著者
天野 光三 西田 一彦 渡辺 武 玉野 富雄 中村 博司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.2000, no.660, pp.101-110, 2000
被引用文献数
1

近世の城郭における石垣構造の技術的頂点に位置するものとして徳川期初期での大坂城石垣がある. 石垣形状での2次元的曲線および3次元的曲面にみられる構造美や構造形式としての力学的合理性からみて, 城郭石垣は世界的に他に例をみない極めて優れたものである. 本研究では, 歴史遺産としての徳川期大坂城城郭石垣をその構造に着目して土木史的研究を行った. まず, 現場調査と文献調査により過去の崩壊事例を明らかにした. 次に, これらの歴史データの分析をもとに抽出した石垣構造形式の力学的合理性に関して, 平面および断面形状に着目した実証的研究を行った. その中で, 石垣構造の安定性評価法として, 石垣構造比および石垣はらみ出し指数といった工学指標について提案した.
著者
山勢 善江 山勢 博彰 明石 惠子 浅香 えみ子 木澤 晃代 剱持 功 佐々木 吉子 佐藤 憲明 芝田 里花 菅原 美樹 中村 美鈴 箱崎 恵理 増山 純二 三上 剛人 藤原 正恵 森田 孝子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.37-47, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
20

2019年11月に中国で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、わが国でも全国に拡大し、2020年4月には第一波、夏に第二波、そして11月には第三波が到来した。 本学会では、COVID-19緊急事態宣言下での救急看護の実態と課題を明らかにすることを目的に、学会ホームページを通じて、本学会員を中心にWebアンケート調査を実施した。調査内容は、COVID-19患者への所属施設の対応、具体的対応、感染防止策、看護師の認識や思い等である。調査には425名が回答した。 多くの施設で、待合室や診察室として「新設の専用エリア」や「陰圧室」を使用していたが、「他患者と同じエリア」を使用していた施設もあり、ハード面の迅速な設置の困難さが明らかになった。また、半数以上の者が、感染防護具、看護師の不足を感じていた。さらに、救急看護師は未知の感染症への対応で、自分自身や家族への感染の恐怖、行政や所属施設、上司への不満などネガティブな感情をもつ者が多く、調査時点で心理的不安定を経験していた看護師は29.6%いた。 今後の医療の課題と対策には、感染対策指針やマニュアルの整備、検査体制の強化、ワクチンや治療薬の開発促進、専門病院の整備、専門的スタッフの配置、日本版CDCの設置、医療者への報酬増額があった。
著者
宇高 徹総 山本 澄治 中村 哲也 黒川 浩典 宮谷 克也
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.738-742, 2016 (Released:2017-10-30)
参考文献数
9

1990年1月から2013年12月までに当院で切除した原発性虫垂癌13例について臨床病理学的特徴,術前・術中診断,術式,化学療法,転帰について検討した.男性6例,女性7例で,平均年齢は73.4歳(56~94歳)であった.術前診断で虫垂癌の確定診断が得られたのは1例のみで,術中にあらたに6例に診断ができ,残りの6例は術後の病理で診断できた.術式は結腸右半切除術5例,回盲部切除術6例,盲腸部分切除術1例,虫垂切除術1例であった.組織型は高分化型腺癌9例,中分化型腺癌3例,乳頭腺癌1例で,深達度はT2が1例.T3が5例,T4が7例,進行度はStage Ⅱが6例,Stage Ⅲaが4例,Stage Ⅲbが1例,Stage Ⅳが2例であった.術後観察期間中央値は43カ月(2~169カ月),転帰は無再発生存5例,無再発他病死3例,腹膜播種による原癌死3例,肝転移による原病死が1例,切除断端再発よる原病死が1例であった.累積5年生存率は51.9%であった.手術時にはすでに進行しており腹膜播種再発の頻度が高い傾向があるため,術後化学療法などの集学的治療が重要と思われた.
著者
中川 貴史 中村 健太郎 笠岡 祐二 村田 将光 西村 健二 瀬崎 和典 野田 誠 鈴木 文男
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.SUPPL.3, pp.S3_28-S3_33, 2011 (Released:2012-12-05)
参考文献数
4

持続する上室性頻拍においてP波とQRS波の出現タイミングは一定であり, 通常その関係が変化することはない. 頻拍中, 陰性P波の出現時相が, さまざまに変化したため, P波がQRS波に重なり, QRS波高が減少した房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)の稀な1例を経験したので報告する.症例は71歳, 女性. 月に1~2回の頻拍発作を認め入院. 心臓電気生理学的検査よりAVNRTと診断された. 入院前に記録された頻拍時の心電図では, 頻拍周期540~440ms, QRS波の直後に深い陰性P波を認めた. 頻拍周期の短縮に伴い逆行性P波は早い時相に移動し, QRS波形を変形させた. 軽度の前方移動ではS波を, より高度の前方移動ではQ波を, 中等度の前方移動ではS波とQ波を同時に形成し, QRS波形をさまざまに変形させた. QRS波高も同時に減少したが(陥没現象), 陰性P波の“重なり”効果によると推察された.
著者
中村 仁美 玉井 克人 冨松 拓治 遠藤 誠之 味村 和哉
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

現在の不妊治療の治療効率を向上するためには現在ブラックボックスである受け入れ側の子宮の着床能を前方視的に評価しその周期ごとの治療方針に反映させなければならない。これまでの我々の研究において、ヒトでは排卵期前に子宮内膜の電気生理学的パラメータを測定する事でその周期の子宮内膜の受容能が前方視的に評価できる事を明らかにした。本研究では、この物質的基盤を明らかにするために月経による子宮内膜の再生機構について、マウスモデルを用いて基礎研究を行う。将来的に、電気生理学的評価の物質的基盤を検討する事でヒト子宮の着床能を前方視的に評価する装置システムの精度の向上だけでなく、治療への応用をめざす。
著者
中村 誠宏 寺田 千里 湯浅 浩喜 古田 雄一 高橋 裕樹 藤原 拓也 佐藤 厚子 孫田 敏 伊藤 徳彦
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.1816, 2019-11-08 (Released:2020-01-13)
参考文献数
17

北海道中川郡音威子府村から中川町を結ぶ全長 19.0 kmの一般国道 40号音威子府バイパスの建設が 2007年から始まっている。北海道大学中川研究林を通過する区間では、周辺地域のトドマツ及びミズナラ、シナノキ、オヒョウなどが生育する北方針広混交林生態系に対してより影響の少ない管理手法の開発が検討されている。 2010年より検討を開始し、翌年より施工手法や装置の開発、施工対象予定地での事前調査を行った。 2013年に試験施工を行い 2014年よりモニタリングを開始した。本研究では表土ブロック移植に注目して、 1)これまでより安価な表土ブロック移植の簡易工法の開発、 2)すき取り表土と比較して簡易表土ブロック工法が施工初期の草本層植生や土壌動物群集に与える影響、 3)それらの回復について 2014年と 2015年の 8月下旬に調査を行った。本工法では装置開発を最小限にして、一般的に用いられる建設機械を利用したことから、施工費が大幅に削減された。表土ブロック区では在来種の被度がより高かったが、すき取り土区では外来種の被度がより高かったため、植物全体の被度は処理間でそれ程大きな違いはなかった。ヒメジョオンのような 2年生草本の種数はすき取り土区でより多かったが、多年生草本と木本の種数は表土ブロック区でより多かったため、植物全体の種数は表土ブロック区でより多かった。さらに、移植元の植物相との類似度も表土ブロック区でより高くなった。一方、リター層も土壌層も土壌動物の個体数は表土ブロック区でより多く、種数も表土ブロック区でより高かった。リター層を除く土壌層のみ表土ブロック区において移植元の土壌動物相との類似度がより高くなった。本研究の結果から、開発した表土ブロック移植の簡易工法は植物と土壌動物に対して早期の回復効果を持つことが示された。
著者
中村 美和子
出版者
Society for the Historical Studies of Early Childhood Education and Care in Japan
雑誌
幼児教育史研究 (ISSN:18815049)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-14, 2019 (Released:2020-03-25)
参考文献数
36

During the Asia-Pacific War (1941―1945), it was necessary for the Japanese people to listen to the radio in order to get information about the war. Radio programs for children were also presented during this period, popular since they were first broadcast by JOAK (Japan's oldest public broadcasting radio station) in 1925. This study aims to clarify the planning process and the content of ‘National School Hour' educational programs aired from April 1941 to March 1945, focusing on story programs for preschoolers. Materials of ‘National School Hour,' monthly radio textbooks and twenty-two scripts of story programs that were aired from June 1941 to January 1945 provided evidence for this analysis. The scripts had not been previously analyzed. Based on the result of this study, the following points are revealed: 1. The planning process 1) Programming was designed to be suitable for a pre-schooler's inner world, as discussed by the School Hour Committee composed of education experts and the JOAK production staff; and 2) To present monthly goals (from January 1942 to March 1943) designed to align with program themes, based on the guidelines for pre-schooler life determined by the School Hour Committee. 2. The content 1) There was a tendency for some scripts written from January 1942 to March 1943 to depend on the guideline of pre-schooler life; and 2) A tendency of the scripts of ‘National School Hour' in consideration of pre-schooler life, to focus on their play. The story programs were produced to emphasize normal pre-schooler life; however, there were some scripts that followed military national policy during the war years.
著者
土屋 雄大 柳沢 佳奈子 中村 未来 岡 泰道
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.95-95, 2010

東京都区部では合流式下水道の敷設率が高く,降水時に未処理汚水が公共水域に放流されている.その結果,公共水域の水質汚染は深刻化しており,それは,東京都の歴史的・文化的に貴重な史跡である江戸城の濠においても例外ではない.そのため,江戸城外苑濠(内濠)では水質改善を目指し,過去幾度も水質調査が行われてきた.しかしながら,江戸城外濠(以下,「外濠」)においては,未だに十分な対策が施されていないのが現状である.本研究では,こうした外濠の水環境改善を目指し,水質改善の適切な手法を見出すことを目的とする.ここではその端緒として,水質改善を進める上で基礎となる水質調査をおこなった。その結果では、外濠は富栄養化の特徴を有しているなどの考察が得られた。
著者
中村 努
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.55-74, 2021 (Released:2021-04-13)
参考文献数
37
被引用文献数
5

本稿では,台湾島嶼部の地理的条件と地域固有の歴史的経緯から多様な空間スケールのケア供給体制が構築されてきた過程と,現在のケアの利用行動からケア供給体制が抱える課題を明らかにした。台湾本島との隔絶性が高い緑島では,1990年代以前,衛生所による一次医療が展開されるのみで,その他のケアニーズはもっぱら近居の家族による支援によって対処せざるを得なかった。一方,民主化が進展した1990年代後半以降は,民間診療所の開設と,東南アジアからの介護労働者の受け入れによる高齢者介護や生活支援サービスの確保が確認できた。こうして,複数のアクターがローカル・スケールのみならず,グローバルなレベルに及ぶ広域で重層的なローカル・ガバナンスを形成することによって,台湾の島嶼部におけるケア供給が図られてきた。しかし,台湾政府は時間的,地理的制約を克服するために有効とされる,遠隔画像診断と救急搬送の活用に消極的であった。ケアサービスの利用行動を検討した結果,島内では家族や外国人労働力が在宅介護を支える一方,休職や家族の分断を伴った島外への受療行動が確認できた。こうした政府の役割を代替あるいは補完しようとするアクターで構成されるローカル・ガバナンスは,台湾固有のケア規範に加えて,緑島固有の歴史的経緯とも密接に関係しており,外国人介護労働者の人権に対する法的整備や,身近な地域でケア供給が完結する体制の整備が課題であることも明らかになった。
著者
小関 俊祐 小関 真実 中村 元美 大谷 哲弘 国里 愛彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.29-39, 2018-01-31 (Released:2018-06-18)
参考文献数
21
被引用文献数
3

本研究は、児童の行動抑制および行動賦活の傾向を把握する自己記入式尺度のBehavioral Inhibition System and Behavioral Activation System Scale(児童用BIS/BAS尺度)日本語版を作成し、信頼性と妥当性の検討を行うことを目的とした。本研究では、小学3年生から6年生1,624名を対象に調査を行った。確認的因子分析の結果、児童用BIS/BAS尺度は原版と同様の4因子構造を示した。信頼性において、児童用BIS/BAS尺度はBAS-刺激追求のα係数は低かったが、全体としては十分な内的整合性と再検査信頼性を示した。また、BISは、抑うつと正の相関を示し、外向性および情緒安定性と負の相関を示した。BASは、攻撃行動および外向性と正の相関を示し、抑うつおよび情緒安定性と負の相関を示した。以上より、児童用BIS/BAS尺度の構成概念妥当性が確認された。
著者
中村 俊太 近藤 岳 並木 美砂子
雑誌
帝京科学大学教育・教職研究 = Journal of educational research and teacher development, Teikyo University of Science (ISSN:2433944X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.79-85, 2021-03-31

日本の動物園で単独飼育されているゾウは,国際的な飼育基準から動物福祉上の問題を指摘されているが,アジアゾウを単独飼育している甲府市の動物園では,飼育環境を豊かにする試み(エンリッチメント)を継続している.本学動物園動物学研究室は,2018年から2020年にかけて卒業研究の一環で行動調査を継続してきたので,その成果を報告する.調査方法は直接観察により,分析は,エンリッチメント導入の前後期間で行動発現割合を比較することによった.その結果,鼻での操作・砂浴び・採食の発現割合が有意に増加し,常同行動・移動・立ち止まりの発現割合が有意に減少した.また,常同行動の発現割合を時間帯別に比較したところ,飼育者から直接的ケアを受けることも常同行動減少に効果的であることが示唆された.今後は,ケアの内容も含め,さまざまな行動レパートリーが増えるようなエンリッチメントの工夫に対する調査が必要である.
著者
青木 秀貴 中村 友洋 助川 直伸 齋藤 拡二 深川 正一 中川 八穂子 五百木 伸洋
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.46, no.SIG12(ACS11), pp.27-36, 2005-08-15

科学技術計算をターゲットとするスーパーテクニカルサーバSR11000 モデルJ1 を開発した.POWER5 を16CPU 搭載するSR11000 モデルJ1 のノードは,理論ピーク演算性能121.6GFLOPSを有し,協調型マイクロプロセッサ(COMPAS)と呼ぶノード内並列処理方式と,擬似ベクトル処理(PVP)によるメモリアクセスを含めたパイプライン処理により,単一の高性能なプロセッシングエレメントとして利用できる.本稿では,COMPAS とPVP を可能とするSR11000 モデルJ1 のノードアーキテクチャを紹介するとともに,ノード性能の評価結果について述べる.
著者
中村 努
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.67-85, 2017-03-01 (Released:2022-03-02)
参考文献数
32

本稿は,医療供給主体間の関係から長崎県における医療情報システムの普及過程を明らかにした.大村市で構築されたシステムは,参加施設数の増加ペースをあげながら県全域に普及した.県内スケールでみると,普及促進機関による協調行動が,異なる利害をもつ主体による共通のシステムの運用を可能にした.また,普及促進機関による職能団体との協調およびコスト負担の軽減を通じて,市町の領域を超えてシステムが普及した.市町内スケールでみると,長崎市や大村市では,地域医師会や地域薬剤師会における信頼関係が,診療所や薬局のシステムの普及に重要な役割を果たしていた.システムの普及は単なる技術的な問題ではなく,地域間で異なる職能団体の特性に依存することが明らかになった.本稿の結果は,情報通信技術が社会インフラとして機能するため,その普及や効果に地域差が生じる要因をさまざまな空間スケールから解明することの必要性を示唆している.
著者
中村 滋 杉山 滋郎
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究 (ISSN:21887535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.240, pp.209-219, 2006 (Released:2021-08-11)

HOSHINO Kasui (1885-1939), who graduated in mathematics from Tokyo Higher Normal School, wrote and published The Study of Geometry by the CHART System, a math study book for entrance exams, in 1929. Since then, the study books, which are named CHART System, have been published for over 75 years. Therefore, it can be said that the CHART System is an established method of study used in study books. However, there exists no previous research on the CHART System or its founder, HOSHINO Kasui. This paper clarifies the following two points: 1) Origin of the CHART System: The CHART System was developed by Hoshino Kasui in cooperation with his business involving the publication of a monthly magazine and several study books for entrance exams as well as through his managing and teaching experiences in a cramming school. 2) Features of the CHART System: The features of the CHART System become evident upon comparing the solution provided by Hoshino and that provided by a previous study book with regard to the same question. Hoshino led students to the solution by providing CHARTs, which were precepts based on solution scenarios that did not require dependence on rare inspiration. Hoshino's CHART System, which he extracted from numerous solution scenarios, was the first step in the compilation of solutions to questions in study books into a manual.