著者
佐藤 真実 榎波 清美 田畑 聖香 松井 理佳子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】食育に関する意識調査では約三割の人が日本の食文化を受け継いでいないと回答している。本調査では、福井の食文化を守るための基礎調査として年中行事の実施と実施率の変化、行事食の喫食率について明らかにする。<br />【方法】平成28年7月に福井県在住の782人を対象に自記式質問紙法によるアンケート調査を行った(回収率71.6%)。内容は、行事の実施と実施率の変化、行事食の喫食率、後世に残していきたい行事とその理由などである。昭和57年、平成8年、平成18年の行事の実施については、谷ら<sup>1)</sup>の調査結果を用いた。<br />【結果】現在も行事食を喫食している行事は、「正月」(94.9%)、「大晦日」(80.7%)、「クリスマス」(70.3%)、「冬至」(63.1%)、「半夏生」(49.8%)となった。行事の実施率の変化としては、「正月」、「節分」がほぼ横ばい、「七夕」、「お盆」、「秋祭り」、「報恩講」が年々下降した。後世に残していきたい行事としては、「正月」(96.5%)、「大晦日」(82.4%)、「ひな祭り」(63.9%)、「お盆」(60.9%)であった。後世に残していきたい理由としては、「季節が感じられるから」(71.5%)、「日本の伝統だから」(57.0%)が高かった。一方、後世に残さなくていいと考える理由としては、「元々、実施していないから」(34.6%)、「行事を知らないから」(33.2%)であった。とくに子世代では、後世に残していきたい理由として「楽しいから」(55.9%)、残さなくていいと考える理由として「行事を知らないから」が親世代、祖父母世代に比べて有意に高かった。行事食の喫食率は、「冬至のかぼちゃ」、「半夏生の焼き鯖」、「天神講の焼きカレイ」が高くなった。これらの料理は、店で入手しやすく、家庭で作りやすいことから喫食率が高くなったと考えられる。<sup>1)</sup>谷洋子ら:仁愛女子短期大学卒業論文集より
著者
桑野 玲子 佐藤 真理 瀬良 良子
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.219-229, 2010-06-30 (Released:2010-07-02)
参考文献数
12
被引用文献数
17 13

近年都市部で頻発している道路陥没は,多くの場合老朽埋設管の破損部等から土砂が流出することに起因し,社会的損失が大きいにもかかわらず,対症療法的な対策が中心となっているのが現状である。陥没にははっきりした原因が特定できない場合も多いが,現象の解明よりも復旧が急がれるという実務上の要請もあり,陥没を引き起こすような地盤内空洞・ゆるみの生成・進展のメカニズムには不明な点が多い。路面下の地表近傍で顕著な空洞が存在するような陥没寸前の状態においては,地中レーダー探査技術により比較的高い確度で探知可能であるが,空洞が深層部にある場合,空洞・ゆるみの境界が不明瞭な場合,輻輳した地下埋設物と空洞・ゆるみ部が渾然としている場合などは,探知技術の限界により問題箇所の検出が困難な場合が多い。本研究では,地盤陥没を未然に防止するための探査手法を高精度化するために,地盤内空洞・ゆるみの形成過程を明らかにし空洞・ゆるみのパターンを類型化すること,さらに陥没に至る“危険な”空洞・ゆるみを抽出することを目指している。小型及び中型土槽を使用し,底面の開口部から土砂を流出させ模型地盤内に空洞・ゆるみを作製し,そのメカニズムを調べた。また,大型ピット内地盤の模擬空洞・ゆるみの探査実験を行い,空洞周りのゆるみに着目した探査の可能性を検討した。
著者
佐藤 真人
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.251-281, 2015-12-10

近年長引く不況の下、景気回復が課題、又そのための政策が争点となっているが、企業の内部留保の扱いは有効需要の面における一つの焦点である。また企業経営のあり方の面からは、資金が有効に活用されていないのではないか、あるいは株主、被雇用者への報酬は十分かとの問題提起がある。本稿は、このような議論には直接は関らず、ただ戦後日本の内部留保の推移を資本蓄積との関係で観察する。内部留保は資本蓄積と順行しているか、逆行しているか?活発な資本蓄積は、必要な資金を考えると内部留保の余裕をなくす(逆は逆)、即ち両者は逆行との素朴な推論が成り立つ。他方、活発な資本蓄積は結果的に利潤、即ち内部留保の豊かな原資をもたらし、逆に豊かな内部留保は資本蓄積を促す、即ち順行も考えられる。本稿は、これらの仮説を念頭に置きながら統計との整合性を確かめる、あるいは統計間の整合的理解を試みる。観察の結果、企業の資本金規模による違いの大きさ(大、中規模クラス対小規模クラス)、及び資本蓄積との関係については観察する期間の長さによる違いの大きさ(長期における逆行、短期における順行)が明らかになる。
著者
蔡 佩宜 篭橋 一輝 佐藤 真行 植田 和弘
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-12, 2014 (Released:2014-08-01)
参考文献数
30

本研究は、設楽ダムを事例に、公共事業をめぐる関係者間の利害対立の構造を分析し、社会的合意形成を阻害する要因を考察するとともに、全国のダム検証に係る「関係地方公共団体からなる検討の場」の取組みの意義と限界を明らかにすることを目的にしている。本研究では、まずダムの必要性をめぐって開発主体である国や県と反対派住民の主張が対立する中心的論点について、行政が提示した将来の水需要量の数値に問題があることを示した。そして、ダム建設についての利害対立を調整する制度や手段について、設楽ダムのような直轄ダム事業の検証に係る審議会は事業者と関係公共団体が中心に行うのに対して、補助ダム事業の検証は地域ごとに多様な利害関係者と制度設計の下で審議を行うという違いがあり、両者を比較しながら、ダム検証についての現状制度の不十分性を指摘した。
著者
佐藤 真紀子 金子 佳代子 宇高 順子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.555-567, 2014 (Released:2015-01-01)
参考文献数
39

Changes to the description of food and nutrition in home economics textbooks for elementary and junior high schools published in the period from 1947 to 2012 were analyzed. The description of nutrients and their functions changed with advances in the study of food and nutrition. The present textbooks for elementary and junior high schools consistently and systematically describe nutrients and their functions. The description of food groups and daily food guides changed according to the food intake, health and dietary problems of Japanese people. Further development of teaching material and methods is needed. The description of menu planning gradually changed to focus on a nutritionally balanced diet and to emphasize the combination of shushoku (cereals), shusai (protein-rich foods), fukusai (vegetables), milk and milk products, and fruits. Nutritional balance as well as multiple elements are desirable for learning future menu planning.
著者
佐藤 真理子 石田 孝文 岩渕 絵美 岩渕 博史
出版者
日本歯科薬物療法学会
雑誌
歯科薬物療法 (ISSN:02881012)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.9-15, 2020 (Released:2020-05-16)
参考文献数
19

Patient`s with Sjögren’s syndrome(SS)are prone to the development of dental caries as a result of reduced salivary flow. As no studies to date have reported on the association between improved salivary flow in patients with SS and caries prevention, we conducted a retrospective study on the influence of salivary secretion on the number of decayed/missing/filled(DMF)teeth. This study involved a total of 165 patients with a mean observation period of 57.7±8.62 months. The results showed a significant negative correlation between the change in the number of missing teeth from baseline to end point and the mean stimulated whole salivary flow(SWSF), which was based on the mean baseline and end point SWSF(r=−0.155, P=0.047). In addition, an increase in the number of missing teeth in patients with a mean SWSF not exceeding 6 mL/10min was observed compared to patients with a mean SWSF of more than 6 mL/10min. Logistic regression analysis showed SWSF to be a risk factor for increased number of missing teeth(OR=0.905, 95 % CI=0.832–0.985, P=0.021). During the observation period, although SWSF increased between baseline and end point, increase in SWSF did not prevent an increase of DMF. As this study showed that SS patients were susceptible to missing teeth with no clear evidence of reduced number of DMF teeth associated with increased salivation, the results suggest that SS patients require all available caries prevention interventions, including not only salivary secretagogue, but also topical measures such as fluoride, antimicrobials and non-fluoride re-mineralizing agents.
著者
佐藤 真一
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.885, 2019-08-15

説明できる人工知能(Explainable Artificial Intelligence)の研究が盛んにおこなわれているが,現在成功を収めている人工知能技術は,そもそも説明をあきらめて入力と出力だけを学習データとして与えてシステムに学習させることにより実現されているため,その動作の説明はきわめて難しい.画像認識を例にとり,この問題について考えてみる.
著者
大山 敬三 神門 典子 佐藤 真一 加藤 弘之 日高 宗一郎
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
no.12, pp.111-120, 2000-03
被引用文献数
1

学術情報センターで開発中のオンラインジャーナル編集・出版システムは,学協会や大学が刊行する学術雑誌の執筆・編集・出版のすべての工程を電子化・オンライン化し,学術研究成果の流通を効率化するものである.学協会が運用して編集に利用するインハウスシステムは多様な編集部体制や文書形式に対応できる設計となっている.学術情報センターが運用してオンライン出版に用いるシステムは強力な検索能力を持ち,多数の購読者支援機能を提供する.本稿では,このシステムについて,著者,編集担当者,購読者などの視点からの機能や利用方法を説明し,学協会における活用方法を紹介している.
著者
佐藤 真 森 泰丈 岡 雄一郎 猪口 徳一
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

実験を進めるに従い、予想外であったが「マイクログリアの活性化状態には3つ以上のフェーズが存在する」ことを支持する結果を得た。アルギニンメチル化酵素がこの活性状態の遷移に本質的な役割をになうことを、CRISPR/Casのシステムをマイクログリア由来の細胞株に適用することで検証した。同時にPTSDの病態の脳内回路を解明するため、島皮質から前帯状回に投射しPTSDの病態に重要であるとヒトでの所見より想定されるが、高等哺乳類の脳にのみ存在するため実験的アプローチが困難とされていたvon Economo細胞の類似細胞が発現マーカーの検討により、げっ歯類島皮質にわずかであるが存在することを観察した。
著者
板庇 外茂雄 山本 理恵子 佐藤 真澄
出版者
Japanese Society of Veterinary Science
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.p585-592, 1987-08

Fusobacterium necrophorum培養菌液を8〜14ヶ月令のHolstein牛8頭の肝内門脈に, 超音波映像下穿刺法によって, 経皮・経肝的に接種した。3頭は菌接種後2〜14日で死亡し, 肝に壊死巣が密発していた。他の5頭では, 接種後12〜126日の剖検時に1〜20個の肝膿瘍がみられた。急性期死亡牛では, 接種後2〜6日で肝壊死巣に対応する高エコー斑塊が認められた。肝膿瘍形成牛では, 接種後5〜10日に肝画像に膿瘍所見がみられ, 壊死塊に対応する高エコー塊を囲んで肉芽組織に対応する低エコー量 (ハロー) が認められた。このハローパターンは直径約1cmの小さい膿瘍でも確認でき, 一部の例では, 中心の高エコー塊はしだいに消失し, 肉芽組織と被膜 (等または低エコー) のみの残存に対応する単純な低エコー球となり, 接種後50〜70日では瘢痕 (等または低エコー) 形成に対応して画像中に指摘できなくなった。ハローパターンのまま側方陰影を伴って長く残存する例もあり, 低エコーパターンを示す膿汁は無エコーパターンとはならなかった。
著者
佐藤 真実
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.89, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 日本の食生活が洋風化し、食料自給率、食品群別摂取量、家計支出は年々変化している。本研究では、消費に関わる食品や料理の嗜好度について性別、年齢、世帯構成別に違いを明らかにする。また1975年からの食嗜好の変遷について明らかにする。  方法 平成26年7月より県内の10歳代から80歳代までの男女1650名を対象にアンケート調査を行った(有効回答率89.1%)。調査項目は、119食品の料理や食品の嗜好度と摂取頻度、属性(性別、年齢、世帯構成)などについてである。嗜好度は9段階(1:もっとも嫌い~9:もっとも好き)の尺度を用いた。  結果 全体では、ごはん(7.47)、焼肉(7.27)、味噌汁(7.25)、みかん(7.23)などの嗜好度が高く、これらの料理や食品は性別、年齢別、世帯構成別で有意差が認められなかった。性別では、男性がラーメン(7.31)、刺身(7.31)、そば(7.07)、焼き魚(7.03)などの麺類、肉・魚料理で嗜好度が高かった。年齢別では、若年層の嗜好度が全体的に高く、とくにアイスクリーム(7.47)、鶏のから揚げ(7.44)などで嗜好度が高かった。年齢が高くなるほど焼き魚、野菜煮物、コーヒーなどの嗜好度が高くなった。世帯構成別では、一人暮らしの嗜好度が全体的に低かった(いずれも有意水準5%以下)。1975年と比較して、肉料理や魚料理の嗜好度はやや上昇、果物、嗜好飲料の嗜好度は減少傾向であった。平均嗜好度はどれも「少し好き」な状況であり、かつてのような料理や食品ごとの嗜好度の差は小さかった。
著者
佐藤 真実 村上 亜由美 岸松 静代 谷 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.159, 2005

<br>【目的】福井県における魚介類の利用状況と調理について調査を行い,とくに県内で使用される地方独特の魚の種類や行事などに利用する魚の調理方法について明らかにすることを試みた。<BR>【方法】越前(海岸部,主に漁業)10名,奥越(山間部,主に農業)10名,坂井(海に面した平野部,農業と漁業)11名,福井(地方都市)12名,嶺南(海岸部,漁業と商業)9名の5地域,計52名の20歳代から70歳代の居住者を対象に,アンケート調査及び聞き取り調査を行った。とくに地方独特の魚の種類や調理方法についてまとめ,写真撮影を行った。<BR>【結果】福井県で食べられる地方独特の魚の種類としては,みずべこ,がまえび,みずだこ,せいこがになどがある。みずべこはかに漁の底引き網にかかる深海魚であるが,吸い物や味噌汁に,がまえびは味が甘えびに類似しており刺身やフライに,みずだこは刺身に,せいこがにはゆでて卵やかにみそをそのまま食べる。行事などで食べられる地方独特の調理法としては,まさばの丸焼き(越前や嶺南では浜焼き鯖,奥越では半夏生の鯖と呼ばれる),へしこ(さばやいわしの糠漬け),まがれいの塩焼き(天神講に食べられる),身欠きにしんの昆布巻き(正月,盆,祭りに食べられる),にしんの麹漬け(12月から正月にかけて食べられる),だだみ(たらの精巣)の味噌汁,かつお節をもりつける雑煮などがみられた。
著者
内田 直希 東 龍介 石上 朗 岡田 知己 高木 涼太 豊国 源知 海野 徳仁 太田 雄策 佐藤 真樹子 鈴木 秀市 高橋 秀暢 立岩 和也 趙 大鵬 中山 貴史 長谷川 昭 日野 亮太 平原 聡 松澤 暢 吉田 圭佑
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

沈み込み帯研究のフロンティアである前弧の海域下において,防災科学技術研究所は新たに日本海溝海底地震津波観測網(S-net)を構築した.S-netは東北日本の太平洋側の海岸から約200kmの範囲を海溝直交方向に約30km,海溝平行方向に50-60km間隔でカバーする150点の海底観測点からなり,その速度と加速度の連続データが,2018年10月より2016年8月に遡って公開された.観測空白域に設置されたこの観測網は,沈み込み帯の構造およびダイナミクスの解明に風穴をあける可能性がある.本発表ではこの新しいデータを用いた最初の研究を紹介する.まず,海底の速度計・加速度計の3軸の方向を,加速度計による重力加速度および遠地地震波形の振動軌跡を用いて推定した.その結果,2つの地震に伴って1°以上のケーブル軸周りの回転が推定されたが,それ以外には大きな時間変化は見られないことがわかった.また,センサーの方位は,5-10°の精度で推定できた.さらに得られた軸方向を用い,東西・南北・上下方向の波形を作成した(高木・他,本大会).海底観測に基づく震源決定で重要となる浅部の堆積層についての研究では,PS変換波を用いた推定により,ほとんどの観測点で,350-400mの厚さに相当する1.3 – 1.4 秒のPS-P 時間が観測された.ただし,千島-日本海溝の会合部海側と根室沖の海溝陸側では,さらに堆積層が厚い可能性がある(東・他,本大会).また,雑微動を用いた相関解析でも10秒以下の周期で1.5 km/s と0.3 km/sの2つの群速度で伝播するレイリー波が見られ,それぞれ堆積層と海水層にエネルギーを持つモードと推定された(高木・他,本大会).さらに,近地地震波形の読み取りによっても,堆積層およびプレート構造の影響を明らかにすることができた.1次元および3次元速度構造から期待される走時との比較により,それぞれ陸域の地震の海溝海側での観測で3秒程度(岡田・他,本大会),海域の地震で場所により2秒程度(豊国・他,本大会)の走時残差が見られた.これらは,震源決定や地震波トモグラフィーの際の観測点補正などとして用いることができる(岡田・他,本大会; 豊国・他,本大会).もう少し深い上盤の速度構造もS-netのデータにより明らかとなった.遠地地震の表面波の到達時間の差を用いた位相速度推定では,20-50sの周期について3.6-3.9km/sの位相速度を得ることができた.これはRayleigh波の位相速度として妥当な値である.また,得られた位相速度の空間分布は,宮城県・福島県沖の領域で周りに比べて高速度を示した(石上・高木,本大会).この高速度は,S-netを用いた近地地震の地震波トモグラフィーからも推定されている.また,このトモグラフィーでは,S-netの利用により海溝に近い場所までの速度構造がよく求まることが示された(豊国・他,本大会).雑微動解析によっても,周期30秒程度の長周期まで観測点間を伝播するレイリー波およびラブ波を抽出することができた.これらも地殻構造の推定に用いることができる(高木・他,本大会).また,海域の前弧上盤の構造についてはS-net 観測点を用いたS波スプリッティング解析によって速度異方性の特徴が明らかになった.プレート境界地震を用いた解析から,速いS波の振動方向は,海溝と平行な方向を向く傾向があり,マントルウエッジの鉱物の選択配向や上盤地殻のクラックの向きを表している可能性がある(内田・他,本大会).プレート境界においては,繰り返し地震がS-net速度波形によっても抽出できることが示された.プレート境界でのスロースリップの検出やプレート境界の位置推定に役立つ可能性がある(内田・他,本大会).さらに,S-net加速度計のデータの中には,潮汐と思われる変動が観測されるものもあり,プレート境界におけるスロースリップによる傾斜変動を捉えられる可能性があるかもしれない(高木・他,本大会).以上のように,東北日本の前弧海洋底における連続観測について,そのデータの特性が明らかになるとともに,浅部から深部にわたる沈み込み帯の構造や変動についての新たな知見が得られつつある.これらの研究は技術的にも内容的にもお互いに密接に関わっており,総合的な解析の推進がさらなるデータ活用につながると考えられる. 謝辞:S-netの構築・データ蓄積および公開に携わられた皆様に感謝いたします.
著者
井手 一郎 木下 智義 高橋 友和 孟 洋 片山 紀生 佐藤 真一 村瀬 洋
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.282-292, 2008
被引用文献数
9 2

Recent increase of digital storage capacity has enabled the creation of large-scale on-line broadcast video archives. In order to make full use of the data in the archive, it is necessary to let a user easily grasp the availability of certain video data and their contents. Considering this problem, we have been investigating efficient and effective retrieval and reusing methodologies of archived video data. The archive used as a test-bed consists of more than 1,000 hours of news video obtained from a Japanese news program during the past six years. This paper first proposes a news topic tracking and structuring method. A structure called the `topic thread structure', is organized so that it should represent the temporal flow of news topics originating from a specified news story. The paper next introduces a browsing and editing interface that enables the user to browse through news stories along the topic thread structure, and also assists the compilation of selected news stories as a customized video summary or a documentary. The method was applied to the archived news video data in order to observe the quality of the topic thread structure and the usability of the prototype interface. As a result, some structures represented the flow of topics quite close to real-world comprehension. In addition, experiments showed that when the structure could be considered meaningful, the interface combined with the structure could drastically reduce the time needed to browse through the archive for news stories related to the user's interest.
著者
佐藤 真吾
出版者
日本信頼性学会
雑誌
信頼性シンポジウム発表報文集
巻号頁・発行日
vol.13, pp.31-34, 2000

半導体製品の評価試験の一つにESD耐性試験があり、そのうちの最も標準的に行なわれているものがHuman Body Model (HBM)試験である。このHBM試験では、ESD印加後、デバイス破壊判定を行なうが、この破壊判定において、その従来の方法では充分に検知できない破壊の事例を最近の試験でいくつか経験した。そうした問題に対応する有効な判定方法・条件の改善を実施すると同時に、さらに、従来のDC測定による方法に加えて、製品機能試験を効果的に併用することで、破壊の見逃しのリスクを最小限にする、より正確かつ効率的な判定方法を提案・実施した。
著者
櫻田 弘治 浦川 宰 小澤 亜紀子 佐藤 真治 澤 貴広 牧田 茂 間嶋 満 許 俊鋭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.434, 2003

<B>【はじめに】</B>現在、心臓外科術後症例に対する心臓リハビリテーションの有効性は明らかなものである。心臓外科術後早期の短期間での効果も、我々の研究結果において明らかにされている。しかし、この中には改善のみられなかった症例も存在することは事実である。今回、心臓外科術後早期の短期入院での運動療法によって、運動耐容能に改善のみられなかった症例について、その要因を検討した。<B>【対象】</B>2001年9月から2002年9月に当院心臓血管外科にて胸部正中切開による手術後、リハビリテーションを施行した患者のうち、早期離床を目的とした病棟内理学療法施行後、リハビリテーション科での短期入院による運動療法を施行した症例28例(男性:25名・女性:3名、平均年齢63.1±11歳)を対象とした。リハビリテーション科での運動療法は心肺運動負荷試験(CPX)の結果より嫌気性代謝閾値(AT)を決定し、その結果をもとに自転車こぎをおこなった。開始時期は、術後平均病日11.7±4.3、運動療法期間は10.9±4日であった。手術様式別は冠動脈バイパス術14例、弁置換・弁形成術9例、冠動脈バイパス+弁置換術5例であった。尚、術後運動器疾患を合併症した症例は除外した。<B>【方法】</B>運動療法実施後のPeak VOH<SUB>2</SUB>が改善した群(22例)、しなかった群(8例)の2群間において、術前左室駆出率(LVEF)・手術侵襲(手術時間)・術後臥床期間を対応なしのt検定を用いて検討した。<B>【結果】</B>改善した群・しなかった群でのPeak V(dot)O<SUB>2</SUB>は、それぞれ運動療法前:12.3±2.6・12.2/2.2ml/kg/min、運動療法後15.2±3.2・11.5±2.5 ml/kg/minであった。改善した群・しなかった群での、術前左室駆出率(LVEF)は各々、57.4±13.9・63.3±14%、術後臥床期間は2.5±0.7・3.0±0.6日で有意な差はみられなかった。しかし、手術時間は改善した群で263.5±83min、改善しなかった群で344.7±66.9minと有意差が認められた。<B>【考察】</B>心臓血管外科手術は血行動態や心筋虚血の改善、運動能力の向上を目的として行われるが、全症例が同様に改善するわけではない。今回、心臓外科術後約11病日より自転車エルゴメータによる、約10日間の運動療法施行症例中で、運動耐容能が改善しなかった群では、手術時間が長かったことによる、心筋自体の回復、および全身状態安定の遅延が運動耐容能が改善しなかった大きな要因であると考える。<B>【結語】</B>心臓外科術後早期、約11病日より開始した、約10日間の運動療法を施行しても、改善がみられなかった症例の原因としては、手術時間が長いことであった。