著者
江頭 和道 阿部 和彦
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-7, 1990-04-01 (Released:2010-10-13)
参考文献数
8

自殺の季節変動に影響を及ぼす気象学的要因の一つとして日照時間に注目し, 自殺の季節変動の程度を表わす「季節変動量」との相関を調べた.対象資料は1950-57年の北海道の自殺統計である.寒冷期 (11, 12, 1, 2月) の自殺が年間全自殺に占める割合と自殺の季節変動量との間に有意の負の相関 (r=-0.90, p<0.01) , また, 前者と寒冷期の日照時間との間に正の関係 (r=0.42, N.S.) , そして寒冷期の日照時間と自殺の季節変動量との間に有意の負の相関 (r=-0.68, p<0.1) を認めた.寒冷期の日照時間の増加が, 元来は少ない同時期の自殺を増加させ, その結果自殺の季節変動量が減少すると解釈される.気温については自殺の季節変動量との相関を認めなかった.著者らの一連の研究結果と合わせて自殺の季節変動を考察し, 季節変動パターンの年代推移, 経済発展や夏と冬の日照時間との関係などについて言及した.
著者
西田 公昭 浦 光博 桑原 尚史 榧野 潤
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.46-55, 1988-11-25 (Released:2016-11-22)

Two processes intermediating conversation in social interaction of dyadic relationship were examined. In the first process, some antecedent factors such as task situation, interpersonal relationship and personal difference influence on conversation process. In the second process, the conversation influence on some interaction of the dyadic relationship. In our experiment, we set a topic of conversation into a decision making in problem-solving conversation as the task situation. And a degree of intimacy (high or low) as interpersonal factor and combinations of self-monitoring tendency (high-high high-low low-low) as personal factor were manipulated. 112 undergraduates were administrated self-monitoring scale. And 61 dyads were made of them and were measured their degrees of intimacy. After that, they are engaged in conversation about a given topic that is asked to make a decision. And then, they were asked to answer a questionnaire that survey social interaction. The results were as follows; (1) The total numbers of protocols in the conversation were influenced by intimacy. (2) The numbers of protocols which represent the qualitative differences of the conversation were influenced by intimacy and by combinations of self-monitoring tendency. (3) The qualitative differences of the conversation influenced on the cognitions and the evaluations to the conversation process and the partner.
著者
濱川 栄
巻号頁・発行日
2017

昨年選挙権年齢が18歳に引き下げられたが,若年層の投票率は相変わらず低い。文科省も主権者教育を重視しているが,若者に限らず,日本人の政治意識は低いままである。その原因の一つに,憲法とは権力者を縛るための法である,とする「立憲主義」の概念が学校教育の場で十分に教えられていない問題がある。実際,従来の学習指導要領にも次期の小・中学校社会科のそれにも「立憲主義」への言及はない。一方,中学校社会科公民的分野の教科書には概ね「立憲主義」の語句が見えるが,その概念が定着する近代までの歴史的経緯を踏まえた記述にはなっておらず,主権者教育の根幹として生徒に理解させられような状況にはなっていない。主権者教育の深化のためには,初等・中等教育の場において歴史的経緯を十分踏まえた形で「立憲主義」の概念が教えられるべきであり,それは現状の学習指導要領や教科書の下でも十分可能なはずである。
著者
後関 利明
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

眼圧以外の緑内障の発症メカニズム解明を目指し、形態的変化をMRIにて、血流変化をレーザースペック血流計にて計測する。両測定を右方視、左方視、注視時に施行し、注視時における視神経変化と血流変化を正面視の結果と比較する。その結果、側方視での変化が大きければ、緑内障進行を予防する手立てとして、側方注視を制限する手術が有効となる可能性がある。
著者
渡辺 江美子
出版者
日本古文書学会
雑誌
古文書研究 (ISSN:03862429)
巻号頁・発行日
no.24, pp.p69-80, 1985-09
著者
小野田 滋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.269-278, 2000-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
9

明治初期に建設された大阪-神戸間 (阪神間)、京都-大阪聞 (京阪間) の鉄道では、わが国の鉄道用としては初めての鉄製橋梁やトンネルが建設され、その後の鉄道土木技術の原点となった。また、わが国で初めての煉瓦構造物群が建設された線区でもあり、トンネルやアーチ橋、橋台・橋脚などに使用された。本研究では、これらの煉瓦・石積み構造物群の現状を現地踏査により明らかにするとともに、その特徴について考察を行った。分析の結果、130年に及ぶ歳月を経て、今なお供用され続けている構造物が多数確認された。また、後に建設される煉瓦構造物の基本となる技術がすでにこの段階で確立され、デザイン的にもその原点となったことが明らかにされた。
著者
伊藤 寿茂
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学会報 (ISSN:13455826)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.2, pp.127-128, 2007-09-30 (Released:2010-09-27)
参考文献数
4
被引用文献数
2

Rana porosa porosa wintering in a U-shaped concrete ditch along a paddy field were observated at Oba, Fujisawa City, Kanagawa Pref., central Japan. There was a little mud and dry grass in the ditch. When a concrete block in the ditch was lifted, the frog dug into the substrate and crouched there.
著者
鎌田 高徳
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.500-505, 2020-04-15

神奈川県では2016年度より3年間に渡り,「県立高校改革基本計画」プログラミング教育研究推進の指定校を5校指定した.そのねらいは「コンピュータの活用し,論理的思考力を身に付け,協働して問題解決に取り組むことができる人材を育成」することである.プログラミング教育を学校にて推進するために,すべての教科でプログラミング的思考を取り入れた授業を行うことになり,その要件を「順序立て,場合分け,繰り返し」と定義し,これらの要件を1つでも授業の中で意識して取り入れた結果,問題を発見する授業づくりに効果的であったことが分かった.
著者
梅田 恭子 山本 苑佳
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 The journal of the Teaching Career Center (ISSN:24238929)
巻号頁・発行日
no.5, pp.107-112, 2020-03-09

本研究では、児童がプログラミングで作品を制作する設計段階において、どのように児童のアイディアを外化することがプログラミング的思考を育成する支援を行いやすいのかを、実践を通して検討している。具体的には、児童は設計シートを用いて、プログラミングをする前に、必要な動きを分けて考えたり、動きに対応した命令にしたり、それらを組合せたりすることを考える。本稿では、その中でも特に組合せ(順次・反復・分岐)に着目し、文章やフローチャートなどの表現の違いによって、設計シートや作品での組合せの正確な表現に違いがみられるかを検討することを目的とする。その結果、一部においてフローチャートを用いた方が設計シートの段階では正確に表現できていることは示唆されたが、作品では差は見られなかった。また、設計シートの表現の種類に関係なく、設計シートが正確に書けている群の方が、作品の完成度も高かった。これらの結果と実践を踏まえて考察を行った。
著者
鳴海 拓志 伴 祐樹 梶波 崇 谷川 智洋 廣瀬 通孝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1422-1432, 2013-04-15

本研究では,拡張現実感を利用することで満腹感の手がかりとなる要因を操作し,同量の食事から得られる満腹感を操作する「拡張満腹感」システムを提案する.近年の心理学や行動経済学等の研究の進展により,食事から得られる満腹感は,食事そのものの量だけでなく,照明環境や環境音,盛りつけや見た目の量,一緒に食べる人数等,食事の際の周辺の状況に暗黙のうちに大きく影響を受けることが明らかになってきている.こうした知見に基づき,食事そのものを変更するのではなく,満腹感に寄与する要素に対する知覚を変化させることで,満腹感と食事摂取量の非明示的な操作が可能になると考えた.そこで,満腹感に影響を与える要素の1つである食品の見た目の量に着目し,リアルタイムに視覚的な食事ボリュームを変化させてフィードバックする拡張満腹感システムを構築した.このシステムでは,デフォーメーションアルゴリズムであるrigid MLS methodを利用して食品を握る手を適切に変形することで,手のサイズは一定のまま,対象となる食品のみを拡大・縮小することができる.実験により提案システムがユーザの食品摂取量に影響を与えるかを評価したところ,得られる満腹感は一定のまま食品摂取量を増減両方向に約10%程度変化させる効果があるという結果が得られ,提案システムが無意識的に満腹感を操作し,食品摂取量を変化させる効果があることが示唆された.
著者
佐藤 宏昭
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.241-250, 2010 (Released:2010-09-28)
参考文献数
78
被引用文献数
6 1

急性低音障害型難聴 (ALHL) が突発性難聴と異なる疾患として認知されるようになって30年が経過した。2000年には厚生労働省急性高度難聴に関する調査研究班により本疾患の診断基準 (試案) が設けられ, この基準に基づく多くの報告がなされてきた。本総説では, ALHLの問題点として, 診断基準, 難治例, 治療薬剤について取り上げた。診断基準では高音部に加齢による難聴を有する例を準確実例として診断基準に加える必要があること, およびALHLの反復, 再発例とメニエール病非定形例 (蝸牛型) の名称の問題について述べた。長期的にみるとALHLは反復, 再発例やメニエール病への移行例が少なくなく, 少数ながら進行性の感音難聴をきたす例もみられ, この中には稀であるが低音障害型感音難聴で発症する聴神経腫瘍もあり注意を要する。また, ステロイドやイソソルビドなど現在使われている薬剤の有効性に関しても, 十分なエビデンスが得られていない点が問題点といえる。
著者
時任 真幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】臨床実習において養成校教員が関わる時間や方法は限られており,巡回指導や実習後の振り返りが十分なリフレクションとなっているか疑問を感じた。そこで心理学の手法として用いられているブリーフセラピーの解決志向アプローチ(Solution-Focused Approach:以下SFA)をアンケートにて調査し,ポートフォリオ化することで学生の特性的自己効力感(以下GSE)や自尊感情尺度(以下SE)がどのように影響を与え,臨床実習の成果(学び)についての検討を本研究の目的とした。【方法】本校理学療法学科最終学年38名を対象に,実習前(4月),臨床実習I終了後(6月),臨床実習II終了後(8月)の計3回,SFAを基にした記述式アンケートを実施した。同時期にGSEと自尊感情尺度を調査し,比較・検討を行った。また,目標設定のスケーリングにおける目標達成上位群と下位群に群分けし,SFAの観点から質的に検討を行った。【結果】1)10点法における目標値推移目標値平均及び標準偏差は4月が2.55±1.52,6月が4.78±1.62,8月が5.49±2.23となった。一元配置分散分析の結果,主効果が認められた(p<0.0001)。さらに,Bonferroniの方法で多重比較検定を行った結果,4月と6月,4月と8月において1%水準での有意差が認められ,6月と8月では5%水準での有意差が認められた。2)①臨床実習I終了後の目標値の変化(6月-4月)と6月GSE,②臨床実習II終了後の目標値の変化(8月-4月)と8月GSEの相関関係①では相関係数r=0.102261,危険率p=0.5412,②では相関係数r=0.312948,危険率p=0.05579といずれも5%水準において相関関係は認められなかった。なお,臨床実習IIにおいて実習中止が2名出たため,②では2名を除外した。3)①臨床実習I終了後の目標値の変化(6月-4月)と6月SE,②臨床実習II終了後の目標値の変化(8月-4月)と8月SEの相関関係①では相関係数r=0.086756,危険率p=0.6045,②では相関係数r=0.124911,危険率p=0.4549といずれも5%水準において相関関係は認められなかった。なお,臨床実習IIにおいて実習中止が2名出たため,②では2名を除外した。4)目標値が初期と最終で大きく変化した上位6名の群(以下上位群)と変化のみられなかった下位6名の群(以下下位群)における事例検討上位群においては目標値,GSE,SE,実習成績の項目において目標値と実習成績に変化が見られた。下位群では全ての項目で変化が乏しい結果となった。【考察】本研究では,臨床実習場面における到達目標設定に介入することにより,GSEやSEにどう影響を及ぼし,実習場面で困難に直面する学生への支援方法としてSFAの質問技法を検討した。結果として,GSE,SEと目標値の向上に相関はみられなかった。詳細には,4月・6月間での達成感からくる目標値に対し,GSE,SEの向上が見られず,6月・8月間では目標値,GSE,SE全てにおいてわずかな上昇率に留まっている。これは,①自己の能力評価と「臨床実習指導者・養成校教員・患者」などからなる他者の評価に乖離がみられる②達成確率と課題の判別性が十分でないこと③自己の能力に関する先行知識の不確実度によって目標設定が曖昧になってしまうことなどが挙げられる。理学療法分野における臨床実習の目標には情意領域,精神運動領域,認知領域が混在している。しかし学生は経験不足とマンツーマンでの指導に対する極度の緊張で具体的な目標を定めることが出来ない場合が多い。この事に対してSFAの手法,特にスケーリングと例外探し,ミラクル・クエスチョンを使用しての質問技法が個人目標値を向上させた上位群においては有効であることを示した。臨床実習のような学生にとっては長い期間であるが,2ヶ月の間に1度の訪問で,後は電話やメールによってしか対応できない。上記の有効性によって学生の支援ツールの一つとしてSFAによる面接やポートフォリオの使用は解決の手がかりとなると考えられる。【理学療法学研究としての意義】「経験はしっかりと内省してはじめて学習になる」という考え方がリフレクションであり,経験の浅い学生にはとても重要であるということは自明の理である。学生にとって臨床実習が有効な学習になるための支援ツールとして,SFAを基にした目標設定が必要ではないかと考える。