著者
日野 泰雄 向井 一雄 水上 和也 森田 隼一
出版者
Japan Society of Traffic Engineers
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.B_18-B_25, 2015

少子高齢化と同時に人口減少が進む中、賑わいづくりもまた、まちづくりの重要な要素となっており、そのためには、特に高齢者を中心に外出機会を提供するとともに、移動のしやすさや同伴移動の推奨などによる移動支援が求められていると考えられる。そこで、本研究では、このような高齢者にとって移動しやすいまちづくりの実現を念頭に、「日曜日同伴者割引」、「通院利便性の向上に合わせた路線バスのコミバス同一区間同一料金」、「高齢化率の高い地区でのフリー乗降サービス」を新たに導入し、利用実態と利用者や市民意識の調査を実施した。その結果、これらのサービスの有用性と今後の展開に向けた課題を抽出することができた。その成果は、今後の高齢化社会におけるまちづくりと一体となったバスサービスの実現の先例を示すものと考えられる。
著者
中居 寛明 宮本 九里矢 三澤 慧 今井 康仁 粟飯原 周二
出版者
日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.20160003-20160003, 2016

パイプラインにおける高速延性き裂伝播は大規模な破壊事故に繋がるために, その防止設計は非常に重要である. パイプラインにおける高速延性き裂の駆動力は, 内部ガス圧であるが, 軸方向のき裂伝播に伴いパイプが変形しながら開口するために, その開口からガスが漏出することで内部ガス圧の減圧がパイプ内で進行する. つまり, き裂伝播とその駆動力である内部ガス圧の減圧進行が同時に起きており, 減圧の進行速度がき裂伝播速度に対して速い場合は, き裂先端で内部ガス圧が低下し駆動力を失いき裂が停止し, 逆に, き裂伝播速度が減圧進行速度に対して速い場合は, き裂先端で内部ガス圧が保持され続けるために駆動力が提供され続けてき裂は停止することなく伝播し続ける. また, ガスの漏出量はパイプ開口の大小, つまりパイプ変形の度合いによって変化し, 結果的に内部ガス圧の減圧に影響を及ぼす. このように, パイプラインにおける高速延性き裂伝播は, 内部ガス圧の減圧, パイプ変形及びき裂伝播が互いに影響しあう複雑な現象であり, 流体構造破壊連成現象であると言える. <br>パイプラインにおける高速延性き裂の既存の評価手法として広く採用されているものがバテル2曲線法である. この手法では, き裂伝播抵抗曲線(き裂先端位置の圧力とき裂伝播速度の関係)と減圧曲線(圧力と減圧の進行速度の関係)の比較によって高速延性き裂伝播発生の有無を判定する. バテル2曲線法は, その簡便さによって広く用いられるに至ったが, パイプの変形及び各現象間の相互影響は考慮されてない. さらに, き裂伝播抵抗曲線は実験的に定式化されており, 実験式を得るためには非常に高額な実大パイプラインバースト試験を複数回実施する必要があり, 実験式の適用性を広げるのは経済的に困難となる場合が想定される. また, 有限要素法に基いた詳細な三次元の解析手法も提案されてきたが, それらはパイプラインの設計ツールとしては用いられていないのが現状である. その理由としては下記の二点が挙げられる. まず, 非常に複雑な流体構造破壊連成現象を精度よく記述することが困難であることが挙げられる. 特に, き裂伝播条件については未だ不明な点が多く残っているため, 連成現象を考慮し, かつ, ガスの減圧及びパイプの変形を精緻に記述できているものの, き裂伝播条件の記述における精度不足が全体の精度のボトルネックとなっている. 次に, 三次元有限要素解析の特質上, , 計算に莫大な時間を要するために, 複数回の計算を要する高速延性破壊防止設計に不向きであることが挙げられる. <br>以上の背景より本研究では, 連成現象を考慮しつつ可能な限り簡潔な流体構造破壊連成一次元モデルを構築した. 本モデルの特徴を次に示す. <br>(1) き裂開口からのガス漏出を考慮してパイプ内のガス減圧を定式化し, 一次元のガス減圧モデルを構築した. <br>(2) パイプ断面の変形形状を小径アルミバーストテストの計測結果より一つの変数で定式化し, それに基づいて一次元のパイプ変形モデルを構築した. また, パイプが地中にある場合の変形抑制効果を付加質量を用いて定式化した. <br>(3) き裂が微小伝播する際に定常伝播すると仮定し, き裂の伝播条件を動的エネルギー平衡条件より定式化した. <br>(4) 一次元で定式化されたガス減圧モデル及びパイプ変形モデルは有限差分法に基いており, き裂伝播条件と合わせて時間ステップを刻みながら順に解くことで各現象間の連成現象が考慮された解を得ることができる. <br>(5) 内部ガスとして天然ガスや炭酸ガス等の混合気体及び単相気体を幅広く扱うことが可能であることに加えて, いかなる鋼管の機械特性及び形状も扱える適用範囲の広い数値モデルである. また, 本モデルは, フルスケールバーストテストの解析時間が2~3時間と非常に短いために, 多くの計算数を要するパイプラインデザインのための数値ツールとして使用されることが今後期待される. <br>本報では, 本モデルの詳細な定式化及び計算例を記述している. 次報において, 本モデルの妥当性検証及びパイプラインにおける高速延性き裂伝播の影響因子解析を実施する.
著者
坂上 敏彦 藤原 盛光 野口 静雄 中田 文雄 柘植 孝
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.127-128, 2004

地下空洞調査は、空洞内部の空洞の映像と空間の広がりを把握することが要求される。ただし、地下空洞は防空壕跡地など、現在は閉鎖されているものが多く、坑口や坑道の一部が閉鎖されていることが多く、空洞内部の調査には特殊な装置が必要となる。また、照明や水没空洞など、さまざまな現地状況に耐えうる機器の開発が必要となる。ここでは、空洞ビデオカメラ、レーザーレーダー、音響測深探査、坑内写真撮影装置、スネークアイ(挿入型ビデオレーザーカメラ)などの、地下空洞調査に特化した調査機器の開発状況と、その適用性について事例を交えて紹介する。
著者
川上 哲 馮 少孔 鍜治 義和
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.35-36, 2003

地表から数mの深度に防空壕が存在する可能性がある場合、その調査手法としては、地中レーダ探査が、コスト・作業能率から考えて、最も一般的である。しかし、地中レーダの反射記録からは、その空洞の上面からの反射が得られるだけで、その反射がどのような物性に対応しているかを特定することは難しい。そこで、多チャンネルによる表面波の測定を行い、地中レーダにより発見された異常反射体前後の表面波(レイリー波)の記録を取得し、調査結果との比較を行ってみた。その結果、多チャンネルによる表面波探査が空洞調査に対して有効な手法であることを確認した。
著者
高橋 和雄
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.219-234, 1995-12-31
参考文献数
7
被引用文献数
2

The heavy rain which swept over the Nagasaki districts on 23 July 1982,killed 299 persons and damaged so seriously to Nagasaki City and its vicinity. The local government created the committee to deliberate the reconstruction plan in Nagasaki districts. Voluntary organization for disaster prevention were formed to promote and make sure of evacuation of inhabitants by leadership of Nagasaki City. In the present work, present situations and problems of voluntary organizations for disaster prevention are investigated by questionnaire for the representative of the voluntary organizations. Information transmission, automatic warning equipment for debris flow, disaster prevention radio communication and disaster fighting drill are checked.
著者
鈴木 浩一 塩竃 裕三 久野 春彦 東 義則
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 = BUTSURI-TANSA Geophysical Exploration (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.515-526, 2007-12-01
参考文献数
10
被引用文献数
8 3

近年,山間部の地すべり斜面を対象とした降雨浸透水による地下水面の変動,産業廃棄物層内への降雨浸透水の挙動、地下水涵養試験時の涵養水の浸透、沿岸部での潮汐に伴う塩淡境界面の変動など, 様々な分野において電気探査法により地下水の流動状況をモニタリングする適用事例が増えている。しかし,従来の電気探査装置では未固結地盤中など流速の大きい地下水の挙動を3次元に展開した測線において数分程度の時間で測定することは困難であった。今回開発した電気探査装置は、最大240点の電位データを同時に受信することができ,アナログ系でのフーリエ変換処理により電位を計測し、高周波数(最大5kHz)の正弦波を送信する。例えば、120測点に対する二極法による全ての組み合わせのデータ(120×119=14280通り)を約5分間で測定することが可能である。本装置の性能を確認するため,当所構内にある陥没空洞箇所に塩水を注入中の比抵抗変化を連続的に測定した。陥没箇所を中心に60点の電極を1m間隔で配置した2測線を展開した。本空洞はローム層(下総層群常総粘土層に相当)内に掘削された旧防空壕が崩落したものと推測されている。測定は塩水を注入する直前より開始し,約2分半間隔で繰り替えし測定を行い,塩水の注入が完了した20分後に測定を終了した。塩化カルシウム溶液(比抵抗1.4&Omega;m)を110分かけて1000ℓを注水した。全測定回数は51回で,1回当たりの観測データ数は3540通りである。全計測データ(51回分)に対しインバージョンにより比抵抗断面を求め,塩水注入前の比抵抗断面を基準値とした各測定時の比抵抗変化率断面を求めた。その結果,塩水が埋没空洞部に徐々に浸透していく状況を連続的に変化する比抵抗断面として可視化することができた。本装置は,流速の大きい地下水挙動の3次元的なモニタリングに十分貢献できると考えられる。<br>
著者
奥村 武信 澤 教子 藪下 裕己 田中 博
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.67-72, 2002-08-31
参考文献数
2
被引用文献数
4 4

国立公園内登山道に近接した長大な治山堰堤の景観的瑕疵を緩和する目的で河床砂礫による盛土が行われ近隣樹林からの飛来種子による樹林化を図るための生育基盤として植生基材吹付工,むしろ伏せ工が準備された。本論文では,(1)広大な河原への種子飛来の可能性を確認し,(2)施工翌年の発芽・枯死調査で植生定着にはむしろ伏せ工が適当であること,(3)続く1年の調査で植生基材吹付工が定着植生の初期成長に対して効果を示したこと,(4)その原因は表土層の水分保持特性と地温変動抑制の差異にあること,(5)樹種により効果に差のあることを述べ,その他の観察・調査した諸事項から植生基材吹付工の改善すべき点を議論する。
著者
吉田 将人 大澤 宏祐 高木 基樹 広川 貴次 植草 義徳 加藤 晃一 新家 一男 夏目 徹 土井 隆行
出版者
天然有機化合物討論会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.53, pp.241-245, 2011-09-02

Thielocin B1 (1), isolated from the fermentation broth of Thielavia terricola RF-143 in 1995, consists of five multi-substituted benzene rings, which are connected with a 2,2', 6,6'-biaryl ether and four ester linkages. Recently, it was found that 1 strongly inhibits protein-protein interactions (PPIs) of PAC3 homodimer (IC_<50>= 0.02 μM) without inhibition of other PPIs such as PAC1/PAC2 or TCF/P-catenin. Since we are interested in the mode of action mechanisms of 1, we performed total synthesis of 1, and docking studies by NMR and in silico analyses. The key intermediate 2,2', 6,6'-biaryl ether 4 was synthesized from 7-membered lactone 6, which was prepared by oxidative lactonization of benzophenone 7, followed by chemoselective reduction of the lactone and removal of the resulting alcohol. The side wing 5 was synthesized from aldehyde 8 via formation of 3 and its coupling by esterification. Condensation of biaryl ether 4 and 5 was smoothly performed using trifluoroacetic anhydride to afford 21 in high yield. Formylation of 21 by treatment with dichloromethyl methyl ether and AgOTf, followed by Kraus oxidation provided acid 2. Coupling of the resulting acid 2 with phenol 3 afforded 22 in 70% yield. Finally, removal of the benzyl groups by-hydrogenation furnished thielocin B1 (1), whose spectral data were in good agreement with those of the natural product.
著者
小河原 はつ江
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.105-124, 1994

特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) など各種血小板減少症の患者を対象として血小板結合免疫グロブリン及び補体第3成分量の臨床的意義について考察した.血小板結合免疫グロブリンG (PAIgG), 血小板結合免疫グロブリンM (PAIgM), 血小板結合免疫グロブリンA (PAIgA), 血小板結合補体第3成分 (PAC3) は免疫性血小板減少症のみならず, その他の血小板減少症でも増加することもあり, ITPに特異性はなかった.しかし, PAIgG, PAIgM, PAC3が共に正常範囲の症例の比率はSLE, リンパ増殖性疾患, 肝硬変に比し, ITPで有意に低値で, PAIgGのみ上昇した症例に比し, PAIgG, PAIgM及びPAC3が同時に上昇した症例で有意に血小板数は低く, 血小板寿命は短縮した.また, PAIgG, PAIgM, PAC3は, プレドニソロン投与により血小板が増加すると, いずれも低下する傾向を示した.血小板輸血を受けたITP以外の血液疾患患者において, 血小板輸血後の末梢血小板数が100×10<SUP>9</SUP>/L以下の症例ではPAIgG, PAIgM, PAIgA, PAC3が正常と比較して有意に高かった.また, 輸血量の増大に伴って, PAIgG量が増加する傾向がみられた.<BR>immunoblot 法を用いて, 特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) 患者, 全身性エリテマトーデス (SLE) 患者および血小板輸血患者の血清中抗血小板抗体の対応抗原を検討した.出現するバンドの種類として, 非還元系ではGPIb monoclonal抗体と反応する血小板抗原と同位置に出現したBand4, そしてGPIIb/IIIamonoclonal抗体と反応した血小板抗原と同位置に出現したBand-2が, ITP, SLEおよび血小板輸血例いずれの疾患群においても高率に出現し, 疾患による差異は認められなかった.出現したバンド数でも各疾患間に明かな差異は認められず, 複数のバンドを認める症例が相当数認められた.また, 対応抗原はBand-1やBand-2に限らず, その他のバンドも認められ, 還元系でも6種類のバンドが頻度の差はあるものの, いずれの疾患群にも出現し, 非還元系と同様疾患による差異を認めなかった.ITP, SLEおよび血小板輸血患者はそれぞれの対応抗原の多様性において同様な結果を示し, immunoblot法による検索では上記疾患の鑑別はできなかった.
著者
長井 健一郎 生沼 秀司 石井 達哉
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.171-172, 2010
被引用文献数
3

世界的な環境問題への関心の高まりと、今後見込まれる航空輸送量の増加より、航空機の騒音規制はますます厳しくなるものと予想される。航空機騒音の主な要因はエンジンからの騒音であるが、近年ではターボファンエンジンの高バイパス比化により低騒音化が進み、相対的に高揚力装置や離着陸装置など機体から発生する騒音が顕著になってきている。このため今後は機体システム全体での騒音低減に取り組む必要がある。航空機の騒音がどこから放射されているのかを正確に把握するため、我々は実機航空機の騒音源探査に取り組んでいる。地上に設置した多数のマイクロフォンにより航空機の上空通過時の音響信号を収録し、それぞれのマイクロフォンへの到達時間の差から、音の発生位置を逆算する解析手法である。この解析の際にはマイクロフォンと航空機との相対位置および相対速度が重要になってくるが、列車や自動車と違って航空機は毎回同じ経路と速度で上空を通過することは困難なので、これらの計測を正確に行うことが重要になってくる。本研究では地上に設置した2台のラインスキャンカメラにより、ステレオ撮影法の原理を用いて航空機の3次元的な通過位置および通過速度を自動解析することを目的とする。この計測システムを実際の飛行試験に適用し、レーザー測域センサおよび機体搭載GPSによる計測との比較を行ったので、その結果を報告する。
著者
長井 健一郎 生沼 秀司 石井 達哉
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.171-172, 2010
被引用文献数
3

世界的な環境問題への関心の高まりと、今後見込まれる航空輸送量の増加より、航空機の騒音規制はますます厳しくなるものと予想される。航空機騒音の主な要因はエンジンからの騒音であるが、近年ではターボファンエンジンの高バイパス比化により低騒音化が進み、相対的に高揚力装置や離着陸装置など機体から発生する騒音が顕著になってきている。このため今後は機体システム全体での騒音低減に取り組む必要がある。航空機の騒音がどこから放射されているのかを正確に把握するため、我々は実機航空機の騒音源探査に取り組んでいる。地上に設置した多数のマイクロフォンにより航空機の上空通過時の音響信号を収録し、それぞれのマイクロフォンへの到達時間の差から、音の発生位置を逆算する解析手法である。この解析の際にはマイクロフォンと航空機との相対位置および相対速度が重要になってくるが、列車や自動車と違って航空機は毎回同じ経路と速度で上空を通過することは困難なので、これらの計測を正確に行うことが重要になってくる。本研究では地上に設置した2台のラインスキャンカメラにより、ステレオ撮影法の原理を用いて航空機の3次元的な通過位置および通過速度を自動解析することを目的とする。この計測システムを実際の飛行試験に適用し、レーザー測域センサおよび機体搭載GPSによる計測との比較を行ったので、その結果を報告する。