著者
水谷 雅彦 伊藤 和行 出口 康雄 杉村 靖彦 神崎 宣次
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、曖昧なままにとどまっており、それゆえ様々な混乱の原因ともなっている「健康」概念を、哲学的、倫理学的な観点から再考したものであり、「障害」問題や「エンハンスメント」などの問題のみならず、「健康食品」に関する問題に関しても重要な提言をするに至った。
著者
伊藤 俊一
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

・室町幕府は、設立当初より寺社本所領や遠隔地武家領の保護という土地所有秩序の維持・再建を目指していたが、内乱の継続により、前線の守護に権限を与えざるを得ず、政策が実施されないという問題を抱えていた。・守護の在京は南北朝内乱期当初より断続的に見られるが、貞治年間以降の在京は、在京が継続すると共に、在京奉行人の登場に象徴される守護の在京政務機構の整備を伴っており、それ以前とは質が違う。・在京奉行人は、人夫や兵根米の徴収、役夫工米や即位段銭の徴収、寺社本所領をめぐる紛争処理などの業務を担当した。・在京奉行人の登場により、寺社本所領主はこのルートを通じて、所領・所役の問題を直接に守護へ訴えることができるようになる。守護関係者と寺社本所関係者との間の日常的な接触も増える。・守護の在京政務機構の登場により、室町幕府の命令が守護によって遵行されないという問題に一定の解決がもたらされ、室町期荘園制の秩序が安定した。・守護在京制の確立により、京都は幕府を中心に、寺社・貴族などの諸権門、各地方への足がかりを持つ守護とその配下が集住し、利害を調整する場となった。そのような「在京人」社会を統御する存在として「室町殿」が立ち現れたと考えられる。・以上の成果は、室町期荘園制の成り立ちと室町幕府の性格を再考する重要な契機と成り得る。
著者
上島 享 阿部 泰郎 伊藤 聡 石塚 晴通 大槻 信 武内 孝善 阿部 泰郎 伊藤 聡 石塚 晴通 大槻 信 末柄 豊 武内 孝善 近本 謙介 苫米地 誠一 藤原 重雄
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、諸分野の研究者が共同で勧修寺に現存する聖教・文書の調査を進めるとともに、勧修寺を中心に諸寺院間交流という共通テーマを掲げて、研究を行うことが目的である。勧修寺現蔵の聖教と中世文書の目録を完成させ、諸寺院間交流をめぐる諸論考をまとめることができ、本研究の目的は十分に達成されたと考える。
著者
佐々木 公明 日野 正輝 長谷部 正 山本 啓 小林 一穂 照井 伸彦 赤松 隆 徳永 幸之 林山 泰久 福山 敬 徳川 直人 平野 勝也 伊藤 房雄 村山 良之 横井 渉央 張 陽
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

日本の集計データに基づいた幸福関数の統計的分析は「他者との比較」を表す生活水準が住民の幸福度に影響を与えることを示す。一方、物質の豊かさの価値よりも心の豊かさに価値を置く方が幸福度を増加させる。幸福度は所得満足度と共に単調に増加するが、所得満足度は生得水準の単調増加ではなく、「快楽の踏み車」仮説があてはまる。社会環境を表す所得分配の不平等と失業率はいずれも個人の幸福度に負の影響を与えるが、不平等よりも失業が住民の幸福により大きな影響を与える。
著者
田中 康雄 内田 雅志 久蔵 孝幸 福間 麻紀 川俣 智路 伊藤 真理 美馬 正和 金井 優実子 松田 康子
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター = Research and Clinical Center for Child Development, Faculty of Education, Hokkaido University
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-9, 2010

2009年に行ったわれわれの「発達障害のある方々への生涯発達支援の実践研究」について報告した。まず、発達障害は生活障害である。その視点に立つことで、われわれの実践研究を(1)養育者支援に関する研究、(2)保育・教育現場における支援研究、(3)特殊な生活環境における支援研究、(4)ADHDに関する調査研究と分類して、生活環境を中心に包括的な検討をした。われわれが向き合う「あなた」は、当初は養育者、次に当事者、さらにかれらを取り巻く関係者となる。同時に、われわれには、関係者といかに手を携えて総合的な支援策を構築するか、ということも求められる。最後に連携・ネットワーク作りからノットワーク作りへという移行を提案した。
著者
若松 一雅 伊藤 祥輔
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ヒト中脳黒質中に存在するニューロメラニン)NM)を単離し、その構造研究を行った。その結果、NMはDAとCysが約4:1で酸化重合して生成したフェオメラニンの構造単位であるベンゾチアジンを持つ部分とDAの酸化重合で得られたユーメラニンの構造単位からなることがわかった。また、脳内被殻、前運動野皮質、小脳などの非カテコールアミン作動性ニューロンにおいて新しいNM様色素が存在することを発見した。この色素は、黒質や青斑核に存在するNMと違って、DA由来でなくDOPA由来であることが化学分解法とHPLC分析により確認された。
著者
伊藤 寛 堀内 格 成瀬 博昭 坂上 充志 本多 英邦 長村 洋一 西田 圭志 石黒 伊三雄 山崎 雅彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, 1988-08-01

N-acetylneuraminic acid(以下NANA)はαおよびβ-globulin分画の糖蛋白質に含まれ,急性炎症,悪性腫瘍などで上昇するといわれている.その上昇に関与する蛋白質の性状は異なることが推測されることから大腸癌症例における詳細な糖蛋白質の動態の追跡を目的として,糖鎖末端にgalactose(以下GP)およびNANA-galactose(以下NGP)を有する糖蛋白質の定量を試みたので報告する.
著者
伊藤 太二 伊庭 英夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、AP-1結合配列を持つ標的遺伝子の発現誘導に刺激特異性が見られる現象を支える分子機構を解明すべく、SWI/SNF複合体にsubstoichiometricalに結合する因子の同定と生化学活性の解析を行った。特に、BRG1に結合する因子群の中に見いだされたp54^<nrb>及びPSFに焦点を当て、これとSWI/SNF複合体構成成分との結合に関する生化学的解析とその結合が果たす役割について精査し、以下の成果を得た。1.p54^<nrb>はSWI/SNF複合体構成成分のうち、BRG1、Brm、BAF60aと直接結合する。一方、Ini1との直接結合は見られない。2.p54^<nrb>及びPSFはBRG1型及び、Brm型SWI/SNF(もしくはこれらに類似した)複合体に結合する。3.p54^<nrb>及びPSFは初期転写、splicing、'A to I'にeditingされたRNAの核内保持等に機能する多機能性タンパク質である。したがって、これと結合するBrmがalternative splicing過程に関与しているか精査した。元々BRG1の発現を欠くヒト非小細胞肺癌由来H1299細胞株において、Brmのノックダウンを行い、SWI/SNF複合体の機能を失わせたところ、Brmのノックダウン後二ヶ月以内に、細胞の老化を伴うgrowth arrestが観察された。4.3で観察されたgrowth arrestはテロメアの短小化を伴うものであり、Brmをノックダウンすると、AP-1の標的遺伝子であるtelomerase reverse transcriptase(TERT)遺伝子の初期転写量が減少し、かつその転写産物が受けるaltenative splicingのパターンが変化し、不活性なTERTタンパク質をコードすると考えられるmRNAの割合が増加することが判明した。5.H1299細胞内では、Brm、p54^<nrb>はTERT遺伝子のプロモーター領域及びalternative splicingのacceptorを含む領域に特異的に局在している。本研究から、p54^<nrb>を含むSWI/SNF(もしくはこれに類似した)複合体は、恐らくはAP-1をはじめとする転写制御因子群によってTERT遺伝子のプロモーターに動員され、転写開始を誘導した後、その複合体分子が引き続いてalternative splicing過程にもcisに作用し、活性のあるTERTタンパク質の効率良い発現に多段階で機能すると考えられた。そして、AP-1の標的遺伝子群の中でも、特定の遺伝子群に対してのみ、p54^<nrb>を含むSWI/SNF複合体が多段階で機能し、効率良い遺伝子発現制御を行っている可能性が示唆され、AP-1の持つ多機能性を説明するための端緒が見いだされた。
著者
石川 玲 香川 幸次郎 伊藤 和夫 小野 洋一 伊藤 日出男 対馬 均 進藤 伸一 菅原 正信 三浦 孝雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.433-438, 1988-09-10

寒冷や積雪が在宅脳卒中後遺症者の生活に及ぼす影響について検討するために, 青森県内2ヶ町村の在宅脳卒中後遺症者115名を対象に実態調査を行った。更に3年後39名について追跡調査を実施し, 以下の結果を得た。(1)非積雪期の生活で何等かの訴えを有する者は18%であったが, 積雪期では60%以上の者が訴えを有していた。(2)非積雪期の訴えは夏ばてや付添い者の多忙により通院できない等訴えの内容が多岐にわたっていたが, 積雪期では外出の制限や身体症状の増悪に関することに集中していた。(3)非積雪期での主な外出先は医療機関, 福祉・保健センター, 友人宅, 散歩であり, 積雪期では友人宅や散歩に出かける者が減少する反面, 医療機関や福祉・保健センターに出かける者の数は減少していなかった。寒冷や積雪は対象者の生活に多大な影響を及ぼしているが, 冬の外出は自己の行為に対する意味づけの軽重に規定されると考えられた。
著者
奥田 沙織 宇田川 幸則 姜 東局 瀬戸 裕之 伊藤 浩子 傘谷 祐之 ブィティ マイラン バトボルド アマルサナ 石川 勝 小川 晶露
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

主にアジア諸国において、面接によるインタビュー調査を中心に元留学生への追跡調査を行うことにより、背景の異なる国々からの留学生への、従来の日本の法学教育の効果と限界を究明し、それを明らかにした。その結果に基づき、これまでの日本人だけを対象としてきた日本の法学教育方法に、国境・年齢を超えたグローバルな法学教育を組み込んでゆくための方法論を模索し、発信型法学教育への転換に必要な観点について論じた。
著者
二文字 俊哉 嵯峨 孝 伊藤 伸一 佐藤 孝 大河 正志 丸山 武男 榛葉 實
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LQE, レーザ・量子エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.65, pp.31-36, 2001-05-11

半導体レーザの発振周波数安定化を行う場合、発振スペクトル幅は広がるが半導体レーザの注入電流に直後微小変調を加える方法が一般に用いられてきた。しかし、わずかな発振幅の広がりも応用分野によっては取り除く必要がある。そこで、我々はRb吸収線のファラデー効果を用いて基準周波数に微小変調を加えることで、レーザの発振スペクトル幅を広げることなく安定化する方法を検討してきた。今回は、その微小変調の大きさと発振周波数の安定度の関係を調べ、我々が考案した"PEAK方式"へ応用することを検討したので報告する。
著者
苧阪 良二 伊藤 法瑞 伊藤 元雄 ITO Hozui
出版者
愛知学院大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

1.カウフマン装置(K-1,K-2)と関連器具の製作:単眼視しかできない原型を改良し、大口径レンズによって両眼視のできる比較刺激装置(K-1,K-2)を完成た。併せて既設のガンツフェルト大視野への投映装置、4筒(上下左右)の標準刺激装置、接眼小視野呈示装置、野外実験用人工月提示器具などを製作した。主力となる大型カウフマン装置は口径120mm、焦点距離250mmのレンズを装着し、自動光円提示部を内臓しており、K-1は等視角ステップで10〜85分角の16光円、K-2は等面積ステップで15〜84分角の16光円が逐次呈示できる。また小形ハーフミラーに代えて大型透明ガラス衝立を作った。他に既製の苧阪型(O-2)1mm直径ステップ、22〜103分角を改修した。2.カウフマンらは在来型のボーリング(苧阪)型の測定法を批判しているが、その点を満月を対照に反復実測した。被験者は心理学科の大学生4〜10人で2年間にわたり10回の満月チャンスに測定比較したところ、K-1,K-2の両眼視のため当然カウフマンより異方度が高値でK-1=1.73,K-2=1.63,O-2=1.43であり、KとOの列位相関は0.7以上あった。在来型の測定法も使用可能であることが判った。使用体験しないとわからないが、K型は観測距離は20〜40cmと融通がきくが、いわゆる方向と位置の恒常性に乏しく比較の際の視線の制約が大きかった。3.小室間で人工月(紙)を用いた実験ではカラースライド投映の風景差が認められたが、与えられた風景の中での月の大きさに適応水準があるように思われ、あまりに大きい人工月では過小視が起こった。4.視野の上下に関し、坂道での抑視と俯視では下方の過大視が認められた。またVER(視覚誘発電位)の実験では上より下方に提示した人工月に対してC-II成分に特異生が認められ、月の錯視への関連生は不明であるが、上下方向差があるのは事実である。
著者
伊藤 孝 鈴川 一宏 木村 直人 熊江 隆
出版者
日本体育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

競技能力の向上を図る目的として、運動選手は一週間から一ヶ月にわたる強化合宿を実施している。本研究では、選手の健康管理および傷害発症の予防から、強化合宿時およびその後の回復時における生体の免疫機能の変化、特に好中球の活性酸素種産生能(ROM産生能)について、調査(1);男子長距離選手(n=11)を対象とし、夏季における4回の強化合宿期間中(約40日間)の変化、調査(2);女子長距離選手(n=7)を用い夏季強化合宿中および合宿後の回復時における変化について、それぞれ調査・検討を行った。採血は、早朝空腹時、安静状態にて正中皮静脈より11ml採取した。好中球のROM産生能は、ルシゲニンおよびルミノール依存性化学発光法におけるpeak height(PT;photon/sec)を用いて評価した。調査期間中における血清CPKはいずれも経日的に増加を示し、合宿後には両調査において有意な上昇が見られた。一方、調査(1)における好中球のROM産生能は、経日的に僅かに減少を示したものの、合宿後には逆にルミノール依存性化学発光によるPHは約2.3倍の上昇を示していた。したがって、調査(1)では、合宿中の運動ストレスに対して生体は適応を示していたと考えられる。それに対して調査(2)における好中球のROM産生能は合宿直後においていずれも有意に低下した。この結果から、調査(2)では、運動ストレスによる生体負担が高まり、免疫機能を抑制したと思われる。しかしながら、終了3日後には反対に著しく上昇し、さらに終了20日目においてもこれらの上昇は継続していた。この原因の一つとして生体内における恒常性の保持に、その後の代償的反応が相加的に加わったことがよりいっそう免疫機能を亢進させたものと推察した。
著者
田中 博 山崎 孝治 伊藤 久徳 森 厚 向川 均 山根 省三
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

近年の異常気象や地球温暖化の研究において、北極振動が特に注目されている。初年度の平成18年度には、2006年7月8-9日に第1回北極振動研究集会を筑波大学で開催し、約30名の参加を集めて最新の情報提供や活発な議論が行われた。研究代表者は2007年2月19-20日にアラスカ大学で開催された第7回極域気候変動に関する国際会議(GCCA-7)に主催者のひとりとして参加し、北極振動研究に関するレビュー講演を行った。2007年3月2-3日には筑波大学で第2回北極振動研究会を開催し、約40名の参加者を集めて、研究成果報告と今後の研究計画について議論した。2年目の平成19年度には、5月に開始された地球惑星科学連合大会で「北極域の科学」ユニオンセッションを企画して、研究成果報告を行った。そして日本気象学会の査読付き国際学術誌である気象集誌の12月号に、北極振動研究の成果を集めた「北極振動特集号」を企画し、本研究実績のまとめとして12編の論文およびノートが発刊された。北極振動は、任意の定常外力に共鳴して起こる大気大循環の力学的な特異固有モードとして理解される一方で、それを励起する太平洋と大西洋のストームトラックの活動が互いに独立に大振幅でNAOとNPOのテレコネクションを励起するため、統計的な見かけのモードに見えるという理解に至った。