10 0 0 0 OA PICSとは何か

著者
井上 茂亮
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.43-47, 2023-04-15 (Released:2023-05-15)
参考文献数
28

集中治療室 (ICU) における機器の技術革新やガイドラインによる診療レベルの向上と標準化, 教育プログラムの充実により, 近年の重症患者の生命予後は劇的に改善した. しかしながら, 重症患者の長期予後や生活の質はいまだ改善せず, 集中治療を受けた患者の多くは身体的および精神的な障害を抱えたまま, 十分な社会復帰に至っていない. 集中治療後症候群 (Post‐intensive care syndrome;PICS) は世界中で急速に進行する超高齢社会とICU患者の高齢化を背景に浮かび上がった21世紀の集中治療医学の新たな問題点である. PICSとは, ICU在室中あるいはICU退室後, さらには退院後に生じる身体機能・認知機能・精神の障害で, ICU患者の長期予後のみならず患者家族の精神にも影響を及ぼすものとして広く認識されはじめている. PICSの提唱からちょうど10年たった今, 本章ではPICSの病態の概要とともに, ABCDEFバンドルを中心とした予防・治療に関する最新の知見を解説し, ICU患者の長期予後改善に向けた方策を提案する.

10 0 0 0 OA 可能動詞の成立

著者
三宅 俊浩
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.1-17, 2016 (Released:2017-03-03)
参考文献数
23

本稿は「読める」等「可能動詞」の成立過程について論じる。従来その成立については「レル」起源説,「得ル」起源説,下二(一)段自動詞「切ルル>切レル」等への類推説という三つの説が存在する。本調査により,中世末期の「読ムル」が動作主を取らず対象語に備わる一般的な可能属性を叙述するものであり,さらにこの様相は語彙的・意味的・統語的に近世前期の可能動詞と連続的であることが確認された。一方,「レル」「得ル」は「読ムル」および可能動詞の様相と著しく異なるものであった。さらに自動詞類推説について検証すると,属性叙述を行う有対下二(一)段自動詞と四段他動詞の関係は,可能動詞および「読ムル」と派生元の四段他動詞との対応と並行的であることがわかった。以上から可能動詞は属性叙述を行う下二(一)段自動詞への類推により成立したと結論付けた。
著者
柴田 崇徳
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.217-228, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
24
被引用文献数
2

アニマル・セラピーを参考に開発されたアザラシ型ロボット「パロ」は,米国では「神経学的セラピー用医療機器」の承認を得た初めての医療ロボットで,認知症,発達障害,精神障害,PTSD,脳機能障害,がん患者等を対象として,30か国・地域以上で約5,000体が利用されている。世界各地での治験等により,パロとの触れ合いが,人の気分を向上させ,不安,うつ,痛み,孤独感を改善することが示された。認知症者の場合には,徘徊,暴力・暴言等の問題行動を抑制・緩和する。また昼間に傾眠する人がパロと触れ合うと覚醒し,夜間によく眠れ,昼夜逆転を改善,夜間の起き出しを減らす。これらは介護者の負担を軽減し,転倒等のリスクを低減する。さらに副作用がない「非薬物療法」として,各種抗精神病薬の投薬を低減する,全く新しい医療福祉サービスである。
著者
三木 貴弘 西上 智彦
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.61-69, 2018-04-01 (Released:2018-04-01)
参考文献数
35

慢性腰痛において,本邦では未だ生物医学的モデルに基づいた治療が実施されていることが多いが,諸外国では生物心理社会モデルに基づいた治療が実施されている.オーストラリアの理学療法士であるPeter O'Sullivanによって考案されたCognitive Functional Therapy(CFT)は慢性腰痛を生物心理社会モデルに基づいて評価,治療を行う新しい治療体系である.CFTは認知的側面(Cognitive Component),機能的側面(Functional Component),生活習慣的側面(Lifestyle Component)から構成されており,各側面の評価,治療が実施される.CFTの治療効果の有効性は多く報告されており,疼痛,能力障害だけではなく,運動恐怖や過度な不安,破局的思考,自己効力感も長期的に改善されたことが報告されている.慢性腰痛において,CFTは生物心理社会モデルの理解を助け,患者のアウトカムを向上させることができる新たな介入方法になるだろう.
著者
谷 晋三
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.13-18, 2015-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
5

認知行動療法においては、臨床的な症例報告は多くの臨床家に重要な情報を提供する。しかし、雑誌「行動療法研究」に掲載される論文の数は限られている。本研究では二つのガイドライン(Ortega & Rodriguez, 2008; Gagnieretal., 2013)が推奨する臨床的な症例報告の目的とその内容を紹介している。Robey (2004)は臨床研究における五つのフェイズモデルを提案している。臨床的な症例報告はそのフェイズI、IIとIVに含まれている。Robeyの五つのフェイズモデルでの臨床的なケースレポートの目的について最初に紹介する。次に、二つの臨床的なガイドライン、CAREガイドラインとGuidelines for clinical reports in behavioral clinical psychologyを紹介し、最後に本誌「行動療法研究」の編集者の一人として、読者に臨床的な症例研究の投稿することを推奨する。
著者
Sayaka Sato Ryo Ninomiya Kengo Tosaka Yorihiko Koeda Tetsuya Fusazaki Hajime Kin Yoshihiro Morino
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Reports (ISSN:24340790)
巻号頁・発行日
pp.CR-23-0039, (Released:2023-04-26)
参考文献数
20
被引用文献数
2

Background: Transcatheter aortic valve (TAV)-in-TAV is an attractive treatment for degenerated TAV. The risk of coronary artery occlusion due to sequestration of the sinus of Valsalva (SOV) in TAV-in-TAV has been reported, but the risk in Japanese patients is unknown. This study aimed to investigate the proportion of Japanese patients who are expected to experience difficulty with the second TAV implantation (TAVI) and evaluate the possibility of reducing the risk of coronary artery occlusion.Methods and Results: Patients (n=308) with an implanted SAPIEN 3 were divided into 2 groups: a high-risk group, which included patients with a TAV–sinotubular junction (STJ) distance <2 mm and a risk plane above the STJ (n=121); and a low-risk group, which included all other patients (n=187). The preoperative SOV diameter, mean STJ diameter, and STJ height were significantly larger in the low-risk group (P<0.05). The cut-off value for predicting the risk of SOV sequestration due to TAV-in-TAV in the difference between the mean STJ diameter and area-derived annulus diameter was 3.0 mm (sensitivity 70%; specificity 68%; area under the curve 0.74).Conclusions: Japanese patients may have a higher risk for sinus sequestration caused by TAV-in-TAV. The risk of sinus sequestration should be assessed before the first TAVI in young patients who are likely to require TAV-in-TAV, and whether TAVI is the best aortic valve therapy must be carefully decided.
著者
橋本 壽夫
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.222-237, 1991 (Released:2013-02-19)
参考文献数
7
著者
小林 博文 山路 敦 増田 富士雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.286-299, 2005 (Released:2005-09-01)
参考文献数
44
被引用文献数
16 15

能登半島輪島地域の下部中新統は,扇状地成ないしファンデルタ成の砕屑岩層からなり,浅海成ないし広大な湖の浅部で堆積した薄層を数層準に挟む.積算層厚が1800 mを越えるこの地層中には傾斜不整合が複数認められ,それらによって層序が区分される.複数の鍵層を追跡することにより,地質図規模の正断層が推定された.また,頻繁にみられる小断層は,様々なトレンドの斜めずれ正断層を主とする.規模の異なるこれらの断層は,ともに東-西ないし北東-南西方向の伸長変形を示す.しかしこの地域の中部中新統以上の海成層には同様の変形がみられない.したがってこれは,前期中新統の堆積時の変形であったと考えられる.この伸長方向は能登半島北東部から報告されたグラーベン群の示唆する伸長方向と直交するが,半島西側の海域で発見された下部中新統のグラーベン群のそれとは調和的である.このことから日本海拡大時,西南日本は複雑なブロック化をしつつ移動したらしい.
著者
笹原 和俊 杜 宝発
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.65-77, 2019-12-31 (Released:2020-01-18)
参考文献数
10

道徳は人々を結びつけ,集団を形成する原動力になる一方で,集団を敵と味方に分断し,対立を生む要因にもなる。ソーシャルメディアはこのプロセスに関与し,場合によってはそれを加速させる危険性もある。本論文では,Twitterから収集した大規模なLGBT(性的少数者)関連の投稿(ツイート)を分析し,ソーシャルメディアにおける道徳的分断の実態を調査した。LGBTをめぐる社会の動向には,多様性を目指す社会にとって重要な道徳的問題が含まれる。LGBTツイートの拡散をネットワーク分析によって調べたところ,高い道徳的類似性(ホモフィリー)を持つ少数のコミュニティが形成されていることがわかった。さらに,英語と日本語の道徳基盤辞書(MFD及びJ-MFD)を使ってLGBTツイートの投稿内容を分析したところ,英語でも日本語でも共通して,LGBTは忠誠基盤の問題,つまり,集団に関わる道徳的問題として語られていることがわかった。また,忠誠基盤に加え,あるコミュニティは擁護基盤,別のコミュティでは権威基盤という具合に,コミュニティによって異なる道徳基盤を重視する傾向があることも示された。このことが道徳的分断と関係している可能性がある。これらの結果は,ソーシャルメディア上の道徳的分断を計算社会科学のアプローチで理解し,道徳的分断を緩和するための方略を考える上で重要な示唆を与える。
著者
Keisuke Kuwahara Toru Honda Tohru Nakagawa Shuichiro Yamamoto Takeshi Hayashi Tetsuya Mizoue
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.94-98, 2018-02-05 (Released:2018-02-05)
参考文献数
24
被引用文献数
6 11

Background: Data on the effect of physical activity intensity on depression is scarce. We investigated the prospective association between intensity of leisure-time exercise and risk of depressive symptoms among Japanese workers.Methods: The participants were 29,052 employees (24,653 men and 4,399 women) aged 20 to 64 years without psychiatric disease including depressive symptoms at health checkup in 2006–2007 and were followed up until 2014–2015. Details of leisure-time exercise were ascertained via a questionnaire. Depressive states were assessed using a 13-item questionnaire. Multivariable-adjusted hazard ratio of depressive symptoms was estimated using Cox regression analysis.Results: During a mean follow-up of 5.8 years with 168,203 person-years, 6,847 workers developed depressive symptoms. Compared with workers who engaged in no exercise during leisure-time (0 MET-hours per week), hazard ratios (95% confidence intervals) associated with >0 to <7.5, 7.5 to <15.0, and ≥15.0 MET-hours of leisure-time exercise were 0.88 (0.82–0.94), 0.85 (0.76–0.94), and 0.78 (0.68–0.88) among workers who engaged in moderate-intensity exercise alone; 0.93 (0.82–1.06), 0.82 (0.68–0.98), and 0.83 (0.71–0.98) among workers who engaged in vigorous-intensity exercise alone; and 0.96 (0.80–1.15), 0.80 (0.67–0.95), and 0.76 (0.66–0.87) among workers who engaged in both moderate- and vigorous-intensity exercise with adjustment for age, sex, lifestyles, work-related and socioeconomic factors, and body mass index. Additional adjustment for baseline depression score attenuated the inverse association, especially among those who engaged in moderate-intensity exercise alone.Conclusions: The results suggest that vigorous-intensity exercise alone or vigorous-intensity combined with moderate-intensity exercise would prevent depressive symptoms among Japanese workers.
著者
古川 邦之 谷 健一郎 金丸 龍夫 星 博幸
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.325-340, 2023-04-14 (Released:2023-04-14)
参考文献数
47
被引用文献数
1

中部地方の下部中新統である,師崎層群日間賀層および山海層下部と瑞浪層群明世層狭間部層における軽石質凝灰岩の対比について検討した.日間賀層および山海層下部の試料からはそれぞれ,狭間部層の年代と調和的な17.87±0.75 Maおよび17.36±0.40 MaのジルコンU-Pb年代が得られた.また日間賀層の古地磁気は山海層下部や狭間部層と同じく逆極性であった.つまりこれら3層はいずれも古地磁気年代のクロンC5Drに相当すると結論できる.EPMA分析から,山海層下部と狭間部層の試料に含まれる火山ガラスは組成変化図において一連のトレンドを示し,3層に含まれる斜長石組成は類似していた.つまりこれら3層の火山砕屑物は同一のマグマ供給系を起源とすると考えられる.以上の結果と古水深から,本研究対象の師崎層群の軽石質凝灰岩は,狭間部層の火山砕屑物が海底を流下して堆積したと考えられる.
著者
川瀬 啓祐 椎原 春一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.65-70, 2018-09-28 (Released:2018-12-05)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

大牟田市動物園では飼育管理の一部として多くの動物種を対象に体重測定,検温や採血に対してハズバンダリートレーニングを取り入れている。ハズバンダリートレーニングを取り入れることによって,これまで診察および検査に機械的保定や化学的保定が必要であった霊長類や大型ネコ科動物などにそれらの保定を行うことなく,行動的保定により採血などを行うことが可能になった。 採血により得られた血液検査値は,他園と共有することでデータの蓄積を行い,健康管理に役立てている。また,一部の動物では人工採精のトレーニングも取り入れており,動物園動物の繁殖にも寄与できる可能性がある。また,定期的な採血が可能となれば,薬剤成分の血中動態も把握することが可能であり,今後の獣医療の発展に寄与できるであろう。ハズバンダリートレーニングを取り入れると多くの知見を得る機会が増える。そういった知見をもとに多くの園館や大学との研究機関と連携,協力することが可能となれば,今後の動物園での研究や獣医療が大きく進展するだろう。