著者
佐藤 真彦 坂井 孝成 祢津 晋久 黒本 暁人 菅野 秀典 沼畑 健司 星 宣次
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.64-68, 2017-04-20 (Released:2018-04-19)
参考文献数
9

(目的)当院で後腹膜脂肪肉腫に対して手術を施行した症例についてレトロスペクティブに検討したので報告する.(対象と方法)2002年2月から2015年8月までに当院で後腹膜腫瘍脂肪肉腫に対して切除術を施行した症例について検討した.症例は全部で15症例,平均観察期間は46.7カ月(1~126カ月)であった.(結果)男性7例,女性8例であり性差は認めなかった.年齢の中央値は67歳であった(33~78歳).腫瘍長径の中央値は24cmであり(7.5~45cm),腫瘍重量の中央値は1,959gであった(545~15,400g).初回手術で腫瘍が残存した症例は1例,断端陽性であった患者は2例であった.全症例における5年生存率は67%,10年生存率は50%であった.初回手術で腫瘍が残存もしくは切除断端陽性であった場合は完全切除の場合と比べて生存率に有意差を認めた.また切除断端陽性の場合は完全切除の場合と比べて無再発生存率に有意差を認めた.臓器合併切除の有無による生存率や無再発生存率には有意差を認めなかった.(結論)脂肪肉腫は高率に再発する疾患であり初回手術での完全切除が必要である.
著者
青島 一平 内田 圭 丑丸 敦史 佐藤 真行
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.238-249, 2017-07-31 (Released:2017-07-31)
参考文献数
36

都市緑地は都市域における重要な生態系サービス源であり,都市住民の生活満足にも貢献している。しかしながら,都市部における人口増加に伴って,緑地が提供する生態系サービスが十分に考慮されずに都市開発が進められている。都市部の緑地が軽視されてしまう理由として,生態系サービスが可視化されていないことが挙げられる。市街地に点在する都市緑地が果たす役割は生態系サービスの中でも文化的サービスによるところが大きく,その価値は一般的な市場では取引できない性質のものである。本研究では,こうした非市場価値を貨幣評価するためにLife Satisfaction Approach(LSA)を適用する。この手法を用いることで,人々の主観的な生活満足度が緑地から受けている影響を貨幣単位で評価し,それを緑地の価値として認識することができる。本研究は兵庫県の六甲山系を含む阪神間地域を事例に,GIS(地理情報システム)を利用して地理データを独自に構築した。都市緑地については学校林,社寺林,公園緑地を特定した。その上で,同地域で社会調査を実施し,それらデータを合成して緑地の価値評価を行った。その結果,生活満足度をベースにしたときに,都市緑地は森林の6倍程度の価値を有することが示された。さらに本研究では心理学分野で使われるK6指標を採用することで,緑地が近隣住民の精神的健全性に与える影響についても分析した。結果として,都市緑被率の高いところに居住する人ほど,精神的健全性が良好な状態にある傾向を示した。さらに都市緑地の中でも社寺林が精神的健全性に与える影響が顕著であることを示した。本研究では,LSAを適用して森林と都市緑地の価値を区別して推定した。それによって都市緑地は近隣住民の主観的福利に大きく貢献していることが明らかとなり,主観的福利の観点から都市緑地の評価を行う必要性が示された。一方で森林については,LSAでは価値の過小評価につながってしまう可能性が示唆された。
著者
関澤 春仁 佐藤 真理 相原 隆志 村上 敏文 八戸 真弓 濱松 潮香
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.129-135, 2016-03-15 (Released:2016-03-15)
参考文献数
18
被引用文献数
5

カキのへたを経由した放射性セシウムの移行を明らかにするため,生育中のカキのへたに可溶性の137Csを含む水を添加し,収穫した果実の137Csを測定した。その結果,137Csを含む水を処理した果実の果肉中の137Cs濃度は無処理区よりも高く,また,生育前半期に果実内へ移行した137Csは,収穫期まで果実内に維持されていたことが明らかとなった。これらの結果から,生育期間中にへたに付着した可溶性の137Csは果実内に移行し蓄積することが示唆された。
著者
中野 浩司 佐藤 真弘 津田 綾子 關谷 悠 森 勝伸 板橋 英之
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.829-837, 2010 (Released:2010-11-11)
参考文献数
39
被引用文献数
3 6 3

The speciations of heavy metals (Cu, Zn, Pb, Cd and Cr) in bottom sediment soils collected from Kusaki dam-lake in Gunma Prefecture were considered to be in the solubility with the type of ligands, by a sequential extraction procedure with five fractionations. Through these procedures, a large amount of Cu in Kusaki dam-lake sediment was in a fraction bound to organic matter ; those of Zn and Pb were in an oxide fraction bound to iron and manganese oxides, and those of Cd and Cr were in the exchangeable fraction and in the residual fraction, respectively. The composition of species in a heavy metal was almost the same without any regard to the collection periods for two and a half years, the particle size of the sediment soils and the collection points. The total concentrations of heavy metals in the sediment soil at Kusaki dam-lake was still high at this stage, compared with those at Kanto loam and Black soil (Kurobokudo). From the distributions of each fraction for analyte heavy metals, the ratios of heavy metals with long-term leaching were estimated.
著者
田中雄一郎 笹河良介 佐藤真平 吉瀬謙二
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB)
巻号頁・発行日
vol.2013-EMB-28, no.26, pp.1-6, 2013-03-06

近年では,ソフトプロセッサがFPGAを使用するシステムにおいて一般的なコンポーネントとなっており,制御やデータ処理などの幅広い機能を実現するために使用されている.小型デバイスにおいてハードウェア容量は限られており,多機能・高性能化においてその容量制限が障害となる.ゆえに,小さいソフトプロセッサの開発が重要である.このようなソフトプロセッサの既存研究に,Supersmall Soft Processorが存在する.本研究ではSupersmall Soft Processorを元に使用面積の削減,並びに性能向上を目指すUltrasmall Soft Processorを提案する.Supersmall Soft Processorに対し,主要データパスの2ビット化,状態遷移の最適化,マルチプレクサの入力ロジックを含む最適化を施す.その結果,Virtex-7においてハードウェア量の削減を達成し,1.88倍のIPCを実現した.また,Ultrasmall Soft Processorの応用としてメニーコア化を検討する.
著者
大平 哲也 服部 司 佐藤 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.293, pp.9-14, 2009-11-12

サイバーエージェントが展開する「Ameba」は650万人の会員ユーザーを集めるブログを中心とした国内最大規模のインターネットサービスであるが、ユーザー数に比例して日々蓄積されるデータがブログ記事のテキストデータで30GB/月(2009/10月現在)を超える膨大なものになっている一方、社内でのデータ解析やその再利用が遅れていた。対策の一環として、2009年1月に研究開発を行う組織(インキュベーションラボラトリー)を新設し、社内に蓄えられた膨大なデータの解析と、解析結果を基にしたコンセプトアプリの開発ならびに現場への応用を進めている。その一例として、ブログサービス内でのトレンドワードの解析を実施している「Keyword Tracker」と、汎用的なspamフィルタリングプラットフォームとして構築を進めている「spamフィルターAPI」について、採用している技術的なアプローチの紹介とデータを解析してみて得られた結果ならびに知見の報告を行う。
著者
馬場口 登 栄藤 稔 佐藤 真一 安達 淳 阿久津 明人 有木 康雄 越後 富夫 柴田 正啓 全 柄東 中村 裕一 美濃 導彦 松山 隆司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.155, pp.69-74, 2002-06-20
被引用文献数
35

電子情報通信学会パターン認識・メディア理解研究会の下で検討,作成した映像処理評価用映像データベース(VDB:Video Data Base)について述べる.このデータベースは編集効果(シーン切替),カメラワーク,テロップの出現,音声品質という点においてテレビ放送に匹敵する品質の素材映像をもち,ニュース,ドラマ,ドキュメンタリー,情報番組(料理,観光)などのジャンルの映像からなる.また,ショット境界やシナリオ情報をMPEG7形式のメタデータとして付与している.各種の映像処理アルゴリズムを比較評価するためのベンチマークデータとして利用されることが期待される.
著者
佐藤 真 田中 克明 赤石 美奈 堀 浩一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.159, pp.19-23, 2007-07-17

蓄積された電子文書を活用するために,物語構造モデルに基づき,複数の文書にまたがる話題の連鎖を抽出し,情報にアクセスする手法を提案する.ある話題を含有する場面を表す特徴量として共起依存度行列と吸引力ベクトルを定義する.これに基づき場面間の類似度を求め,これに場面の連鎖関係を抽出する.検索語間の場面連鎖関係を探すことで,場面連鎖の組み合わせを検索結果の候補として提示する.
著者
山下 絢也 佐藤 真奈美
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.76, no.665, pp.595-600, 2011-07-30 (Released:2011-11-17)
参考文献数
14

Many residences with high thermal performance are equipped with sensible-heat type heating equipment that generates no moisture. To preserve air quality, therefore, such residences require ventilation at scheduled intervals, resulting in the problem of dry room interiors. Humidifiers used for simple hygrothermal regulation require approximately 150 W of electricity, encouraging additional energy consumption. In this study, we simulated a hygrothermal distribution that does not consume energy, using moisture generated by drying wet laundry in a room. There was no damage due to condensation formed on windows or other moisture condensation in the room next to the heated room.
著者
高橋 淑郎 中島 範昭 佐藤 真実 藤盛 啓成 石田 孝宣
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.203-208, 2019 (Released:2020-02-21)
参考文献数
45

近年,世界的に甲状腺微小乳頭癌に対する過剰診断・過剰治療が問題視されている。欧米のガイドラインでは過剰診断にならないよう1cm以下の結節に対するFNAを推奨しない方向に進んでいるが,我が国では世界に先駆けて微小癌に対する非手術・経過観察(active surveillance)の前向き試験が行われ,この結果,本邦のガイドラインでは微小癌に対するactive surveillanceが認められるようになった。本邦からの微小癌に対するactive surveillanceのエビデンス発信により,諸外国でもactive surveillanceが受け入れられつつあるようであるが,微小癌の治療選択を標準化するために克服しなければならない課題は残っており,そのためには我が国だけでなく諸外国からのエビデンスの蓄積,医療者および一般社会への教育,啓蒙も必要である。
著者
佐藤 真央 長嶋 祐成 日比野 友亮
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.21-039, (Released:2022-04-28)
参考文献数
30

A specimen (39.1 mm standard length) of the genus Ostorhinchus Lacepède, 1802, collected from Ishigaki-jima Island, the Ryukyu Archipelago, southern Japan, was identified as Ostorhinchus hartzfeldii (Bleeker, 1852). The specimen showed characteristic coloration of the species, including the following features: four slightly wavy longitudinal silver lines on the head and body, the dorsalmost running along the dorsal body margin to the caudal fin base, and the others terminating on the trunk or caudal peduncle; the entire body base color brown; all fins slightly reddish, transparent; a dark spot on the caudal fin base, of similar size to the pupil. Ostorhinchus hartzfeldii is similar to Ostorhinchus cookii (Macleay, 1881), Ostorhinchus nigrofasciatus (Lachner, 1953), and Ostorhinchus taeniophorus (Regan, 1908), but differs from them by having only the dorsalmost longitudinal silver line reaching the caudal fin base (vs. three or four lines reaching the fin base in the other three species) and absence of a longitudinal silver line on the ventrolateral aspect of the trunk (vs. present). Ostorhinchus hartzfeldii is distributed in the western Pacific, from the South China Sea to Australia, but had not previously been recorded from Japanese waters. A photographic record of the species from Ishigaki-jima Island is also included. The new standard Japanese name “Sazanami-ishimochi” is proposed, a reference to the slightly wavy silver lines that disappear with growth, based on the specimen collected from Ishigaki-jima Island.
著者
佐藤 真
出版者
市立大町山岳博物館
雑誌
市立大町山岳博物館研究紀要 (ISSN:24239305)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.71-74, 2016 (Released:2020-10-01)

市立大町山岳博物館付属園では2005年よりキジ(Phasianus versicolor)の飼育を行っている. 本稿では, 性成熟後のメスにおいてオスの形態的・生態的特徴を呈することを雄変と定義し, 当館付属園の飼育下個体における雄変の報告及びその原因と雄変の適応的意義について考察した. 当館付属園では, 主に雌雄同居の平飼いを行っており, これまでに計13羽を飼育し, 自然繁殖によって第2世代までみている. 2014年7月16日に雌雄ペアで飼育していたメス個体の頭部にオス特有の羽装色が見られた. また, 同個体は2013年まで放卵を行っていたが, 2014年以降には放卵は行っていない. 雄変の原因として, 先天性である遺伝子疾患や発現異常なども考えられるが, 少なくとも当館付属園の飼育個体においては, 野生由来の卵から孵化し産卵経験もあるため, 老齢化によって内分泌系やホルモン機能環に異常が生じた可能性が最も高い.
著者
中里 道子 児玉 和宏 佐藤 甫夫 佐藤 真理 宮本 茂樹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1237-1239, 1997-11-15

インスリン依存型糖尿病(Insulin-dependent diabetes mellitus;IDDM)は,血糖値測定,インスリン自己注射,食事療法など,長期にわたる身体管理を要する慢性疾患である。ケトアシドーシスや低血糖などの急性合併症,網膜症,腎症などの慢性合併症を予防するためには,厳格な血糖値コントロールが必要とされる。 IDDMに精神障害を伴う場合,精神症状の管理が身体合併症の予防や長期的な予後にとって,極めて重要である。精神障害を伴ったIDDMに関する報告は少なく,精神分裂病の合併は極めてまれであると言われている。近年,幻覚・妄想を伴ったIDDMの2症例を経験した。この2症例では,小児科,精神科の協力体制が治療上有効であり,精神症状が著明に改善し,血糖値のコントロールも安定し,糖尿病の長期予後も良好に保たれている。
著者
中川 忠宣 佐藤 真由美
出版者
大分大学高等教育開発センター
雑誌
大分大学高等教育開発センター紀要 (ISSN:18842682)
巻号頁・発行日
no.7, pp.95-109, 2015-03

大分大学高等教育開発センター主催の本講演会は、「協育」ネットワーク推進事業の一環として開催され、学生の教養としての学びを深めるとともに、地域でのボランティア活動として大切にされている「読み聞かせ」などの読書支援ボランティアについての意識の醸成を目的としています。今回は、長年にわたり、本と人をつなぐ仕事をされてこられた川島久美子氏に、昨年度、本学においでいただいた『童話作家あまんきみこ氏』の魅力や作品を友人の立場から語っていただき、また、東北の方言による「語り」の実演を交え、「語りと絵本の世界」のご講話をお願いしました。講演会終了後、同じ講演を聞いた者同志、読書支援に関わることにおいての喜びや悩みなどを語り合い、横の繋がりをつくりながら、これからの活動に役立てていただければと願って、前回同様、交流会を企画しました。
著者
木幡 大河 佐藤 真里 菅原 布美 佐々木 聡也 八木 一正 菊池 新司
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.61-62, 2010 (Released:2018-04-07)
参考文献数
1
被引用文献数
1

本研究では、独自の粉塵爆発装置を作成して、生徒が視覚的に捉えやすい「粉塵爆発」の教室規模での教材化を試みる。粉塵爆発が起こりやすい条件を研究するとともに日常で爆発が起こり得る可能性も示し、生徒の防災の意識を高めることも目指したい。
著者
佐藤 真由美 森 忍 吉塚 直伸 武馬 吉則
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.125-130, 2004-06-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
8

女性の顔の形状に関しての美意識は高く, 形状を形づくるものとしては骨格や筋肉, 皮下脂肪が関わっていると考えられる。そこでわれわれは, MRI法 (核磁気共鳴映像法) を用いて女性の顔面における皮下脂肪を計測し, 皮下脂肪の分布と体型との関係について実態解析を行ったので報告する。健常女性38名を, 痩身体型10名・正常体型18名・肥満体型10名に分け, 頭部MRI撮影を行った。撮影条件は, 脂肪を映すのに適したT1強調で撮影した。MRI画像の顔面皮下脂肪面積は, 肥満体型, 正常体型, 痩身体型の順で多かった。さらに, 顔面45ヵ所の皮下脂肪厚を計測した結果, 頬部の鼻側は体型にかかわらず皮下脂肪量が多い部位であったが, 咬筋部と下顎骨部周辺の皮下脂肪量はBMI (Body Mass Index) が高くなるに伴い増大した。すなわち, 体型にかかわらず皮下脂肪が存在する部位と, BMIの増加に伴い蓄積していく部位があることが示唆された。
著者
佐藤 真理子 熊谷 伸子 小出 治都子
出版者
ファッションビジネス学会
雑誌
ファッションビジネス学会論文誌 (ISSN:13489909)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.11-20, 2016-03

袴は、腹部と胸l部を覆い紐で腰に結びつける形の和服の一種で、日本書紀にも記載のある本邦の伝統的民族衣装である。本研究では、袴の再評価と新たな展開を目指し、市場の現状調査、マンガ分析、機能性検討を行った。市場調査の結果、現代の袴に包含される衣服は多岐にわたり、その着用目的も異なるため、分類・定義確認と、各々の流通構造の明確化を要する現状が示された。マンガ分析においては、袴着装キャラクターの登場するマンガは一定数刊行されており、主なキャラクターは「武士・侍」と「学生」であった。現代の若者の袴着装シーンでは、日本の伝統文化の再認識につながる表現がなされていた。機能性検討の結果、温熱的快適性・姿勢保持性・下肢の自由度において、袴は高い機能性を持つことが明らかとなった。和装の主流たる着物(長着)が、その着装法から、ハレの場のみの限定的な衣服、日常生活から乖離した存在となっている現在、袴は、日常着にもなり得る機能性と快適性を備え、伝統文化の継承者、クールジャパンのアイコン、新しい和のモードとしての可能性を有することが示された。
著者
若井 明彦 佐藤 真吾 三辻 和弥 森 友宏 風間 基樹 古関 潤一
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.79-90, 2012 (Released:2012-03-28)
参考文献数
9
被引用文献数
5 7

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震,およびそれに伴う余震によって,東北地方は甚大な被害を受けた。本稿では,宮城県仙台市周辺の丘陵地におけるいくつかの造成宅地の被害状況について,JGS東北支部・関東支部合同第一次調査団が実施した調査結果をまとめる。まず,これまで仙台市内に造成されてきた宅地群の分布や造成年代を俯瞰し,既往の地震での被害有無との相関性や現象把握の留意点を整理する。続いて,今回の地震で深刻な被害を受けた4つの造成宅地の被災事例を順に報告する。一連の事例紹介に先立ち,1978年宮城県沖地震による同様な宅地被害の後に復旧および地すべり対策工のなされた仙台市太白区緑ヶ丘3丁目地区を取り上げ,同対策工特に地すべり抑止杭の存在と今回の被害箇所との関係について検討するとともに,今後の造成宅地の耐震性向上のための技術上の教訓を取りまとめる。