著者
加藤 英一
出版者
学校法人 北里研究所 北里大学一般教育部
雑誌
北里大学一般教育紀要 (ISSN:13450166)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.111-131, 2010-03-31 (Released:2017-09-29)

2009年、 ⌈ 臓器移植に関する法律⌋の改正案が国会において採決された。日本共産党を除いた 各政党は、改正案の特性から投票に際して党議拘束を外した。投票の結果、原案通りに改正案は 成立した。これによって日本では、法的に脳死が人の死として認められることになった。衆・参両議院での投票行動は、党議拘束を外したにも拘らず、政党による影響を否定できない結果となった。それは1997年の ⌈ 臓器の移植に関する法律⌋が可決された際と同じである。これは R.K.マートンの準拠枠組みの理論によって、ある程度は説明が可能である。しかし今回の法改正における投票行動では、それ以外の要因である、衆・参議院のねじれ状態や小泉チルドレンの影響をも考慮しなければならない。
著者
風早 康平 高橋 正明 安原 正也 西尾 嘉朗 稲村 明彦 森川 徳敏 佐藤 努 高橋 浩 北岡 豪一 大沢 信二 尾山 洋一 大和田 道子 塚本 斉 堀口 桂香 戸崎 裕貴 切田 司
出版者
日本水文科学会
雑誌
日本水文科学会誌 (ISSN:13429612)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.3-16, 2014-02-28 (Released:2014-05-28)
参考文献数
44
被引用文献数
13 20

近年のHi-netによる地震観測網により,我が国の沈み込み帯における地殻・マントル中の熱水流体の不均質分布による三次元地震波速度構造の異常や深部流体に関連する深部低周波地震の存在などが明らかになってきた。地球物理学的な観測結果に基づく岩石学的水循環モデルは,固体地球内部の水収支を定量化し,滞留時間の長い深層地下水中には検出可能な濃度でスラブ脱水起源の深部流体が流入していることを示す。また,内陸地震発生における深部流体の役割も,近年重要視されている。モデルは主に地球物理学的観測やシミュレーション等の結果に基づいたものであるため,地球化学的・地質学的な物質科学的証拠の蓄積はモデルの高度化にとって重要である。そこで,我々は西南日本の中国–四国–近畿地方において深層地下水の同位体化学的特徴の検討を行い,地下水系に混入する深部流体の広域分布について明らかにした。その結果,マグマ水と似た同位体組成をもつ深部流体,すなわち,スラブ起源深部流体のLi/Cl比(重量比)が0.001より高いことを示した。Li/Cl比は,天水起源の淡水で希釈されても大きく変化しないことが期待されるため,深部流体の指標に最適である。Li/Cl比の広域分布は,スラブ起源深部流体が断層・構造線および第四紀火山近傍で上昇していることを示した。また,深部低周波 (DLF) 地震が起きている地域の近傍に深部流体が上昇している場合が多く見られ,DLF地震と深部流体の関連性を示唆する。
著者
有薗 真代
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.55-71,187, 2004

This paper reconsiders gender/sexuality theory by focusing on a transgendered individuals way of life. It is also an attempt to extend the sociology of life history by focusing on changes in her narrative. My task in this dissertation is to externalize their straggles with their own issues. For the purpose of analyzing changes in narrative, I introduced the approach of Narrative therapy. Narrative therapy assumes that when people tell their own stories certain events are untold and recognized, or intentionally left out. A persons subjective narrative is told as if it were the definitive story of what has happened. This is the method of Narrative therapy. Subverting the dominant narrative of personal experience will create alternative stories that have been left out in repeated retellings, locate the multi-dimentional nature of the individuals own stories, and respond to their complexity. Furthermore, attention to power in narrative therapy will show what kind of power is at work when such stories are formed. By analyzing the individuals narrative in this fashion, I describe the creative process of techniques for overcoming the difficulty and pain that exist in a minoritys everyday life.

25 0 0 0 OA 輿地誌略

著者
内田正雄 編訳
出版者
文部省
巻号頁・発行日
vol.巻8 亜非理加洲, 1880
著者
杉江 あい
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.102-123, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
75
被引用文献数
2

本稿では,バングラデシュを主なフィールドとするムスリマとしての立場から,イスラームとムスリムに関する学習のために次の3点を提案する.第1に,イスラームとムスリムに接する上で必要なリテラシーを高めること.ここでいうリテラシーとは,クルアーンなどの章句の理解にはアラビア語やイスラーム学の深い知識が必要であり,西洋のバイアスがかかった生半可な知識では誤解しやすく,一部の研究者やムスリムの間でも誤った解釈や恣意的な章句の引用などがなされていることに注意することである.第2に,イスラームとムスリムを切り離してとらえること.イスラームをムスリムの言動のみから解釈し,またムスリムの生活文化をイスラームに還元するアプローチは誤りである.第3に,イスラームにおいて重視される信仰や人格,現世での利点について説明すること.義務や禁忌を表面的に教えるだけでは,イスラームを特異視するステレオタイプから脱却できない.
著者
河島 基弘
出版者
群馬大学社会情報学部
雑誌
群馬大学社会情報学部研究論集 (ISSN:13468812)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.19-35, 2010

This article explores the dynamics of contemporary environmental organizations, especially Greenpeace, focusing on their anti-whaling campaign―how they have capitalized on the whaling issue to their own interests, and what tactics they have employed to attract public attention. My main argument is that the anti-whaling campaign takes on an aspect of protest business, that is, the exploitation of an environmental cause as a means of raising donations. I demonstrate this by using interviews I conducted with those who have been involved in the issue and by analysing the documents of both pro and anti-whaling sides.
著者
矢田部 浩平
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.396-403, 2021-06-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
7
著者
竹林 由武
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.21-024, (Released:2022-05-31)
参考文献数
24

シングルケース実験デザイン(single-case experimental design: SCED)は、個人や集団に実施した介入の有効性評価に用いられる研究デザインの一つである。本稿では、SCEDの代表的な有効性評価法である視覚分析の概要と信頼性に関する問題を述べたうえで、視覚分析を補助する代表的な方法を解説する。具体的には、視覚補助を用いて構造化された視覚分析手法と統計指標を用いた方法について述べる。個人内効果の統計指標は、重複率に基づくTau系指標、フェーズ間の平均値差や対数反応比、回帰モデルに基づく方法を紹介する。個人間効果の統計指標として、階層線形モデルに基づく個人間標準平均値差や個人内効果指標のメタ分析的な統合手法を紹介する。最後に多様な統計指標から適切なものを選択するための指針を議論し、視覚分析と統計指標を簡便に算出できるソフトウェアやウェブアプリを紹介する。
著者
真田 良枝
出版者
岩手大学語文学会
雑誌
岩大語文 (ISSN:09191127)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.21-29, 2009-01-01

私がテキストとして取り上げたのは、宮崎監督が唯一劇画として措いた作品「風の谷のナウシカ」である。宮崎監督は、映画を作成する以前から、劇画として「風の谷のナウシカ」を措いていたのである。映画作品は単行本全七巻の漫画全体から見ると序盤に当たる2巻目の途中まで連載された時点での作品であり、映画公開後に連載を再開した劇画とは内容が全く異なる。ナウシカは映画の時よりもさらに深く、腐海と人間に関わり、腐海の謎を解く旅を続けていく。私はナウシカを、人間と腐海、生と死、光と闇などの中間に位置する存在、「中間者」であると考えた。作品当初から描かれる人間と腐海の「中間」ということだけでなく、物語が進むとともに経験する生命の生と死、善と悪など様々な要素に対しても彼女が中間であろうとしたと考える。しかし、彼女が物語の終焉とともに何処へ行ったのかについては、宮崎監督自身も明確な答えを出してはいない。本論文では、彼女がどのような中間に位置しているのかをテキストを基に考察し、ラストで描かれることのなかったナウシカの行方について論じた。なお、使用するテキストは、宮崎駿『劇画 風の谷のナウシカ』(徳間書店1983-1995)とし、第一章以降このテキストを引用する際は、著者名・著書名を省略することとする。
著者
足立 厚子 大塚 晴彦 山野 希 濱岡 大 井上 友介 小林 征洋
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.317-322, 2019-04-30 (Released:2019-06-15)
参考文献数
14

多種の魚摂取や, 魚コラーゲンペプチド入り美容ドリンク剤飲用によって, 口腔アレルギー症候群や, 運動が加わると食物依存性運動誘発アナフィラキシーを起こした22歳女性の症例を経験した。測定しうるすべての魚に対する特異的IgE (CAP FEIA法) が陽性であるとともに, プリックテストにて検査したすべての魚, 魚加工品, 美容ドリンク剤および美容ドリンク剤主成分の魚コラーゲンペプチドに強陽性を示した。ELISA法にて自験例の原因アレルゲンは, 主要アレルゲンであるパルブアルブミンではなくコラーゲンであると診断した。コラーゲンペプチドは家畜由来と魚由来とがあり, 産業原料として粉末や水溶液で流通している。コラーゲンペプチドは食品やドリンク剤のみならず, 化粧品にも多く含まれる。魚類アレルギー患者では注意が必要である。

25 0 0 0 OA 青本外題張込集

巻号頁・発行日
vol.[1], 1000
著者
辻田 哲平 近野 敦 安孫子 聡子
出版者
防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

災害現場でのタスクの実行方法については積極的に議論がなされているが,ロボットをいかにして災害現場に搬送するかといった重要な問題についてはほとんど議論がなされていない.そこで,ロボットを災害現場へ運ぶ方法の1つとして,飛行機からパラシュートを備えたヒューマノイドロボットを投下することを提案する. なかでも本研究では,ロボットの損傷防止のために着陸時の衝撃を全身運動で吸収する方法の確立を目指す.研究の初期段階として,小型の片脚ロボットを用いた落下試験を実施した.これらの実験から得られた観点から小型ロボットのパラシュート着地動作を試行錯誤的に設計し,衝撃による加速度を40%に低減することに成功した.