著者
和達 三樹 佐藤 哲也 広田 良吾 西田 靖 西原 功修 市川 芳彦
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

1.ビ-ム・プラズマ系での不安定波の成長過程におけるソリトンの役割が明らかにされた。ソリトン生成による不安定モ-ドの安定化が示され、実験によって確かめられた。2.大振幅磁気音波による共鳴加速という新しい粒子加速機構が提唱され、太陽フレア-における短時間内での粒子加速の説明に成功した。3.ダブルプラズマ発生装置を用いて、ポンプ波の周期倍化現象や電子プラズマ波の高調波励起等のカオス的振舞いを観測した。4.散逸項を含む「非線形シュレディンガ-方程式」を例にとり、ソリトン振動論を用いて、多ソリトン状態の性質を明らかにした。5.磁力線に沿って伝播する非線形アルフベン波を「微分型非線形シュレディンガ-方程式」を用いて研究し、その初期値と生ずるソリトンの個数との関係を明らかにした。6.渦糸近似により、ドリフト波の動的、統計的性質を調べた。特に、渦糸の拡散係数を解析的に求めることに成功した。7.不均一密度の磁化プラズマ中におけるドリフト波の伝播特性や自然励起波の性質が調べられた。磁場に対して右ねじ方向のEXBドリフトのシアを与え、小電極励起子に正のパルスを与えたところ、ソリトン的性質を持つ正電位のドリフト波パルスが伝播することが観測された。8.イオン波ソリトンの反射及び透過現象を観測し、その解析を行なった。また、大振幅イオン波の励起手法の開発が行なわれた。9.結び目理論において、より強力な新しい絡み目多項式がソリトン理論から構成できることを示した。このような多種多様な分野において、新しい非線形現象が見出された。研究計画には理論家、実験家がほぼ同数含まれ、互いの研究発展を促進できたことは非常にうれしく思っている。
著者
岩本 諭
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、日本における景品・懸賞付販売に対する規制のあり方について、消費者視点から考察を行うことを目的としたものである。研究成果のとりまとめは、平成16年度に実施した全国2794の消費者団体に対して行ったアンケート調査(897団体から回答)のデータ分析と、比較法的視点に基づく諸外国-特に、EC、ドイツ、アメリカーの法制度の調査を中心に行われた。前者は、既にアンケート項目毎の集計データを基に、日常の消費生活における景品・懸賞付販売およびオープン懸賞との関わり、購入または応募の頻度、景品・懸賞企画による対消費者の誘引効果、現行法による規制に対する消費者意識についての実態把握と分析が主体となっている。調査対象は、一般消費者に比べて、問題意識が高く専門的知見を有する消費者団体であるが、分析結果から、かかる対象者においても、取引の場面で景品・懸賞に誘引されている傾向が見られる点、また同時に圧倒的多数が景品・懸賞付販売に対する規制が今後も必要であると考えている点が明らかになったが、このような取引実態と規制に対する意識を踏まえた望ましい法規制のあり方を今後検討する必要がある。後者は、諸外国における景品・懸賞付販売に対する法規制の状況に目を向け、日本における法規制のあり方を検討する上での何らかの手がかりを得ようとするものであった。ここで明らかにされたことは、諸外国においては、「景品付販売」と「懸賞付販売」を区別して規制を行っている点、ほとんどの国において「懸賞付販売」は原則禁止されており、「景品付販売」についてはそれぞれの国ごとで規制が異なっている点であり、両者を区別せず、一定の価額以下では原則自由の日本の規制制度を再検討する重要な手がかりとなった。今後は、ほとんどの国で原則禁止されている「射倖心を利用する事業活動」に対する日本における規制のあり方について、競争法のみならず、多面的な観点から考察する予定である。
著者
亀山 祐美 田中 友規 小島 太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

2025年には日本に認知症患者が700万に増えると予測されており、その前段階の軽度認知障害MCIも400万人程度いると言われている。正常からMCIになる、また、MCIから認知症になる高齢者を早期に発見し、介入できるよう、認知症早期発見ツールを開発し一般化させることを予定している。認知症の早期発見ツールは、どこでもでき、特別なスキルを要さず、簡便、安価であることが求められている。高齢者健診の一環で、スクリーニングができることが理想である。顔(表情)で認知症を診断できないだろうか。顔や声をAIで認知症か正常かスクリーニングできれば、採血や注射、放射線、腰椎穿刺などの侵襲は一切なく、費用も安い。
著者
片瀬 眞由美
出版者
金城学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、子ども靴を購入する際に正しいサイズを選ぶ習慣を定着させることで、子どもの健やかな成長を支援しようとする取り組みである。この取り組みは、現代の足が弱くなった子ども達に増えている足のトラブルを軽減させる効果も期待できる。その一環として「靴の国」と言われるドイツの子ども靴サイズシステムの概要を調査し、手本とすること。また、足サイズ計測がどの子にも公平に実施できる最良の手段として、日本の学校現場での足の計測導入を想定し、先行事例として国立中等教育学校における足サイズ計測の実施と靴の授業の導入を試み、成果を得ることができた。
著者
吉岡 伸也
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

鳥の羽根の構造性発色の物理機構を調べるため、ドバトやクジャクなどの数種類の鳥を対象にして、羽根内部の微細構造の観察と光学特性の評価を行った。特にドバトの首の羽根においては、羽根の構成要素である羽枝や小羽枝の構造とその光学的な特徴を明らかにし、異なるサイズの構造が総合的に生み出す発色機構を解明した。また、反射スペクトルの形状と色覚とが対応することで、独特な視覚効果が得られていることが分った。
著者
藤田 昌久 石川 義孝 中川 大 文 世一 森 知也 田渕 隆俊
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2001

以下の五つの研究課題を相補的に関連させながら、理論と実証分析の両面から研究を推敲し、以下の成果を得た。(1)一般的基礎理論:空間経済学を複雑系の視点から再構築した。特に、内生的成長理論との融合として、知識外部性の影響下での生産とR&D活動の集積、イノベーションの速度、経済成長の相互連関の分析、および、知識創造・伝播に繋がるコミュニケーションの「場」の形成メカニズムの定式化を行った。企業組織論との融合としては、交通・通信技術の発展、企業のグローバルな組織展開、世界経済の空間構造の変化の相互連関を分析し、さらに、経営戦略的観点の基づく「産業クラスター理論」の空間経済学的基礎を与えた。実証面では、産業集積度や個々の経済集積の空間範囲を検出する情報量基準の開発を行った。(2)産業集積のミクロ分析:IT産業等を対象に、集積と産官学連関の実際と研究開発活動の相互連関、および、集積と地域活性化との関連について実証研究を行った。(3)都市システム:開発したモデルを用いて、与件の変化に伴う都市システムの発展過程や、輸送の規模の経済下での経済立地と輸送技術の相互連関、さらに、経済発展に伴う、都市化、出生率、所得分布や格差の推移の相互連関について分析した。また、日本の製造業について集積を検出し、都市の産業構造と人口規模の関係を明らかにした。(4)国際地域システム:開発したモデルを用いて、産業の空洞化メカニズム、輸送密度の経済の影響下での貿易パターンと国際輸送網の相互連関、および、先進・途上国間での知識・技術のスピルオーバーに基づく、国際地域システムにおける雁行形態的産業発展過程等を説明した。(5)経済立地と交通・通信システム:交通経済学との融合により、輸送技術が経済活動の空間分布に依存して決まるメカニズムを明らかにし、さらに、都市空間における次善の料金政策の効果との連関等も分析した。また、交通整備水準と地域経済との関係に関するデータベースを構築し、交通整備の社会的便益の計測、交通施設整備財源の国際比較等を行った。
著者
細谷 将
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究は、魚類における種特異的な体サイズを決定するゲノム領域を特定することを目的とした。実験魚には、体の大きいトラフグと体の小さいクサフグの雑種第2世代を用いて両種の成長速度の差に影響する遺伝子領域をQTL連鎖解析により1領域に特定した。また、最も影響力の強い領域にあたるトラフグゲノム領域をクサフグに導入して、その影響力を評価するための家系を作出した。
著者
伊藤 祥輔 若松 一雅
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

メラニンには黒色のユーメラニン(EM)と赤褐色のフェオメラニン(PM)の2型がある。本研究は、両型のメラニンの紫外線(UV)-A(および可視青色光)による分解過程およびその生理的意義の解明を目的とした。EMのモデルとしてのDHICAメラニンについて、UVAにより酸化されてキノン体となり、さらに酸化されて特異的分解産物を生じるが、これらの過程において、スーパーオキサイドラジカルおよび一重項酸素が生じることを示した。さらに、合成EMおよびPMについて、300-550 nmの光照射により前記の活性酸素を生じるが、メラニンにより速やかに捕捉されることを示した。
著者
宇戸 清治
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

「クンチャーン・クンペーン物語」は、インドの仏教文学や中国文学からの影響を受けていない、タイ固有の、もっとも知られた古典文学である。本研究では、この作品の言語学的、文学的、社会史的特質と価値を明らかにした。研究の結果、口伝を基にバンコク王朝初期からラーマ五世時代にかけて編修された「クンチャーン・クンペーン物語」は、アユタヤー時代に成立した一地方の民間説話であったものが、タイを代表する古典文学となったことが分かった。研究に併行して日本語への翻訳も行った。
著者
桂 紹隆 TILLEMENS To STEINKELBER 稲見 正浩 本田 義央 小川 英世 HAYES Richar TILLEMANS To STEINKELLNER エルンスト KRASSER Helm ERNST Prets MUCH T.Micha ERNST Steink
出版者
広島大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

インド原典からの「仏教論理学用語辞典」編纂の為の国際共同研究の最終年に当たり、昨年に引き続き仏教論理学の重要なインド原典のうちPramanavarttikalamkaraのコンピューター入力を完了した。本研究の主要なパートナーであるウィーン大学のチベット学仏教学研究所でもダルマキールティのHetubinduに対する複数の注釈のコンピュータ入力を完成している。今後の課題は、引き続き重要な仏教論理学テキスト、例えばTattvasamgrahapanjikaを入力し、広島大学文学部のホームページなどから一般に公開することである。ウィーン大学チベット学仏教学研究所から刊行予定の「仏教論理学用語辞典」は3部から構成される。第1部は、仏教論理学の主要な綱要書であるNyayabindu,Nyayapravesa,Tarkasopana,Hetutattvopadesaなどから集められた仏教論理学用語の定義集であり、これは既に完成している。第2部は、上記定義集には収められていないが重要と考えられる仏教論理学用語を理解するために必要な文章を綱要書以外の多数の仏教論理学テキストから集めたものである。記載項目は過去数度にわたる共同研究参加者の会合によって決定しているが、全ての項目について必要な情報が収集されるには到っていない。従って、近い将来その完成を目指している。第3部は、以上の資料にもとづいて、特に難解な仏教論理学用語の解説を試みるものである。その一部は、1997年11月広島市で開催した「第3回国際ダルマキールティ学会」において、各共同研究者が発表したものである。本研究の最終報告書には、1998年12月に共同研究者全員がウィーン大学に集まり検討を加えた第1部と第3部の一部を収めて公表する。なお、本研究参加者は、今後も機会を見つけて集まり、密接に連絡をとり、第2部を含めた本格的な『仏教論理学用語辞典』をウィーン大学チベット学仏教学研究所より刊行する予定である。
著者
中山 隆志 松尾 一彦
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

これまでに研究代表者は和漢薬ライブラリーを用いて細胞遊走阻害活性を指標としたケモカインアンタゴニストの探索を行ってきた。本研究において、麻黄エキスがケモカイン受容体CCR3、CCR4、およびCCR8特異的なアンタゴニスト活性を示し、そのアンタゴニスト活性が麻黄エキスの酢酸エチル非可溶性分画に存在することを明らかとした。また、このアンタゴニスト成分による阻害活性にリガンド特異性はなく、受容体を直接阻害することが示唆された。CCR3、CCR4、およびCCR8は、いずれもTh2細胞あるいは好酸球や好塩基球に選択的に発現することから、アレルギー性疾患において重要な役割を果たすと考えられる。
著者
吉村 学
出版者
京都府立医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

血中のカテコラミンの約6割を占めるドーパミンは測定可能な遊離型が0.3%と微量(10-20pg/ml)であり、他は抱合型として存在することから臨床検査としてルチンに使用するのは難しかった。しかし、今回ジフェニルエチレンジアミン法を用いるHPLC法を開発して、ドーパミンを5pg/ml迄測定する系を確立した。健常者に於ける血中遊離型ドーパミン(以下ドーパミン)濃度は若年者で6.4±1.5pg/ml、高齢者で16.2±8.2pg/mlとなり、血中ノルアドレナリン濃度と同様に加齢の影響を認めた。臥位で低下し、座位及び立位で高値を示すことから、採血は臥位で行った。24時間に於ける血漿ドーパミン濃度は日内変動を示さなかったが、血漿ノルアドレナリン及びアドレナリン濃度は日内変動を示した。運動時の血漿ドーパミン濃度は等尺性運動では軽度の上昇を示したが、律動性運動では著明な高値を示した。その上昇は運動強度の増大と共に上昇し、好気性運動から嫌気性運動に移行する時点で急上昇した。血漿ドーパミン濃度と乳酸濃度とは有意の正相関を示したことから、ドーパミンは運動時の筋肉内循環に重要な役割を占める事が示唆された。各種疾病との関連では、本態性高血圧症患者で低値を示し、β遮断薬投与患者では更に低下した。原発性アルドステロン症や褐色細胞腫などの二次性高血圧症では血漿ドーパミン濃度が高値を示した。又心不全などの浮腫性疾患や甲状腺機能低下症でも上昇した。パーキンソン病や症候群でL-DOPA投与後の血中ドーパミン濃度は経時間内に上昇し、又、循環不全患者でドーパミン製薬投与中の症例では血中ドーパミン濃度が著増することから、薬物濃度のモニターとしても利用可能である。今後は各種疾患及び各種薬剤投与症例の血中ドーパミン濃度を測定して臨床検査的有用性を確認する予定である。
著者
宮武 健治 福井 賢一 小柳津 研一
出版者
山梨大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-06-29

スルホン酸化ポリフェニレン高分子を、ジクロロビフェニルとジクロロベンゼンスルホン酸から一段階で簡便に合成する方法を見出した。スルホン酸化ポリフェニレンは溶液キャスト法により柔軟な薄膜を形成し、5つのフェニレン環が連結したジクロロキンケフェニレンモノマーを用いて得られた薄膜と同程度以上の高いプロトン導電率、気体バリア性、化学安定性を示した。さらに側鎖に高密度でスルホン酸基を導入したポリフェニレン系の合成にも成功し、低含水率条件におけるプロトン導電率の向上を達成した。これらのプロトン導電性高分子薄膜を用いた燃料電池が、高性能と高耐久性を実現した。可逆的な水素吸蔵・放出を担う物質として、フルオレノン/フルオレノールを繰返し単位あたりに置換したビニルポリマー、および、チロロンと1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼンから得られる親水性架橋ポリマーを合成した。白金担持カーボン触媒を介して、フルオレノールで置換されたポリマーの電解酸化が酸素還元電位より卑な電位で生起することを明らかにし、リチャージャブル燃料電池への適用が原理的に可能であることを明確にした。また、ポリビニルキノキサリンを新たに設計・合成し,従来より高い質量水素密度を達成した。水素の吸蔵―放出を行うポリマーに対して深紫外(FUV)分光を用いることで、水素を吸蔵したアルコールと放出したケトンが明確に異なる電子遷移吸収ピークを与えること、さらにそのピークが両者の化学状態の違いに由来することを時間依存密度汎関数(TD-DFT)法による解析によって明らかにした。全反射型のFUV分光において光の入射角度を変えることで深さ分解したスペクトルの測定が可能であるため,同ポリマーにおける水素の吸蔵―放出過程のその場解析に道を拓く重要な成果である。
著者
井口 泰泉
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

ミジンコ類(枝角目甲殻類)は世界中の淡水に生息し、扱い易いことから生態学の研究に用いられてきた。我々は化学物質などの環境要因に応答する遺伝子を網羅的に解析するエコ(トキシコ)ゲノミクスを開始しているが、今後詳細に遺伝子機能解析を進めるには、導入遺伝子の発現を自在に制御することが必要不可欠である。本研究では遺伝的な交配実験系の開発について解析を行い、ミジンコは、複数の外部環境シグナルを統合して、単為生殖と有性生殖を切り替えることが分かった。また遺伝子導入法に改良を加えてその効率化を行った。これらの知見は、今後トランスジェニックミジンコ作出するための基礎的な知見として応用可能である。
著者
鈴木 康之 森山 聡之 杉本 等
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

1)「携帯端末の高度情報取得」を司るシステムの検討:高度測定の要素技術としてRTK測位に着目し、この手法を援用しシステム化を行い評価することを目指している。具体的には、申請者の所属する機関に過年度設置され観測データが無償公開されたRTK基準局との間で、当該サーバに新たに本研究の経費で電波の送信設備を設け(管理者から内諾取得済み)無線通信を行いながら補正情報をスマホに取り組む方法の、高効率化を含む必要な計測を行う。対象地域が広範なため、加えて小セル方式のWiFiは実用性に乏しいため、WiFi以外に電波法上取り扱いの支障が少ない「デジタル簡易無線(H30年度までに措置済み、フィージビリティの確認済み)」「LoRaWAN等のデジタル系特定小電力無線(H31措置予定)」を利用し、どちらの方式が優位か比較検討する。2)端末とサーバ間インターフェースを司る基本構成の検討:端末の取得データを各種データベースと紐づくサーバに集積するソフトを設計し実装する、現在骨格部分の設計が完了しており、最大の関門を通過した。前項のRTK基地局からの補正データを受信すると同時あるいは逐次に端末の測位データを危険度マップ生成サーバに向け送受信する機構を構築する必要があり、送受の切り替えタイミングや周波数相互間干渉の有無について、パラメータを大きく振った網羅的な試験研究と最適化検討を引き続き行っている。3)単体での運用によるフィージビリティの確認:今後、優先順位づけの基本となる「勝率データ」の蓄積の有効性について検討する予定である。端末1台を試作し100か所の「出発地点」と20種類の「水害到来シナリオ」を設定し高度測定・結果判定・サーバへの蓄積の状況を確認する準備が整った。4)その他:測位航法学会・日本災害情報学会・地理情報システム学会等において情報交換を行う。H30年度は日本災害情報学会で発表した。
著者
有馬 直道 小迫 知弘 久保田 龍二 吉満 誠
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

HTLV-1関連蛋白が成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)発症予防のための細胞障害性T細胞(CTL)誘導型ワクチンの標的になりうるか検証した。HBZを新たな標的として検討した。これまでHAMの症例ではHBZ特異的CTLをテトラマー試薬を用いて検出することができた。Tax特異的CTLが検出できたATLにおいてHBZ特異的CTLは検出できなかった。造血幹細胞移植後症例においてもHBZ特異的CTLは検出できなかった。HBZはTaxと異なり、ATL細胞に恒常的に検出される蛋白であるが、CTLの標的とすることには、抗原性が低く十分なATL発症予防効果やATL治療効果を得られない可能性があると考えられた。
著者
Tin・Tin Win・Shwe
出版者
国立研究開発法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、神経発達障害であり、社会的相互作用や、言語/コミュニケーションに障害が見られ、興味の範囲の狭さおよび反復性の行動を特徴としている。遺伝的要因と環境要因の両方がASDに寄与しているとされるが、自閉症の正確な病因と病態生理は不明である。我々は、出生前と幼少期の大気汚染物質曝露がASDの潜在的な要因であると仮定し、神経炎症は大気汚染物質とASDのような異常を結びつけるメカニズムとして役立つ可能性を考えた。本研究では、ラットモデルを用いて環境汚染物質への発達期曝露における神経免疫応答に重要な役割を果たすマスト細胞、ミクログリアとASD様の行動についても検討する。
著者
水間 広
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

自閉症スペクトラム障害(ASD)の病因に、周産期の神経免疫機構異常の関与が示唆されているが、生後の社会性行動異常との関連は未だ不明な点が多い。我々は母体疑似ウイルス感染により再現された病態モデルマウスを無麻酔下による脳機能イメージング法(PETやfMRI)を用いて同一個体で長期間追跡した結果、正常発達マウスと比較して神経機能ネットワークや糖代謝活性異常を見出し、また、ASD患者研究と同様の結果が得られた。本研究では、モデルマウスの生後神経機能ネットワーク異常と脳内ミクログリア活性による神経シナプス形成異常との関連性を調べ、ASDの病態メカニズムの一端を明らかにする。
著者
溝口 和臣
出版者
独立行政法人国立長寿医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は以下の仮説、「老化により前頭前野そのものの機能低下として抑うつや認知機能障害が発生するのと同時に、情動の発現に関与する扁桃体や側坐核に対する前頭前野による抑制が低下することによりストレス脆弱性が発生する」を、実験動物を用いた基礎研究から検証することを目的とした。研究実施期間は3年間とし、初年度である本年度は、当初の計画を若干変更しつつ、一部の実験を前倒しで実施した。以下に結果の概要を記す。ドーパミンD1受容体アゴニストの前頭前野内投与実験より、老齢ラット(24ヶ月齢)において観察されたワーキングメモリ障害は、前頭前野におけるドーパミン放出量の減少によるD1受容体刺激の低下に基づくことが明らかとなった(Mizoguchi et al., Neuroscience, 2009)。しかし、セロトニン系抗うつ薬の老齢ラットに対する抗うつ効果は限定的であった。グルココルチコイド受容体(GR)を介した作用の低下が、ドーパミン放出量を低下させることが示唆された。この結果を受けて、老化による前頭前野におけるドーパミン放出量の減少にGRの機能低下の関与を推定すべく、まずはGRのcoactivatorの発現を解析した結果、GRIP-1, SRC-1, CBPの前頭前野における発現は老化により減少することが確認された。ストレス反応性を検討した結果、老齢ラットではストレスによる不安の亢進が顕著で、且つ、血中corticosterone濃度もより高値を示し、老化によりストレス脆弱性が発現することが明らかとなった(Shoji and Mizoguchi, Behay.Brain Res, 2010)。この脳内機構として、老化による前頭前野の機能低下と、その低下に基づく扁桃体の機能亢進が重要な役割を果たしていることが示唆された。
著者
今泉 裕美子
出版者
法政大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

<資料収集>本研究の対象時期を含めた日本の南洋群島統治資料の所在をほぼ確認し、複写することができた。従来、南洋群島資料は殆どないとされてきたが、戦後アメリカのミクロネシア信託統治行政の資料収集について情報を得、アメリカが押収した資料、また日本への返還文書、それぞれの所在を確認できた。よって、貴会の特別研究員時代の調査研究とあわせて、アジア及び太平洋島嶼地域、アメリカにおける南洋群島資料の所在について、その全体像をほぼ明らかにすることができたことは、南洋群島研究の進展に大きく貢献するものと考える。とくにハワイ大学調査では米国押収資料のほとんどを複写できたこと、また、ハワイ以外の未発掘資料の所在も確認でき、今後の研究計画もたてることができた。以上のような経緯から本研究の資料調査では、結果的には海外における資料調査に重点が置かれることになった。一方、聴き取りでは、引揚者によるミクロネシアへの慰霊団に同行したほか、ミクロネシア、沖縄、東京近郊で調査を進め、日本統治下の人々の世代別、性別、仕事別の諸分野について聴き取りを行なうことができた。<研究発表>海外での資料を多く確認できたため複写手続に時間がとられた。とくに平成13年9月のテロ事件以後、通信や交渉が滞り、資料の入手段階で通常以上の時間が必要となり、論文作成の遅延をもたらさざるを得なかった。すなわち、研究計画に示したように、日本の国際連盟脱退からアジア・太平洋戦争までの時期について、資料分析が行なえたのは第二次世界大戦開始前後までとなった。しかし、アジア・太平洋戦争期の政策や、実態についての分析は現在進行中であり、本奨励研究の研究成果には間に合わなかったにせよ、今後の研究発表がすでに具体的な日程に上っている。また、論文化できた研究成果には、現地住民政策を委任統治の「島民ノ福祉」向上という委任統治条項履行という観点から分析したもの、および、南洋移民研究のサーヴェイがある。前者では、南洋群島統治における1930年代の現地住民政策の特徴を、日本化政策の浸透が福祉向上という解釈で行なわれたことを明らかにした。後者では、南洋群島移民に関する国内外の研究動向について、本奨励研究対象期の日本の南洋群島統治政策と移民政策および移民の実態から検討し、自らの研究の位置づけを行った。平成14年3月1日には「沖縄県地域史協議会」にて「日本の南洋群島政策と移民」と題する講演会を行い、南洋群島統治と移民との相互関連性について本奨励研究の成果を口頭報告した。以上の作業によって従来報告者が進めてきた研究、すなわち海軍統治期、南洋庁統治期の1920年代に加えて、1930年代の統治研究を行いえたので、今後は、日本の南洋群島統治全期のモノグラフ作成をめざしたい。