著者
工藤 敏文 井上 芳徳 地引 政利 豊福 崇浩 横尾 聡 宮崎 英隆
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

末梢動脈疾患(PAD)がある患者の下肢の局所循環を評価することは重要である。PADは下肢切断も免れない重症虚血を招きやすく、このため血行再建を必要とするのか否かをある一定の基準から決定することが肝要である。本研究において、PAD、特に下腿・足部潰瘍が多く認められる重症虚血肢の局所(末梢)循環に対して、新たな局所(末梢)循環の計測法の開発およびより詳細なアンギオサムの解明を行った。
著者
日野川 靜枝 高橋 智子
出版者
拓殖大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、サイクロトロンの発明地バークレーのカリフォルニア大学を対象にして、放射線研究所の184インチ・サイクロトロン開発を契機に産業界、ロックフェラー財団、そして科学行政官らがどのように相互の関係を構築していったのかを明らかにしました。しかし、軍産学複合体の形成につながる科学・技術の戦時動員体制づくりにおけ Alfred Lee Loomisの役割は、必要な資料入手が不十分であったために、残念ながら満足には解明できませんでした。引き続き、資料入手に努めたいと考えております。
著者
安田 美弥子 新井 信之 岡本 隆寛
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

近年、急増しているアディクションに対し、従来の看護観、看護技術では対応できず、地域でも臨床現場でもとまどいが大きい。そこで、アディクション看護の特性を明らかにするために、日本アディクション看護学会を設立し、年1回の学術集会を開催し、そのほか事例検討会や、病棟見学スタッフとの話し合いなどを行い、従来の看護との相違やアディクション看護の専門性、アディクションという病気の特性を検討した。その結果、アディクション看護には再飲酒が予測されても本人の意志によっては失敗を容認したり、患者の話すことを傾聴し受容するよりより突き放すことが必要とされるなど、従来の看護のカウンターカルチャー的なところがあり、臨床現場で困惑や陰性感情を生じやすいことが明らかになった。アディクションは人間関係の病、家族の病、生き方の病、喪失の病であるので、看護師は人間、家族、人生、生き方などに深い思索を行い、他職種、他機関と連携しながら、セルフヘルプグループなどにも出席するなど自らの成長をはかり、当事者・家族を共に見守っていかなければならないという特性があり、やってあげる看護ではなく、当事者・家族の自己決定を促す見守る看護にアディクション看護の専門性があることを確認した。アディクションの急増する社会では臨床現場での教育だけでなく、看護基礎教育からアディクション看護を教育する必要がある。そこでアディクション看護のテキストブックの作成にも携わり、近日出版されることになっている。
著者
樋口 勝
出版者
日本工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

一般的な規格の階段を含めた人間の移動環境内において,安定かつ高効率な移動を可能とする4足歩行ロボットとして,階段のような不整地を移動するための広い作業領域を有する2つのモードと,水平面を移動するための移動効率に優れた1つのモードの合計3つの歩行モードを自由度を追加することなく切り替えることのできる歩行ロボットを提案し,その具体的な関節機構やブレーキ機構,小型実験機および試作機の設計・製作を行い,その有効性について検討した.
著者
田村 克己 松園 万亀雄 關 雄二 岸上 伸啓 樫永 真佐夫 石田 慎一郎
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、世界各国の開発庁や国連機関、国際的なNGO やNPO とそれらの援助活動を調査することを目的として、アメリカやイギリスなど世界各国の開発庁、ワールドバンクや国連環境計画などの国連機関、グリーンピースなどの開発支援NPO・NGO の目標、基本方針、開発援助プロジェクトとその実際の活動、文化人類学など社会科学が開発援助プロジェクトの立案・実施・事後評価において果たす役割を調査し、比較した。さらに、現地の開発援助活動やそれらの諸影響をグアテマラやケニア、ミャンマー、タイなどで調査し、個々の開発援助機関の開発実践を検討した。欧米の開発援助機関では、開発の事前調査やプロジェクト立案、プロジェクトの事後評価の分野において文化人類学者や文化人類学的な知見を活用していることが判明した。
著者
井端 啓二
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

小脳の顆粒細胞は軸索である上行線維を伸ばし、分子層でその軸索が分岐して平行線維となる。上行線維と平行線維はプルキンエ細胞とシナプス結合を形成しているが、シナプスの活性、シナプス形成に関わる分子の動態を明らかにする事は、顆粒細胞とプルキンエ細胞の小脳神経回路における役割を理解するために重要である。そこで、本研究では、神経伝達物質放出の様子を効率良くイメージングするための、発光型シナプス小胞融合モニタータンパク質の開発を行い、小脳顆粒細胞で発現させ、プレシナプスの活性をイメージングした。その結果、プレシナプス活性を測定するための発光型モニタータンパク質が機能する事が判明した。
著者
前川 要 五十川 伸也 千田 嘉博 亀井 明徳 天野 哲也 狭川 真一
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

緊急発掘に伴う中世遺跡の発掘調査資料は膨大である。まず、土器・陶磁器を中心とした詳細な編年体系ができつっある。時間軸はおおよそ、最低50年単位で理解できうる状況になってきている。また、一方では遺跡整備に伴い、全国で城館・城下町遺跡・港湾都市遺跡の資料が急激に増加してきている。さらに、加えて高速道路など大型開発に伴い広域を空間的に認識できる遺跡も増加して、中世村落構造を認識できるようになってきている。しかしながら、研究はそれぞれが分断されており、様式論的に同時期の様相を把握する機会は従来全く無かった。ここで総合的研究を実施することにより、日本史側から投げかけられた問題提起を受け止め、民衆史のみならず、海運史、北方史、周辺民族史などに関連して考古学から歴史像の再構築を行うことが可能となる。以上のような現状において本課題は、研究の発展段階の観点からみて成長期にあり、総合研究を実施することにより研究の一層の発展が期待で切る領域と予想されるため企画調査を実施することを目的とした。特に、2回の会議を通して次の3項目について検討した。1.特定領域として研究申請する意義についてさらに申請が可能か否か、2.研究項目が適切か否か、3.追加あるいは削除する項目があるか否か(1)平成14年6月15・16日:総括班が東京御茶ノ水で集まり、研究領域の目的・意義、研究項目の妥当性について検討した。(2)平成14年9月29・30日頃:国立歴史民俗博物館にて全体会議の招集。共同研究者から、意見聴取。(3)平成14年10月初旬頃:特定領域研究へ申請のため、総括班が東京近郊で集まり書類作成のための意見聴取を行った。(4)同下旬頃:申請書類提出のため平成15年度発足特定領域申請書および特定領域申請書概要の印刷準備。(5)平成14年11月頃:特定領域研究(A)「中世考古学の総合的研究」として申請書類を提出した。
著者
櫻井 進 谷川 武 岡 靖哲 中田 光紀
出版者
天理医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ホノルル在住日系人および日本人計29名(男31%、平均70歳)を対象に、SASスクリーニング検査、家庭血圧測定、ハーバード大睡眠問診票(日本語版)等を実施した。平均3%ODI値は男20%、女13%であった。舌骨-顎先端長と睡眠呼吸障害の重症度、就寝前後の心拍数の間にそれぞれ有意な関連を認めた。SASが疑われる者に精査勧奨したところ、SAS治療中または受診嫌悪者であった。受診嫌悪の理由は、検査および治療費用が高額であることだった。
著者
棚瀬 京子 (日和佐 京子)
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

エチレン受容体の分解機構解明に関わる実験には、保持しているエチレン受容体タンパク質の抗体に特異性があることが重要である。しかし、既存の抗体では特異性を砲認できなかった。既存の抗体は古いものでは10年以上のものもあるため、抗体の状態が悪くなっていることも考慮された。そこで、新しくペプチド抗体を外注した。続いて、大腸菌に3種のメロンエチレン受容体タンパク質を発現させ、これを使って新しい抗体の特異性を確認することを試みた。しかし、pQE30Xaへの導入コンストラクトでは、受容体タンパク質が発現しなかった。先行研究で、大腸菌発現ベクターであるpET32aにエチレン受容体遺伝子を導入した場合では、タンパク質の発現に成功した例があり、現在はこのベクターのコンストラクトを作成中である。また、実験4で作出したメロンのエチレン受容体を発現しているトマトの葉、および実生から膜タンパク質を抽出し、抗体の特異性の確認に使用することを試みた。しかし、このウエスタンによる結果は不十分な結果に終わっている。ただし、膜タンパク質のマーカーであるHSC70の抗体を使ったウエスタンでは、目的サイズのバンドが確認できており、膜タンパク質の抽出は問題ないことが確認できている。また、エチレン受容体の分解に関わると推定される配列の受容体分解への関与を調べる研究(実験4)では、昨年度作出したメロンのアミノ酸置換導入エチレン受容体を導入したトマトの遺伝子の発現をリアルタイムPCRで確認した。現在は、導入遺伝子シングルコピーのT_1個体の栽培を行っており、開花からBreaker(催色期)まで、およびBreakerからRed(赤熟期)までの果実成熟日数の調査を実施している。また、葉の老化や花持ちおよび形態的な変化についても観察を行っているが、これらについては顕著な変化は見られていない。
著者
嶋津 格 藤井 俊夫 戸田 善治
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

千葉大学の付属中学校、同小学校、および千葉県立千葉南高等学校の協力を得て、法学の基礎的体験を初等・中等学校でさせることを目的として、実験的な研究を行った。それまで2年間行ってきた研究の継続の側面もある。題材として「カイワレ裁判」(大腸菌O-157によって堺市の多数の小学校で集団食中毒が発生し、原因としてカイワレ大根が疑われ、国によるその発表によって全国のカイワレ農家が風評被害を受けた、という国家賠償請求事件)を採用することにした。平成15年度は、主に教材の作成を行った。判決の収集と概要の作成、事件を担当した弁護士(録画)、国の代理人であった法務省の担当者(録音)へのインタヴューと、米国の陪審裁判の調査、などを行った。16年度は、実際の授業を行うことが中心であった。高等学校と中学校で各1回、小学校では、以前作成した別の題材を使って2回の授業を行った後、同じクラスでカイワレ裁判による授業を行った(子供たちの飲み込みの早さに驚かされた)。授業では、当初の予定を変更して、事前に作成した台本を二人の大学院生が原告と被告の主張を述べる方式を採用することとした(使用した台本は報告書に収めているので、他でも利用可能)。教育学で使われる方式に則って、「授業案」を作成して実行するとともに、授業全体を録画した。授業の方法は、2時間続きの授業のうち、前半を事件の概要の説明にあて、後半を6人一組にクラスを分けて、それぞれで判決に対応する判断を出させる、というものである。結果はかなり満足のゆくものであった。クラスでは、高校・中学校・小学校のどこでも、活発すぎるほどの討論があり、生徒たちはかなり充実した体験をしたと思う(ワークシートの結果や感想などを参照)。長期的には、法的思考と裁判制度が日本社会で占める位置の変化への対応などの大きな課題を視野におくが、法学授業の初中等教育への導入実験という当面の成果は得られたと思う。
著者
小林 晃
出版者
公益財団法人東洋文庫
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

平成26年度は、南宋末期の公田法に関する研究論文を『歴史学研究』の誌上に掲載させ、その研究を一区切りさせるとともに、新たな研究テーマとして南宋末期における四明(現在の浙江省寧波市)史氏の没落過程の解明に着手した。四明史氏は南宋後期に3人の宰相・執政を輩出するなど、当時の中央政治を掌握し続けた一族であったが、南宋理宗時代に宰相史嵩之が失脚したあとは政治的な地位を喪失した。従来の研究は史氏没落の原因を、政治的な立ち位置をめぐる史氏一族の内輪もめに求めてきたのであった。しかし史氏の没落によって、四明出身の官僚たちが南宋中央から駆逐されたとされてきたことを考えると、史氏没落の様相を明らかにすることは、つづく元朝・明朝における四明知識人の活動実態を明らかにするための前提条件であるといえよう。以上の問題関心のもと、当時の史料を検討してみたところ、史氏の没落の原因は一族内の内輪もめではなく、史嵩之の政治的資産を引き継げる適当な人物が存在していなかったことにあることが明らかになった。しかしそうした状況は、皇帝理宗の政治運営に深刻な影響をもたらした。皇帝理宗は、それまで史氏の出身者が築いてきた国防体制に依拠してモンゴルとの戦争を切り抜けてきたからである。これを正常に機能させるためには、史氏が有した人的結合関係に重なる人脈を持つ者を宰相に据えなければならない。こうした事情のなかで、史氏の継承者として登場したのが賈似道であったと考えられる。賈似道の義母は四明史氏の女子であり、まさに史氏の人的結合の延長線上に位置する人物だったのである。このように見てくると、南宋最末期にも四明出身者の人脈が大いに活躍していたことが明らかとなる。これらの研究成果については、早期に研究論文としてまとめて発表する予定である。
著者
坂田 ゆず
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

1年目と2年目における研究から、アワダチソウグンバイ(以下グンバイ)が高密度で見られる集団ほど、セイタカアワダチソウ(以下セイタカ)の抵抗性が高いことが明らかとなった。原産地から侵入地への侵入過程で、どのような自然選択圧が背景となり、グンバイの密度が高まり、セイタカの抵抗性が変化したかを明らかにするために、野外調査、相互移植実験、温室実験を行った。今年度は、これまで行った集団遺伝学的解析の結果、日本のセイタカの集団と最も近縁であることが明らかになった北米南部集団のグンバイへの抵抗性を比較した。日本における圃場実験の結果、北米南部集団のセイタカは、グンバイに対して高い抵抗性を示した一方で、日本のグンバイの侵入が11年目の集団に比べて、抵抗性が低い傾向も検出された。3年間の研究から、原産地でもセイタカとグンバイの関係は地理的な変異が大きく、両地域でセイタカのグンバイに対する防御形質が局所的に適応していることが明らかとなった。そして、グンバイが日本への侵入時に、原産地に比べて侵入地では気候条件が好適で、グンバイの競争者となるその他の植食者が少なく、抵抗性が低いセイタカが全国に分布しているという背景によって、侵入地におけるグンバイの密度が高まったことが示唆された。その結果、セイタカは、グンバイから解放されることで一旦は低下した抵抗性が、侵入地において再会したグンバイが強い選択圧によって、防御形質の適応が短期間に再び生じているといった進化動態が示唆された。以上により、物理的環境と生物的環境の複数の要因が作用し植物と植食者の局所適応が生じていることが示唆された。これらの結果をまとめ、国内外での学会での発表を行い、投稿論文を執筆中である。
著者
神鳥 武彦
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

現代社会は、人の移動、移住の盛んな時期を迎えている。人は移動・移住を余儀なくされつつある。こういう時に、人はどのようにして、新居住地に適応しつつあるのであろうかと考えることは、ひじょうに大切な課題となろう。この研究は、人の移動、移住に伴って生ずる諸問題を解明する一方法として、言語を対象にして迫ろうとするものである。対象地として取り上げた東広島市は、近年、都市化の著しい町である。広島大学の移転、マツダ株式会社の社宅設置などによって、当東広島市には急激な社会変動が生じつつある。他地方から東広島市に移住した人人、あるいは在来の東広島市の市民たちに、どのような言語変化が生じつつあるであろうか、これを明らかにするのが、この研究の目的である。大量の人々の状況を明らかにするため、アンケ-ト法を用いて調査した。人々の方言意識や方言使用の実態を数量的に捉えようとしたのである。その結果、次のような諸点が明らかになった。箇条書きにしてまとめてみると、次の通りである。1 自然発生的集落と社宅との、いずれの場合にも、女性はほぼ同一程度の比率をもって回答している。すなわち、一つの語詞に対する用いない、用いるという比率は、ほぼ等しい。2 男女差は、自然発生的集落居住者のほうに、明確に示される。社会体制の差が言語に反映していると見られる。3 移住者は、自然発生的集落においてもまた社宅においても、その居住地の県内出身者の方言使用の比率に正の相関をもっている。すなわち県内出身者の方言使用に習得の機会をえていると見られる。4 それぞれの居住地区に、10年以上居住している人々は、広島泡言に対して親近感をもつようになるとともに、広島方言を使用する比率も急角度に上昇するようになる。
著者
徳山 道夫 寺田 弥生
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

コロイドガラス転移現象を理論およびスーパーコンピュータを用いた大規模計算機実験の両面から研究し,下記の成果を得た.1)中性コロイド分散系のガラス転移近傍において,コロイド粒子間に働く流体力学的相互作用が如何に重要な役割を演じるかを研究代表者が提案した分子場理論および二種類の計算機実験(分子動力学およびブラウン動力学)を通して間接的に示唆し,その相互作用無しではガラス転移は起こりえないことを初めて理論的に明確にした.2)研究代表者は,コロイドガラス転移を理解するモデルとして,第一原理より密度揺らぎに対する非線形確率拡散方程式を2001年に提案した.その式を数値的に解くことにより,ガラス転移近傍では,時間スケールに応じて異なった不均一空間パターンが形成され,そのクラスター形成過程のダイナミクスが密度揺らぎの非線形緩和に影響を与え,従来知られている,二段階緩和(α,β緩和)の原因となることを初めて示した.3)理論的に提案された非線形確率拡散方程式を数値的に解くことは,現段階では近似的にしか可能ではなく,密度揺らぎの全緩和時間スケールでの議論には到底使用出来ない.そこで研究代表者は,非線形確率拡散方程式を分子場近似の下で平均し,平均二乗変位に対する新たな非線形方程式を導いた.この式には,未定の静的構造因子に起因する自由長が含まれており,その意味で分子場方程式である.この自由長は,粒子同士が相互作用するまでに自由に動ける距離を表し,実験やシミュレーションのデータから決定されるべき重要な物理量である.実際,ガラス転移点近傍では,どのような体系においても,自由長,長時間拡散係数,特性時間(代表例,α,β緩和時間)などのパラメーター依存性には類似性および普遍性が存在することを,この分子場理論を用いて示すことができ,ガラス転移の理解に必要な枠組みを見出した.実際,この理論は原子・分子系でのガラス転移のダイナミクスの研究にも有効であることが示され,これからのこの分野での発見科学としての役割を演じて行くものと確信する.
著者
横山 敦郎 安田 元昭 山本 悟 網塚 憲生
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

咬合に起因する微小動揺がオッセオインテグレーションに与える影響を明らかにすることを目的に、ラット上顎臼歯を抜歯後、チタンスクリューを即時埋入し、1週間後に咬合接触を付与し、咬合接触を与えないラットを対照群とし、組織化学的検索を行うとともに、マイクロアレイを用いて遺伝子発現の比較を行った。咬合接触を付与したラットにおいてはスクリュースレッド間の骨梁幅は有意に太くなり、スクレロスチン陽性骨細胞率は低下していた。遺伝子発現については、骨形成やBMP調整に関与する遺伝子が発現していた。これらの結果から、抜歯後即時埋入早期に与える適度の咬合負荷は、オッセオインテグレーションを早めることが示唆された。
著者
岡崎 美智子 道重 文子 梶谷 佳子 中橋 苗代 仲前 美由紀 那須 潤子 石垣 恭子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

新人看護師の臨床判断力を高める目的で開発した学習支援システムの第三者評価を行った。システムは、学習理論(Steinaker and Bell's:1979)に基づき5段階で構築した。対象者は、新人看護師、中堅看護師、専門看護師、看護系大学の学生、大学院生、教員であった。結果は、現任教育および看護系大学の実習指導に有用であった。課題はステップ3の事例内容をシンプルにし、事例数を増やすことであった。
著者
大島 吉輝
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

エピジェネティックな遺伝子発現に関与する酵素であるHDACやDNAメチル化酵素を阻害する低分子物質を用いて、昆虫寄生糸状菌、植物内生糸状菌、Chaetomium属糸状菌を培養することにより新たな二次代謝物を創出した。本法は、糸状菌に潜在する二次代謝物生産に関係する未利用生合成遺伝子を発現させ、多様性に富む新規天然物を創生するための新たな手法であることを示した。加えて、新規医薬品リードの探索源としての天然物ライブラリーを拡充することができた。
著者
岩根 典之
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

デジタル教材への書込みを利用してクイズを生成し,eラーニングシステムで出題することで繰り返される学習(書込み学習)を自動支援することの可能性について調査した.そのような学習環境を実現するための枠組みと基本機能について検討し,書込み学習の効果を書込みの変化や意識から確かめた結果,書込み学習による個別学習支援の可能性が示唆された.
著者
柳澤 悠 井上 貴子 杉本 良男 杉本 星子 杉本 大三 粟屋 利江
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

タミルナード州、パンジャーブ州の村落調査および産業調査、現地語の新聞・雑誌や自叙伝等の分析、及び全国標本調査の分析を行い、耐久消費財は農村貧困階層にも相当程度普及し、教育や家族関係などに構造的な変動が起っていることを明らかにした。さらに、農村下層階層の安価な工業製品への消費拡大が、零細企業による工業生産の拡大を支えていることや、地域の消費変動が工業発展の重要な基礎となっていることを明らかにした。
著者
横山 祐典 OBROCHTA Stephen Phillip OBROCHTA Stephen OBROCHTA Stefen Phillip
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

気候システムの理解に重要な熱帯域の環境変遷の復元のためには、太平洋とインド洋を結ぶ重要な海流であるインドネシア通過流の変動について理解することが重要である。世界で最も大気循環が活発で、その挙動がグローバルな気候変動に影響をおよぼす西赤道太平洋暖水プールの水温変動などをコントロールすると考えられている為である。本研究では近年でもっとも大きな環境変動である氷期-間氷期の移行期についてターゲットを置き、過去30万年間の変遷について、チモール海の堆積物コアを用いた研究を行った。特に底棲有孔虫の炭酸カルシウム殻の化学分析により水温および塩分変化をモニタリングをすることが目的であった。しかし実際に分析を行ってみると、酸素および炭素の同位体が、氷期間氷期の海水の同位体比を大きく超えて短時間で変動することが明らかになった。分析についての前処理方法の詳細な検討(酸の濃度変化、時間などのビデオを用いたモニタリング)、個々の試料のサイズ分析、電子顕微鏡観察などを通して解釈したところ、海域に存在が確認されている海底からの冷湧水にともなう初期続成作用によるものが考えられることが明らかになった。この研究は、古気候古海洋学を行う際の既存の前処理プロトコルについて一石を投じるもので、現在論文の準備中である。