著者
岡本 雅子
出版者
帯広畜産大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日常生活における食品の味の記憶を促進する要因を検討することを目的に、処理水準モデルを枠組みとした味覚記憶実験および脳活動計測を行った。その結果、食品の写真がその食品の特性に沿った味の特徴の記憶を促進すること、また味の再認記憶成績の高い人ほど、左下前頭回前部の活動が高いことを明らかにした。これらの結果は、意味処理が記憶効率を高めるという処理水準モデルと一致し、味の記憶においても処理水準モデルが有効である可能性が示唆された。
著者
蛯名 美智子 村田 恵子 鈴木 敦子 片田 範子 中野 綾美 筒井 真優美
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

病院での検査・処置を受ける子どもが実際、どのように説明を受けているのかについて調査した。方法は参加観察及び、その後に子どもの親・医師・看護婦へのインタビューであった。研究対象は2〜13歳の18名の子どもとその親、それに関わる医師と看護婦であった。観察とインタビューから得られたデータは逐語的に整理され、研究者のグループによって分析された。その結果、以下のような4つの結果を得た。1.子どもが検査や処置について知らされた後から検査や処置中にわたって、自分で心理的に準備をしている。私たちはこの現象を子どもの心理的準備/決心、すなわち覚悟と名付けた。子どもが覚悟をして検査・処置に向かうためには、心地よい雰囲気、過去の検査イメージ、検査・処置の間に子どもに選択肢を与えた決定する機会、状況を人々と共に共有する間隔、検査・処置を受けることによって可能になる利益の保証、そして子ども自身による覚悟の宣言が必要であった。2.子どもの能力と医療者が認識する子どもの能力との間で、以下の3つの現象が観察された。それらは子どもの能力と子どもの能力に対する医療者の判断との間のずれ、検査・処置に対する子どもの反応と医療者の対応との間のずれ、そして子どもと医療者の双方の状況の理解に関するずれであった。3.子どもの検査・処置に参加する医師、看護婦、親の間で3つの役割がとられていた。1つは、検査・処置の子どもの反応をチェックすること、2番目の役割は検査・処置について子どもに説明すること、3番目の役割は子どもの覚悟を引き出し、それを維持させることであった。4.検査・処置の後の子どもの思いは、3つのタイプに分類された。3つのタイプとは、「私は頑張った」という思い、「私は頑張ろうとしたんだけど・・」という思い、「私はずっと頑張っているのに」という思い出あった。今後の研究課題は、コレラの結果からケアモデルを構築すること、精製されたケアモデルの効果を検証することである。
著者
米田 昌代 吉田 和枝 曽山 小織 島田 啓子
出版者
石川県立看護大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

この研究の目的は、周産期の死(死産・新生児死亡)を経験した母親・家族を社会全体で支えるシステムを開発することである。今回、全国の主要な医療機関(産科・NICU)、行政(県・市区町村)、赤ちゃんを亡くした方の自助グループに対して各々の退院後のグリーフケアの現状と関係機関の地域連携の現状・課題・新たな提案について調査を実施し、その結果をもとに連携システムのモデル案を作成した。その後、母性看護学・助産学の研究者から意見を聴取し、さらに吟味を重ね、周産期のグリーフケアにおける地域連携システムモデル案Ⅰ案を完成するに至った。
著者
阿部 裕之
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

多角形の柱型の花器などを、図面から金属冶具を設計しアルミニウムの金型を製作する。実用寸法を考え大きさを設定する。図面をもとに制作したアルミニウムの金型の種類と大きさは、次のとおりである。450×225×h225(mm)長方形、300×300×h300(mm)正方形、おおよその直径140×h300~h500(mm)の寸法内に分類される、3、5、7、8、9、10角柱である。更に、水盤などに応用できる、大型の径の金型を設計する。図面をもとに制作したアルミニウムの金型の種類とおおよその大きさは、次のとおりである。おおよその直径430×h300(mm)の寸法内に分類される、5、7、8、9、10角柱である
著者
阿部 善也
出版者
東京理科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

最終年度である平成23年度には,まず本研究によって初めてその存在が示された新王国時代ラメサイド期(前13~11世紀)特有のコバルト着色剤に着目し,その起源を解明するための研究を行った。これまでの考古学的研究によれば,ラメサイド期はエジプト国内のコバルト着色剤の利用規模が縮小され,特にガラス着色への利用はほとんど行われなくなったものと考えられてきた。しかし化学的な分析が行われていないだけで,ラメサイド期のガラス工房の一つである"グラーブ"からは有意な数のコバルト着色ガラスが出土していた。そこでグラーブの出土資料に類例が見られるガラス製ビーズ資料について,国内美術館の所蔵資料を対象とした分析調査を行い,本研究で発見したラメサイド期のコバルト着色剤と高い組成的類似性を持つことを明らかとした。すなわち本研究で発見された新しいラメサイド期のコバルト着色剤は,当時グラーブの工房で特徴的に利用されていた可能性が高いと考えられる。これは不明な部分の多いラメサイド期エジプトにおけるガラス生産体制の全貌を解明する糸口となる重要な成果である。コバルト着色剤の研究以外にも,本研究で開発した可搬型分析装置を国内外の様々な文化財資料の非破壊分析調査へと適用した。特筆すべき成果として,初年度より研究を行ってきたMOA美術館(熱海)所蔵の国宝「紅白梅図屏風」について,中央に描かれた川の黒色部分から硫化銀を,銀白色部分から銀箔を検出し,銀箔を敷き詰めてから硫化によって流水紋を描いたという当時の製法を解明することに成功した。この屏風のほかにも,東大寺(奈良)の国宝「執金剛神立像」を対象とした分析調査,エジプト・王家の谷(ルクソール)内のアメンホテプIII世王墓の壁画の非破壊分析による顔料同定など,開発した装置を考古学的にきわめて価値の高い資料へと適用し,考古学的に意義のある成果が数多く得られた。
著者
清原 泰治
出版者
高知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1950年代、「昭和の大合併」後、地域住民の融和を図ることを目的に、市町村民運動会が開始された。県行政は、運動会で実施する種目を提案したり、自治体に配置した体育指導委員に運営を担わせるなど、市町村民運動会の開催を推進した。初期の段階では、地区対抗方式による運営方法のために、住民間の対抗意識が助長され、トラブルが問題となる。主催者は、トラブルを防ぐために、娯楽性の強い種目を取り入れたり、採点方法を工夫するなどして、円滑な実施を図った。このような運営上の工夫もあって、この時期に市町村民運動会は地域に定着する。
著者
灘本 明代 熊本 忠彦
出版者
甲南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

非定常的感情分析として,TwitterとSNSを対象とし,感情分析を行った.具体的には,(1)Twitter感情分析用感情語辞書の構築(2)Twitter上で用いられている顔文字の感情及びその役割に着目した,顔文字付きツイートの感情値抽出手法の提案,(3)Twitter用の感情軸の決定,(4)SNSからの耳より情報抽出手法の提案を行った.研究成果として,国際会議査読付き6本,国内査読付き1本,国内会議15本,論文誌3本の論文と書籍1編(分担)を発表した.
著者
猪井 新一
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

茨城県内の公立小学校8校(児童1524人、指導者46人)に協力をいただき,授業参観ならびに,外国語活動に関わるアンケート調査を実施した。主に5,6年生の児童及びその学級担任のデータを分析、両者の相関関係の有無を分析した。結果,児童の外国語(英語)や英語授業の好意度,英語学習意欲,活動に対する自信の程度,及び学級担任の英語や英語授業の好意度,満足度,英語教員免許有無の有無等の間には何ら関係性はみられなかった。これはTTによる外国語活動の授業において,ほとんどのHRTが主指導者として授業を展開していないことによるものである。
著者
岡本 真一郎 OKAMOTO Shinichiro
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

言語表現の状況的使い分けに関して体系的な枠組を得るため,社会心理学的な見地から実証的な研究を行った.主として,状況要因を独立変数として操作して言語反応等を従属変数とする実験的手法を用いた.これに加えて,結果のエコロジカルバリディティを確認するため,録音した会話やシナリオに現れた会話を分析して,事例的に検討したり,可能な場合は定量的に分析する方法でも研究を進めた.具体的な研究内容は以下の通りである.1. 感謝表現に関して,質問紙を用い状況要因を独立変数とした実験的研究をいくつかの観点から行い,実験結果を分散分析や重回帰分析等により解析することにより,感謝型と謝罪型の表現の使い分けに関与する諸要因の影響について全体的な考察を試みた.英語(英国)での感謝の表現の使い分けのとの比較・検討も行った.2. 対人配慮に関わる他の諸表現についても状況要因との関わりを検討した.具体的には「ごくろうさま」,「おつかれさま」,「たいへんでしたね」等のねぎらい表現,「失礼しました」等の謝罪表現,「そうです」,「いいです」等の評価的応答表現を扱った.3. さまざまの言語表現の使い分けに対する聞き手の反応を実験的に検討した.4. これまでに知見が得られた対人配慮表現に関して,日本語における状況と表現の関わりについて,従来の日本語の敬語に関する先行研究や欧米の諸研究もふまえて包括的なモデルを検討した.今後は4で示したモデルを修正発展させる中で,日本語の対人配慮表現を状況と関連づけて体系的に整理していくことを計画している.その際,他の言語における知見と比較して日本語の場合の特徴を明らかにするとともに,対人配慮の普遍性についても考察を進める予定である.
著者
赤倉 泉
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

中国で1957年に起こった整風運動と反右派闘争について、以下の点を中心に全体像や含意を明らかにした。①一連の過程はどのように進められたか、②現在につながる民主化要求につながる論点の分析、③「右派」の分類、処分、名誉回復の実態、④1957年の事例を基に、その後の民主化運動と比較する事で一党支配下における民主化のメカニズムと限界を考察、⑤名誉回復された元「右派」たちが現在起こしている損害賠償請求の実態とその含意、⑥50年以上前の反右派闘争および「右派」は現在の中国政治にどのような影響を及ぼし続けているか。
著者
中園 眞人 山本 幸子
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

民家活用施設の場合には、用途に応じた平面計画・設備計画のみでなく、耐震診断・補強設計を計画・設計段階で位置づけることが必要で,専門家を含めた計画策定組織を設立し耐震補強の重要性の理解を共有することが重要課題である。設計段階では平面計画と耐震補強設計の整合性を担保すると同時に、設備設計を含めたコスト分析が重要で、施工段階では工期の短縮と施工手間の削減を行うことが重要である。基幹施設と民家活用型の小規模施設のネットワーク形成により、利用圏分担効果・送迎時間削減効果・機能分担効果に加え経営採算補填効果が確認され、過疎地域における高齢者デイサービス施設整備の有効な方法として位置付けられた。基幹施設は介護度の高い利用者にも対応可能な空間機能を有し、的確なサービスが提供されており、民家を改修した小規模施設では、介護度の低い利用者が中心であるが、職員の空間利用と介助の工夫によりデイサービス施設として有効に機能していることが確認された。
著者
川口 潤
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は,エピソード記憶がもっている,過去の記憶を再体験するかのごとく想起する機能を,過去の体験をありありと感じる状態であるノスタルジア(なつかしさ)との関係から明らかにしようとした。近年のエピソード記憶研究においては,単に過去の出来事を思い出すということではなく,自分が経験した出来事をあたかも再体験しているかのごとく思い出す(mental time travel)という意識状態(autonoetic consciousness)が重要であると考えられている。ノスタルジアを非常に強く感じた際には,そうでない場合にくらべて再体験感が強く感じられることが明らかとなった。
著者
佐伯 聡史
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

鉄棒運動のけ上がりは、専門的なトレーニングを行えば、6、7歳で習得可能である。しかし、学校教育現場では習得することは非常に難しいとされている。本研究は、鉄棒運動のけ上がりの習得を促す効果があると期待される、筆者によって特許取得済みの「鉄棒練習具」を使用して、初等教育(小学生)、中等教育(中学生)、高等教育(大学生)の各カテゴリーで実験が行われ、その効果と適時性についての検証を行った。初等、中等教育では運動改善が見られたものの、その効果は限定的であり、短期間でのけ上がりの習得には至らなかった。しかし高等教育においてはけ上がりの習得に直結する運動改善が見られたことから、一定の効果が確認された。
著者
羽生 浩一
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ノーベル平和賞が創設された背景に、19世紀における欧米の民主主義、民族主義の隆盛が存在した。時代の混乱と新しい価値観への希求が「平和」という概念を醸成した。平和の概念を広く伝える役割(PR)としてのノーベル平和賞の創設であった。ノーベル平和賞は20世紀の2つの世界大戦、およびその後の冷戦を経て、「欧米の平和賞」から「世界の平和賞」へと賞の意味や役割を、戦略的に変えてきた。ノーベル平和賞は、戦争や紛争を解決はしないが、注目すべき問題がそこにあることに人々の関心を集めさせる。武力を行使せずとも、広報外交的な役割で平和に貢献することが可能であることを示してきたのである。
著者
中能 祥太
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

鳥類・爬虫類初期胚の多能性を制御する分子メカニズムの解明を最終目的とした本研究において、DC1二年目である平成25年度は、前年度に得られた実験結果とモデルを元に、多能性の正の制御機構を担う分子を模索し、その結果Jak/Statシグナルを候補として見出した。また、多能性状態のマーカー遺伝子NanogとPouVの発現をタンパク質レベルで解析するためにこれらに対する抗体を作製した。DC1最終年度である平成26年度は、これまでに整備した分子生物学的解析ツールと遺伝学的ツールを組み合わせることで、多能性を正に制御している分子の候補を阻害剤やStat人為活性システムを用いて詳細に検証した。また、自作した抗PouV抗体を用いたウエスタンブロッティング解析に基づき、登録されているPouVのアミノ酸配列が実際に発現しているPouVタンパク質の配列とは異なっていることを発見し、配列を修正する論文を発表するに至った。また、抗体を用いた発現解析と合わせ、Nanogは羊膜類一般に多能性と関与している可能性が高いのに対し、PouVは哺乳類特異的な機能として多能性に関与しているのではないかという仮説も提示した。
著者
三田 一郎
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

B中間子の崩壊における大きなCP対称性の破れの提唱者として次世代のBファクトリー建設の意義を研究した。新しい加速器を建設するには既存している加速器よりも大きな成果を出す可能性を持つことが不可欠である。当初SuperBFactoryは既存するBFactoryの10倍の強度が提案されていたが、わたしは少なくとも100倍必要だと指摘した。現在建設中の加速器は40倍の強度でデザインされている。研究期間中に30年間の共同研究者Bigi氏が脳卒中で倒れ、成果を発表するために氏の回復を待っている.
著者
佐藤 彰一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

この研究は、西洋中世初期における最重要の歴史的存在であったフランク国家がいかにして形成されたかを、西ローマ帝国が体現した後期古代から、初期中世の時代相への移行についての新たな理解を基軸に据えて考察し直したものである。新しい論点として浮上したのは、西暦394年のアルボガストのクーデタの挫折により、フランク人首長層がローマ帝国内で30年間にわたって成し遂げた栄達の時代が終わり、以後約半世紀にわたって断片的な動静しか伝来しておらず、この50年間のフランク史の解明が、この主題にとって決定的に重要であるという点である。これまで注目を集めてこなかった、フン族とフランク人との関係史を深めるのも重要である。
著者
古相 正美
出版者
中村学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

当初の計画では、近世全体を網羅するだけの御会和歌資料を収集し、その分析を行なう。それらをもとに御会開催年月日・御会出席者・歌題・講師・読師・奉行等の御会データベースを作成し、さらに、関連資料データベースを作成するという予定であった。資料の収集に関しては、宮内庁書陵部や国会図書館を始めとした図書館において、主な御会和歌資料を収集することができたが、一点が40冊などといった大部のものであるため、完全に近世全体を網羅することはできていない。しかし、数年間の空白期間はあるものの、近世の初期から最後までに渡る資料は収集できている。御会データベースは、当初の予定を途中で変更して、全文入力に切り替えたために、作業は遅く、現在において公開できる状態には至っていない。そこで、今年度の成果報告としては、とりあえず、御会名・御会開催年月日・掲載資料名・天皇・院を記載した簡略御会和歌データベースを作成し、近世のく全体を網羅することにした。関連資料については、現在判明している御会和歌資料についてのデータベースを作成し、これも報告書に掲載した。まだまだ不十分で、これもまた、経過的な資料としてまとめたもので、今後とも補充していく予定である。以上が現在における研究成果であるが、大部の資料であるため、この研究をもとにして、今後もライフワークとして資料収集、データベース入力作業を継続していき、できるだけ早い時期に御会データベースを公開していきたい。今後は、そのために、他の研究者との相互協力が必要となると思われる
著者
前田 直子
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本年度は以下の二点を行なった。第一は、昨年度に引き続き、話し言葉を中心に、コーパスを充実させたことである。今年度は市販の対談集を主にテキスト化する作業を行なった。第二に、この新たな資料含むこれまでのコーパスを基に、次に述べる著作・論文を発表した。本年度の研究成果をまとめたものは次の通りである。第一は、『日本語文法セルフマスターシリーズ7 条件表現』(共著)が5月に刊行されたことである(詳細は昨年度の実績報告書に記したので、本年度は省略する)。第二に、論文「否定的状態への変化を表す動詞変化構文について-ないようにする・なくする・ないようになる・なくなる-」を執筆した。これは、日本語教育における初級文法項目の一つである変化構文「〜するようにする・なる」の否定形がどのような形式であるかを、実証的に論じたものである。動詞変化構文は「ように」を用いることからもわかるように、複文(中でも目的節)と大きく関係がある。この動詞変化構文は、否定形として、論文副題に示した4つの形式が可能であるが、日本語教科書・参考書・概説書では、これらの扱いにおいて統一的な見解が見られていない。この問題を指摘し解決するため、本論文では、本奨励研究でも使用されたコーパスを用いて分析した。その結果、4形式が全て可能であること、しかし、使用頻度には大きな差があること、頻度の低い形式が用いられるのは特定の場合であることが明らかになった。第三に、『日本語文法演習待遇表現』(共著)を執筆した。これは上級の日本語学習者に対する文法のテキストであり、当巻は敬語などの待遇表現を体系的に習得させることを目的としている。待遇表現は言うまでもなく話し言葉において多用され、高度な日本語能力が求められる重要な項目である。本奨励研究は複文を対象としたものだが、待遇表現には許可「〜してもいいでしょうか」、勧め「してはどうでしょうか」といった複文形式が基となった複合助動詞形式が多く見られ、本奨励研究のデータと研究成果を十分に生かすことができた。教育機関での実際の試用を経て改稿を加え、刊行予定は来年度である。
著者
渡部 重十
出版者
北海道情報大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2013年5月に,マーシャル諸島でNASA,クレムソン大学と共同でロケット実験を実施した.高度100kmから上方には太陽光があり地上には太陽光がない19時地方時に,2機のロケットを約1分間隔で打ち上げ,熱圏下部と上部(電離圏E層とF層)の中性大気とプラズマを同時に測定した.クレムソン大学と共同で開発したリチウム原子放出器によるリチウム原子とTMAを放出することで,熱圏大気にリチウム雲とTMA雲を形成した.これらの雲をロイ島,ロンゲラップ島,リキエップ島に配置した高感度CCDカメラとビデオで同時撮影した.高度100km付近に約100m/sの熱圏大気風速シアーを捉えた.