著者
上野 英二 大野 春香 渡邉 美奈恵 大島 晴美 三上 栄一 根本 了 松田 りえ子
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.330-335, 2011
被引用文献数
9

畜水産物中のスピノサドの活性成分であるスピノシンAおよびスピノシンDを定量するための分析法を検討した.牛筋肉,うなぎ,はちみつなど11種類の試料(5~20 g)に,1 mol/Lリン酸水素二カリウム水溶液を加えて,アセトン-ヘキサンでホモジナイズ抽出し,多孔性ケイソウ土カラムを用いたオンカラム液-液分配法,次いでSAX/PSA連結ミニカラムクロマトグラフィーにより脱脂・精製したのち,ESIポジティブ-SIMモードLC-MSで測定した.回収率は 0.01 μg/g 添加で 76.1~93.8%(RSD≤8.7%),0.05 μg/g添加で75.1~104.1%(RSD≤8.6%)と良好であった.
著者
下馬場 かおり 小嶋 知幸 佐野 洋子 上野 弘美 加藤 正弘
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.224-232, 1997 (Released:2006-05-12)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

失語症状の長期経過を追跡する研究の一環として,失語症者の発話障害の長期経過を自発話,復唱,音読のモダリティ別に調査した。対象は,発症後16ヵ月以上最高287ヵ月経過した失語症者61例の文水準の標準失語症検査 (SLTA) 発話成績である。    〈結果〉SLTA でみる限り, (1) 3モダリティのなかで復唱はもっとも到達水準が低かった。 (2) 各モダリティの最高到達時の成績パターンは,本研究では6種に類型化が可能であった。 (3) 最高到達時の成績パターンは,発症初期には必ずしも同一のパターンではなかった。    〈結論〉(1) 失語症者にとって,文の復唱はもっとも難易度が高いと考えられた。 (2) 発話3モダリティは,発症年齢,病巣などの要因の関与により,異なる過程を経て特定のパターンに到達することが示唆された。(3) 以上の点は,発話障害の予後推測や,訓練の刺激モダリティ選択において有用な情報を提供すると考えられた。
著者
上野 耕平
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

いじめなどの問題が噴出するなか,現代社会が体育・スポーツ活動に期待する事柄の一つとして,フェアプレイの日常生活場面への般化が挙げられる。そこで本研究ではフェアプレイとして鬼ごっこにおける援助行動に注目し,附属小学校との連携のもと,スポーツ活動及び体育授業の実践を通じて,援助行動の学校生活場面への般化を促進する体育授業を構築することを研究目的とした。本研究の結果,援助・被援助行動が頻繁に行われるなかま鬼及び,その効果を測定する援助自己効力感尺度を開発した。なお体育授業場面への実践及び日常生活場面への般化については新しい研究課題に引き継いだ。
著者
上野 満雄 小河 孝則 中桐 伸五 有沢 豊武 三野 善央 雄山 浩一 小寺 良成 谷口 隆 金沢 右 太田 武夫 青山 英康
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.266-274, 1986-07-20
被引用文献数
1

日本国有鉄道の振子電車は,1973年以来,急曲線部の多い国鉄在来線の高速化を計る目的で開発されたものである.その原理は,車体と台車の間にコロが設けてあり,曲線部にかかると遠心力が車体自体に働いてこれを傾かせ,曲線通過速度を従来の型式より上昇させることができる.振子電車の導入は時間短縮に一定の効果をあげることができたが,走行中に従来よりは大きい横揺れが発生し,乗客・乗務員に,乗物酔いを起こすことが注目されてきた.本研究は,振子電車の動揺が乗客・乗務員に及ぼしている身体影響を,動揺病の特徴としてこれまで報告されてきた症状の発症との関連で検討する目的で従来の型式の列車を対照として比較検討を行った.また,同時に振子電車の持つ構造上の特性に由来する物理的特性についても検討を加えた.本研究においては,100人の乗務員と119人の乗客(男77人,女42人)双方を研究対象とした.乗客・乗務員の両群を選定したのは,業務としての動揺への曝露か否かによって発症の仕方に差が生じることが疑われたからである.乗客調査の対象者は,全走行時間を考慮し,電車の動揺による乗客への曝露時間を同一にするため,前述した2列車に2時間以上乗車した者とした.乗務員調査の対象者は,前述した2列車に乗務する車掌のうち,両列車の乗務条件を可能な限り近づけ,勤務条件に差のない列車ダイヤに乗務した者とした.これら研究対象者は,性,年齢を5歳階層に無作為抽出し,マッチングを行った.揺れの物理的特性を評価するため,著者らは,床上の振動加速度レベルを,従来の方法である1/3オクターブバンド分析計で分析すると同時に,FFT法による方法でも分析を行った.調査質問項目は,11項目の動揺病症状から成るが,乗務員に対しては,業務との関連を明らかにするため,疲労自覚症状30項目,動揺病症状の業務への影響,発症対策などの項目を加えて調査した.調査の結果,次に述べるような知見を得た.1)振子電車の乗客は,対照群の乗客と比較して,動揺病症状の訴え率が高く,そのために「乗り心地が悪い」と訴える者が多く,その理由として「ゆれが大きい」ことを理由に挙げる者が最も多く認められた.2)乗務員の動揺病症状訴え率は,振子電車乗務員が,対照群に比べて有意に高いことが認められた.3)動揺病症状の発症対策を講じながらも,振子電車乗務員は,対照群と比較して動揺病症状の発症によって業務に支障を来たしていた.4)乗務員と乗客との間に認められた動揺病症状の訴え率の差は,乗務員と乗客とでは乗務に対する対応の違いによるものと考えられた.5)振子電車乗務員は,振子電車に乗務するという労働負担によって,動揺病症状の発症のみならず,疲労自覚症状の発症を多発させていると考えられた.6)振子電車の物理的特性を評価するため,従来の方法による振動加速度周波数分析を行った結果,左右の振動加速度レベルは双方ともISO基準より低く,上下方向についても左右方向と同様ISOの基準より低いレベルにあった.しかし,FFT法によって5Hz以下の周波数分析を行った結果,1Hz以下の低周波数帯域に加速度のピークが振子電車で認められたのに対し,従来の型式では,1Hz以上の周波数帯域にピークが認められた.以上の結果を考察すると,振子電車の持つ物理的特性として,1Hz以下の低周波数帯域における振動の影響については動揺病発症との関連において重要であると考えられた.
著者
梶 光一 高橋 裕史 吉田 剛司 宮木 雅美 鈴木 正嗣 齊藤 隆 松田 裕之 伊吾田 宏正 松浦 由紀子 上野 真由美 及川 真里亜 竹田 千尋 池田 敬 三ツ矢 綾子 竹下 和貴 吉澤 遼 石崎 真理 上原 裕世 東谷 宗光 今野 建志郎
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

洞爺湖中島のエゾシカ個体群は、2度の爆発的増加と崩壊を繰り返して、植生に不可逆的な変化をもたらせた。その後落葉に周年依存するようになり、2008-2012年の間、高い生息密度(45~59頭/km^2)を維持していた。落葉はかつての主要な餌であったササよりも栄養価は低いが、生命・体重の維持を可能とする代替餌として重要であり、栄養学的環境収容力の観点から高密度を維持することが可能な餌資源であることが明らかになった。
著者
上野 直樹 ソーヤー りえこ 茂呂 雄二
出版者
Japanese Cognitive Science Society
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.173-186, 2014

According to the viewpoint of this paper, artifacts can be regarded as a socio-<br>technological arrangement. Further, agency is not independent from a socio-<br>technological arrangement but is something emerging from a socio-technological ar-<br>rangement, while agency has traditionally been defined as a human capacity of having<br> needs and preferences and of seeing possible actions. If so, the design of an artifact is<br> not the design of a single artifact but the design of a socio-technological arrangement<br> and of agency. Thus, in this paper, first of all, we attempt concretely to analyze the<br> design of an artifact as that of socio-technological arrangement, based on our field-<br>works concerning the cases of open data and integrated learning. Second, we show how<br> agency emerges from a socio-technological arrangement, also based on our fieldworks.<br> Third, we propose some viewpoints for designing artifacts dependent on the first and<br> the second analysis.
著者
酒井 茂 熊本 悦明 恒川 琢司 広瀬 崇興 田端 重男 郷路 勉 猪野毛 健男 井川 欣市 田付 二郎 辺見 泉 丹田 均 加藤 修爾 吉尾 弘 生垣 舜二 上野 了 毛利 和弘 出口 浩一
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.32, no.11, pp.1747-1761, 1986-11

札幌市における淋菌感染症120例について,症例の疫学的検討を行なうとともに,NFLXの淋菌感染症に対する基礎的,臨床的検討を行った.年齢分布は男女とも20代前半にピークを認めた.感染源は男子では10代はガールフレンド,pick-upなどの素人が70.6%を占め,女子では配偶者が50%,患者自身が特殊浴場従業女子であるものが50%であった.NFLXのN. gonorrhoeaeに対するMIC分布は,0.025 μg/mlにピークをもち,0.0125~3.13 μg/mlに分布した.penicillinase producing Neisseria gonorrhoeae (PPNG)は症例より分離したN. gonorrhoeae 104株中21株(20.2%)であったが,これらのNFLXに対するMICは18株(85.7%)が0.1 μg/ml以下に,3株(14.3%)が1.56~3.13 μg/mlに分布した.NFLX 200 mg経口投与後の血清中濃度は投与2時間後に平均0.72 μg/mlとピークに達し,尿道分泌中濃度は投与1時間後に平均0.5 μg/mlとピークに達した.NFLX 600 mg, 7日間経口投与による淋菌感染症に対する治療成績は,男子尿道炎における有効率が3日間投与で97.4%,7日間投与で93.1%であり,女子子宮頸管炎における有効率は3日間,7日間投与とも100%であり,本剤は淋菌感染症と対する化学療法剤として高い有効性が認められた.淋菌感染症におけるChlamydia trachomatid (C. trachomatis)感染の合併は,男子尿道炎で32.7%,女子子宮頸管炎で20%であり,これらの症例においてはNFLXによる治療後も陰性例よりも分泌物の残存率が高く,引き続きC. trachomatisに対する化学療法が必要と考えられた.NFLX投与による副作用は全く認められず,NFLXは安全に投与できる薬剤と考えられたWe studied the basic and clinical effects of norfloxacin (NFLX) in 120 patients with gonococcal infections (110 men with urethritis and 10 women with cervicitis)--all residents at Sapporo City; and epidemiologically analyzed the sources of their infections. The male patients were between 16 and 67 years old and the female patients were between 20 and 61 years old, with a peak in the early 20s both for sexes. 70.6% of the male patients in their 10s were infected from their girl friends or so-called pick-up friends and 50% of the female patients from their husbands. The other half of the female were workers serving at so-called special massage parlors. The minimum inhibitory concentration (MIC) of NFLX against N. gonorrhoeae distributed was 0.0125 approximately 3.13 micrograms/ml, with a peak at 0.025 micrograms/ml. NFLX inhibited 93.3% of the clinical strains of this species at less than 0.1 microgram/ml and 96.2% at less than 1 microgram/ml, where the inoculation was 10(6) CFU/ml. Twenty one (20.2%) of the 104 N. gonorrhoeae strains were penicillinase-producing one (PPNG). NFLX inhibited 18 of these PPNG (85.7%) at less than 0.1 microgram/ml and the other 3 strains at 1.56 approximately 3.13 micrograms/ml. Oral administration of 200 mg NFLX showed the average peak serum level of 0.72 micrograms/microliter in 2 hours and the average peak level in the urethral secretions of 0.5 micrograms/ml in one hour. These two concentrations of NFLX covered 95.2% of the MIC distribution against N. gonorrhoeae. The clinical efficacy of 600 mg NFLX (peros) was 97.4 and 93.1% for a 3-and 7-day treatment for male urethritis; and 100% for both 3-and 7-day treatment for female cervicitis. Complicated urethritis with C. trachomatis was noticed in 32.7% of the male urethritis and in 20% of the female cervicitis cases. Urethral secretions among about half of these patients were observed even after treatment with NFLX. As a subsequent treatment, another effective chemotherapeutic is required against C. trachomatis. No adverse reactions were detected with NFLX. All the above results demonstrate that NFLX is a highly effective and safe chemotherapeutic agent for treatment of gonorrhoea.
著者
栗山 敏秀 青井 利一 前田 裕司 伊東 隆喜 上野 吉史 中家 利幸 松井 信近 奥村 浩行
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.27, pp.39-46, 2011-03

[要旨] 冬季に、自動車のドアや玄関の金属製ノブに手が触れた瞬間、「パチッ」と火花が飛んで痛みを感じた、という事はよく経験する。これは、身体にたまった静電気が金属との間で放電したためで、この時、身体の電圧は10,000ボルト以上になっている。カミナリも、よく知られているように、雲が帯電(静電気を帯びること)し、雲と雲、雲と地面などの間で放電する現象である。 我々は、医療、福祉、そして生活の向上に貢献したいと願い、人体の帯電を含め、さまざまな静電気を測定する技術を開発している。とくに、最近のLSI(集積回路)や液晶パネルにおいて、静電気により壊れるという現象が頻繁に起こっており、人体だけではなくモノ同士の接触、剥離による静電気の発生にも取り組んでいる。静電気は目に見えないので対策が困難であるが、これを見ることができる装置ができれば、それを防ぐ設計や対策に役立つと考えられる。今回、シリコン・マイクロマシーニング技術(半導体製造技術などによりシリコンを微細加工する技術)を用いシリコン製マイクロミラーを製作し、これを光学的な手段と組み合わせて静電気を測定する装置を開発し、摩擦帯電装置を用いた人体の帯電モデルについて適用した。 [Abstract] A silicon micro-mirror array fabricated by MEMS (Micro Electro-Mechanical Systems) process has been made for an electrostatic field distribution measurement system. Each silicon micro-mirror is suspended by two thin torsion bars, which is made by semiconductor process. Deflection of each micro-mirror is measured optically by using an optical scanner and PSD(Position Sensitive Detector). The electrostatic field distribution measurement system is applied to a human body model.
著者
上野 矗
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.63-74, 2005-01-31

ここでは、ショッキングな出来事を契機に人間不信に陥ったケースを例示し、援助的理解をはかるT様グループのかかわり合いのプロセスに経験的現象学的方法による意味分析を試みる。そこから感情体験表明としての涙が援助的理解にとってもつ意味と効用に関して検討を加えようとする。 検討結果は、次のようである。 1)感情体験表明としての涙がその意味と効用たらしめるのには、送り手と受け手の反応の仕様が大きくあずかっている。 2)涙は心理的なしこりを溶かす。 3)涙は抑制された情緒的エネルギーを解放し、カタルシスをはかる。 4)涙は心の傷を癒す。 5)涙は気づきや洞察への契機となり、導き手となり、その証明を確認する。 6)涙は援助的理解を確実にし、また深めていく。 7)涙は、人をして生涯時間の時制を"生きられた時間"の展望に向けた再編成をはかり、そこから新しく生産的で健やかな生活世界への道を開らく。すなわち、過去をいまに引き入れ既往化し、新しい意味づけを見い出し、これを足場に、未来を将来化し、新しい展望を拓らくのである。 8)なお、涙は、丁度ステロイド剤がそうであるように、両刃の刃で、その効用と同時に有害ともなりうるとの認識の重要さが指摘される 。
著者
上野 晴樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.548, pp.19-24, 2005-01-10

なぜ文化とAIなのか。AIが心の心理学モデルであるならば、当然その研究者の心理学の理解に基づいているわけであるし、想定している応用システムのユーザが一般の人々であるならば、当然そのユーザは人とシステムとの関係についてある種の"関係のあり方"をごく自然に持っているはずである。知能システムの設計は、研究者やユーザの思考法に基づくはずであり、それは彼らの属する伝統文化あるいは地域文化に基づいていると考えるのが自然であろう。一方、AIは科学技術であるから、AIに関する理解もグローバルであるはずであると信じ込んでいる研究者がほとんどであるように感じられる。むしろ違いを意識することが創造に繋がるのではないかと思う。芸術や建築の世界でも日本の伝統文化を意識している人々のほうが国際的にも高く評価されていることを考えれば、納得していただけるのではないか。著者の研究成果も多少織り交ぜながらAIの文化論を述べてみたい。