著者
宮本 旬子
出版者
鹿児島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

<目的> キヌガサソウKinugasa japonicaは日本固有のユリ科の多年草で、染色体数は2n=40の8倍体である。ツクバネソウ属Parisやエンレイソウ属Trilliumと形態的共通点があり、2属間の雑種起源ともいわれる。本研究では、スライドグラス上でキヌガサソウの染色体DNAにParisやTrilliumの全DNAを結合させたとき双方の塩基配列が似ていれば良く結合し異なれば結合しないことを利用して、キヌガサソウの40本の染色体中にParisやTrilliumの染色体と似た遺伝子配列を持つ染色体が在るか否かを調べることを目的とした。<方法> まずParisとTrilliumの2倍体種の葉からCTAB法によって全DNAを抽出して蛍光標識した。ゲノムin situハイブリッド法(GISH)によりこれらの全DNAをスライドグラス上に展開したキヌガサソウの染色体に結合させ、蛍光顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察し、蛍光強度から結合の程度を検討した。<結果> parisかTrilliumいずれのDNAを用いた場合でも、キヌガサソウの各染色体上に部分的にプローブDNAの存在を示すシグナルが現れた。このことはParisやTrilliumの塩基配列と良く似た配列がキヌガサソウの染色体上に存在することを示しているが、キヌガサソウの40本の染色体の中に現生のParisとTrilliumの染色体と全く相同な染色体が半々ずつ存在しているわけではないことも明らかになった。以上の研究結果の一部を平成6年にKEW Chromosome Conference(イギリス)、日本植物学会大会(札幌)、および染色体学会年会(高知)において公表したほか、本研究に関する論文を現在投稿中である。
著者
半藤 逸樹 辻村 優英
出版者
新潟大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

多極政府モデルを「善意のシステム化」を維持するクラウド・ガバナンスと仮定した上で,HANDYモデルと結合させて自由度6の力学系を構築し,パラメータの調整を行った.社会変革のシナリオについては,ステークホルダー会議でのフィードバックを取り入れた.Android/iOS対応 アプリ「環境観でつながる世界」によって,地球環境問題に関する大衆(クラウド)の価値観ネットワークの基礎データを収集し,ネットワークの時系列変化を可視化した.「善意のシステム化」モデルについては,アプリの運用再開後に再度調整を行い,2019年に公開する予定である.
著者
西川 光一
出版者
群馬大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

麻酔薬のなかには"逆行性健忘"と呼ばれる現象を起こすものがある。麻酔薬による記憶障害や健忘が、シナプスレベルでの可塑的変化とどう関連するのだろうか?今回私達は、ラット海馬スライス標本CA1領域で興奮性シナプスの長期増強現象(Long-term potentiation : LTP)を観察し、それに対するセボフルランの影響を調べることを研究目的とした。【方法】深麻酔下のSDラット(60-80g)から脳を取り出し、500microのスライス標本を作製した。海馬CA1領域でSchaffer-collateral-commissural (SCC) fibersに0.1Hz程度のテスト刺激を加え、記録が安定したところで条件刺激(100Hzの高頻度テタヌス刺激)を用いてLTPを誘導し記録した。セボフルランは酸素化したACSFとともに条件刺激の約30分前から投与した。臨床使用濃度と低濃度のセボフルランを用いてその影響を観察した。【結果】臨床使用濃度セボフルランはLTPの誘導、維持ともに抑制した。低濃度セボフルランは部分的にLTPの誘導を抑制した。そこで、GABA受容体拮抗薬であるBicuculline、 NMDA受容体拮抗薬であるMK-801存在下で同様の実験を行った。10μM Bicuculline存在下で低濃度セボフルランによるLTPの抑制は起きなかった。臨床使用濃度セボフルランではLTPは部分的に誘導されたが、維持は抑制されたままだった。1μM MK-801存在下で、LTPは誘導されセボフルランによる影響に違いは見られなかった。【結論】セボフルランはLTPを抑制する。低濃度の場合はGABA作動性ニューロン活性化が関与し、臨床使用濃度になると興奮性ニューロン抑制作用も加わってLTPを抑制したものと思われる。
著者
岩山 海渡
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

早朝空腹時(朝食前)の運動が24時間の脂肪燃焼量に及ぼす影響を検討した。本年度は早朝空腹時に運動することが24時間の脂肪燃焼量を増大させるか否かを明らかにする研究を実施した。運動するタイミングを変えた3試行(朝食前運動、昼食後運動、夕食後運動)に運動をしない24時間の測定(対照試行)を加えた計4試行を設定し、いずれも24時間のエネルギーバランスが等しい条件(摂取量=消費量)にて24時間の脂肪燃焼量を比較した。その結果、昼食後または夕食後に運動する試行では約500kcalの運動をしたにも関わらず、24時間の総脂肪燃焼量は特別な運動をしていない対照試行と有意な差がなかった。これは運動することでエネルギー消費量を増大させても、エネルギーバランスが等しい条件ならば脂肪燃焼量は増大しないという先行研究と一致する結果であった。しかし一方で、朝食前に運動する試行では、対照試行を含む他の3試行よりも24時間の総脂肪燃焼量が有意に増大した。これにより朝食前に運動することで24時間の脂肪燃焼量を増大させることが明らかになり、運動すること自体が脂肪燃焼を増大させるわけではないとの先行研究に対する明確な反証となった。本研究の結果から、朝食前の運動は運動中のみならず24時間における脂肪からのエネルギー供給を増大させ、体脂肪減少に効果的なタイミングであることが示唆された。今後は中長期的に朝食前の運動を継続することが脂肪燃焼量に及ぼす効果を検討することにより、効率よく体脂肪を減らす運動のタイミングを提言することができると考えられる。
著者
伊藤 穣
出版者
独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は,低酸素環境と高酸素環境との組み合わせを用いて,スプリント競技や球技など比較的高強度のスポーツ種目に対して効果的なトレーニング(低酸素、高酸素複合トレーニング)プログラムについて体系的に明らかにすること,およびオリンピック等の国際大会における日本選手のさらなる飛躍に向け,世界に先駆けて実践することである。この目的を達成するため,本研究では,以下の課題を設定している。【研究課題1】低酸素、高酸素複合トレーニングプログラムの開発 課題1-1負荷特性の相違の検討 課題1-2トレーニング効果の検討課題1-3個人差の検討【研究課題2】低酸素、高酸素複合トレーニングプログラムの実践 このうち,平成19年度は,平成17〜18年度の結果を受け,低酸素環境下における高強度運動時の負荷特性ついて再検討した。具体的には,男子大学生8名を対象として,低酸素環境下(標高3000m相当)または常酸素環境下において自転車エルゴメータを用いた30秒間の全力ペダリング運動を実施させ,運動の前後に,筋バイオプシー法による筋サンプルの連続採取を実施することによって筋中エネルギー基質の変化を比較した。ここで,筋サンプル採取のタイミングは,運動前,運動終了直後,30秒後,1分後,2分後および5分後とした。その結果,外界の酸素濃度に差があるにも関わらず,発揮パワーには環境間で差が認められなかったこと,および筋中乳酸濃度が低酸素環境下で高値を示す傾向が認められたことから,低酸素環境下における全力ペダリング時には,筋エネルギー代謝がシフトしている可能性も考えられた。本研究の結果は,低酸素環境を用いたトレーニングによってスプリント能力を向上させることができる可能性を示した点において,高強度な運動形態を有する多くの競技現場に対して有益な示唆を与えるものと考えられる。
著者
小山 友介
出版者
芝浦工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

近年アニメ聖地巡礼が話題となっている.本研究では4地域での来訪者調査および複数個所での関係者ヒアリングを元に,アニメ聖地巡礼が地域に与える影響を考察した.アニメ聖地巡礼者は当初は作品の舞台を見るためにその地域を訪問するが,一部の巡礼者は現地の人との交流や同行の士である聖地巡礼者の交流のために熱心なリピーター化する.熱心なリピーターは地域に利するように見えるが,排他的な雰囲気を醸成し,他の一見的な来訪者を寄せ付けなくするリスクを伴っている.また,多くの人が現地を訪ねる期間はそれほど長くなく,聖地となった街は最終的な着地点をどうするかについて対処が必要となる.
著者
金子 寛
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

エリスロポエチン(EPO)は赤血球造血を亢進させるサイトカインであり、低酸素刺激に応答してその発現量は増強される。しかし、近年、上皮系細胞の一部では、EPO遺伝子の発現がGATA転写因子群によって抑制されていることが示された。本研究では、遺伝学的および薬理学的手法によるGATA因子の機能抑制が、EPO発現の抑制を解除し、酸素濃度に依存せずに、異所性にEPO発現を誘導することを明らかにした。本研究成果は、EPO産生量低下に起因する腎性貧血治療の新しい創薬標的を切り開くものである。
著者
岡本 雅史 阪田 真己子 細馬 宏通
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-07-18

まず、代表者岡本は、一人の話者の語りが中心となる演芸である落語と漫談に着目し、前者においてマクラから本題へと語りのモードが転換する場面において言語的な境界を示しつつも、非言語的・パラ言語的モダリティの層においてはその境界と時間的に一致しないことを明らかにし、語りの受け手に対する二重の境界設定がプロの噺家の語りの特徴であることを示唆した。一方、後者については、一人語りの中にも仮想的な対話場面の再現が万段において頻出することを示し、仮想的な語り手を導入する際の引用標識の戦略的な脱落が受け手の物語認知にとって有効な手段であることを明らかにした。いずれも社会言語科学会第41回大会で報告された。次に、分担者阪田は、観客も漫才対話を支えるコミュニケーションの参与者であると仮定し、観客の存在が、漫才師のパフォーマンスにいかなる影響を与えているかを検討した。プロの漫才師による実証実験を実施し、ボケ、ツッコミという役割によって観客による影響の受け方が異なること、オープンコミュニケーションの参与者として、漫才師と観客が相互参照的な関係にあることを明らかにした。研究成果は、電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーション基礎研究会、および国際会議International Conference on Culture and Computingにて報告された。一方、分担者細馬は、漫才におけるボケとツッコミの身体動作と発話との時間関係に注目し、ボケによる笑いの認知点以外に、ツッコミとボケのマルチモーダルな行為関係が笑いに寄与している可能性について調査している。特に、センターマイクによって身体動作が制約を受けていた時代の漫才と、コンタクトマイクなどを用いて身体動作の自由度が増した時代の漫才を比較することで、近年の漫才が必ずしもマイクという資源の取り合いを前提としない動作を取り入れていることを分析している。
著者
島田 ひろき
出版者
金沢医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

13年度の研究成果より,マウスにおいてパラコート(PQ)解毒系として,肝臓の薬物代謝系酵素(NADPH-cytochrome P450 reductaseおよびCYP3A,2B)が働いていることがin vivo実験で明らかとなった。そこで,本年度はPQ代謝経路がどの様に関わっているかを更に詳細に明らかにするため,マウス肝ホモジネートよりポストミトコンドリア画分,ミクロソーム画分およびサイトゾルを調製し,in vitroでのPQ代謝活性を測定した。マウス肝ホモジネートをPQとNADPHとともに反応させると,PQが減少し,代謝中間体であるparaquat-monopyridone(PM)が生成した。CYP3A阻害剤であるtroleandomycinはPQの減少を抑制し,PMを増加させた。また,PMはミクロソーム画分ではなくサイトゾルで生成していた。フェニトインによってマウス肝のCYP3Aおよび2Bを誘導すると,ポストミトコンドリア画分でのPM生成が減少したが,サイトゾルでは変化が見られなかった。これらの結果より,PQはサイトゾルでPMとなった後,小胞体薬物代謝酵素系によって水酸化解毒されることが明らかとなった。これまでに我々はPQ毒性発現がミトコンドリアにおけるフリーラジカル生成によるものであること,細胞膜透過性フリーラジカルスカベンジャーが毒性を抑制することを明らかにしている。そこで次に,リファンピシンやフェニトイン処理によってCYPを誘導したマウスにPQを投与し,引き続きフリーラジカルスカベンジャーであるα-トコフェロール(α-T)を繰り返し静注投与した。その結果,PQ単独投与では生存率が40%だったのに対し,CYP誘導とα-T投与によって100%にまで回復した。以上のことから,PQ中毒においてCYP誘導とα-T投与が有効な治療となりうることが強く示唆された。
著者
安部 友佳
出版者
昭和大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

顎口腔系に破壊的な作用をもたらす睡眠時ブラキシズムは補綴歯科治療の予後を左右する重要なリスクファクターであるが、その発症メカニズムは明らかでない。本研究では、研究代表者が過去に示した遺伝子多型リスクアレルを指標に、睡眠時ブラキシズム特異的 iPS細胞を樹立して神経細胞を誘導してその表現型の電気生理学的特性を明らかにすることを目的としている。2016年度までの時点で、セロトニン2A受容体遺伝子(HTR2A)のrs6313(T102C)の一塩基多型(SNP:single nucleotide polymorphism)の解析を行い、睡眠ポリグラフ(PSG)検査を用いた睡眠時ブラキシズムの診断とリスクアレルであるC alleleの有無が合致する被験者(睡眠時ブラキシズム群3名、コントロール群3名)を選定してiPS細胞から神経細胞を分化誘導した。2017年度には、それらの誘導した神経細胞の中からセロトニン2A受容体発現神経細胞を識別するため、Venusを挿入したレポーターレンチウイルスを作成して浮遊培養開始後12日目に神経細胞に感染させた。その結果、レポーター蛍光反応を示す細胞が識別可能であることを確認した。さらに、電気生理学的検討を行っていくために、睡眠時ブラキシズム患者由来の神経細胞と、コントロール群由来の神経細胞からそれぞれ、前述の方法にてセロトニン2A受容体発現神経細胞を選択し、ホールセルパッチクランプを行った。その結果、生体の神経細胞と同様の、静止膜電位と、電圧負荷をかけた際の活動電位の発生を確認した。
著者
山下 哲郎 宮崎 雅雄 片山 泰章 澤井 健
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ネコは尿に分子量7万でエステラーゼ活性を持つコーキシンを大量に分泌している。我々はこれまでにネコの尿に含まれる特異なアミノ酸フェリニンの生産にコーキシンが関与していることを見いだした。しかしネコがなぜコーキシンを尿に大量分泌してフェリニンを生産しているか、他に生理機能があるか未解明である。そこで本研究では、コーキシンの遺伝子欠損ネコを作成し、コーキシンの機能解明を目指すための基礎的研究を行った。具体的にはネコ尿主要タンパク質コーキシンの機能解明を行うために人工DNA制限酵素「TALEN」をネコの受精卵に作用させコーキシン配列の破壊を行い、コーキシン遺伝子欠損ネコ作成を試みた。
著者
天野 秀臣 柿沼 誠
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は海藻の血液循環障害防止効果と食品への応用を目的とし、各種食用海藻の血液凝固抑制効果、赤血球変形能向上効果、血小板凝集抑制効果を、試験管内や動物試験により調査し、有効海藻を用いて海藻食品を試作したものである。海藻の血液凝固抑制効果の調査及び赤血球変形能の増大に及ぼす海藻成分を調べたところ、凝固時間はヒジキが93%,ワカメ95%,ヒドエグサ97%,コンブ98%に下がった。各種成分について有効性を調べたところ,ミネラルがヒジキで18%,ワカメとヒトエグサで14%,コンブで11%もの赤血球変形能向上効果が見られた。その効果はCaとMgの比率によると考えられた。その他、リン脂質、κ-カラゲナン、ポルフィラン、ヒトエグサのD-システノール酸も有効であった。ヒトエグサのミネラルは赤血球変形能向上効果のみならず、変形能の低下を防止する効果も強かった。次いで動物試験によりヒトエグサ藻体及びそのミネラルについて、全血流動性が向上するかを調査した。その結果、ヒトエグサミネラルは、赤血球変形能悪化、APTT短縮、血小板凝集能亢進を効果的に抑制できることがわかった。その作用因子は、ヒトエグサミネラル中に含まれる、クロム、セレン、マグネシウムである可能性が示された。ヒトエグサを用いて,ミネラルの他に血小板凝集抑制効果のあるD-システノール酸を含む新規佃煮を開発することができた。以上の結果,ヒトエグサを食事に積極的に取り入れることにより,赤血球変形能の悪化や血栓の形成を防ぎ、血液流動性をスムーズに保ち、健康な生活を送ることができる可能性が示された。
著者
前田 浩 宮本 洋一 澤 智裕 赤池 孝章 小川 道雄
出版者
熊本大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2000

固型癌のうち、胃癌、肝癌、子宮癌などの原因が細菌やウイルスによることが次第に明らかになってきた。さらに、胆管や胆のう癌、食道癌も何らかの感染症に起因する容疑が濃くなってきた。これらの感染症と発癌に共通の事象として、それが長期にわたる慢性炎症を伴うこと、また活性酸素(スーパーオキサイドやH_2O_2、あるいはHOCl)や一酸化窒素(NO)などのフリーラジカル関連分子種が宿主の炎症反応に伴い、感染局所で過剰に生成していることである。さらに重要なことは、これらのラジカル分子種はDNAを容易に障害することである。そこで本研究では、微生物感染・炎症にともない生成するフリーラジカルと核酸成分との反応を特に遺伝子変異との関係から解析した。また、センダイウイルス肺炎モデルを作製し、in vivoでの遺伝子変異におけるフリーラジカルの役割を検討した。その結果、過酸化脂質がミオグロビン等のヘム鉄存在下に生じる過酸化脂質ラジカルが、2本鎖DNAに対して変異原性のある脱塩基部位の形成をもたらした。また、上記ウイルス感染においては、スーパーオキサイドラジカル(O_2^-)と一酸化窒素(NO)の過剰生成がおこることを明らかにしたが、この両者はすみやかに反応してより反応性の強いパーオキシナイトライト(ONOO^-)となる。ONOO^-とDNAやRNAとの反応では、グアニン残基のニトロ化が効率良くおこり、さらに生じたニトログアノシンがチトクロム還元酵素の作用によりO_2^-を生じることが分かった。このONOO^-がin vivo,in vitroいずれにおいてもウイルス遺伝子に対して強力な遺伝子変異をもたらすことを、NO合成酵素(NOS)ノックアウトマウスやNOS強制発現細胞を用いて明らかにし、上記の知見が正しいことを確認した。
著者
田島 悠来
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、日本全国の特定の地域(場所)に根ざした活動を行う「ご当地アイドル」について、フィールド調査を実施し、持続的かつ実効性の高い地域振興のあり方を探った。具体的には、いくつかの資料によって選出した「ご当地アイドル」のうち、継続的な活動を実施しているグループを対象にして、インタビュー調査および関連性のあるイベントでの参与観察を通じて、活動拠点となる地域側にいかなる効果があると言えるのかを考察した。以上の結果、「ご当地アイドル」のパフォーマンスは、若い世代が主体となった地域振興の可能性を提示していること、持続性のために地域外部の資本や技術を補完的に導入する必要があることが明らかとなった。
著者
堀池 巧 前鼻 啓史
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

国内サッカーにおいては、ポゼッションプレイを基盤とした戦い方をするチームがあらゆるカテゴリーを超えて増えてきている。一方、ポゼッショントレーニングの熟達に従い、試合で発現される動作とそれに伴う運動強度について定量化した報告は数少ない。ポッゼッショントレーニングの熟達による影響を調査することは、選手のポゼッションスキルを促進させるコーチングポイントを検討する上で意義があると思われる。そこで本研究は、ポゼッショントレーニングの熟達差が試合での加速および減速とそれに伴う運動強度にどのような影響を及ぼすか明らかにすることを目的とした。本研究の対象は、日本の大学サッカー選手60名であり、同チームのうち競技レベル別にファーストチームとセカンドチームに分けた。試合中のランニングパフォーマンスおよび心拍数として測定されたデータは、GPSおよび短距離無線テレメトリーを用いて収集した。ボールポゼッションとして測定された技術的パフォーマンスのデータはnotational analysisを用いて収集した。結果、ランニングパフォーマンスとボールポゼッションに関する関係は競技レベルで異なる特徴が示された。
著者
富田 康治 黒河 治久 神村 明哉
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

グラフオートマトンは、構造を変化させるルールと、ルールの適用を制約する構造との間の相互作用を記述する数理モデルである。この枠組み上の構造の生成とその解析に関する研究を発展させ、局所的に周期的動作する構造がグラフ上に分散し相互作用する系の自己組織過程の研究を行った。特に、各ノードに位相を導入して振動子として取扱い、各々が蔵本モデルに基づく相互作用を行う場合を扱った。各ノードの振動数がノードのグラフオートマトンの状態によって決定される場合に、状態とグラフ構造の間の自己組織化に加えて、位相と状態の間にも自己組織的関係が導入されることを、シミュレーションを行い確認した。
著者
太田 暁子
出版者
東京音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は17世紀後半から現在に至るまで語り継がれ、「音曲の司」と称されてきた浄瑠璃の一派「義太夫節」の実態を、三味線譜の解釈を主たる手段として具現化し、音楽面における歴史的変遷を明らかにすることを目的とした。三味線音楽の中でも特に語りの要素の強い義太夫節の旋律の実態を知るには、浄瑠璃譜に三味線譜が併記されていることが大きな助けとなる。本研究では義太夫三味線の旋律が歴史的にどのように変遷したのかを辿り、現在演奏されている義太夫節の旋律と比較しながら音楽の変遷を辿ることを試みた。復元した旋律は五線譜化し、義太夫三味線古譜の解釈を広く公表するとともに五線譜での現行旋律との比較も行った。
著者
藤本 亮 野口 裕之 藤田 政博 堀田 秀吾 小谷 順子 宮下 修一 吉川 真理 正木 祐史 和田 直人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

TOEFLやTOEICなどで用いられている等化という方法によって、異なった試験の成績を比較することができるようになる。こうした成績測定の分野はテスト理論として研究されている。本研究は、テスト理論の見地から、複数の法律学試験において等化を行い、その下でも成績測定が適切に行えるかを検証している。法律学試験は「資格試験」として実施されることが多いが、実質的には一回限りの競争試験となっている。この研究は、本来の意味での資格試験としての法律学試験の可能性を探る基礎研究である。
著者
竹林 洋一 石川 翔吾 桐山 伸也 堀内 裕晃 北澤 茂良
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

1.認知症ケア技法ユマニチュードに着目し,BPSDに対するケア行為に意味付けし,意図感情知識表現モデルを設計した.本モデルによって,ケア行為と認知症の人との関係を評価できることを示した.2.WebベースのBPSDビューアを活用し,ケースカンファレンスを専門家と継続的に実施した.実践したアプローチによって知識や分析結果を蓄積し,継続的に評価,修正できることが示された.3.コーパス構造を活用し,ケア支援知識コンテンツとして,認知症の見立てに関する知識コンテンツ,及び認知症ケアスキルに関する知識コンテンツを開発し,認知症ケアの改善に有効であることが示された.
著者
井手 香織
出版者
東京農工大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

犬において腸管型アルカリフォスファターゼ(iALP)は、結腸よりも十二指腸の粘膜上皮細胞で多く存在し、かつ活性を有していることが明らかとなった。さらに、、細菌由来内毒素であるリポ多糖類(LPS)を脱リン酸化するという腸粘膜防御機構として重要な作用も有していることが証明された。便中 iALP濃度は犬の炎症性腸疾患症例のうち、臨床スコアの高い重度な症例において、健常犬よりも高い傾向が認められた。