著者
柳沢 忠 米山 弘一 吉田 雅夫 菅野 長右エ門 山根 健治 沖野 龍文 TRAGOONRANG ソンボング KETSA Saicho
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

タイ国では暑い気候も幸いして農水産物はかなり大量に収穫されている。しかしながら、暑い気候のために腐敗して捨ててしまっている一次産物も多い。高度利用のたのPostharvest studiesが要求されている。本計画ではタイ国における農水産物の高度利用研究のための基盤をいかに築いていくかを調査し、具体化する方策を探ることを目的とした。本研究は2つのプロジェクトから成り立つ。1.タイ国の代表的で豊富に栽培されている園芸作物(例えばカトレアなど花類)を長期に保持させるために、内生植物生長調節物質を特定すること、および化学薬品をどのように処理するかについての観察調査。この研究には、吉田、米山、山根、Saichol Ketsaがあたる。2.タイ国の代表的で豊富に養殖されているエビ類の耐病性や過密養殖に耐えられる種類を特定すること、およびDNA分析によってどのDNAが関与しているかを特定すること。この研究には、柳沢、菅野、沖野,Somvong Tragoonrungがあたる。両大学の研究者が共同して考察検討を行い、対処法をカセサート大学側の研究分担者が行う。得られた結果について宇都宮大学において共同で検討してこの問題の解決にあたる。3年間に渡ってお互いに相互訪問をした。特に2年目の1999年にはチェンマイ市郊外のロイヤルプロジェクト農場(宮内庁農場にあたる、カセサート大学の農場実習の場でもある)を訪問した。3年目の2001年にはプーケット島(エビの養殖試験場)および近くのカセサート大学クラビキャンパス(7番目)を訪問した。協力研究者のSaichol Ketsa教授は宇都宮大学で山根健治助教授らと共同研究を行うとともに、バナナのポストハーベストの方法について宇都宮大学において講演をして頂いた。最後の2001年1月には日本側6名(柳沢、吉田、山根、米山、菅野、沖野)全員がバンコク市のカセサート大学を訪問して、今後の研究について検討した。
著者
浅野 秀剛 中部 義隆 瀧 朝子 宮崎 もも 古川 攝一 植松 瑞希 西田 正宏 大平桂一 桂一 徳原 賜鶴子 田中 宗博
出版者
公益財団法人大和文華館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

物語の絵画化をめぐる諸問題について、物語・和歌系、説話・仏典系、童蒙・勧戒系の三つのグループを中心に研究を進めてきた。特に、『徒然草』と、能・幸若舞・歌舞伎といった舞台芸能のテクストの絵画化をめぐっては、シンポジウムを開催し、国文学・美術史、双方の立場から発表・議論を行い、その問題点や特色について理解を深めることができた。2013年度末には、これまで5年間に行った研究会、シンポジウム、展覧会の成果を報告書にまとめた。
著者
大和田 勇人 青木 伸 西山 裕之
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

リガンドデータベースを活用した機械学習によるたんぱく質と化合物の結合予測を行った。インシリコ創薬は薬として有望な化合物(リガンド)をコンピュータで選別する手法であるが、ここでは化合物の化学的性質をからSupport Vector Machine(SVM)による機械学習に加えて、化合物の構造を学習するInductive Logic Programming(ILP)を組み合わせ、予測精度の向上を図った。次に、がん放射線治療の副作用低減のためにp53標的放射線防護剤を候補化合物を予測することをターゲットにした。その成果はジャーナルや国際会議で発表した。
著者
田仲 持郎 入江 正郎 高橋 英和 中村 正明
出版者
岡山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

現在,医療用及び工業用レジン系材料にとって,その機械的及ぶ物理的物性を改善するために可塑剤は不可欠な存在であるが,近年,可塑剤及び構成モノマーの内分泌攪乱作用が指摘されるようになってきた.その主因はフタル酸エステルやビスフェノール-Aに代表されるような芳香環をその分子内に持つことと考えられ,芳香環を分子内に持たない可塑剤やモノマーを用いて,所期の物性を持つレジン材料の開発が望まれている.また,ビニル系レジン材料にとって,重合収縮は避けられない問題であり,その使用にあたって種々の弊害の主因となっている。重合収縮を小さくする工夫としては,スピロ環などの開環重合を可能とする重合性基の導入によるモノマー自身の重合収縮の減少や複合化による見かけ重合収縮の減少など,数多くの試みがある.我々は,MMA/PMMA系義歯床用レジンに代表されるポリマー粉部とモノマー液部を混和して膨潤溶解を待ち,餅状化した樹脂組成物を重合する手法を応用して,見かけ重合収縮率の少ない高性能歯科用レジンを開発している.その過程で,重合性基を持つビニルエステルを液部とし,各種重合体を粉部として混和した樹脂組成物を調製したところ,極めて短時間に膨潤溶解が進行し,餅状化することを見い出した.先ず最初に,ポリメタクリル酸エチル(PEMA)を粉部とし,ビニルエステルを液部として混和した軟性樹脂組成物の軟性裏装材としての可能性に関して,ビニルエステルの分子量とその分子構造の観点から詳細な検討を加えた.その結果,ビニルエステルはエチルアルコールを用いることなく,PEMAを膨潤溶解させることが出来,その軟性樹脂組成物のゴム弾性は従来の軟性裏装材と同様であることを明らかにした.次の段階として,その餅状化物中のビニルエステルを重合することにより,硬化物の中に従来の概念の可塑剤が存在しないこととなる.また,脂肪族系ビニルエステルを用いた時,その樹脂組成物の細胞毒性は従来の軟性裏装材よりも小さかった.
著者
相馬 幸作 増子 孝義 林田 まき
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

北海道では、野生エゾシカによる農林業被害が深刻化し、その対策として生体捕獲ジカの短期飼育による有効活用(一時養鹿)が行われている。本試験では、一時養鹿に必要なエゾシカの短期飼育肥育特性の解明を目的とした。増体について、成獣雌鹿は出産や授乳の影響により増体量が低かった。成獣雄鹿も増体量は低いが、得られる肉重量は最も高かった。満1歳鹿は雌雄ともに肉重量は低かったが、増体量が高く、飼料効率は高かった。また、成獣では飼育環境により解体時期による肥育成績の差は出ないことが推察された。代替飼料の給与について、製造副産物などの代替飼料の活用により生産費の低減が可能であることが推察された。
著者
川村 軍蔵 安樂 和彦
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1)蛍光灯照明下においてキンギョを用いて縦縞と横縞を識別する学習を完成後、紫外線LED照射下において紫外線反射縞模様に置き換えて識別学習行動をみた。供試魚は紫外線模様に対して識別行動を示さなかったことより、紫外錐体のみでは高度な形状識別が困難であると考えられた。2)上記の実験方法を変えて、心電図条件付法による形状識別能を確認する実験を行っているが、まだ結論を得られていない。3)紫外線LED照射下においてウグイを用いて紫外線縞模様に対する視運動反応を調べた。視運動反応装置内において、ウグイは弱い視運動反応を示したことより、紫外線視覚で運動視は可能であるが通常光下における反応より精度が低いと考えられた。4)上記の実験はテレビでモニタするため背景光に近赤外線(波長860nm)を用いたが、供試魚はこの近赤外線に感度をもつ可能性がみられた。コイを用いて近赤外線応答を網膜電図と心電図法によって調べ、両方で応答が見られた。ティラピアを用いた同様な実験では、波長860nmと940nmに心電図応答がみられ、近赤外線受容器は眼であり、上生体は近赤外線感度をもたなかった。網運動反応による受容視細胞の特定を行った結果、完全な暗順応でも近赤外線に心電図応答があることから、桿体が近赤外線受容視細胞であることが明らかであるが、錐体の可能性は否定できなかった。
著者
岡本 博 矢田 祐之 堀内 佐智雄 鹿野田 一司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

分子内あるいは分子間のπ電子の移動が分極の起源である電子型有機強誘電体(TTF-CA、α-(ET)2I3、クロコン酸)を対象とし、テラヘルツ電場パルスによるサブピコ秒の強誘電分極変調に初めて成功した。また、TTF-CAの常誘電相にテラヘルツ電場を印加することにより、サブピコ秒の時間で強誘電相の約20%の巨大分極を誘起できることを明らかにした。このような高速高効率の分極応答は、電子型誘電体に特有のものであることを示した。本研究で実証したテラヘルツパルスによる分極制御法は、高速の光変調や光スイッチに応用できるものであり、今後、基礎、応用両面からの研究の進展が期待される。
著者
小野 憲司 赤倉 康寛 神田 正美
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

2011年の東日本大震災によるサプライチェーンの寸断から我が国のモノづくり産業が全国規模、世界規模で操業停止した経験に鑑み本研究では、震災の影響が著しかった自動車産業サプライチェーンのモデル化と、災害がサプライチェーンに及ぼす負のインパクトの測定、サプライチェーンマネジメント(SCM)改善策の効果の評価を行った。SCM改善策の評価結果は、①部品在庫の積み増しの効果は低い、②部品調達は海外よりも国内への分散化が効果的、③災害によって生じたサプライチェーンの隘路に対する共同復旧支援の効果は高い等の結果が得られ、我が国の製造業全般の災害時SCMのあり方に示唆を与えるものとなった。
著者
平石 界
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

実験経済学で用いられる経済ゲームでの行動の個人差を双生児データを収集し、遺伝と環境の影響を検討した。統計分析に必要となる多量の双生児データを収集するためにWebサイトを用いて、戦略型の公共財ゲーム実験を実施した。282名の双生児を対象とした実験からは、他者の協力度が低いときの行動には遺伝、家族で共有する環境の影響とも小さいこと、他者の協力度が高いときの行動には、家族の共有環境の影響が大きいことが示唆された。また遺伝的個人差の進化にかんして、パーソナリティが内的環境として働き行動に影響するとした内的環境仮説を提唱し、他者一般への信頼感が、パーソナリティによって影響されることを明らかにした。
著者
本村 政勝 福田 卓 吉村 俊朗
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

LDL受容体関連蛋白質4(Lrp4)抗体陽性重症筋無力症(MG)の臨床像と神経筋接合部病態を解明し「アセチルコリン受容体(AChR)抗体と筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体に次ぐ、第3番目の病因自己抗体になる」という理論仮説を検証した。我々はAChR抗体陰性MG患者から、Lrp4抗体を有する9症例を報告した(Ann Neurol. 2011)。その臨床像は、男女比4対5、発症平均年齢57歳、嚥下障害を主体とする全身型MGで胸腺腫の合併は無かった。神経筋接合部生検は、3例とも運動終板に免疫複合体の沈着は無く、電顕でも運動終板の破壊像は無くAChR抗体陽性MGとは異なるものであった。
著者
野池 達也 李 玉友
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

酢酸単一基質あるいは酢酸、プロピオン酸、n-酪酸から成る混合酸に少量の酵母エキスを添加した基質および前途の混合酸に少量のグルコースを添加した基質を用い、流入COD負荷2・5〜10gCOD・l^<+1>・d^<-1>の範囲で、流入負荷の影響に関する実験を活性炭を担体とする流動床型反応槽を用いて行ったところ、次のような結果が得られた。1.酢酸単一基質を処理するより、少量の有機物を添加するほうが基質除去が改善される。これは、メタン菌とアセトジェニック菌および酸生成菌が共生することにより、メタン生成が促進するためであると考えられる。2.生物膜形成において、酢酸単一基質を用いるよりも、酵母エキスを添加した混合酸基質を用いたほうが、生物膜形成が促進された。3.流動床における菌体保持形態としては、生物膜形成という形以外にも活性炭床部によりフィルター効果による菌体捕捉があり、後者の形態によっても十分高い菌体濃度が維持できる。4.実験を行った流入負荷の範囲において、酢酢単一基質では基質除去率は98.5%以上酵母エキスを添加した混合酸基質では98.8%、グルコースを添加した混合酸基質では99.5%以上の高い基質除去率が得られた。5.最大比COD除去速度は、酢酸単一基質を用いた場合に0.7mgCODmg^<-1>VSS・d^<-1>、酵母エキスを添加した混合酸基質では0.4mgCODmg^<-1>VSS・d^<-1>程度であった。COD負荷に対する床内タンパク質濃度の関係を合わせて考えると、グルコースを添加した混合酸基質では、菌体中での活性のあるメタン菌の占める割合が低いと思われる。嫌気性微生物の担体への付着について、微生物の親水性および疎水性をn-hexadecaneを添加し、菌の分離の様子を観察することにより、酸生成相およびメタン生成相汚混を用いて検討した。
著者
池田 真介
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

非可逆的な意思決定である自殺行動を、広義の人的資本の毀損が最大になるような最適停止問題としてモデル化し、自殺権の経済学的価値を、経済的なパラメータの明示的な関数として表現できることを示した。そして1990年以降の日本経済のデータを基に、当該モデルを特定化し、そのようなモデルが現実の生産年齢の日本男性の平均的自殺率の動向を再現できることを確認した。これと並行して、市区町村別の自殺データに、全国消費実態調査の市区町村別データを組み合わせ、各調査年度ごとの繰り返し横断データベースを作成した。特に、本邦で2005年から2007年にかけておこった大規模合併による市区町村区分の推移を慎重に反映させた。
著者
近藤 寿人 蒲池 雄介
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

細胞分化をすすめる転写制御因子のうち、SOX因子群はとりわけ細胞分化の決定に中心的な役割を果たしている。現在20数種類が知られているSOX因子は、そのアミノ酸配列の類似性から、AグループからGグループまでに分類されている。いずれのSOX因子もHMGドメインによってほぼ同一の塩基配列に結合しながら、制御標的遺伝子も、制御する細胞分化のレパートリーもグループ毎に異なる。SOX2を例として、制御標的遺伝子の一つδクリスタリン遺伝子のエンハンサーに対する制御機構を解析した。δEF3の候補分子を、酵母細胞の中での遺伝子活性化反応によってクローニングした結果それがPax6と同一であることが明らかになった。そしてSOX2,Pax6,エンハンサーDNAの3者の共存によってはじめて、強い転写活性化複合体が形成されることを確認した。このSOX2とPax6の協調による遺伝子の活性化が、水晶体分化の開始反応であると考えられる。SOX因子は、それ単独でDNAに結合しただけでは、SOX因子自体が持つ転写活性化機能を発揮することができず、DNA上の近傍に結合したパートナー因子との協同作用によってはじめて制御活性を示すことを示した。SOXやパートナー因子の発現の変化に連動して、SOXの制御下にある遺伝子のセットが切り替わることが細胞分化の重要な制御機構の一つであると考えられる。SOXグループ毎にパートナー因子が異なるために、グループ毎に特異的な作用がうまれ、SOX因子群が細胞分化のスイッチとして作用する。
著者
福田 宏
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

斉次ポテンシャル-1/r^aおよびレナード=ジョーンズ・ポテンシャル1/r^12-1/r^6で相互作用する等質量3体問題の8の字解のモースインデックスを計算した。モースインデックスとは作用の第二変分を負にする独立な変分関数の個数である。モースインデックスの計算は,変分関数を周期Tの周期関数とした場合,コレオグラフィーに限った場合,8の字コレオグラフィーに限った場合の3通り行った。それぞれのモースインデックスを順にN,Nc,Neとする。斉次ポテンシャル系については,ポテンシャルの指数aに応じて,N=4 (0≦a≦0.9966), 2(0.9966≦a≦1.3424), 0(1.3424≦a),そしてNc=Ne=0 (0≦a)であった。レナード=ジョーンズ・ポテンシャル系については,スケール不変性がないために様々な形と大きさの8の字解が存在するが,標準型8の字解とその大きさを変化させて得られるひょうたん型の解について計算をおこなった。周期Tの大きい標準型の8の字解はa=6の斉次ポテンシャル系の8の字解と同じインデックスをもち,周期を連続的に変化させていくとNは0から12,Ncは0から4,Neは0から1に単調に増加してひょうたん型の解に至ることがわかった。この計算結果は9月に応用数理学会2017年度年会で発表した。その発表でのディスカッションをヒントに,2000年にSimoの発見したコレオグラフィーではないが8の字解に非常に近い周期解,H解とモースインデックスとの関係が明らかになった。また,作用多様体のオイラー標数とモースインデックスの関係を検討し,レナード=ジョーンズ系で周期Tが小さい時では8の字コレオグラフィーの関数空間で定義される作用多様体のオイラー標数が0で保存している事を見出した。
著者
黒木 千晴
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

TRPA1が呼吸ガス中の酸素濃度を体内に取り込む前に感知し、呼吸調節を引き起こす早期警告系としての役割を持っているのではないかという仮説を検証した。鼻腔三叉神経でのTRPA1による軽度低酸素の感知は重度低酸素となる前に、生体防御反応としての覚醒と呼吸の活性化を引き起こし、早期警告系としての役割をもっていることが明らかとなった。
著者
松田 嘉子
出版者
多摩美術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度は、アラブ古典音楽の即興演奏タクスィームに関し、特にマカーム(旋法)の構造と展開について研究を推進した。現地調査はマレーシアで行なった。研究成果展として公開講座「マカームとラーガ2」(多摩美術大学・平成29年12月)を開催した。東京音楽大学小日向英俊氏を講師に迎え音楽家による実演も伴いながら、今回はアラブ音楽の即興演奏「タクスィーム」とインド音楽の「アーラープ」の比較研究を行い、討議した。アラブ音楽ではマカームを転調しながら展開する点がインド音楽とは大きく異なり、観客にもその理解が共有された。他にも、「琵琶とシルクロード」(文京シビックホール・平成29年11月・薦田治子武蔵野音楽大学教授企画)を始めとする多くの公演や講演において、アラブ音楽の真髄であるマカームの構造を実演し解説することに努めた。平成30年3月、ビレン・イシュクタシュ博士を中心とするトルコの演奏家・研究者の企画によりマレーシアで開催されたインターナショナル・シェリフ・ムヒッディン・タルガン・ウード・フェスティバル(クアラルンプール・ユヌス・エムレ研究所)に出演し、自作曲とタクスィームを演奏し好評を博した。シェリフ・ムヒッディン・タルガンはアラブ音楽、トルコ音楽両方にとって重要な役割を果たした音楽家である。その名を冠したウード・フェスティバルでは、トルコ音楽とアラブ音楽の比較研究が行われ、タクスィームの表現や多様なプロセスを検討した。またマレーシア、シンガポール、インドネシアなど東南アジア諸国にウード音楽が浸透している現状を把握し、アラブ音楽圏の広がりについても認識を新たにする貴重な機会となった。
著者
内田 好則 下川 敬之
出版者
宮崎大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究はアリルイソチオシアネート(AITC)がエチレン作用の阻害剤ないしは抑制剤であるという観点から、ミカン等の果樹、トマト等の野菜およびスイ-トピー等の花きを使用し、これらに対するAITCの影響を検討し、エチレン作用に対するAITCの作用機構の解明を行い、鮮度保持を含む品質保持技術としての応用を検討した。ウンシュウミカンに対してAITC処理を行った結果、呼吸量の増加がみられ、エチレン処理によりクロロフィル分解(脱緑)は進行し、それをAITCが抑制すること、この脱緑の程度(L+b)/2+aとクロロフィラーゼ活性との間に高い正の相関関係があること、クロロフィリドaベルオキシターゼと脱緑の度合との間には、相関関係は認められないことを明らかにした。その作用は麻酔をかけたような状態を示した。トマト果実にAITCを処理した場合、着色の抑制および果実硬度の軟化の抑制を生じた。処理時間は50分、処理濃度としては5u1/1から効果が顕著であった。トマト子葉の上偏生長に対するAITCの阻害は不(反)拮抗阻害作用の傾向を示した。AITCを先に5分処理するとその後エチレン処理しても上偏生長は起こらず、上偏生長を起こす場合はエチレンを先に6時間以上処理する必要があった。エチレンの関与が少ない切り花のキクではAITCの品質保持効果は観察されなかった。エチレンの関与が大きいスイ-トピーの花では鮮度保持効果はみられなかったが、AITC処理により花の退色を抑制した。現時点での応用としてはSTSとAITCの併用処理が効果的である。作用機構の解明のため、AITCでオジギソウを処理し、振動傾性阻害を観察した。この結果、AITCは果樹および野菜でも観察されたように、麻酔症状様に作用し、一定時間経過後回復がみられた。
著者
北村 隆行 澄川 貴志 平方 寛之 高橋 可昌 嶋田 隆広
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2013

single digit ナノスケール(1nm ~ 10nm)の応力特異場を有する材料に対するその場観察破壊実験方法を開発し、シリコン単結晶の実験より特異場寸法4nmであっても破壊靭性値は不変であることを明らかにした。また、第一原理解析と実験が一致することを示すとともに、応力特異場が2nm以下の場合に従来の破壊力学基準が破綻する(連続体破壊力学の適用下限)ことを明らかにした。
著者
白羽 英則 小橋 春彦 大西 秀樹 中村 進一郎 山本 和秀 小林 功幸
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

Des-gamma carboxy prothrombin (DCP)は、血管内皮細胞のKDRに作用し、細胞移動能(2.2倍)、細胞増殖能(1.5倍)を亢進させた。これら効果はKDR阻害剤により消失した。肝癌細胞のシークエンス解析からexon2の脱落したΔ2-gamma-glutamyl carboxylase(GGCX)を同定し、クローニングした。肝癌細胞においてΔ2-GGCX発現はDCP産生細胞(69%)において非産生細胞(8%)と比較して優位に高く、本来DCP非産生細胞であるHLE, SK-Hep-1は、Δ2-GGCX遺伝子導入によりDCP産生機能を持つようになった。これらの結果より肝癌におけるΔ2-GGCXの発現は、DCP産生の一因であることが解明された。Δ2-GGCX導入Hep3Bは、parental Hep3Bに対して約10倍のDCPを産生し、逆にWT-GGCX導入Hep3Bは、DCPの産生が消失した。それぞれの細胞を、ヌードマウス皮下に接種し8週間飼育した。Δ2-GGCX遺伝子導入細胞(腫瘍体積632mm^3)においては、WT-GGCX遺伝子導入細胞(腫瘍体積153mm^3)と比較して4.2倍と大きな腫瘍をヌードマウス皮下に形成し、血管新生も多く認められた。HCC患者組織(手術標本)でもDCP産生、血管新生の検討を行った。免疫組織染色の検討では、DCP発現と血管新生を示すCD31発現の相関が認められた。また、造影CTで評価したHCCのvascularityと、血清DCPの値にも相関が認められた。これらの結果より、DCPは臨床検体においても血管新生と密接な関連を持つことが判明した。
著者
三好 博之 戸田山 和久 郡司 幸夫 檜垣 立哉
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

三好は計算が二つの意味で記述不可能であるという困難を明確にし,リフレクションと呼ばれる計算から着想を得た形而上学的装置一式を導入してこの困難を間接的に手懐けるというアプローチを見いだした。その記述と理解のためにHume-Bergson形式と呼ぶ記述形式を導入し,これらと上記の困難を結びつけて,その困難を超えた明証的な理解があり得ることを示した.さらにこれが時間論における入不二の考察と近いことを示した。また精神病理学および物理学への応用に向けて予備的な研究を行った。戸田山は今までFieldらにより主に数学と物理学について議論されている認識論の自然化を,現象としての計算に適用する場合の問題点について,普遍的な計算概念よりもむしろ個別の事例について検討を行うことにより研究を行った.そこでは認識論の自然化と同時に実在論を擁護する立場を強調した。郡司は動的情報射を用いた動的・局所的意味論に関する研究を行った。さらに観測由来ヘテラルキーの理論についての研究を行い,ゆらぎを持つ環境の中で頑健な挙動を示すシステムの一般的理論を展開した.現在これらはオープンリミットというアイデアとして一般化されつつある。檜垣は西田幾多郎の哲学において議論されている数理的な議論が現象としての計算という観点から見ると重要な意味を持つことを見出し,このことについて検討を重ねた.その際西田およびドゥルーズの生命論との関連に特に着目して議論を行った.そこでは西田の哲学における数理的側面についても改めて光を当てている。塩谷賢は、「計算」とは科学哲学、技術論、哲学的方法論を含む様々な問題に関する集約点の一つを示す根源的な自然種であるという立場から、「計算」について得られた知見を「計算=操作性のレベルにおける接続子による操作性の延長」として再検討することを提唱した。