著者
川道 穂津美
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

血管攣縮はRhoキナーゼによるカルシウム非依存性の異常収縮であるが、最終ステップとなる収縮蛋白による異常収縮現象は未だ確定されていない。本研究では、全て質量分析によって検証された高純度の収縮蛋白の滑り運動をリアルタイム・ナノ解析するシステムの構築に成功し、それを用いて、カルシウム非存在下で、Rhoキナーゼによって制御軽鎖がリン酸化された平滑筋ミオシンとアクチンの滑り運動をリアルタイム可視化することに成功した。しかも、その運動速度は正常収縮の最高値に匹敵する著明なものであった。
著者
古和田 雪 館 正弘 川上 和義 菅野 恵美
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

NKT細胞はT細胞とNK細胞の特性を併せ持つユニークな細胞であり、様々な疾患の制御に深く関わっている。本研究ではマウス創傷治癒モデルを用いて創傷治癒過程におけるNKT細胞の役割に注目し解析を行った。NKT細胞を欠損したJα18KOマウスでは、WTマウスと比べ創傷治癒が遅延した。この遅延は、WTマウス由来のNKT細胞を20~30%程度含む肝臓単核球集団(LMNC)を移植されたJα18KOマウスで回復した。また、WTマウスにNKT細胞を活性化させるα-GlaCerを投することにより創傷治癒が促進した。これらの結果より、NKT細胞が皮膚創傷治癒過程において重要な役割を担うことが明らかとなった。
著者
森脇 健夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の課題は教師の「熟練性」を「二重の応答性」に着目し、その発達の過程をライフヒストリーインタビューをもとに明らかにすることである。初任期の教師の場合、指導事項を効率的に教えないといけないこと、学習者の理解や学習のプロセスの理解が困難なことから、教えたことに対する学習者の反応への教師の反応に稚拙さが見られる。的確な反応ができないばかりか、反応そのものができない、という事態も見られた。これに対し、中堅、熟練期の教師は、1時間に教える事項への認知だけではなく、単元、カリキュラムへと認知が広がり、一方で学習者、学習過程への理解が深まる。「二重の応答性」もタイミング、その内容も的確さを増していく。
著者
細谷 葵 佐藤 洋一郎 槙林 啓介 田中 克典 石川 隆二 趙 志軍 楊 春 DORIAN Qfuller MICHELE Wollstonecroft
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

昨今再考がうながされている、中国におけるイネの栽培化とそれに基づく農耕社会の形成過程について、考古学(植物遺存体・人工遺物)と遺伝学の共同研究による解明をめざした。イネ栽培化期における野生植物利用の実態解明、農耕具・加工具の体系化、栽培イネの伝播経路について新しい見解を得ることができ、複数の英語・日本語論文や国際学会で発表した。また、国際シンポジウム2件(1件は共催)を開催し、国際的な研究者の意見・情報交換の場を提供するとともに、その成果の出版も行った。
著者
北山 長貴 馬場 景子
出版者
山形県立米沢女子短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

平成23年度に必修科目化された小学校外国語活動の教材は次年度に『Hi, friends!』となった。本研究は新教材『Hi, friedns! 1, 2 』の語彙と表現の分析を行った。特別支援教育、特に視覚障害児童には音声教材の整備充実が急務である。本研究では平成26年に「小学校外国語活動5年生用、Hi, friends! 準拠音声ペン教材 Hello English 1」、平成28年に「小学校外国語活動6年生用、Hi, friends! 2 準拠音声ペン教材 Hello English 2」を作成した。工学機器と触図教材を活用した補助教材の使用により晴眼者と同等の教育情報が保障される。
著者
増本 浩子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

スイスの作家フリードリヒ・デュレンマット(1921-1990)は初期から一貫して、世界を人間理性では理解できない「迷宮」として描き出しているが、後期になるとさらに、人間は世界どころか自分自身のことさえ正しく理解できないのではないかという問いを立てる。晩年の作品『素材』は文学的素材の歴史を語ることで作家の人生を語るという特異な自伝であるが、これはそもそも「本当の人生」を描くものとしての自伝を書くことは不可能であるとデュレンマットが考えているからである。作家が頭の中で考え出した文学的素材の歴史を語ることによって人生を語るという自伝のあり方は、「考えたこともまた現実の一部である」という認識に基づく。
著者
村山 康雄 稲垣 文雄 DRIER Brian 前川 博史 大塩 茂夫 丸山 一典 高橋 綾子
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は中学校、高校で行われている簡単な科学実験で使用される表現を日常生活で頻繁に使用される表現に応用しようとするもので、視聴覚教材を作成する。平成21年度に作成した物理実験教材を授業で使用し、学生からの反応を見て、改良を図った。最初のバージョンは学生にとって英語がむずかしいようであったので、より容易な表現に書き換えた。実験で使われる表現を応用した教材として、21年度に作成した「煮込みラーメン」等の教材の改良を行った。同じ題材で表現を変え、また英語のナレーターを変えた複数のバージョンを作成した。アメリカ人、オーストラリア人に英語を読んでもらった。新TOEICではリスニングのセクションがこれまでのアメリカ英語だけではなく、オーストラリア英語等も加わったように、さまざまな種類の英語を学ばそうという流れがあり、本教材作成でもこの点を意識した取組みを行ったものである。実験、料理以外の教材として「万華鏡」の教材を作成した。万華鏡は日常生活において特別なものでなく、子供から大人まで誰でも経験するものであり、使用に際しての表現に実験で用いる表現が応用できる。実験、料理の教材として「弦の振動と波長」、「寿司の作成」を作成した。研究の成果の発表として、シルフェ英語英米文学会の年次大会で実験、料理の教材についての発表をした。
著者
池田 敏彦 飯尾 昭一郎
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では,河川への設置が容易で身近な小規模水力での発電を可能にする環境負荷低減型水車として,サボニウス水車と滝用水車を提案し,各々の特性評価と性能向上を目指した.農業用水路での利用を想定したサボニウス水車については,ランナ設置条件と出力特性との関係解明および,遮へい板と称する一枚の平板で出力特性を改善する方法の検討をおこなった.落差工での使用を想定した滝用水車については,Banki水車をもとに滝用水車専用ロータを設計・製作し,ロータ内部への流れを積極的に利用して出力を得る開放型貫流式ロータを提案し,その出力特性を調べた.また,滝の流量変化によるロータへの流入位置変化による性能低下を防止する方法についても検討した.得られた結果は以下のとおりである.サボニウス水車については,(1)出力特性には流路底面あるいは自由表面とランナとの距離が大きく影響し,付着流による揚力発生,巻込み流による戻りブレード凹面の圧力回復,進みブレード凹面への衝突流が出力特性を支配している.(2)遮へい板の最適設置条件を見出し,出力係数を約1.8倍の47%に増加させることができた.滝用水車については,(3)貫流タイプにしたことで,従来の衝動タイプに生じていた低速回転時のランナ内部での水のよどみが解消され,幅広い回転数領域で安定した出力を得ることができる.(4)衝動タイプと比較して,滝の流量変化に対する出力の変化が抑制される.(5)ランナ単体での出力係数は,衝動タイプの20%増加である74%が得られる.(6)平板による水流制御方法では,衝突時のエネルギー損失および水流の変動が大きく,貫流タイプでも28%の出力係数の低下となる.
著者
都留 稔了
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

橋かけアルコキシドとしてビス(トリエトキシリシリル)エタン(BTESE)を用いて,有機無機ハイブリッド逆浸透膜の開発を行ない,その透過特性の評価を行った。BTESE 膜は 95%以上の脱塩率を示し,逆浸透膜として可能性を明らかとした。90℃でも安定な濾過性能を示しただけでなく,塩素に対しても良好な耐性を示した。さらに,透過機構について,供給溶液濃度,操作圧力,温度依存性を検討した。操作圧力の増加とともに,透過流束および阻止率が上昇したのに対して,塩濃度の増加とともに両者ともに低下した。一方,操作温度とともに阻止率および透過流束が向上したが,その温度依存性は水粘度の温度依存性よりも大きいことから,透過機構は粘性流れとは異なることを明らかとした。
著者
小澤 京子
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ルドゥの都市・建築計画、特に『建築論』収録のテクストと図版を、「性の管理」、「労働と共同体」、「教育・訓育」の観点から分析した。同時代の重要な比較参照項として、 ブレやルクーの建築構想、『百科全書』の関連項目、サド、レティフ、フーリエらの生政治的建築構想、その他18世紀後半のフランスで発行された文献の調査・分析も併せて遂行し、ルドゥの時代における「性的身体を対象とする生権力」のあり方について見取り図を構築した。この研究の成果を集成した博士論文「ユートピア都市の書法:クロード=ニコラ・ルドゥの建築思想」は、審査通過後に単著として刊行予定である。
著者
村上 緑
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

視物質ロドプシンのバソ中間体とその光異性体イソロドプシンの結晶構造を求め、光反応サイクルの初期過程の様子を明らかにし、シグナリングに必須な構造変化を明らかにした。暗順応状態とイソロドプシンの構造を比較すると、レチナールは膜面に平行にポリエン鎖平面を向けており、レチナールと膜貫通へリックス3との立体障害がイソロドプシンを安定に保持することが明らかとなった。一方、暗順応状態からバソ中間体への遷移によってポリエン鎖平面は膜の法線方向へと回転しポリエン鎖は細胞質側へと大きく移動した。この時、レチナールは大きく捻じれ、近傍残基の側鎖に相補的な動きが惹起され、吸収した光エネルギーはレチナールおよび近傍残基の歪みとして蓄えらえることが明らかとなった。
著者
壁谷 典幸
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

量子臨界点(量子揺らぎによって引き起こされる臨界点)を2点持つ特異な希土類化合物について、その起源を明らかにするための研究を行った。量子臨界点への到達の方法として圧力の印加と元素の置換をを用いた。臨界揺らぎの情報を得る手段として圧力下物性測定手法の開発を行い、比熱測定装置を完成させた。圧力印加による量子臨界点へのアプローチでは、反強磁性転移と見られる電気抵抗の異常を見出した。また元素置換によるアプローチでは、量子臨界点の近傍に位置する単結晶試料の育成に成功し、低温で比熱が対数的に増大する振る舞いを見出した。
著者
浅見 泰司
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

敷地形状の基本要素である敷地の奥行、間口の分布に関して分析した。敷地の平均奥行や間口の長さの分布関数に関する理論的・実証的分析を行った。また、住宅市場分析も行い、中国北京の住宅市場における床面積の選好度の違いや住戸プラン選考の分析、地域内の社会階層居住分化の分析、地域評判情報の分析、居住満足度の分析、居住階層と店舗空間分布の関係の分析も行った。
著者
小澤 永治
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

今年度は,前年度の研究経過によって得られた結果をもとに,継続して大学附属の相談機関,児童相談所,児童養護施設等と連携し,心理臨床的援助が必要な児童・生徒とした臨床実践・臨床研究を行った。臨床実践研究の一つとして,前年度に開発した"不快情動への態度尺度"を用い,児童・生徒のストレスマネジメント教育の効果との関連について検討した。ストレスマネジメント教育の手法としては,情動への態度と関連の深い身体感覚や情動体験を取り扱う臨床動作法を用いた。対象者を不快情動への態度尺度の2因子得点の結果によって4群に分類し,2因子とも得点が低く不快情動への態度が乏しい群では,動作法体験中に"弛緩感・爽快感","動作への気づき"などの自体感が低く,集団で実施する中ではリラクセイション体験を得ることが乏しかったと考えられた。また不快情動への"切りかえ可能性"が高く,"拒否感"が低い群では,動作法中の肯定的な体験や自体への気づきが多く記述され,特に有効であった可能性が示された。このように,"不快情動への態度"のあり方によって臨床動作法の導入にあたっての配慮を変えてゆく必要性が考えられた。また,児童養護施設に入所している小学校5年~中学校1年生の生徒5名を対象に,1年間週1回~月1回の頻度で個別的に臨床動作法と遊戯療法を併用した心理療法の実践を行った。個別での継続的な心理療法によって,行動や情動制御の改善を図ったものであるが,各対象者によって臨床動作法の受け入れや治療過程の差異が見られており,これらについて"不快情動への態度"という観点から考察を行った。以上の調査研究・実践研究より,思春期のストレスに関して情動発達の視点から新たな検討が行われ,今後の心理臨床実践に有意義な知見が得られたと考えられる。
著者
尾上 弘晃
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は,センチメートルスケールの複雑な3次元組織を構築するためのビルディングユニットである「細胞ファイバー」を開発し,組織構築のための方法論を確立することである.細胞ファイバーは,二重同軸マイクロ流体デバイスにより連続的に形成するこに成功した.その際,コア部に細胞と一緒に封入するECMの選択が,細胞ファイバ形成に重要であることを見いだした.形成した細胞ファイバを用い,培養液の中で機械織りして3次元構造を構築すること,また束ねることでバンドル様の構造を構築することに成功した.構築した3次元組織は細胞の活性を維持しており,移植医療に適用することが可能であることをマウスへの移植で確認した.
著者
鷹野 誠 伊藤 政之 武谷 三恵 山下 潤 桑原 宏一郎
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、徐脈性不整脈に罹患し人工ペースメーカー植え込み術を受ける患者数は増加の一途である。これは自動能をもつ洞房結節ペースメーカー細胞の変性・脱落が原因であり、再生心筋による治療の可能性が注目を集めている。そこで洞房結節のペースメーカー細胞に特異的に発現するHCN4という分子の遺伝子座にホタルの発光蛋白質を組み込んだ遺伝子改変マウスを作成した。このマウスではペースメーカー細胞をホタルのように光らせることができる。この光を手がかりに、ペースメーカー型の再生心筋細胞を簡便かつ定量的にスクリーニングする方法を開発することができた。
著者
川口 将史
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

生殖的隔離は種分化を引き起こす重要な素過程の一つであるが、その成立メカニズムは明らかになっていない。生殖的隔離の神経基盤を解明するため、ヨシノボリの雄が同種の雌に求愛、あるいは別種の雌を排他する際に活動する脳領域を、最初期遺伝子c-fosの発現パターンを指標に同定した。その結果、視覚情報の処理過程や全身性の反応を制御する下垂体・視床下部の活動に違いが見られた。このことから、ヨシノボリの雄は雌を視覚刺激で識別しており、視覚情報の一次入力領域である視蓋が行動選択における判断の中枢として働くことが考えられる。
著者
松田 一成
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究はマウス胚エピブラストより単離したepiblast stem cells (EpiSCs)を利用して、神経板の発生における転写制御ネットワークを明らかにすることを目的とする。マウス胚の神経板はE7.5以降、転写制御の異なるいくつかの領域に分かれて発生する。神経板の最前部(anterior forebrainの前駆体)は、Hesx1遺伝子の活性化で特徴付けられる。EpiSCの内在のWntシグナルをDkk1によって抑制すると、最前部神経板細胞を効率よく発生させることを明らかにした。また、Wntシグナルの抑制の効果がHesxlの5'エンハンサーを介してHesx1の発現を制御していることも示した。Dkk1はマウス胚においてE6.5-7.5ではallterior visceral endoderm (AVE)で発現しているが、E7.5-8.5はanterior mesendoderm (AME)で発現している。どちらのDkk1の効果が最前部神経板の発生に重要かを調べた。Episcの神経板細胞の発生がマウス胚の発生ステージに対応していることを利用した。神経板細胞分化条件で、時間限定的にWntシグナルを抑制した。その結果AVEでのDkk1の発現が最前部神経板領域の発生に重要であることがわかった。現在、開発したEpiscの神経板発生モデルを利用して、神経板を発生させる転写制御ネットワークを解析している。具体的にはOct3、Sox2、Otx2、Oct6、Zic2といった転写因子のEpiSCと神経板細胞における結合領域を、ビオチン化転写因子を用いた新しいChIP-seq法を用いて、網羅的に解析している。これまでに発表されたデータ、例えばLodato et al., 2013などのES細胞や神経系前駆細胞でのChIP-seqのデータと比較することで、ES細胞、EpiSCs、神経板細胞での転写因子の結合領域の違いを明らかにしつつある。
著者
高橋 毅
出版者
秋田大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

○研究目的 : 表情・感情認識技術は高度なマンマシン間コミュニケーションを実現するために重要である。そこで本研究では, 情動と身体の生理的変化に伴う顔の表面温度変動に関する知見を得ることを目的とし, 受動的刺激により喚起した“悲しみ”の生起・消失時における顔面温度変動の計測・解析を行い, “悲しみ”の情動検出に関する検討を行った。○実施内容ならびに研究成果 :・データの取得 : 被験者7名に対して情動喚起映像(映画)を用いた受動的な“悲しみ”の情動喚起を行い, 赤外線サーモグラフィ用いて時系列顔温度データを取得した。映画視聴後2日以内に, 強い悲しみを喚起する場面を再度視聴させ, 顔面をサーモグラフィで約9分間(視聴5分, 前後2分の安静)撮影した。撮影後はアンケートを用いて情動の程度や体調などを被験者ごとに調査し, 解析データを取得した。・対象領域の自動設定処理の開発 : 温度データから顔面のグレースケール画像を生成し, Haar-like特徴量とAdaboostを用いた顔面領域の検出手法の開発を行った。各被験者100~600フレームの顔面領域の正解画像をオペレータ1名が手動で作成し, 機械学習で全被験者共通ならびに個人別の検出器を生成した。その結果, 被験者共通・個人別検出器何れも顔領域を検出可能であることを明らかにした。また, 共通検出器はより多くの学習データを必要とし, 350フレーム以上の場合に良好な検出率が得られた。・情動と顔面温度変化の関連解析 : 対象領域における情動の生起と顔面温度の関連について検討を加えた。その結果, 悲しみの情動が喚起された場合, 特定の被験者において頬領域温度の緩やかな上昇ならびに呼吸変化に伴う鼻根付近の温度変動が認められた。また, 悲しみの情動の場合, 情動喚起で上昇した頬領域の温度が比較的長時間保持される傾向を認めた。この頬温度変動の傾向が“喜び”と“悲しみ”の情動判別に有用な指標となるか更なる検討が必要である。
著者
中島 伸一郎
出版者
山口大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

都市水害を抑制する新しい舗装構造として側面流入型の貯留浸透舗装を提案した.本舗装構造の基本的水理特性および力学特性を把握するため,路盤材に対する大型透水試験と舗装模型に対する繰返し平板載荷試験を実施した.透水試験の結果,路盤材の透水係数は粒度分布によらずおおむね10-1cm/secであることを明らかにした.舗装模型に対する繰返し平板載荷試験の結果,浸水時には路面のたわみが大きくなるとともに路床面に作用する応力が上昇するが,これは浸水により路盤の剛性が低下することが原因である可能性が高いことが明らかとなった.