- 著者
-
三橋 晃
- 出版者
- 神奈川歯科大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2002
本年度実験の目的は,試作されたペースト/ペーストタイプ光硬化型グラスアイオノマーセメント(GIC)の有用性を調べるために,接着界面の形態学的観察ならびにCa分布,Fの歯質拡散性を計測するとともに,接着強さの測定を行った.実験材料には,レギュラー(FR-100)とフロー(FF-101)の2種類の光硬化型GIC、コントロールとして,粉/液タイプ光硬化型GICのFuji II LC(GC)と従来型GICのFuji Type II (GC)を用いた.接着界面の観察およびCa, Fの測定のために、各セメントを充填したウシ歯冠象牙質試料を37℃精製水中に1日保管後,アルゴンイオンエッチングを施し,EPMA-8705(Shimadzu)にて,接着界面のCaとFの点面分析を行った.剪断接着試験ではウシ歯冠部象牙質を#600の耐水研磨紙にて研磨し,接着面積をφ4.6mmに規定し,各歯面処理後に37℃精製水中に1日,1週,1ヶ月保管後インストロン型万能試験機にて,C.H.S.1mm/minで,剪断接着強さを算出した.接着界面の観察では,Fuji II LCに約1μm弱の明瞭な樹脂含浸層様構造物が観察されたのに対し,ペースト/ペーストタイプGICでは,明瞭な構造物は観察されないもののそれぞれ良好な接合状態を示した.象牙質へのFの平均拡散距離は,1週水中保管後で接着界面からFR-100で8.98μm, FF-101で8.53μmと,Fuji II LCの5.09μmを超える値が示された.ペースト/ペーストタイプGICの剪断接着強さは,粉/液タイプGICに比較し有意に高い値が示され,本材料の操作性及びぬれの良さによる優れた窩壁密着性が接着強さを上昇させる要因になっていることが考えられた.以上の結果から,新規2種ペースト/ペーメトタイプ光硬化型GICは,優れた歯質接着性,フッ化物(F)徐放性,操作性を有する修復材料であることが示された.