著者
小西 守周
出版者
神戸薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

高脂肪低炭水化物食(ケトン食)により、肝臓でのケトン体産生が誘導され、前進に置けるエンルギー代謝が影響を受けることが知られている。このケトン食飼育時の肝臓においてFgf21の発現が誘導されることから、ケトン食飼育時に置けるFgf21の役割についてノックアウトマウスを用いて検討した。今回の結果より、ケトン食は白色脂肪組織を通じて全身のインスリン抵抗性を惹起することが明らかとなった。さらに、Fgf21がこの白色脂肪組織におけるインスリン感受性の減弱を誘導することを明らかにした。
著者
田畑 泉
出版者
独立行政法人国立健康・栄養研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、まず身体トレーニングは低い強度でも高い強度でも疲労困憊に至るまで行えば、ミトコンドリアの新生の機序に関係のある核内蛋白質として注目されているPGC-1α(peroxisome proliferator-activated receptor γ coactivator-1)の骨格筋での発現には差がないこいことを明らかにした。しかし、この高強度・短時間トレーニング後のラット血中乳酸濃度は11mM以上に上昇し、疲労困憊に至るような運動であると考えられる。したがって、健康増進のための運動処方としては用いることができない。そのため高強度・短時間運動トレーニングを健康増進のための運動処方として用いるためには、より少ない運動セット回数でもある程度の効果が得られることを確認する必要がある。また、容量依存的に増加するか否かについても検討はなされていない。そこで、次に、SD系ラットに体重の18%の重りを負荷した、20秒間の水泳運動を3回,9回,14回、各セット感に10秒間休憩を挟み1日1回5日間行った場合の前肢筋epitrochlearisのPGC-1α発現を見た。その結果、疲労困憊に至らない3回の高強度間欠的運動トレーニング後のPGC-1αの発現量は、従来、運動トレーニングとしてPGC1α発現の最大刺激と考えられてきた疲労困懲に至る14回の間欠的トレーニング後のものと差はなかった。さらに、PGC-1αの発現の機序に関係していると考えられているAMPK活性は3回の間欠的運動後でも高い値であることが明らかとなり、PGC-1α発現は、AMPK活性が、それほど高くなくても、充分に高くなることが明らかとなり、さらにヒトを対象としても疲労困憊に至らないような最大下回数の高強度短時間間欠的運動トレーニングが効果的である可能性が示唆された。
著者
稲葉 昭英 吉武 理大 大久保 心 吉田 俊文 大橋 恭子 夏 天 小正 貴大
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

大規模な公共利用データを用いて貧困低所得層の世代的再生産に関する計量分析を行った。その結果、ひとり親世帯の子(中学3年生)の教育アスピレーション(進学期待)が低く、成績が悪く、勉強時間が少ない傾向がみられた。とくにこの傾向は父子世帯の子に大きかった。多変量解析の結果、母子世帯の子に見られる差異は所得の低さからほぼ説明されえたのに対して、父子世帯の子に見られる差異は所得からは説明されえなかった。
著者
山本 禮子
出版者
和洋女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

近代公教育の体制下にあって、日本の女子教育の中心的役割を担った戦前の女子中等教育機関としての高等女学校の教育実態を明らかにするため、高齢化する高等女学校卒業生対象のアンケ-ト調査・面接調査の緊急性を痛感している。ここ数年来、公立・私立の高女卒業生対象の調査を実施してきたが、本年度は、外地の高等女学校卒業生に焦点をあてて行った。まず、朝鮮・台湾・関東州・樺太・満洲・中国に設立された高女の同窓会に名簿提供を依頼し、承諾を得た34校に対し、1915年から5年おきに最高20名を限度に無作為抽出し、1917名にアンケ-トを発送(7月下旬〜8月上旬)した。返送されたものを減ずると実質発送数1730、回答数659で回収率は38.09%である(回収10月末日)。この回収率は内地のそれより高く(公立高女アンケ-ト回収率33.59%、私立高女30.71%)意識の高さを証左している。未だに詳細な調査結果の分析・考察には至っていないが、現地人を入学させた学校、現地語を教科の学習として位置づけた学校、課外学習として取扱った学校等様々であるが、それは全体の1割弱の学校にしかみられない。当時、日本語使用を義務づけたため(朝鮮など特に)現地語導入は考えられないことである。現地語学習が顕著なのは満洲の撫順高女やハルピン高女である。日本の国がそれぞれの地域とどのような関係をむすんだかが教育に鮮明に反映している。その他、1930年前後の修学旅行は船中泊を含めると2週間にもわたる旅で、京都・奈良・東京はもとより、学校によっては日光・九州、時代によっては橿原神宮もコ-スに入り、大々的なものになっている。しかし、戦局切迫する中で中止となる。異句同音に外地に育った者の大らかさを自負し、引き揚げ後の困窮生活をも前向きにとらえる姿が窺われる。
著者
庄司 拓也
出版者
専修大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

初期感化院の一つである東京感化院の運営及び感化教育の実態を明らかにした。具体的には、東京感化院は私立の施設であるため、比較的高額な入所費用を徴収しており、収容児に階層的な偏りのあることを確認できた。また、明治期の日本における感化教育の整備と展開の過程を明らかにした。具体的には、明治期から大正期にかけて、感化院の職員の不良少年観は変化していっており、精神医学を感化教育に導入していこうとする動きなどを確認できた。
著者
黒川 信重 水本 信一郎 盛田 健彦 斎藤 秀司
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

ゼータ関数の統一理論に向けての研究を行った。黒川は圏論的研究,斎藤は数論的研究,盛田は解析的研究,水本は代数的研究,をそれぞれ行った。各分担者の研究内容は次のとおり。黒川はゼータの圏論的研究のために,圏のラプラス作用素のスペクトルを詳しく調べ論文に発表した。とくにラプラス作用素の半正値性とスペクトルの漸近分布の結果を得た。圏のラプラス作用素は圏の対象間の射の個数を成分にもつ対称行列であり,そのスペクトルの研究はゼータ関数論を含む広域な観点から興味を持たれている。黒川はセルバーグゼータ関数の研究も行い,スペクトルの重複度の明示公式を得た。さらに,代数系のゼータ関数に対する一般理論を構築した。水本はゼータ関数の関数等式の中心における零点の位数に関する精密な研究を行い,論文に発表した。とくに,そこにおける零点の位数の非有界性などに顕著な結果を得た。盛田は2次元ビリヤードのゼータ関数の解析接続を行った。斎藤は代数的サイクルを中心とする数論的代数幾何学の研究を行った。これらの研究によってゼータ関数の統一の枠組みができあがった。
著者
戸木田 雅利
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

主鎖型高分子をベースとしたスメクチック液晶エラストマーおよびネマチック液晶エラストマーを調製し、その昇降温に伴う伸縮挙動を調査した。スメクチック液晶エラストマーはスメクチック層構造が存在する限り層方線方向の主鎖の並進運動が規制されるため、エラストマーが等方液体へと転移する過程で急速に収縮する。示差走査熱量測定で決定した相転移温度以下まで昇温した後に降温すると伸張する。ネマチック液晶エラストマーは昇温に伴い、ネマチック液晶温度領域で連続的に収縮する。この実験結果は液晶状態にある高分子鎖の形態を議論したド・ジャン-ワーナー理論で説明できた。実験結果から得られる鎖の曲げの弾性定数は、中性子散乱から得られたネマチック液晶ポリエステルのデータから算出されるものとほぼ一致するものであった。主鎖型液晶高分子を架橋すると等方液体-液晶相転移エンタルピーが著しく低下することが問題となる。その問題を解決するために新規架橋剤を設計、合成して架橋に用いた。その結果、従来用いてきた芳香族系架橋剤よりも脂肪族架橋剤を用いたほうが液晶化度の低下は小さくなった。また、配向した後に架橋する方法として、本研究で用いている液晶性ポリエステルと類似の構造を有するポリエチレンテレフタレートの架橋に用いられていたベンゾフェノン化合物を主鎖中に導入し架橋を試みた。しかし、ベンゾフェノン骨格の反応性が低く、有効な架橋構造を得ることができなかった。
著者
寺井 誠
出版者
公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、5~6世紀の新羅・加耶に特徴的な考古資料(鉄鐸・角杯など)や習俗(鍛冶具副葬など)を基に、日本列島での新羅・加耶系渡来文化の受容のあり方について検討し、以下を明らかにした。1)新羅の文化要素の中には、新羅の中心地ではなく周辺地域のものが伝わっている。2)新羅・加耶系の渡来文化は、畿内ではなく、北部九州や岡山、北陸など地方で多く見られる。3)6世紀後葉から7世紀の北部九州では、大規模開発に慶尚南道西部の旧加耶地域の集団が関わっている可能性がある。以上の成果から、畿内の影響を受けずに地方が独自の対外交渉を行っていたことを確認することができた。
著者
直原 一徳 野口 悟 (徳富 哲) 桂 ひとみ 藤堂 剛 石川 智子
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、光依存の磁気センサータンパク質として仮説が立てられている青色光受容体「クリプトクロム」を用いて、青色光照射に伴う磁気の発生について磁気特性測定装置(MPMS3)を用いて測定することを試みた。2018年度に入って、ゼブラフィッシュ由来のクリプトクロムの一種「Zf_Cry-DASH」のタンパク質溶液を用いて青色光照射を行い、光反応に伴って形成されるラジカル状態の磁化発生をMPMS3により検出する測定を遂行した。結果としては、現在のところまだ磁気特性を示すMPMS3シグナルの検出には至っておらず、さらなる測定条件の検討が必要であると考えている。
著者
大庭 重信
出版者
(財)大阪市文化財協会
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

最終年度となる平成15年度は、韓国西部地域を中心に遺跡踏査を行ったほか、これまで収集した資料の解析を行った。その結果、以下のような知見を得るに至った。日本列島と比較した場合、朝鮮半島での初期農耕の多様性の要因は、畠作の比重の高さにある。このような見通しのもと、これまで調査された耕作遺構、出土穀物種子遺体や遺跡の立地条件を分析した結果、朝鮮半島南部地域における青銅器時代の畠作農耕を、1)河辺沖積地などの畠作適地でアワやコムギなどを主用作物としつつ多品目の作物を栽培する規模の大きな畠作、2)丘陵末端で水田稲作を主体としながら、これに付随して小規模かつ少数品目の作物を栽培する畠作に大別した。南部ほどイネ栽培の比重が高く、北部にいくほど畠作物の比重が高くなるという地域差は、具体的には気候や立地などの自然環境に応じて、水田稲作と2つの畠作の形態が複合的に展開した結果ととらえられる。また、生育不適な北部地域や内陸部で出土するイネ資料は1)での陸稲栽培、中世の農書を通じて朝鮮農業の大きな特徴とされる乾燥地農業と湿潤地農業の融合は、2)で歴史的に進行した可能性が指摘できる。さらに、弥生時代になって北部九州を中心に出土する畠作物種子遺体は、2)の畠作が朝鮮半島南部から伝播した可能性がある。一方、青銅器時代前期には、高地に立地する集落で焼畑農耕が行われたという説がある。現地踏査を行った結果、これらの遺跡は総じて四周を低地に囲まれた独立丘陵に立地し、眼下の平地には水田・畠作適地が存在し、必ずしも丘陵での焼畑に限定する必然性はない。逆に、狩猟・漁労などの生業活動とともに農耕は平地側で行われた可能性が高く、初期の畠作農耕は総じて低地部を中心に展開したと考えられる。以上の本研究で得られた成果は、学術雑誌に投稿する予定である。
著者
浅野 真司 向所 賢一 位田 雅俊
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アクチン結合タンパク質であるエズリンは,細胞内で膜タンパク質と細胞骨格とを有機的に連結して,上皮細胞の頂端膜や神経組織の形態形成に働く。近年になって,エズリンが特定の膜輸送タンパク質や接着分子の細胞表面へのターゲッティングに関わることが明らかにされた。本研究では,エズリン遺伝子を改変したノックダウンマウスなどを用いて,主に動物個体におけるエズリンの上皮組織構築,上皮輸送調節や,神経細胞の突起形成やネットワーク形成における役割を検討した。その結果,エズリンが腎尿細管におけるリンの再吸収や,胆管細胞における胆汁の修飾や流量調節,また神経細胞における突起形成に関わることを見出した。
著者
下田 慎治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

胆管細胞は自然免疫リガンドと疎水性胆汁酸の暴露により細胞内酸化ストレスが亢進するとともにAE2発現が低下し、IL-6やケモカインの産生が亢進した。胆管細胞でのAE2発現をsiRNAで落としても同様であった。またAE2発現が低下した胆管細胞周囲には自己免疫細胞が有意に遊走することも明らかになった。IFN-gの存在で更にAE2発現が減弱した。またこのようなPBC模倣環境では胆管細胞の老化を認め、一連の現象は細胞老化関連分泌現象であることが示唆された。病理的に検討した結果、PBC胆管では酸化ストレスが亢進しAE2発限低下を認めた。またPBC胆管の中でも胆管炎活動性が高いほどAE2発現は低下していた
著者
仲谷 正史
出版者
慶應義塾大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2016-04-01

H28年度の研究では、バイノーラル録音方式で得られた耳に近接した音響刺激を複数種類集め、その中で代表的な聴覚刺激の主観評価を行った。当初の予想では、これらの聴覚刺激により、聴取者はリラックスし心地よく感じると考えていた。しかし、被験者実験の結果、これらの刺激を聴取するとむしろ覚醒度が高まり、かつ不快に感じることが明らかになった。この理由は2つ考えられる。1つ目は、聴覚刺激そのものが不快であるという理由である。素材音の中には金属板を擦過した音や、ホワイトボードにペンで書いた時の「鳴き音」を採取したが、これらの音源は不快と判断されやすい。2つ目の理由として、身体に近接した空間(ペリパーソナルスペース)を物体が横切るように感じられるため、危険を察知する何らかの機構が働いた可能性がある。一方で、集めたバイノーラル音源の一部において、鳥肌感を高い頻度で誘起する刺激を見つけることができた。音響刺激における鳥肌感の研究は主に音楽聴取時に得られる鳥肌感の研究が多く、刺激の聴取時間は数十秒から数分にわたる。今回見いだすことができた鳥肌感を引き起こすバイノーラル音源は長くて30秒程度であり、聴取してからわずか数秒で鳥肌感を生起することができる。このことより、音楽聴取によって得られる鳥肌感とは異なるメカニズムでその主観効果が得られている可能性が考えられる。この点については、H29年度に詳細な検討を進めてゆく考えでいる。加えて、バイノーラル記録した素材音を利用して、聴覚と身体感覚に訴えかける多元質感メディア作品の制作を行った。作品制作の際には、MAX/MSP上で制作支援システムを構築した上で、現代音楽作品を制作した。学会における研究者向けの芸術展示、ならびに一般の方向けにそれぞれにおいて作品展示を行った。
著者
猪子 芳美 河野 正己 清水 公夫
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

「研究の目的」睡眠中、舌筋(特にオトガイ舌筋)が弛緩することで舌根沈下が起き、睡眠時無呼吸のトリガーとなることが知られている。本研究は、覚醒時のオトガイ舌筋をトレーニングで強化させることで、睡眠中の筋弛緩を減じ、無呼吸の発生を抑制させることによって睡眠時無呼吸の重症度を減少させる新たな治療方法の構築および臨床への応用を目指す。「研究実績」①舌の筋力測定と分析:夜間のいびきや日中の眠気から睡眠外来に睡眠時無呼吸を疑い来院した患者に対して研究の協力を依頼し、舌圧測定器を用いて舌の筋力計測を行なった。その後、終夜睡眠ポリグラフ検査を行なった。舌圧(舌の筋力)と睡眠時無呼吸の重症度の解析を行ない、舌筋のトレーニングが必要な対象者の選択を行なった。②舌筋のトレーニング:舌圧値(舌の筋力)が健常者に比べて低下し、睡眠時無呼吸の検査データとの関係から舌の筋肉トレーニングが必要と思われる対象者に対し、研究の必要性を説明し、同意を得られた者について研究を継続した。トレーニング前のデータ収集としてウオッチパッドを用い、睡眠の簡易検査を施行することによってトレーニング前の状態を把握した。その後、対象者の筋力に応じて、適切な舌トレーニング器具(ペコパンダ)を選択し、ペコパンダを用いた毎日のトレーニングを開始した。トレーニング後に再度、ウオッチパッドを用いて睡眠の簡易検査を行い、トレーニングの成果を評価し、その結果について国内外学会において発表を行い、研究論文の投稿を行う。
著者
蒲生 郷昭 石川 陸郎 加藤 寛 樋口 昭 中里 寿克 高桑 いづみ 久保 智康 阪田 宗彦 浅井 和春 上参郷 祐康
出版者
東京国立文化財研究所
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1.実地調査初年度に調査できなかった石上神宮(天理市)蔵の鼓胴5点と鞨鼓、厳島神社(広島県宮島町)蔵の鶏婁鼓と振鼓、朝護孫子寺(奈良県平群町)蔵の二ノ鼓と三ノ鼓と鶏婁鼓、丹生都比売神社蔵和歌山県立博物館(和歌山市)寄託の鼓胴3点、東京国立博物館蔵の壱鼓と二ノ鼓、神谷神社(坂出市)蔵の鼓胴、福岡市美術館蔵の鼓胴、紀州徳川家旧蔵国立歴史民俗博物館現蔵の壱鼓と鞨鼓、国立音楽大学楽器学資料館蔵の三ノ鼓、鞨鼓の調査を行った。調査内容は初年度と同じで、熟覧、計測、写真撮影、X線写真撮影などである。2.研究初年度の調査と併せて、合計21機関が所蔵する57点の雅楽打楽器を調査することができた。その結果と文献資料にもとづき、音楽学の側面からは、楽器ごとに歴史、名称、用法などを考察した。そして、とくに壱鼓、二ノ鼓、三ノ鼓をめぐっては、その名称と規格の関係についての定説に問題があることが分かった。美術史学の側面からは、品質、形状・製作技法、保存状態、などを明らかにし、製作時期を推定した。3.研究成果報告書の編集と刊行報告書刊行のために、計測結果を法量表としてまとめ、楽器1点ごとのセクション図または見取り図を作成した。さらに美術的所見と、楽器の種類ごとの音楽的考察をまとめた。その結果は、B5判164ページの報告書となった。
著者
小塩 達也
出版者
名城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

大型車両の荷重データを分析し,過積載車両の実態とその影響を把握する方法について検討した.車両の積載状態をパターンマッチングおよび各種制限値を判断して空車・積載・過積載に分類する方法を提案した.また,積載状態を判定した自動車荷重データを軸重の3乗和が損傷に比例するとした疲労損傷モデルに適用し,車両群全体がもたらす疲労損傷全体に対して,空車・積載・過積載の車両群のそれぞれの影響度を試算した.
著者
河野 啓助 奥田 誠也 玉置 清志
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

細胞の分化増殖、発生、免疫に関与するTGF-βは、病的過剰状態において、組織の硬化や線維化に重要な役割を果たす.TGF-βの細胞内情報伝達分子Smadには、特異型(Smad2/3)、共有型(Smad4)、抑制型(Smad6/7)がある。特異型Smad系の標的遺伝子の特異的プロモーターであるSmad binding element(SBE)の下流域に、ルシフェラーゼ遺伝子を挿入した合成遺伝子(SBE-Lux)を用いて、次のような実験を行った。SBE-Luxを培養細胞に遺伝子導入し、TGF-βの濃度依存性にLux活性が上昇することを明らかにした。さらに、この活性は、TGF-βの中和抗体存在下はまったく抑制されることを示し、TGF-β特異的な反応であることを明らかにした。また培養細胞にSBE-Luxと同時に、Smad2やSmad7の遺伝子を同時に強制発現させた場合、TGF-βの刺激を伝えるSmad2の競合的異性体あるいは抑制型SmadであるSmad7を導入すると、その活性が抑制されることが明らかになった。また。TGF-βの産生・活性化を示すことが知られており、また糸球体硬化あるいは腎線維症の進展因子である、アンギオテンシンIIや高グルコース状態などの条件下でも、SBE-LUXの活性が上昇し、これらの刺激がTGF-Smad系を介することが示差された。ポピヨンヨードを腹腔内に投与したラットの腹膜硬化症モデルは腹膜の肥厚、癒着、線維化を示すものの、安定した再現性が得られず、今後、ポピヨンヨードの投与量や投与期間などの検討を行っていく。