著者
小野 貴大 飯澤 勇信 阿部 善也 中井 泉 寺田 靖子 佐藤 志彦 末木 啓介 足立 光司 五十嵐 康人
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.251-261, 2017-04-05 (Released:2017-05-13)
参考文献数
15
被引用文献数
11 32

2011年3月の福島第一原発事故により,1号機由来の放射性物質が飛来したと考えられる原発北西地域の土壌から,強放射性の粒子を7点分離した.分離された粒子は100 μm前後の大きさで歪いびつな形状のものが多く,2号機から放出されたとされる直径数μmの球形粒子(Csボール)とは明らかに異なる物理性状を有していた.これらの粒子に対して,大型放射光施設SPring-8において放射光マイクロビームX線を用いた蛍光X線分析,X線吸収端近傍構造分析,X線回折分析を非破壊で適用し,詳細な化学性状を解明した.1号機由来の粒子はCsボールに比べて含有する重金属の種類に富み,特にSrやBaといった還元雰囲気で揮発性が高くなる元素が特徴的に検出され,粒子内で明確な元素分布の不均一性が見られた.粒子本体はCsボールと同様にケイ酸塩ガラスであったが,Feなど一部の金属元素が濃集した数μm程度の結晶性物質を含有していた.これらの粒子は3月12~13日に大気中に放出されたものであると考えられ,核燃料と格納容器との熔よう融がかなり早い段階で進行していたことが示唆された.さらに放出源の推定において,放射性物質自体の化学組成情報が放射能比に代わる新たな指標となることが実証された.
著者
二橋 文哉 北原 佳泰 村上 有里奈 岸本 祐太郎 青野 祐也 永福 建 右藤 智啓 佐藤 潤 妹川 史朗 須田 隆文
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1_2, pp.81-84, 2018-10-25 (Released:2019-04-02)
参考文献数
14

呼吸不全を呈した加湿器肺3例の臨床像について後方視的検討をおこなった.全例新規に購入したしずく型の超音波式加湿器を,水を交換せずに注ぎ足して使用し,使用開始後3 ヶ月以内に発症していた.初診時のPaO2/FiO2の中央値は164(104-293)であり,1例で非侵襲的陽圧換気,1例でhigh flow nasal cannula,1例は通常の経鼻カヌラを使用した.胸部CTで,小葉中心性粒状影が主体であった例は無く,浸潤影,すりガラス影が混在し,器質化肺炎との鑑別を要するパターンが認められた.加湿器の使用中止とステロイド投与で全例改善した.加湿器の水のβ-Dグルカンとエンドトキシンはいずれも高値であり,加湿器の水の培養でグラム陰性桿菌,真菌や非結核性抗酸菌(Mycobacterium gordonae)が検出され,病態への関与が推察された.急性~亜急性経過の間質性肺炎の診断において,冬季には,加湿器肺も念頭においた詳細な問診が必要である.
著者
佐藤 翔 楠本 千紘 服部 亮 大菅 真季 浅井 理沙 河野 真央 久山 寮納
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.223-252, 2018-09-30 (Released:2018-10-19)
参考文献数
37

本研究では百科事典記事の信憑性判断に「情報源がWikipediaであること」が与える影響を明らかにすることを目的に,日本の大学生を対象とする調査を実施した.Wikipedia日本語版と日本大百科全書JapanKnowledge版双方に存在する6つの項目について,それぞれレイアウトをそのままにした 場合と,レイアウト情報を除去した場合を用意し,どちらの方が正確であると思うかを被験者に尋ねた.分析の結果,回答者の多くはレイアウト情報が残っており,見た目からWikipediaであることが判断で きる場合には,日本大百科全書の方がWikipedia日本語版よりも正確であると判断した.一方,レイアウト情報が除去された場合,Wikipedia日本語版の方が日本大百科全書よりも正確であると判断した者が多かった.情報源がWikipediaであること自体が,記事内容の信憑性判断に影響すると考えら れる.
著者
佐藤 正志 張 志祥
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.89-102, 2009-10

「満洲国」において、「満洲産業開発五カ年計画」が動き始めた1937年前後から、星野直樹、東條英機、鮎川義介、松岡洋右および岸信介の「二キ三スケ」と呼ばれた5人の実力者の存在が注目されはじめた。そのなかで、経済産業政策を中心的に担ったのが岸信介である。植民地研究の第一人者である小林英夫は、岸が革新官僚として「満洲国」に渡り、そこでさまざまな統制経済の「実験」を実施し、この「満洲経営」が、戦時統制経済をはじめ、第2次世界大戦後に世界に類例をみない日本の高度経済成長や戦後日本経済のグランドデザインをつくったと指摘しており、戦前と戦後の連続性を主張する最近の論調を代表する。本稿では、岸が「満洲経営」で果たした役割とそれの戦後経済成長との関連性をめぐり、どのような言説が流布され、いかなる主張がなされているのか。また、それをいかに論証しているのか、最近の岸に関する研究動向のみならず一般書や雑誌記事などにおける代表的な言説をレビューし、革新官僚・岸信介による「満洲経営」の経済史的意義を解明する際の課題について考察する。
著者
崔 在和 佐藤 裕
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.483-486, 1996-03-12 (Released:2010-03-11)
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
佐藤 正晴
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.157-170,221-22, 1995-01-31 (Released:2017-10-06)

In this paper, the author described the development of propaganda for Afro-Americans after the outbreak of the Pacific War, from the viewpoint of Japanese foreign propaganda policies, and the relations with broadcasting of"Hinomaru Hour"in Japanese shortwave. This paper consists of three chapters. In chapter I, the author explained concerns about propaganda for Afro-Americans by the Foreign Office, particularly the information in 1942, on the press. Above all, the racial problem in America is the main theme in Japanese propaganda for Afro-Americans such as their states in the army and their riot in 1943. In chapter II, the author explained that propaganda for Afro-Americans was planned to arouse public opinions in America, "Negroes Strategy in Wartime", proposed by Hikita, the foreign officer, indicates the utility of Afro-Americans as prisoners in wartime. that almost coincided with foreign propaganda policy. Secondy, Japanese propaganda for Afro-Americans has some contradictions. The Japanese propaganda mentioned generality on the one hand, while mentioning particularism on the other. Essentially, racial equality and humanism were advocated in generality, while Japanese spirits, Japanese culture and Japanese jutice were stressed in particularism. In chapter III, the author explained that the realities and the effect of shortwave for Afro-Americans. The Japanese military carried out"Hinomaru Hour"made by prisoners for Afro-Americans. The message was adressed to their families by prisoners of War. In 1944, the program was reorganized as"Humanity Calls"and"Postman Calls"which ended in failure in military interference. Hence, the author chracterized propaganda for Afro-Americans as one of the foreign propaganda policies in wartime Japan. The contradictions of propaganda for Afro-Americans is symbolic of all all of Japanese foreign propaganda.
著者
佐藤 らな
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部言語学研究室
雑誌
東京大学言語学論集 = Tokyo University linguistic papers (TULIP) (ISSN:13458663)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.279-293, 2019-09-30

「-すぎる」は、形態論的に非常に生産性が高く、動詞、形容詞、形容動詞に後接することが知られている。さらに、近年では「天使すぎる」ように、「-すぎる」が名詞に後接する例も主に口語的な表現においてしばしば現れるようになっている。本稿は、「-すぎる」が名詞に後接するものを「Nすぎる構文」と呼び、その意味を分析する。Nすぎる構文は名詞に結び付いた典型的な物語を背景に、そこに含まれる性質の過剰を表すことを主張する。論文 Articles
著者
佐藤 孝幸 中川 隆雄 仁科 雅良 須賀 弘泰 高橋 春樹 出口 善純 小林 尊志
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.12, pp.941-947, 2009-12-15 (Released:2010-03-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

カフェインは嗜好品の他,感冒薬や眠気予防薬として普及しているため,過剰摂取が容易である。大量服用から致死的中毒を来した2症例を救命した。〈症例1〉34歳の女性。市販感冒薬を大量服用後,心室細動から心静止状態となり救急搬送された。感冒薬成分中の致死量のカフェインが心肺停止の原因と考えられた。〈症例2〉33歳の男性。自殺企図にて市販無水カフェイン(カフェイン量24g)を内服,嘔吐と気分不快のため自らの要請で救急搬送となった。いずれも大量のカフェイン急性中毒例で,薬剤抵抗性の難治性不整脈が特徴であった。早期の胃洗浄,活性炭と下剤の使用,呼吸循環管理により救命することができた。とくに症例2では,早期の血液吸着により血中濃度の減少と症状の劇的な改善を認めた。これは血液吸着の有用性を示す所見と考えられる。
著者
佐藤 郁哉 サトウ イクヤ Sato Ikuya
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = The Doshisha business review (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.201-258, 2018-09

研究(Article)本論文では、2000年前後から日本の高等教育セクターにおいて頻繁に使用されるようになったPDCAという用語の普及過程とその用法について、特にこの用語が行財政改革の切り札として注目され、また高等教育界に導入されていった経緯に着目して検討を加えていく。その分析の結果は、業務の効率化を目指して導入されたPDCAの発想がその本来の意図とは正反対の極端な非効率と不経済をもたらす可能性があることを示している。また、(疑似)経営用語の借用それ自体がもたらす弊害について指摘した上で、PDCAなる用語の禁止語化を提案する。
著者
篠崎 由賀里 隅 健次 山地 康大郎 田中 聡也 佐藤 清治
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1159-1162, 2014-09-30 (Released:2015-02-04)
参考文献数
11

水上バイク事故により生じた外傷性直腸肛門損傷から縦隔気腫にまで至った1例を経験した。水上バイクの後部座席に乗船した20歳女性が振り落とされて落水。肛門部痛と気分不良を訴え,6時方向での肛門直腸の断裂を確認。胸腹部CTで肛門から直腸周囲と縦隔にまで広がるairを認め,落水した際のウォータージェット推進装置から噴き出した水による直腸裂傷,後腹膜気腫,縦隔気腫と診断した。緊急手術施行し損傷部位を縫合閉鎖,後腹膜ドレナージ,横行結腸人工肛門を造設した。術後致命的な合併症は無かったが,膀胱直腸機能障害が改善しなかったために受傷後22日目,人工肛門形成,自己導尿状態で退院。水上バイク事故による重傷損傷は増加しており,国土交通省運輸安全委員会も注意喚起している。本症例では症状は軽度であるも骨盤神経叢の損傷が疑われ膀胱直腸機能に重篤な後遺症が残る可能性もある。同様の事故を防ぐための行政対策も必要と考える。
著者
平山 陽菜 佐藤 翔 山下 聡子 岡部 晋典 HIRAYAMA Haruna SATO Sho OKABE Yukinori
出版者
情報メディア学会
雑誌
第11回情報メディア学会研究大会発表資料
巻号頁・発行日
pp.32-36, 2012-07-07

本調査では、非正規職員からみた指定管理者制度の実務的側面を、自治体直営図書館との対比を軸としたインタビューに基づき描き出す。被調査者は待遇に対し不満はあるものの、指定管理者制度導入以後、導入以前よりも業務に対しやりがいを感じていた。これは図書館サービスへの自発的提案や自己研鑽の機会が認められるようになったためである。労働者の視点からすると、指定管理者制度導入館の方が魅力的に感じる場合があることが確認された。
著者
佐藤 大義 饗場 空璃
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
CANCER (ISSN:09181989)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.19-28, 2022-08-01 (Released:2022-08-24)
参考文献数
27

Four decapod crustaceans, Heterocarpus fascirostratus Yang, Chan & Kumar, 2018 (Caridea: Pandalidae), Uroptychus imparilis Baba, 2018 (Anomura: Chirostylidae), Munidopsis similior Baba, 1988 (Anomura: Munidopsidae) and Euryxanthops flexidentatus Garth & Kim, 1983 (Brachyura: Xanthidae) are reported on the basis of specimens collected from the Sea of Hyuga, Kyushu, western Japan, by local off shore commercial trawlers. Munidopsis similior and E. flexidentatus are recorded for the first time from Japan. Images showing living coloration are given for each species. Detailed descriptions and supplemental illustrations are provided for M. similior and E. flexidentatus to show evidence of identification.
著者
英 貢 佐藤 真理 安田 幸夫 田中 武彦 川崎 昌博 小尾 欣一
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

光勃起プロセスによる薄膜形成の初期過程のその場診断について研究を行った。表面反応と気相反応にわけて説明する。1.表面反応計測手段の開発としては,角度分解型X線電子分光(XPS)による基板表面への材料ガス(有機金属化合物など)の吸着や光分解を調べることの外に,偏光変調高感度反射赤外分光法を確立して同じ目的に利用した。この結果,シリコン等の表面で有機分属化合物ガスが吸着する探子(物理吸着とか化学吸着)が詳しく調べられた。さらに,エキシマレーザが重水素ランプからの紫外光を照射して,吸着種が光分解する探子も分ってきた。さらに,走査型トンネル顕微鏡によってはアルミ薄暎形成の初期で島が成長し,しかも基板表面状態により結晶柱があることが観測された。同様に高連反射電子回析(RHEED)によって,シリコン基板上でチゲルマの二次元および三次元成長の楳様が明らかにされた。以上で述べたように光勃起表面反応のその場観測が多角的に行われ大きな成果を挙げることができた。2気相反応気相やでの材料ガス(シラン系ガスを中心として)の光分解により発生したラジカルの検出に,従来から行われていたレーザー誘起学光法(LIF)に加えて,赤外ダイオードレーザー分光が利用された。シラン系ガスの光分解に伴って発生したラジカルSiHnがこれらの手法で検出された。さらにゲルマンの光分解も調べられた。レーザーアブレーションによって基板からとび出した原子および基板からはね返った原子がLIFによって調べられている。
著者
矢島 優己 藤盛 真樹 嶋崎 康相 佐藤 栄晃 吉田 将亜 竹川 政範
出版者
公益社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.565-571, 2020-11-20 (Released:2021-01-20)
参考文献数
15

Calcium hydroxide formulation is frequently used in the treatment of root canals. We report a case where this formulation caused maxillary vascular embolism. A patient received an injection of calcium hydroxide formulation in to the right maxillary lateral incisor in a dental clinic. Immediately after, he presented with swelling of the surrounding gingiva, right cheek swelling, pain, and malaise. Necrosis of the right palate mucosa was observed. A CT image showed calcium hydroxide formulation confirmed to running from the greater palatal artery to the maxillary artery. We diagnosed maxillary vascular embolism caused by calcium hydroxide. On day 32, necrotic tissue of the palate mucosa was removed as much as possible under local anesthesia. On Day 233, the right upper 2 teeth were extracted and a radicular cyst was removed. On day 335, the redness on the right cheek skin almost disappeared, and the opening increased to 42 mm. The right oral and extraoral hypoesthesia remained, but was improving, and the right palate mucosa was completely epithelialized.