著者
河合 正朝 渡邉 妙子 中村 麻紀 伊藤 公久 赤沼 英男 廣井 雄一 廣木 順一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日本刀用可搬式デジタル画像撮像装置を開発し、鎌倉時代から江戸時代までの75件の短刀と3件の太刀を撮像した。得られたデジタル画像には、従来の記録方法では困難であった、各流派および各時代を代表する日本刀地金の特色が細部に至るまで表示されていた。これまで、日本刀の鑑識家に独占されていた日本刀表面形態を一般に提示するうえできわめて有効な方法であり、当該方法による日本刀デジタル画像データベースの構築が可能であることが確かめられた。
著者
周 維統 井上 喜正 伊藤 敏男 山本 禎紀
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.39-46, 1997-12-08
被引用文献数
2

本研究では、高温下におけるブロイラーの体温調節性生理反応に及ぼす飼料摂取量の影響について検討した。供試鶏には、22℃下で高温暴露前の飼料摂取条件を0、25、50および75gとし、9時に給与し, 摂取後少なくとも2時間以上経過した14 : 00から17 : 00にかけて38℃の高温に暴露した。直腸温、脚部皮膚温、呼吸数および心拍数は、22℃に比べ38℃で有意に高く、高温暴露時間とともに上昇または増加した。22℃下(13 : 30)では、飼料摂取量の増加に伴う直腸温脚部皮膚温呼吸数および心拍数の上昇または増加が認められた。しかしながら、38℃感作によって、飼料摂取量に伴う熱産生量の増加も、また、直腸温、脚部皮膚温、呼吸数および心拍数の上昇または増加も認められなかった。生理反応の関係を見ると、熱産生量は直腸温の上昇に伴い増加し、呼吸数は直腸温約42.5℃で最高値に達した。これらの結果から、ブロイラーの体温調節性生理反応に及ぼす暴露前の飼料摂取量の影響は比較的短時間のうちに消失してしまうものと思われた。日本家畜管理学会誌、33(2) : 39-46.1997.1997年3月3日受付1997年7月22日受理
著者
橋本 景子 伊藤 けい子 李 慶英 浅井 利夫 村田 光範
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.928-928, 1991-09-25

第2回スポーツ健康医学懇談会 平成3年3月2日 東京女子医科大学臨床講堂2
著者
日高 道雄 伊藤 彰英 山城 秀之 酒井 一彦 中村 崇 磯村 尚子 波利井 佐紀 新里 宙也 井口 亮
出版者
琉球大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、様々な生活史特性を持つサンゴのストレス応答を、特に初期生活史に焦点を当てて調べた。褐虫藻の存在がプラヌラ幼生のストレス感受性を高めること、褐虫藻のタイプによりサンゴ幼群体のストレス応答が異なること、ストレス特異的に反応して発現が変化する遺伝子があることを発見した。さらに群体型や遺伝子型などの違いによるサンゴのストレス応答の違い、各種ストレスによる群体死亡要因や新規加入の変動などを解析し、野外の群集モニタリング結果と関連づけた。
著者
栗原 英見 佐藤 勉 鴨井 久一 石川 烈 花田 信弘 伊藤 公一 村山 洋二 岩山 幸雄 丹羽 源男
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

唾液を用いた歯周病検査の開発について多角的に検討した.侵襲性歯周炎患者においてPorphyromonas gingivalis(P.g)に対するfgA抗体産生がみられ,唾液中の特異的IgA抗体測定によってP.g感染を検出できる可能性を示した.PCR(polymerase chain reaction)法での唾液を使った歯周病原性細胞検査が可能であることを明らかにした.血清とActinobacillus actinomycelemcomltans(A.a)の外膜タンパク(Omp)が強く反応した歯周病患者の唾液を使って,A.aのOmpを抗原としたfgAレベルでのA.a感染の同定を行う有効な手段を示した.Streptococcus-anginasus(S.a)をPCR法で特異的に検出する技術を確立し,上皮組織の抗菌ペプチド(hBD-2)とS.aの関連によって,S.aが病原性を示す際に必要な分子メカニズムの一端を解明した.歯周治療によりインスリン抵抗性や血糖コントロールを改善した糖尿病患者モデルを使うことで,唾液を用いた歯周病検査の開発に利用できることを明らかにした.糖尿病患者の唾液を検体とした生化学検査によって歯周疾患群と歯周疾患なし群とで有意差をは認めず,糖尿病と歯周疾患の関連性を明らかにすることはできなかった.唾液中の好中球のエラスターゼ活性や活性酸素産性能は歯周疾患の病態やリスク判定に有用である可能性を明らかにした.唾液中のMMP-8量の測定から,その活性型の値によって歯周疾患活動性の高い患者を特定できることを明らかにした.健常者に比べ歯周病患者では唾液中の酸化ストレス産物(8-OhdG)が有意に高く,歯周病診断の検査項目として有用なことを明らかにした.歯槽骨代謝マーカーとして有用性の示唆されている硫酸化グリコサミノグリカン(S-GAG)について,唾液での測定を行ったが測定できなかった.
著者
伊藤 たかね 萩原 裕子 杉岡 洋子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,語レベルの言語処理にかかわる心内・脳内メカニズムを明らかにすることを目的として,事象関連電位(ERP)計測の手法を用いた実験を行った。具体的には,複文の特徴を示す複雑述語(サセ使役)および,動詞の屈折を取り上げ,いずれの場合にも規則による演算処理と,レキシコン内のネットワーク的記憶という,質の異なる処理メカニズムが働いていることを示唆する結果を得た。
著者
杉山 高弘 伊藤 博司 宮内 幸司 宮下 洋一 太田原 剛 惣門 雅彦
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.45, pp.99-100, 1992-09-28
被引用文献数
2

アプリケーションシステムのインタフェースに,近年,マルチウィンドウやアイコンを駆使した操作性と見栄えが優れたグラフィカルユーザインタフェース(GUI)が求められてきている.しかし,そのようなGUIを開発するには複雑なウィンドウシステムの理解と膨大な開発期間を必要とする.鼎インタフェースビルダ「ゆず」は,グラフィカルユーザインタフェース構築環境「鼎(かなえ)」を利用してアプリケーションシステムのGUIを開発するプログラマに換わって,C言語のGUIプログラムを自動生成する.本稿では,1)部品クラス定義,2)鼎エディタを用いたレイアウト機能,3)リハーサル機能を中心に「ゆず」の機能概要とその実現方式の優位性を説明する.
著者
松川 正樹 高橋 修 林 慶一 伊藤 慎 Konovalov V. P. Valentine
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.48, pp.29-42, 1997-06-30
被引用文献数
1

西南日本のジュラ紀から前期白亜紀付加体の重複配列分布は, 付加体の放散虫化石と付加体の堆積物に不整合で覆う非海成ないし浅海成の堆積物に含まれる軟体動物化石の化石層序と時代論に基づき, オーテリビアン期に形成されたと解釈される。一方, 日本を含む東アジアの浅海成堆積物から後期ジュラ紀〜前期白亜紀のアンモナイトが産出し, それらが低緯度地域と高緯度地域の種を含む。これは, この地域が二つの異なる海流の影響を受けたことを示し, 現在の下部白亜系の分布位置と堆積当時の分布位置がほぼ同じであったと解釈できる。特に, 前期白亜紀の手取地域は高緯度地域からの海流の影響を受けたことが示唆される。これらの解釈は, この時期のテクトニクスの考察による日本列島の位置の解釈と化石による解釈の両者がともに整合性のあることを示す。
著者
伊藤 佳世
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.354-376, 2003-09-30

1992年以降,自主的に環境マネジメントシステム(EMS)を構築する動きか先進国中心に見られる EMSに関する既存研究の多くは産業界におけるそれを対象にしている たか,経済の主体は,一般的には産業,家訓,政府の3者からなっている しかも,公共機関は環境政策を用いて他の2つの主体の環境負荷削減を働きかけることかてきる そこて本稿ては公共機関のEMSの取り組みに焦点を当てる すなわち,本稿の目的は,Accountability概念を用いて,公共機関のEMS構築について評価をすることによって,そのEMS構築かとれたけ公共機関の活動に伴う環境負荷を削減しているのか,政策としてEMSの活用か住民の家計,さらに消費行動にとのような影響を与えているのか分析することてある そのために,国内て最初に環境政策の実施ツールとしてEMSを構築し,地域全体にEMSのノウハウを用いた施策の展開を行なっている水俣市を事例として取り上け,そのEMSの構築を評価した 事例研究から得られた知見は,次の通りてある (1)Probity Accountability(合規性) 行政機関は完全な遵法性か求められているか,し尿に関する法規制か満たされておらず,Probity Accountabilityを充足しているとは言い難い たたし,EMS構築により未達成の理由か検証されており,この問題に対する継続的な改善か行なわれている (2)Progress Accountability(プロセス) Stakeholderに対する情報公開と,彼ら/彼女ら意見のフィードバックについて検証すると,水俣市は,意志決定前の段階からEMSの仕組みなとに関して説明会を開き,市民の意見をEMSの中に取り入れ,また,構築後も市民の意見をもとに簡易型EMSを実施しており, Progress Accountabilityを充足している (3)Performance Accountability(費用効果) 環境教育,EMSの構築,運用のコスト,環境負荷の乱視・測定環境保全対策組織の人件費,といった環境庁の環境会計かイとラインのEMSに関するコストを,水俣市に当てはめ分析した結果,直接的な費用と効果の計算値てはあるか,効果の方か費用を上回っていた したかって,水俣市はPerformance Accountabilityを充足している (4)Program Accountability(目的達成成果) 施策や事業の成果や目標達成度を検証し,さらにCO_2換算してEMS導入前後を比較すると,EMS導入によりCO_2か削減されている また,水俣市は環境基本計画ての実施ツールとしてISO 14001を位置付け,間接的目標も達成されている したかって,水俣市はProgram Accountabilityを充足している (5)Policy Accountability(政策選択) EMS認証を取得しなくても省エネ省資源の取り組みは可能てあるのて,研究課題として他の手法との比較の必要性について示した EMS認証による方法と他の省エネ,省資源の取り組みとの比較を十分に行なえなかった 今後の課題とする 間接影響についてはまた分析していないか,以上の分析を通して,全体として次のことか言える 水俣市のEMS構築ては合規性について問題を残しているものの,プロセス,費用便益,目標達成についての行政のアカウンタビリティを充足している したかって,政策におけるEMS活用は有効てあるとともに,他の地域の実践に対しても,そのモてルになりうると考えられる
著者
名塚 雄太郎 安室 千晃 井上 貴仁 横山 浩 平野 貴之 金丸 正剛 伊藤 順司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ED, 電子デバイス
巻号頁・発行日
vol.94, no.404, pp.39-44, 1994-12-15

走査型マクスウェル応力顕微鏡(SMM)は,探針と試料表面の間に働く微弱な電気力を測定する走査型プローブ顕微鏡である.特徴は,非接触で表面電位と形状の2次元イメージを同時にしかもナノスケールの分解能で測定できる事である.電界放射エミッタの高機能化を図るひとつの手段として,その表面状態の高精度な制御技術の開発が考えられる.そこで,このSMMを用いて各種エミッタ材料の表面状態(表面電位,形状)の観察,評価を行い,エミッタ高機能化への手がかりを得るのが本研究の目的である.本稿では,SMMの原理や使用したカンチレバーについて述べるとともに,Al,Mo,Nbなどの表面電位の測定結果を議論する.
著者
佐藤 英次 浅岡 康 出口 和広 伊原 一郎 箕浦 潔 藤原 小百合 宮田 昭雄 伊藤 康尚 居山 裕一 柴崎 正和 菊池 克浩 久保 真澄
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.34, no.30, pp.9-12, 2010-07-23

我々はポリマーネットワーク液晶(PNLC)を用いた60インチ型のシースルーディスプレイを開発した。このディスプレイは、TFTパネルと散乱-透過表示を組み合わせた世界初の大型シースルーディスプレイである。また、このシースルーディスプレイとプロジェクタの組み合わせによって実現したカラー表示システムは、他のディスプレイとは一味違うアイキャッチ効果を可能とする。これらのモノクロ表示およびカラー表示のディスプレイは、インフォーメーションディスプレイやデジタルサイネイジ、さらには窓の置き換えのような新しいディスプレイ応用商品への展開が見込まれる。
著者
伊藤 秀三 山本 進一 中西 こずえ
出版者
長崎大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

龍良山の照葉樹林は海抜120mから山頂(海抜560m)に及び、面積は約100haである。海抜350m以下はスダジイ/イスノキ林、上方はアカガシ林である。調査項目は次の通り。1)スダジイ/イスノキ林に面積4haの永久方形区を設定し、胸高直径5cm以上の木本の生育位置、種別、胸高直径の測定、2)頂上に達する全長940m、幅10mのベルトトランセクトを設定し上記と同様の測定、3)低地から山頂まで、林冠木から林床までの林冠ギャップを除いた群落組成の調査、4)林冠ギャップ部位の群落組成の調査、5)林冠ギャップ部位のコケ植物の調査、6)ギャップ部位における樹木実生の生長の測定。下記の結果を得た。1)林冠ギャップは低地のスダジイ/イスノキ林に集中し、ギャップの大きさは5〜20mで、5m四方のメッシュ総数1600個のうちギャップは274個で森林面積の17.1%に達した。2)胸高直径分布では、二山型(スダジイ)、逆J型(イスノキ、サカキ、ヤブツバキ等)、正規型(ウラジロガシ)があり、全生存木では逆J型であった。3)低地〜山頂の植生傾度において、高木、低木、草本個体直群すべてにおいて海抜350ー400mで急激な組成の交替があり、種類密度は不変化、種多様度は低下した。4)ギャップ部位と非ギャップ部位の林床植生の比較により、次のギャップ指標植物(木本)が明らかとなった(出現頻度の高い順に)。イイギリ、アカメガシワ、サルナシ、カラスザンショウ、ハゼノキ、カジノキ、オオクマヤナギ。またギャップ部位で実生密度が高くなる照葉樹林要素はスダジイとカクレミノである。5)ギャップ指標のコケ植物の上位5種は、ホソバオキナゴケ、カタシロゴケ、トサヒラゴケ、エダウロコゴケモドキ、ツクシナギモドキ。6)ギャップ部位における実生の直径と高さの相対生長関係では、生長係数が高い上位5種は次の通り。ウラギンツルグミ、オガタマノキ、カラスザンションウ、カジノキ、クロキ。
著者
伊藤 耕三 木戸脇 匡俊 酒井 康博
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、超分子を利用した新規高分子材料の創成を目指しており、超分子構造の一種であるポリロタキサンを応用して、側鎖が軸高分子上を自由に動く様々なスラディンググラフトコポリマー(SGC)を合成し、これを用いて新しいミクロ相分離構造と物性を示す高分子材料を構築することを目的としている。本年度はまず、軸高分子(ポリエチレングリコール)の長さが一定で、グラフト鎖の長さと数が制御されたSGCの合成を試みた。我々のこれまでのポリロタキサンの修飾法は、多数あるシクロデキストリン(CD)水酸基に対してランダムに置換基を導入していたため、1つのCDに対する置換基の数や位置を厳密に定義するのは困難であった。本研究では予め官能基を導入したCDを用いてポリロタキサンを合成し、反応サイトを限定する。CD誘導体については、初めはMono-hydroxy α-CDのように市販されているものを購入して使用した。あるいは、多くの論文や成書で確立した合成法が報告されているので、それらに従い合成することも可能である。一方、グラフト鎖の導入方法としては、酸クロライドなどの水酸基と反応性の高い末端を有する高分子を結合させる方法と、ポリロタキサンからモノマーの重合反応により高分子鎖を成長させる方法が考えられる。本研究ではまず、精密な反応の制御が可能なリビング重合の一つであるATRP法により、モノマーとして疎水的なブロック鎖を形成するメタクリレート誘導体を用いた重合反応を試みた。合成した試料の同定は主にNMRによって行い、また、分子量の評価には本年度新たに導入した示差屈折計検出器を用いた。尚、本研究は、科学研究費補助金(基盤研究(S)・課題番号:20221005・研究代表者:伊藤耕三)の採択に伴い、平成20年8月11日付けで廃止となった。
著者
梶 幹男 沢田 晴雄 斉藤 俊浩 斉藤 登 中山 勇 赤岩 朋敏 伊藤 幸也
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.85, pp.p49-66, 1991-07
被引用文献数
1

1989年2月25日から26日にかけて東京大学秩父演習林栃本作業所管内の森林に大きな雨氷害が発生し,人工造林地での被害は本数18,931本,材積3,711m3,面積は23.6haに及んだ。しかも被害の発生した標高域はほぼ900~1,450mの範囲に限られていた。そこで雨氷現出の原因となったと思われる要因解析を行った。まず滑沢(標高1,150m),突出峠(1,650m)両地点の自記々録を比較した結果,この頃ここに明かな気温の逆転を生じていたことが判明した。しかも同じ時間帯に少し下方の栃本観測所(標高770m)で34.5mmの降雨が記録されていた。従って,雨氷害発生の経過についてこの時のこの雨が冷たい気層の中を落下する間に十分に冷やされて過冷却状態になり,それが枝,葉に当って瞬時に氷結し,着氷量を増加させていった。そしてこの着氷の荷重によって幹や枝が損傷を受け,雨氷後の強風がその被害を一層大きくしたものと推定された。また造林樹種のうち,カラマツが本数,材積ともに最も大きな被害を受け,総被害量の76%を占めた。被害形態を樹冠部の折損,幹の傾斜・湾曲,主幹の折れ,根倒れの四つに区分し,樹種別の被害率を求めた結果,樹冠部の折損はヒノキ,幹の傾斜・湾曲はカラマツ,主幹の折れは二葉松類,根倒れはスギでそれぞれ最も高い値を示した。そこで,カラマツ,スギ,ヒノキのそれぞれについて,雨氷害と地況および林況要因との関係を明かにするため,数量化I類による多変量解析を行った。解析に用いた七つのアイテムのうち,六つには樹種間で一定の傾向は認められなかったが,標高のみで,3樹種とも1,100~1,200mの範囲を中心に高いスコア値が認められた。このことは,今回の雨氷害の中心がこの標高域にあり,そこで着氷量が最も多かったことを示唆するものである。The glaze occurred at various places in Kanto from the 25th. to the 26th. in February, 1989 gave heavy damages to the manmade forests in Tochimoto District of the Tokyo University Forests in Chichibu, totals of 18,931 in the number, of 3,711m3 in the stem volume and of 23.6ha in the area (Table 2, 3). And most of these damages were found in restricted altitude ranges from 900 to 1,450m a.s.l.. For the purpose to search out main factors having caused these glaze damages, various analyses were carried out. The comparison of the temperature records taken from Namesawa (1,150m a.s.l.) and Tsundashitouge (1,650m a.s.l.) during the period concerned obviously clarified that the invasion of temperature occurred between these two altitudes (Fig.1). On the other hand, the rainfall of 34.5mm was recorded at Tochimoto observatory (770m a.s.l.) during the same period (Fig.3). It can be supposed from these two facts that the rain water was cooled to the over-cooled condition fallen passing through cold atmospheric layer below, and consequently it was frozen and turned to ice as soon as it dropped on branches and leaves, and fixed and accumulated on them. Therefore, stems and branches were broken by the heavy load of ice, and furthermore the damages were enlarged by strong wind blown after the glaze (Table 1). Among the manmade forests of different species, stands of Japanese larch (Larix kaempferi) were nost severely damaged showing 76 per cent of the total damage both in the number and the stem volume. Having classified the damages of stand trees into four types, i.e., crown breakage, stem leaning, stem breakage and up rooting and surveyed the degrees of damage of every tree species, it was known that the percentage of crown breakage was the highest in the stands of hinoki cypress (Chamaecyparis obtusa), that of stem leaning in Japanese larch, that of stem breakage in the species of hard pines, and that of up rooting in cryptomeria (Cryptomeria japonica), respectively. For the purpose of analysis of causal relations between the degree of glaze damage and the factors of topographical and or stand conditions, several stands of Japanese larch, cryptomeria and hinoki cypress were subjected to quantification analysis Quant-1, for which five items for topographical factors and two items for stand conditions were selected (Table 6-8). Among the seven items, six did not present any obvious relation among the stands. But a category of 1,100-1,200m in the item of altitude alone was significantly related to the occurrence of glaze damage in the stands of every species. This fact suggests that the amount of ice deposition was the largest in this range of altitude which caused heavy damages.
著者
本間 弘達 媚山 政良 岸浪 絋機 野田 恒 伊東 宏城 伊藤 親臣
出版者
Japan Society for Snow Engineering
雑誌
日本雪工学会誌 : journal of snow engineering (ISSN:09133526)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.23-33, 2007-01-01
被引用文献数
1 2

Recently, a large number of air-conditioning system that uses the snow as cold energy source (snow cooling system) has been increasing due to the environmental emerging that is represented by the global warming. While the reducing of the operational cost of this system is advanced, there is a demand for a simple cooling system that can be used in the necessary places where the snow mound is available to supply the cold energy source. Therefore, we have been starting the research and development of a movable package type of snow air-conditioning system since 2001.<br>Based on how to gain the cold energy from snow, the snow cooling system can be divided into two types: Air circulation type and Cold-water circulation type. In this paper, we report an experimental research and development of a cold-water circulation shower type of the snow cooling system.
著者
伊藤 驍 渡辺 康二 北浦 勝 塚原 初男 長谷川 武司
出版者
秋田工業高等専門学校
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1990

3年間にわたって資料収集・調査観測した結果について整理し、成果の取りまとめを行った。雪の観測と並行して研究を進めているため現在も一部作業継続中のものがあるが,今年度の主要実績は次の通りである。(1)前年度行った秋田県の雪崩危険箇所の調査解析に引続き,今年度は宮城県の場合について資料収集を行い,発生要因8つを抽出して日本海側と太平洋側に面した両県の危険度や地域的特徴について多変量解析を適用して比較検討した(伊藤)。(2)雪崩と同様,地すベりについても宮城県の危険箇所に関するデータを収集し,両県における危険度や地域特性を整理した。特に危険度の大きいところはいずれも特別豪雪地帯に位置し,比較的高標高地で長大な斜面をもつところに集中するということが判明した(伊藤)。(3)地すベり冠頭部での雪気象観測を引続き行った。またこの観測における問題点を解決し,データ収集のテレメタリングシステムを確立させた。本研究によって開発された観測システムは次年度より横手市で採用されることが内定した(長谷川,伊藤)。(4)雪崩発生要因の一つとして斜面雪圧を重視し観測を行ってきた。この雪圧は斜面上の局所的凹凸地形に大きく影響され,山形県内ではこの地形のところで地すべりと雪崩危険箇所が重複していることが確認された(塚原)。(5)積った雪が融けて融雪水をもたらし脆弱な地盤を形成するが,この融雪機構を熱収支法や気象作用等によって説明し,地盤にいかに浸透するかを積雪層タンクモデルを使って解明した。この数値シミュレーションは実際の観測と良く合うことを検証し,福井等北陸地方の融雪地すベり発生機構のモデルとして整理した(渡辺)。(6)石川県内の雪崩事例を対象に雪崩の運動論を適用し,雪崩防護工に作用する衝撃力や雪崩の通り道について数値シミュレーションを行い良好な結果を得た。特に雪崩抵抗係数を慎重に取ること,雪崩の到達地点は地形の拘束を強く受けることなどをモデルを使って明らかにした(北浦)。