著者
有家 尚志 東 裕一 中村 駿佑 池田 翔 平田 靖典
出版者
The Society of Japanese Manual Physical Therapy
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.3-10, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
23

Lateral elbow tendinopathy(LET)に対する保存療法の一つに徒手療法があるが,効果について邦文で整理されたエビデンスは不十分である。本研究の目的は,LETを有する人々を対象に,徒手療法の効果を検証したシステマティックレビュー(SR)を網羅的に評価することとした。PubMed,CENTRAL,PEDroを用いて検索した(検索日2022年2月)。方法論の質評価には,A Measurement Tool to Assess Systematic Review 2を用いた。論文の選択,データ抽出,方法論の質評価は,2名の研究者が独立して実施した。最終的に3件のSRが該当し,質的に分析した。介入として検討された徒手療法は,mobilization,neural tension,deep friction massage(DFM),Mill’s manipulationが含まれた。3件ともに,研究計画の事前登録が不十分であった。エビデンスの確実性は,DFMが疼痛と機能のアウトカムに与える効果のみ検証されていたが,very lowであった。本研究の結果,LETに対する徒手療法の効果について検証するには十分なエビデンスがなかった。今後は,アウトカムを統一して検討することが重要である。
著者
山路弘樹 中村輝子 横山潤 近藤健児 諸田隆 竹田秀一 佐々木博 牧雅之
出版者
植物研究雑誌編集委員会
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.57-78, 2007-04-20 (Released:2022-10-20)

日本産カンアオイ属ウスバサイシン節植物の形態変異を明らかにするために,国内の全分布域・既知の分類群,地域集団を含む55集団について野外調査を行った.同節に関する過去の研究はいずれも量的形質の評価が不十分であるため,本研究では今まで用いられてきた形質,新たに採用した形質の評価に加え,花の量的形質に基づく多変量解析を行った.その結果,形態より区別できる8型が認識された.日本の同節はまず萼筒内壁のカラーパターンで2型に分けられ, D 型は全面暗紫色なのに対し, L 型は基底部は暗紫色,中央部は黄緑色ないし淡紫色,萼筒開口部は暗紫色ないし白色だった. D 型はさらに萼筒内壁,萼裂片内面の毛の細胞数,雄蕊・雌蕊の数で D1-D4 の4型に分けられ, L 型は萼筒の形態,萼筒開口部の大きさ,萼裂片の形態,サイズで L1-L4 の4型に分けられた.この8型はほぼ異所的に分布し,それぞれ独立の分類群に値するまとまった地域集団と推定された.
著者
片山 悠樹 中村 高康
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.7-17, 2021-07-07 (Released:2023-04-08)
参考文献数
21

アジアへの研究関心が高まりつつあるなか,日本の教育社会学はアジアの教育に対してどのように向き合えばよいのだろうか。欧米との比較を通して発展してきた日本の教育社会学は,アジアとの関係のなかで自らの課題や立ち位置を問い直す時期に差しかかっているのはないか。本稿の目的は,各論稿の要約を行ない,アジアから教育を見る可能性を提示することである。 論文の要約を通じて,次の2つの視点が浮かび上がった。 ひとつ目は,対象との距離感である。欧米との比較で浮上する異質性は,歴史的文脈や社会的価値・規範の違いから,目につきやすいかたちとなりやすいが,アジアという類似性の高い社会との比較では,異質性は目につきにくい可能性がある。そうした微妙な異質性に対してセンシティブになるためには,それぞれの研究者が「類似性」をいかに設定するのかという対象との距離感は重要となると思われる。 ふたつ目は,理論との距離感である。理論の多くは欧米の現実から生れたものであり,欧米の理論を無自覚に内面化することには注意しなければならない。アジア社会の現実を欧米とは異なる視座で適切に理解する作業は欠かせず,そのためにも欧米産の理論に対していっそう自覚的になる必要があろう。
著者
福冨 則夫 中村 智幸 土居 隆秀 武田 維倫 尾田 紀夫
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.53-58, 2002-05-24 (Released:2010-06-28)
参考文献数
16

Twenty-one specimens of the Pacific lamprey, Entosphenus tridentatus, were collected from the Hoki (8 specimens), Yusaka (11 specimens) and Arakawa Rivers (1 specimen), all tributaries of the Naka River, and the mainstream of the Naka River (1 specimen), Tochigi Prefecture, central Japan, between August 1999 and April 2001. Seven spawning redds, possibly constructed by Entosphenus tridentatus, were found in the Yusaka River on May 2 and 11, 2000, eggs being observed in one of them. Two specimens, collected from the Yusaka River and reared in an aquarium with a gravel substrate, subsequently spawned about 1000 eggs being observed in the redd. Forty-one of the eggs were reared at 15°C in an electric incubator, hatching starting 13-17 days after spawning. The hatching percentage was 92.7%, the accumulative temperature to hatching being between 195 and 255°C.
著者
浦瀬 太郎 筒井 裕文 中村 和也
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.11-17, 2018 (Released:2018-01-10)
参考文献数
14
被引用文献数
6 5

下水処理水には特有のにおいがあるが, その原因物質は明らかになっていない。本研究では, におい嗅ぎガスクロマトグラフ (GC-O) を用いて, 下水処理水の臭気の原因物質を7か所の処理場処理水を対象に調べた。反応タンクに覆蓋のある大規模な下水処理場処理水のにおい嗅ぎGC分析では, 2,4,6-トリクロロアニソール (TCA) の臭気を最も強く, あるいは, 二番目に強く感じた。これらの処理場の処理水に含まれる2,4,6-TCA濃度は11.6~21.2 ng L-1であり, 臭気閾値の100倍程度に達するものであった。また, すべての下水処理水で2-メチルイソボルネオール (MIB) およびジオスミンのかび臭を比較的強く感じた。さらに未同定の甘臭成分の下水処理水臭への大きな寄与が観察された。反応タンクに覆蓋のない小規模処理場の処理水には, かび臭成分に加えて, 大規模な処理場処理水にはほとんど見られない酸味臭, 腐敗臭/硫黄臭成分が含まれていた。
著者
宮下 寿哉 中村 由行 比嘉 紘士 田中 陽二 伊藤 比伽留 池津 拓哉 金谷 一憲 鈴木 崇之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_1213-I_1218, 2017 (Released:2017-10-17)
参考文献数
9

2016年8月~9月に連続的な岸壁調査および計4回にわたる船上調査を実施し,東京湾湾奥部における複数の湧昇イベントを捉えた.4回の船上調査のうち一度は青潮発生の直前に対応し,残りのうち2回は青潮に至らない弱い湧昇の直前とそのピーク時に対応していた.各湧昇イベント時の水塊の起源推定を行ったところ,青潮発生時には千葉本航路内でも湾央側の航路底層から硫黄を含む水塊が岸壁まで湧昇し青潮に至ったものと推定された.一方,弱い湧昇時では比較的浅い層の湧昇にとどまり,水面の着色や濁度の上昇はなく青潮として確認されなかったが,その期間には航路内で硫化物や硫黄が活発に生成していたことが示唆された.
著者
瀧上 隆夫 嶋村 廣視 根津 真司 鈴木 健夫 谷浦 允厚 中村 峻輔 藤本 卓也 竹馬 彰 竹馬 浩 森谷 行利
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.199-217, 2022 (Released:2022-04-27)
参考文献数
30

痔瘻の成因は,今ではcrypt-glandular infection theoryが定説であり,治療の原則は原発口(anal crypt),原発巣(anal gland, primary lesion)の完全除去である.痔瘻の原発巣に対する考え方も,坐骨直腸窩痔瘻では従来のanal crypt─内外括約筋間─Courtney's space(原発巣)の考えから新しい概念,後方深部隙(PDS)の存在の提唱により大きく変わった.痔瘻の初発症状の直腸肛門周囲膿瘍は,診断すれば抗血栓薬の服用の有無,基礎疾患の有無にかかわらず,即,切開排膿が原則である.排膿後の痔瘻への移行状態をみて手術を決める.痔瘻手術の基本は開放術式であるが,前方,側方のものは肛門括約筋の損傷を考慮して術式を決める必要があり,根治性,肛門機能温存のバランスを重視した術式を選択することが大切である.
著者
神谷 行宣 山根 宏敏 中村 英一郎 山口 将則 樋高 由久 酒井 昭典
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.36-40, 2015-03-25 (Released:2015-05-22)
参考文献数
9

頸椎後方手術後の舌下神経麻痺を経験したので報告する.症例は46歳女性.主訴は右上肢痛.1年半前より頚部痛と右上肢痛あり.当科受診し,頸椎症性脊髄症+神経根症と診断.椎弓形成術(C4-6)と椎間孔拡大術(右C4/5)を施行した.術後より舌に発赤,腫脹と構音障害,舌の右方偏位を認め,右舌下神経麻痺と診断された.ビタミンB12の内服と言語リハビリ療法にて治療を行い,術後3か月にてほぼ舌の偏位は改善した.頸椎後方手術後に舌下神経麻痺を生じる原因として,気管チューブ等の麻酔時の口腔内異物による圧迫性神経障害であるとの報告が多く,本症例でも同様に舌への圧迫が原因と考えられた.
著者
秋葉 絢子 浅野 尚文 大喜多 肇 中山 ロバート 中村 雅也 松本 守雄
出版者
東日本整形災害外科学会
雑誌
東日本整形災害外科学会雑誌 (ISSN:13427784)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.159-166, 2020 (Released:2020-04-29)
参考文献数
22

若年成人の大腿部筋内に発生したきわめてまれな類血管腫型線維性組織球腫の1例を経験した.切開生検において明らかな腫瘍細胞を認めず,血腫などの良性嚢胞性疾患との鑑別が大きな問題となった.臨床および画像所見から,類血管腫型線維性組織球腫などの腫瘍が否定できなかったため,広範切除を行い,最終的に類血管腫型線維性組織球腫と診断した.
著者
大山 良樹 佐々木 和郎 中村 辰三
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.567-574, 1999-12-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
19

The effects of acupuncture treatment were investigated in 200 patients (99 males and 101 females, average age 16.1±0.2 (SE.)) who complained of reduced visual acuity, including juvenile myopia (age 13.25).Acupuncture treatment involved leaving the needle in place for 15 min, after inserting to a depth of 10-5 mm from the skin surface.The vital points Taiyo (Ex-HN5), Fuchi (GB-20), Shokyu (ST-1) and Goukoku (LI-4) were the basic points used for acupuncture therapy with Ganen (GB-4), Sanchiku (BL-2), Zui (ST-8) or Kyokuchi (LI-11) as supplemental points depending on individual symptoms. These acupuncture treatments improved the mean acuity by 0.33 in the right eye and 0.31 in the left.Analysis of these results indicated that acupuncture treatment caused significant improvement of visual acuity (P<0.01). Therefore, acupuncture therapy was considered to be an effective treatment that improved regulation of the ciliary muscle and the pupillary myosis system.
著者
釜﨑 大志郎 大田尾 浩 八谷 瑞紀 北島 貴大 中村 正造 手塚 善貴
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.7-12, 2021-04-30 (Released:2021-05-13)
参考文献数
21

[目的]整形疾患を有する高齢者の歩行補助具の種類を分ける身体機能を検討した。[対象]対象は,整形疾患を有する女性高齢者230名[年齢83(79‐87)歳]とした。[方法]独歩群,杖群,歩行器・歩行車群の3群に分類し,各群間を分ける因子を分析した。[結果]独歩群と杖群を分ける因子は,30秒椅子立ち上がりテスト(30‐second chair stand test:CS‐30)と開眼片脚立ち時間であった。また,杖群と歩行器・歩行車群を分ける因子は,握力合計であった。[結語]杖を使用する高齢者は,独歩の高齢者よりも下肢筋力とバランス能力が低下していた。また,歩行器・歩行車を使用する高齢者は,杖を使用する高齢者よりも握力が低下していた。