著者
挽地 康彦
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.12, pp.117-132, 2019-03

伊豆諸島ほど大洋に浮かぶ「船」を思わせる島々はないだろう。古来より飢饉、疫病、噴火、海難に見舞われ、また辺境ゆえに流刑地として指定された歴史をもつ伊豆諸島。島々の交通は容易でなく、外界から閉ざされた島嶼世界は死に満ちていた。それはあたかも、いつ難破してもおかしくない船のように佇んでいたのだ。伊豆の島々が危機と隣り合わせの船団ならば、島の民は潜在的な漂流者なのではないか。本稿の目的は、こうした問いをめぐって、近世伊豆諸島をめぐる海難、流刑、祭祀などの民族誌をたどりながら、黒潮の世界を彷徨う遍歴者の形象を明らかにしていくことである。海を走る船は思わぬ形で異国へ流され、ときに異界へと引き込まれる。そんな漂流船=島の歴史が亡霊となって現在に回帰し、島民に憑依するとき、土着の民として安住する意識は揺さぶられるだろう。そこに、漂流民としての自己が呼び起こされる可能性があることを指摘していく。
著者
北川 純子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 人文社会科学・自然科学 (ISSN:24329622)
巻号頁・発行日
no.67, pp.93-112, 2019-02-28

東家楽浦(1898-1978)は,1920年代から70年代にかけて活動した浪曲師である。彼のキャリアについては,とりわけ三点の事柄が評価されている。一点目に,初代ならびに二代東家浦太郎の師匠であること,二点目に,浅草の木馬亭を浪曲定席の場としたこと,三点目に,野口甫堂のペンネームで多くの浪曲台本を執筆したことである。本稿は,浪曲台本作家としての楽浦に焦点を定め,〈良弁杉〉を素材として,楽浦が講談を土台にしつつ,どのように浪曲版をつくりあげていったかを分析する作業を通して,講談と浪曲の性格の違いの一端を明らかにする試みである。
著者
寺田 実
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.644-649, 2003-06-15

今回取り上げる問題は,2002年11月に金沢工業大学で行われたアジア地区予選の問題H,"Viva confetti"である.問題は http://www.kitnet.jp/icpc/problemsから入手可能である.さまざまな大きさの円形に切った紙片(confetti)が床に散らばっているときに,そのうちのいくつが(一部でも)上から見えているかを求めるのが問題である.
著者
倉石 忠彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
no.52, pp.p161-183, 1993-11

地域とは何らかの同質性をもった地表に画された空間である。それは多様な性格に基づくものであって、単一なものによるのではない。しかもそれは往々にして主観によって左右される側面をもっている。しかしそうした地域のなかで人々は生活し、自己を認識している。一体日本人はどのような文化を育み、生活を営んできたのかということは、こうした地域を設定することによっても見出すことができるのではないかと思われる。それは生活している人々が必ずしも認識はしていないかもしれない。しかし、そうした地域を見出すことができるならば、日本の伝承文化のあり方を明らかにする上に、一定の価値を見出すことができるであろう。そうした観点からタナバタ伝承の一つである、タナバタの日(七月七日或は八月七日)に畑に立ち入ることを禁忌とする伝承を取り上げることにする。これはもしこの日に畑に立ち入ると何か災難が及ぶと伝えるもので、その理由はタナバタ様などと呼ぶ神霊的な存在がそこにいるからであるとするのである。これは従来物忌み的性格を示す伝承とされてきたが、それが何故に畑を対象とするかという点は明確ではなかった。しかし、その習俗が行われている地域が、タナバタに初物を供える地域と、この日にまこも等で馬を作って供える地域の接点であることからすると、畑作の収穫儀礼と、来訪神の信仰儀礼とにかかわっていることが推測される。また、この伝承は独特の分布状態を示し、対象となる豆畑と瓜畑との組み合わせにより、共通の地域性を持つものと考えることもできる。半夏生(夏至から数えて十一日目)の日にねぎ畑に立ち入ることを禁忌とする地域も同じ地域であり、民俗文化の上で独自の地域性をもっている。ここには特有な文化の存在が考えられる。こうした地域は他にも想定することができる。A region is a space marked off on the ground surface to give a certain homogeneity. The division is based on a variety of characters, not on any single one; and this tends to be affected by subjectivity. However, people live and recognize themselves within such a region. The author wonders whether we can discover, by setting out these regions, what kind of culture the Japanese developed and what kind of life they have lived. People living in a region may not necessarily have such awareness; however, if we can discover these regions, we may be able to find it of some value in clarifying what Japanese traditional culture should be.From this point of view, the author decided to deal with the traditional taboo prohibiting people from going into the fields on the day of Tanabata (Star Festival) (July 7). This taboo warns that entering the fields on this day will lead to disaster, because a divine, spiritual existence, called the "Tanabata-sama" or something similar, is there. This has been looked on as a tradition showing the feature of abstinence, but, it has not been clear why the taboo applied to the fields. From the fact that the areas observing this custom are located at the contact point of a region where people offer the first products of the season on the Tanabata day and a region where people offer a horse made with wild rice, etc, it is supposed that the taboo is related to a harvest ceremony of dry-field farming and a religious ceremony devoted to the visiting god.These areas are also distributed in a special manner, and it can be considered that they possess a common regionality from the combination of bean fields and melon fields. The areas correspond to those where it is taboo to go into spring onion fields on the Hangesyō (eleventh day from mid-summer), and these areas have a unique regionality with regard to folk culture. It may be thought that a unique culture exists in these regions. Other areas like this can be supposed.
著者
ヒルツ P. J.
出版者
日経サイエンス ; 1990-
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.56-63, 2015-05

フィリピン沖の海底で戦艦「武蔵」とみられる船体が発見され,話題になっている。これは自律型の無人海底探査機による発見だが,地中海では生身のダイバーがハイテクを活用して沈没船から考古学的な"お宝"を発掘している。
著者
高橋 綾子
出版者
東洋大学大学院
雑誌
東洋大学大学院紀要 = Bulletin of the Graduate School, Toyo University (ISSN:02890445)
巻号頁・発行日
no.55, pp.21-30, 2019-03

本研究の目的は、以前妖怪が果たしていた役割を現代では何が代わりに担っているのかについて社会心理学的手法を用い探索的に検討することである。本論では妖怪を「未知なる奇怪な現象または異様な物体であり、人間に何らかの感情や行動を生じさせ、かつ、固有名詞を持ち、社会的役割を果たすもの」と定義し、社会や人間に対する妖怪の作用を「社会的役割」と呼ぶ。本研究では社会的役割に着目し、妖怪事典の内容分析による代表的な妖怪の類型化(高橋・桐生, 2018)の結果を用い、以前妖怪が果たしていた社会的役割を現代では何が代わりに担っているのかについての探索的な検討を試みた。妖怪の類型化では3つのクラスタが得られ、クラスタごとの特徴や各クラスタに属する妖怪の特性が大まかに把握できたと同時に、妖怪の特性と恐怖喚起、注意喚起といった社会的役割との関連が示唆された。現代における代替物においても同様に3クラスタが得られたが、分布には偏りが見られ、代替物が補完できていない機能がある可能性が示唆された。今後は本結果をもとに現代における社会的役割の置換対象、表出方法、過不足の有無などについてより詳細に検討する。
著者
安藤 真 吉田 和弘 谷川 智洋 王 燕康 山下 淳 葛岡 英明 廣瀬 通孝
出版者
日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.65-74, 2003
被引用文献数
18

Recently, virtual reality technology has been used in numerous practical applications. In this paper, we developed and evaluated a proto-type system of educational VR system by using networked VR technology. To build proto-type systems, we constructed high quality historical VR contents, Copan ruins of Mayan civilization, and integrate two different types of VR systems, theater-type and home-type VR systems. By using VR Theater, a teacher can give lecture on Mayan civilization to his students as if they are in the real Copan ruins. Also, we divide students into four groups and inspect the effect of mutual observation to group stydy. In proto-type system, each group walk through Copan ruins by using home-type VR systems set up in front of the VR theater, and solve historical questions about Mayan civilization. Throughout the experiments, almost all students are interested in Mayan civilization and communicate each other in both real and VR environments.
著者
上野 雅之
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス = Nikkei electronics : sources of innovation (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.1184, pp.101-108, 2017-10

SiCを搭載した次世代新幹線「N700S」の経緯を2回に分けて紹介する後編。本稿では、SiC採用によってもたらされる利点を中心に、N700Sの開発を主導したJR東海の上野雅之氏に解説してもらう。なお本稿は、2016年11月開催の「パワーエレクトロニクス・サミット2016」における上野氏の講演「東海道新幹線における技術開発─SiC採用の駆動システムを搭載したN700Sの開発について」の内容を基にしている。
著者
高田 瑞穂
出版者
成城大学文芸学部
雑誌
成城文芸 (ISSN:02865718)
巻号頁・発行日
no.9, 1957-04
著者
畑江 敬子 香西 みどり 古川 英 熊谷 美智世 伊藤 純子 十河 桜子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.250, 2003

【目的】近年、家庭用調理機器においては従来のガスコンロに代わり、電気の誘導加熱を利用した電磁調理器(IH)の普及が進んでいる。そこで本研究では、現状の調理内容に即したエネルギー使用データを収集し、ガスコンロとIHの違いを把握することを目的としている。【方法】 春夏秋冬それぞれ1日の朝食、昼食、夕食の献立を、女子栄養大出版部「栄養と料理」献立カレンダーより選定し、さらに一部をアンケート結果による人気メニューに置きかえることにより、季節、栄養、カロリー、調理方法、人気を考慮した現代版メニューを作成した。年代と調理経験の異なる3人の調理者により、作成メニューについてガスコンロ、IHそれぞれに対し同じ調理を行い、熱量および使用時間を測定した。実験では大きさを揃えた両調理器で適した鍋を用い、同一メニュー内では食材および量を統一した。【結果】IHの方が多くの一次エネルギーを消費した。四季別において冬メニューでは夏の2倍以上のエネルギーを消費し、調理別においては湯沸かし茹で、煮るでエネルギー消費量全体の6割以上を占め、これらはガスコンロ、IHで同じ傾向を示した。火力別の効率と使用割合から一次エネルギーでの総合効率を求めると、ガスコンロで50.0%、IHで27.7%となった。ランニングコストは四季別、調理別のどちらにおいても電気代の方がガス代に比べ高くなった。両調理器の10年間の使用を含めた製造から廃棄までの総エネルギー消費量は、IHではガスコンロの約1.3倍となった。
著者
閻 慧
出版者
北海道大学文学研究科
雑誌
北海道大学大学院文学研究科研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
no.14, pp.55-70, 2014

本稿は宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の改稿に関して考察するものである。周知のように、「銀河鉄道の夜」は、数回の改稿を経ることにより、多彩な容貌を持っているテクストである。その多面性を捉えるため、各次稿の間の改稿過程をどのように受け止めるかは、無論重要な問題となる。従来の研究においては、「銀河鉄道の夜」の改稿問題が焦点となっているもののうち、初期形〔三〕と後期形との間に行われる改稿を中心に論じるのが圧倒的多数である。つまり、テクストの初期形〔一〕から初期形〔三〕までに行われる改稿はこれまで看過されたきらいがある。そこで本稿では、新校本全集に収録された「銀河鉄道の夜」のテクストを参照し、まず初期形内部の変容を把握し、ついで初期形から後期形までの改稿について考察する。まず、初期形〔一〕と〔二〕の特徴について考えてみる。両者において、質的な差異は殆どない。ブルカニロ博士の全能性と実験という枠組みに注目すれば、初期形〔一〕と〔二〕をブルカニロ博士の実験記録として見なすことができる。次に、初期形〔二〕から初期形〔三〕まで、作中の現実世界に関する加筆に注目し、ジョバンニを苦しめる現実状況および彼が持っている逃走願望を読み取る。そこで、ジョバンニが焦点化されることによって、初期形〔三〕を彼の逃走物語として読むことができる。続いて、後期形における労働するジョバンニの設定が誘発した鳥捕りとの関係の変化、またジョバンニの父の帰還とカムパネルラの水死についての改稿を中心に、分析を行う。それによって、変容する後期形の姿が明らかになり、ジョバンニの行方の未定着によって、「銀河鉄道の夜」という作品の未決性が見出される。以上のように、「銀河鉄道の夜」が実験記録から未決の物語までの改稿プロセスを考察する。それと同時に、初期形〔一〕から後期形まで貫通している、ジョバンニの切符、金貨、牛乳などのモチーフの役割・意味についても吟味する。「銀河鉄道の夜」の物語に潜在する未決性、また共通するモチーフの多義性の分析によって、新しい読み方を示唆する。
著者
岡本 真一郎
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.4-16, 2001-03-30

本研究ではmatched-guise techniqueを用いて,名古屋方言の使用が話し手の評価に及ぼす影響を検討した.実験1では男性話し手については,共通語のはうが方言よりも知的で積極的であり,話し方や外見も優れているとされたが,社交性の評価は方言条件のほうが上回っていた.女性話し手は共通語のほうが方言よりも大半の側面に関して望ましい評価を得た.実験2では話し手(男性)の出身地を愛知県内であると明示した上で,使用言語を共通語,方言に操作した.活動性や見かけでは方言条件のほうが共通語条件より,また話し方や知性に関しては共通語条件のほうが方言条件より望ましく評価された.
著者
粟津原 宏子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.114-118, 1982-06-20
被引用文献数
3

卵の熱凝固性に関する基礎的研究として、卵白、卵黄、生卵の各希釈液に食塩(0, 0.5, 1.0, 1.5, 2.0, 2.5%)砂糖(0, 10, 20, 30%)を添加した場合の凝固力の変化および食塩添加による凝固温度の変化を調べた。1.食塩は卵白、卵黄の凝固力に対して全く異なった影響を与えた。卵白では0.5%でも無添加に比べて凝固力は著しく促進され、1.0%で最高となるが、添加量による差は小さかった。卵黄では1.0%添加まではあまり影響がなく、1.5〜2.0%で著しく凝固が促進された。全卵は食塩添加量の増加に従い凝固力を増したが、その変化は卵白、卵黄における、変化をほぼ反映しているようであった。2.砂糖添加の影響は卵白で最も大きくゼリー強度が著しく減少した。卵黄も砂糖添加によりゼリー強度がかなり減少したが、全卵では減少の程度が小さかった。硬さは卵白、卵黄、全卵共同じように低下し、卵白ではゼリー強度の減少の割に硬さの低下が小さかった。3.凝固温度は卵白、卵黄、全卵共食塩量の増加と共に上昇し、特に卵白に食塩1.5%以上添加した場合には著しく上昇した。