released:2019-01-31)
参考文献数
67

社会にとって望ましい行動を人々が常に行うわけではない.しかしながら,個人の選択と行動を社会的観点から変化させることは,個人の主体的意思決定を尊重するという立場からは,多くの人々が妥当性を認める問題に対して適用されるべきであり,その方法についても慎重な配慮がなされる必要がある.本章では,医療および健康行動における行動変容について議論を整理し,行動変容の基礎理論,社会的行動変容の神経科学的根拠を紹介する.最後に、臓器提供意思表示の事例を用いて,行動変容を可能にする戦略デザインについて議論を行う.
著者
小泉 令三
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.203-217, 2016-03-30 (Released:2016-08-12)
参考文献数
56
被引用文献数
7

わが国でも,すべての子どもを対象とした予防教育として,社会性と情動の学習(SEL)に関する研究が進展しつつある。本研究では,そのための学習プログラム(SELプログラム)の学校での実施と持続に焦点を絞り,検討を行った。まず,(1) 社会性と情動の学習および関連する概念を説明した後,(2) SELの実施と持続に関する欧米の研究にみられる諸概念を概説した。そこでは,大きくエビデンス(科学的根拠)の立証と学校等での実施と持続に分けて説明した。その後,これらの動向をふまえて,(3) わが国における今後の取り組みとして,まず学習プログラムのエビデンスの立証について,わが国の教育事情をふまえた妥当性の検討とプロセス評価の必要性を述べた。最後に (4) アンカーポイント(構造化の基点)概念を適用して,わが国での実施と持続への取り組みのための手続きや着眼点の整理を行った。具体的には,教師―子どもシステム,単一の学校システム,中学校ブロックシステム,そして教育委員会レベルのシステムごとに,SELプログラムの実施と持続が促進されるようなアンカーポイントを示し,積極的に利用する方策(アンカーポイント植え込み法)を提案した。
著者
中村 大輝 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.37-40, 2022-03-27 (Released:2022-03-24)
参考文献数
9

幼保一元化に関する議論の中では,幼稚園と保育所のどちらを中心とした統合を行うべきかが問題となっている.先行研究では,幼稚園出身の子供の方が保育所出身者よりも将来的な学力が高いという結果が示されているものの,幼児教育の形態が将来の学力に及ぼす因果効果については明らかになっていない.このような因果効果を検討する上で最も望ましい研究デザインはランダム化比較試験だが,幼稚園と保育所のどちらに通うかをランダムに割り付ける研究は実施困難である.このような状況における次善策として,本研究では傾向スコアを用いた因果推論によって,幼児教育の形態が将来的な理数学力に及ぼす因果効果を明らかにすることを目指した.東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が実施している縦断調査である「子どもの生活と学びに関する親子調査」の公開データを用いて,幼稚園と保育所のどちらに通ったかが小学校4年時点の理数学力に及ぼす因果効果を検討した.傾向スコアを用いた分析の結果,幼稚園での教育は保育所における保育と比べて将来的な理数学力に対して相対的に高い効果を発揮するものの,その差は決して大きくはないことが示された.
著者
松井 恵麻
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.3-19, 2023-02-28 (Released:2023-02-22)
参考文献数
11

近年,離島や山村などといった地域において,地域活性化を目的としたアートイベントが多数開催されてきた。こうしたアートイベントは地域の人間関係を活発化させるなど一時的な地域活性効果をもつ一方で,その継続性が課題である。それに対して先行研究では地域の既存の事業者の関与によって地域社会に連鎖的な展開を生みだすという方法を提示してきた。これをふまえて本研究では地域に根差した民間企業が運営するアートイベントを取り上げて,地域社会との関係構築のあり様を明らかにした。分析対象とする事例は香川県小豆島においてオリーブ産業に関連する企業が展開するアートプロジェクトMである。2018年から2021年にかけて断続的に行った聞き取り調査の結果,アートプロジェクトMは地域の観光産業振興に新しい展開をもたらした画期的事業である反面,地域住民らとの間に一部葛藤を抱え込んでいることが分かった。しかしアートプロジェクトMのもつ創造性と地域のもつ固有な文化と歴史は,互いに好影響を与えあう可能性があると考えられた。こうした両者にとっての発展性をもたらすためには,対話の機会を十分に確保しフラットで相互的な関係構築が重要である。