著者
吉田 徹
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.2_37-2_54, 2020 (Released:2021-12-15)
参考文献数
90

ポピュリズム研究は、ポピュリスト政治家の戦略や言説に着目するもの、有権者意識・投票行動に焦点を当てるもの、政治経済的動態から説明するものなどに分類される。ただし、それぞれの研究潮流では、通時的・歴史的な文脈は必ずしも考慮されておらず、時々の選挙や政党組織における支持構造や有権者の属性、その主観的態度などが、いわゆるポピュリズム政治といかに結びつくのかを検証したものが多い。本論は、こうしたポピュリズム研究の潮流における政党組織・政党システム研究に、歴史的原因をかけあわせてポピュリズム生成の原因を探る。すなわち、1. 既存の社民政党による新規の合理的戦略によって、2. 支持動員構造が変容したため、3. 右派ポピュリズム政治の台頭を招いたと主張するものであり、具体的には、現代フランス政治を対象に、断続的に与党の座にあったフランス社会党と、西欧において最も成功したと称されるに至った極右ポピュリスト政党たる国民戦線の1980年代から90年代までの支持構造を分析することで、上記の動態的変化を跡付ける。
著者
青柳 志織 川合 康央
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回 (2019)
巻号頁・発行日
pp.2E4OS901, 2019 (Released:2019-06-01)

インターネットコミュニケーションは情報化社会において日々進化している.これらのコミュニケーションの中で,「ネットスラング」と呼ばれるインターネット独自の俗語がしばしば使用されている.本研究では「(笑)」や「w」等,4種類の笑いを表現するネットスラングに着目し,それらの意味用法が同じかどうかを明らかにすることを目的とした.笑いを表現するネットスラングを比較することによって,笑いの種類と笑いの対象が各スラングで異なる傾向があることがわかった.
著者
諸澤 崇裕 萩原 富司 熊谷 正裕 荒井 聡 奥井 登美子 岩崎 淳子 三浦 一輝
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2213, (Released:2023-04-30)
参考文献数
39

霞ケ浦において、定置網で漁獲された魚類を参加者が回収、種同定、重量の計測を行い、最後に漁獲物の一部を試食し、群集調査を行う一日漁師体験というイベント型の市民参加型モニタリングを 2006 年 4 月から 2020 年 1 月までの期間、月に 1 回程度の頻度で実施した。計 142 回のイベントを実施し、参加者数はのべ 2177 人、1 回あたりの参加者数は約 20 名であった。モニタリングの結果、在来種については、シラウオ Salangichthys microdon、オイカワ Opsariichthys platypus、クルメサヨリ Hyporhamphus intermedius、アシシロハゼ Acanthogobius lactipes、マハゼ Acanthogobius flavimanus、ジュズカケハゼ Gymnogobius castaneus などが一時的に減少したのち再び増加傾向に転じたこと、タナゴ類は 2009 年ごろを境に確認されなくなったことが明らかとなった。また、外来種については、国外外来種のダントウボウ Megalobrama amblycephala が 2018 年から確認され始めたほか、国内外来種のゼゼラ Biwia zezera が 2013 年から確認され始めるなど新規定着、もしくは増加傾向の種が確認できた。さらに、国外外来種のアオウオ Mylopharyngodon piceus やペヘレイ Odontesthes bonariensis については、2010 年以降確認されなくなり、外来種の減少傾向も捉えることができた。以上の結果から市民参加型モニタリングが在来種や絶滅危惧種の増減、外来種の定着や増減を把握するために有効であることが示唆された。一方で、15 年間継続したモニタリングも新型コロナウィルスの流行等により継続できなくなり、継続性という観点からイベント型の市民参加型モニタリングの課題も明らかとなった。
著者
鳥越 淳一
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
開智国際大学紀要 (ISSN:24334618)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.111-120, 2020 (Released:2020-04-01)

本論は拒絶感受性(RS; rejection sensitivity)に関する,近年の海外の研究動向をレビューし,今後日本における RS の研究展望について明確にすることを目的としている。RS は拒絶の手がかりに対して,不安気に予測し,すぐに知覚し,強烈に(否定的に)反応する傾向と定義され,この20 年間,海外では様々な視点から研究がなされてきた。しかし,心理学的研究のデータベースで確認する限り,日本ではさほど多くの研究はなされていない。アメリカを中心とする海外では,近年,神経画像研究の進歩も相まって,RS は特定の精神疾患や精神障害の中核特性として研究され,高RSを有する人と低RS を有する人では脳の機能の仕方が異なっていることが分かってきている。そのような違いは,精神病理間の質的な違い,ひいては,効果的な治療計画,治療過程(治療的介入),治療結果(予後)を検討する重要な指標となると考えられる。たとえば,非定型うつ病の一種である,いわゆる“新型うつ”と呼ばれる難治性のうつ病にはパーソナリティ障害が関与していると考えられており,うつ病およびその亜型とも目される境界性パーソナリティ障害を通して確認できる RS を治療ターゲットとすることで,新たな理解が生まれるかもしれない。また,RS の変容プロセスは,治療プロセスにとっても示唆深く,技法や理論にも新しい視点が導入されることが期待される。このように,精神病理のリスク因子,治療評価,予後の予測因子として幅広く検討が可能な RS が,今後,日本においても有用な臨床概念の指標として研究され,活用されていくことが期待される。
著者
井手 広康 奥田 隆史
出版者
一般社団法人 日本産業技術教育学会
雑誌
日本産業技術教育学会誌 (ISSN:24346101)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.269-278, 2021-06-28 (Released:2022-06-28)
参考文献数
10

2019年に改訂された高等学校学習指導要領において,文部科学省は授業で取り扱うプログラミング言語を指定していないが,高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修教材においてPythonのプログラムを例示している。ただし,Pythonにはさまざまなプログラミング環境が存在するが,プログラミング言語と同様にプログラミング環境についても指定していない。そこで,本研究では,高等学校のプログラミング教育において,プログラミング環境の違いによって生じる教育効果の違いを比較することを目的とし,7つのクラスに対してそれぞれ異なるPythonのプログラミング環境を用いて同一の授業を行った。ARCS評価シート,事前・事後アンケート,確認テストの結果から,プログラミング環境のうちTextFile形式のものに良い結果が表れる傾向があり,特にJupyter Lab (TextFile)とSpyderが他のプログラミング環境と比較して高い教育効果が期待できることがわかった。
著者
加藤 充子 東 英一 井戸 正流 伊藤 正寛 二井 立恵 樋口 和郎 庵原 俊昭 神谷 斉 桜井 実
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.61-65, 1991-03-31 (Released:2011-03-09)
参考文献数
15

免疫化学療法および中枢神経系に対する再発予防治療 (4例を除き24Gy頭蓋照射を含む) を受け, 完全寛解が5年以上持続している小児急性リンパ性白血病 (ALL) 患児56例について, 発症後の知能指数 (IQ) の経時的変化を検討した.対象症例の経過観察期間は発症後5.1~15.5年, 平均10.1年で, この間に一人当り1~4回, 計121回の知能検査を実施した.42例については, 1.4~10.0年, 平均4.5年の間隔で2回以上の検査が行われた.この結果, 1) IQは発症後1~3年以降, 時間の経過とともに低下する.2) IQの低下は発症時年齢と関係があり, 5歳未満発症児で有意の低下が認められる.3) IQの低下は性別と関係し, 女児において有意の低下が認められることがわかった.また, 発症後10年以上経過してもなおIQは低下し続ける傾向にあり, 長期間にわたる経過観察が必要であると思われた.
著者
鯉沼 陸央
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

酸化グラフェン(GO)を用いた新しい電気化学二重層キャパシタの作製に成功した。ここで作製した電解二重層キャパシタは、バインダーフリーのオールカーボンスーパーキャパシタとして作用することが分かった。GO内に多塩基酸である硫酸やリン酸を添加することによって、その特性が1ケタ向上することも見出した。GOにスルホ基を導入することで、サイクル特性の向上を目指した。スルホ基を導入したGOを固体電解質に用いると、サイクル特性は10倍以上(数1000回の充放電に耐性をもつ)に向上した。以上の結果から、GOおよびスルホ基を導入したGOは非常に高い能力を有する固体電解質として作用することが証明できた。
著者
渡邉 邦友
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.121-128, 2014 (Released:2014-07-31)
参考文献数
27

自閉症スペクトラム障害(Autistic Spectrum Disorders(ASD))とは,子供の社会的な発達,伝達能力の発達,想像力の発達などの一連の発達障害で,5つのサブグループがある.遺伝子の変異あるいは欠失が原因とされる一つのサブグループであるRett disorder以外のASDの原因は不明である.原因不明のサブグループの中に18ヶ月くらいまでは正常に発達していた子供が,その後典型的な症状を呈して後退していくRegressive autism(RA)がある.中耳炎などの感染症の治療に関連して発症することが多く,しかも消化器症状を伴うことが多いことから,抗菌薬による腸内細菌叢の変化が発症に何らかの重要な役割を演じているに違いないと考えられてきた.自閉症とClostridium tetaniと題するE. Bolteによる論文発表から進展した最近の20年間余のRA患者の腸内細菌叢,粘膜生検材料細菌叢に関する研究からAutismの発症あるいは病状の悪化に関連する可能性があるいわゆるAutism-associated bacteriaの存在が指摘されるに至っている.
著者
越野 裕太 石田 知也 石田 和宏
出版者
The Society of Japanese Manual Physical Therapy
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.11-17, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
16

〔目的〕本論文の目的は,足関節・足部骨折症例に対する徒手療法が足関節背屈可動域に与える効果を,システマティックレビューおよびメタアナリシスによって明らかにすることとした。〔方法〕5つのデータベースを用いて2022年7月までの論文を検索およびスクリーニングを行い,足関節・足部骨折症例に対する徒手療法の介入が足関節背屈可動域に与える効果を研究した無作為化比較試験を特定した。背屈可動域への効果を徒手療法群と対照群で比較するためにメタアナリシスを実施した。〔結果〕3つの論文が採用され(計172名),介入内容は関節モビライゼーションが主だった。背屈可動域への効果に関して徒手療法群と対照群に有意差を認めなかった(標準化平均差 0.05; 95%信頼区間 -0.50, 0.60)。〔結論〕足関節・足部骨折症例に対する関節モビライゼーションは背屈可動域の有意な改善効果を認めなかった。今後質の高い研究が必要であると考えられた。

16 0 0 0 OA プレフェミン

著者
岡 秀樹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.154-155, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
4

月経に伴う症状の中で,月経開始前に発現する種々の症状については,1931年にFrankが月経前緊張症として初めて報告し,その後「月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)」と定義され,一般に知られるようになった.現在,日本産科婦人科学会では,PMSを「月経開始の3~10日位前から始まる精神的,身体的症状で月経開始とともに減退ないし消失するもの」と定義している.PMSの症状は200~300種類とも言われており,身体的症状として,乳房のはり・痛み,肌あれ・にきび,下腹部のはり,眠気または不眠,疲労倦怠感,頭痛,腰痛,むくみ,下腹部痛,のぼせなど,精神的症状として,イライラ,怒りっぽい,情緒不安定,憂うつ,落ち着かない,緊張感などがある.生殖年齢の女性の約70~80%は,月経前に何らかの症状を伴うとされている.