著者
佐藤 龍星 中嶋 正道
出版者
日本動物遺伝育種学会
雑誌
動物遺伝育種研究 (ISSN:13459961)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1-11, 2021 (Released:2021-04-06)
参考文献数
50

グッピーは南米東北部原産の淡水魚で、観賞魚や蚊防除対策として世界各地で飼育あるいは放流されている。日 本でも観賞魚として一般的である一方、沖縄や温泉地などで野生化した集団が総合対策外来種に指定されている。 これらの日本におけるグッピーの導入起源や経路は不 明である。そこで本研究では日本のグッピーの起源を mtDNA におけるD-loop 領域約320bp の塩基配列を用 いて調べた。沖縄などで野生化しているグッピー16 集 団と観賞魚としてクローズドコロニーとして継代維持されている14 系統を分析の対象とした。また比較のため南米ベネスエラの野生集団と東南アジアで野生化した2 集 団(タイ、シンガポール)も分析した。その結果、6 ハプロタイプが得られ、このうち観賞魚系ではHap1 とHap4 が観察され、Hap4 はEndrer's のみで観察された。Hap1 は西トリニダードで、Hap4 は東ベネズエラで報告されて いる。一方東南アジア野生化集団とベネズエラ集団でもHap1 のみが観察されたのに対し、沖縄の野生化集団から は5 種類のハプロタイプ(Hap1 ~ 3, 5, 6)が観察された。また、野生化集団における遺伝的変異性(ハプロタイプ数、 ハプロタイプ多様度、塩基多様度)は起源となった南米各地での変異性よりも低かった。これらの結果から、日本 における観賞魚系はトリニダード島のごく狭い範囲の少数個体、おそらくは西トリニダードを起源としている可能 性が示された。また、沖縄の野生化集団の起源は南米各地を起源とする個体の複数回の導入が起源となっている可 能性が示された。
著者
佐藤 真人
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.359-383, 2007-09-30

神仏隔離の意識ははやく『日本書紀』の中にも認められており律令神祇制度の形成期から神道の独自性を支える要素であったと推測される。神仏習合が頂点に達した称徳朝に道鏡による宇佐八幡宮託宣事件が王権の危機を招いたことにより神仏隔離は一層進展した。天皇および貴族の存立の宗教的根拠である天皇の祭祀の場において仏教に関する事物を接触させることは、仏教的な国王観の受容を許すことになる。そこに神仏隔離の進展の大きな要因があった。さらに九世紀には『貞観式』において、朝廷祭祀、とりわけ天皇祭祀における隔離の制度化が達成された。この段階では平安仏教の発達によって仏教が宮中深く浸透したことや、対外危機に起因する神国思想が作用したと考えられる。平安時代中期以降は、神仏習合の進展にもかかわらず、神仏隔離はさらにその領域を広げていった。後世の展開を見ると神仏隔離は天皇祭祀の領域に限られるものではなく、貴族社会に広く浸透しさらには一般社会にも規範として定着していき今日の神道を形作る大きな要因となった。
著者
佐藤 邦忠 三宅 勝 菅原 正善 武山 友彦 大橋 昭市 岩間 長夫 岩野 信也 七海 清志
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.447-450, 1973-08-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
4

種雄馬を効率的に利用するには精液性状の適確な判定と,一年を通じて精液を採取(以下採精と略記)することが重要である.今回非繁殖期に種雄馬より採精する機会を得たのでその結果について統計学的分析を試みた.材料は十勝管内で種雄馬として供用中のブルトン種2頭,ペルシュロン種1頭の計3頭,期間は1969年11月より1970年1月まで,採精頻度は1日1回,5日連続,2日禁欲の繰返しで行ない,延180回の射出精液を使用した.精液性状の各検査項目の平均値は精液量:62.5ml,pH値:6.8,精子活力:45.9%,精子濃度:2.1×108/ml,原形質滴付着精子の出現率(トロッペン率):15.4%,精子奇形率:27.8%および精子耐凍性:30.8%で,各検査項目中,重相関係数に有意性が認められたのは量,活力,濃度,トロッペン率,および頭部奇形率であった(p≤4.05).また精液性状の各検査項日中,2要因を選び,耐凍性を推定するための重回帰方程式として次式を求めた,Y=10.29+0.34X3+2.38X4;Y:耐凍性の推定値,X3:活力,X4:濃度
著者
佐藤 正夫
雑誌
東洋文化研究 (ISSN:13449850)
巻号頁・発行日
no.13, pp.177-197, 2011-03-31

This year marks the centennial of the annexation of Korea by Japan and the 91st anniversary of the incipience of the March First Movement. Nonetheless, there is a relative paucity of research in Japan into Japanese-Korean relations during this era. More specifically, so far there has been little comprehensive research into the Korean Declaration of Independence Using primary sources in the context of the March First Movement. The present paper focuses oll the Declaration itself against the backdrop of the March First Movement, and explores how it came to be drafted and spread throughout the country. The significance of the Declaration is explored by examining how one Japanese person obtained and stored it in Pyongyang. It is the author’s opinion that this examination of the Declaration of Independence as a historical document provides a new perspective on the March First Movement. Needless to say, this study in itself does not make a case for a major change in views of the March First Movement or of the Declaration’s signatories as‘‘traitors”, but it does pose questions worthy of further examination.
著者
山本 雄大 佐藤 潤美 大渕 憲一
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.121-129, 2014 (Released:2014-06-25)
参考文献数
33

The present study examined the negative evaluations and discrimination against smokers among the Japanese. In Study 1, 52 students rated one of four target-persons differentially depicted in terms of gender and smoking habit using scales to measure coolness, sociability, intellectuality, and earnestness. The results showed that participants rated smokers more negatively than nonsmokers except for sociability. Those who perceived smoking as controllable rated smokers’ earnestness even more negatively, suggesting that the negative evaluations are partially moderated by the perceived controllability of smoking. To examine a hypothesis that negative evaluations of smokers would mediate discrimination, in Study 2 we measured how participants (96 students) responded to target persons asking for a loan or a job, as well as their ratings of the targets on the Big Five personality dimensions. The results support the hypothesis of mediation.
著者
佐藤 翔 サトウ ショウ
巻号頁・発行日
2013

筑波大学博士 (図書館情報学) 学位論文・平成25年3月25日授与 (甲第6645号)
著者
佐藤 隆春 大和大峯研究グループ 奥田 尚 佐藤 浩一 竹内 靖夫 南浦 育弘 八尾 昭
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.403-413, 2006-09-25
被引用文献数
12

紀伊山地中央部の秩父帯は大峯-大台スラストで四万十帯の構造的上位にある.大峯-大台スラストは弧状および半円形断層で変位している.秩父帯は東西幅30km以上の弧状断層および直径15km以上の半円形断層の内側にみられる.両断層は同心円状の形状を示す.安山岩と安山岩-石英斑岩複合岩脈からなる弧状岩脈群が弧状断層の内側に貫入している.半円形断層の外側に並行して火砕岩岩脈群が貫入する.中生界(秩父・四万十帯)は両断層と火砕岩岩脈群の内側が数百m陥没する.これを大峯・大台コールドロンと命名する.前者は弧状断層で囲まれる.後者は半円形断層と火砕岩岩脈群で囲まれている.これらの特徴はコールドロンが連続して形成された二重のコールドロンであることを示す.コールドロンにともなわれる岩脈群の放射年代はこれらが中期中新世に形成されたことを示す.大峯・大台コールドロンの形成機構は大量の火砕岩の噴出によるピストンシリンダータイプの陥没と考えられ,特に大台コールドロンはトラップドアタイプの陥没と考えられる.紀伊山地中央部の秩父帯はこれらのコールドロンの内側に残存する中生界である.紀伊山地の隆起と侵食により,これらのコールドロンから噴出したカルデラ充填火砕岩層はコールドロンの周囲には残っておらず,カルデラ床を構成していた中生界が露出するにいたった.
著者
田坂 登美 平賀 聖悟 北村 真 飯田 宜志 黒川 順二 飛田 美穂 佐藤 威
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.1506-1510, 1986-09-20

最近,日本人の精巣重量およびサイズ等に関して検討を行なった報告は,ほとんど見られない.今回,われわれは,747例の変死体剖検症例を対象として,そのうちの651例について精巣重量とサイズの検索を行なった.重量,厚さはp<0.01で右の方が大きく,20〜49歳の平均精巣重量は左14.53±4.07g,右15.35±4.26g,平均サイズは左長径4.51±0.64cm,短径3.04±0.43cm,厚さ1.43±0.3cmで,右長径4.53±0.61cm,短径3.05±0.4cm,厚さ1.55±0.33cmであった.また両側精巣とも重量,長径,短径で30歳代が最大との結果が得られた.
著者
北野 孝太 山岸 厚仁 西森 克彦 佐藤 暢哉
雑誌
第43回日本神経科学大会
巻号頁・発行日
2020-06-15

There are many studies on a variety of social behavior mediated by oxytocin. Of the studies, several suggest that oxytocin is deeply involved in empathy. Empathy toward other individuals is thought to be necessary to give rise to helping behavior. However, there has been little research on the relationship between oxytocin and helping behavior. We investigated helping behavior in oxytocin receptor knockout prairie voles. Prairie voles are known as socially monogamous rodents with high sociality. To examine helping behavior, we used a paradigm in which voles helped a conspecific soaked in water by opening a door. The prairie voles were housed in pairs. All the pairs were siblings. One of the pairs was assigned to be a soaker vole and the other was assigned to be a helper vole. There were two groups; the oxytocin receptor knockout and wildtype groups. The oxytocin receptor knockout voles were paired with wildtype siblings and were assigned to be the helper. Their wildtype cagemates were assigned to be the soaker. The experimental apparatus was divided into two areas; a pool area and a ground area. These areas were separated by a transparent acrylic plate on which a circular door was attached. The soaker vole was placed in the pool area and the helper vole was placed in the ground area. The door could be opened only from the ground area. We measured door-opening latencies. After the door-opening, the pair of the voles were allowed to interact. At that time, the huddling time was measured. As a result, the oxytocin receptor knockout voles showed significantly longer latencies for opening the door than the wildtype voles. In addition, the oxytocin receptor knockout voles showed shorter huddling time than the wildtype voles. These suggest that oxytocin is important for empathic behavior.

26 0 0 0 OA 蝗の大旅行

著者
佐藤春夫 著
出版者
春陽堂
巻号頁・発行日
1932
著者
佐藤 翔 井手 蘭子 太田 早紀 林 直樹 道浦 香奈 副田 沙織
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.195-200, 2016-05-14 (Released:2016-07-15)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本研究では同志社大学の学生102名を対象に2015年に実施した質問紙調査の結果に基づき,日本の大学生のWikipediaに対する信憑性認知や,学習におけるWikipediaの利用実態を明らかにするとともに,どのような要因が信憑性認知や学習における利用に影響を与えるかを検証する.分析の結果,回答者はWikipediaをどちらかと言えば信憑性のあるものと考えており,レポート作成等にも用いているが,参考文献には挙げない傾向があること等がわかった.
著者
大宮 卓 佐藤 光 西村 秀一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.463-467, 2020-07-25 (Released:2020-09-05)
参考文献数
9

鼻腔拭い液等の臨床検体からのイムノクロマトグラフィーを原理としたインフルエンザウイルス抗原の迅速検出キット(以下,迅速キット)は,多くの医療施設で使用されている。こうした迅速キットを用いた試験では結果として偽陰性が起こることは,よく知られている。一方で偽陽性反応も,まれではあるが起こる。今回我々は,迅速キットでA,B両型の陽性を示したものの,ウイルス分離及び遺伝子検査でインフルエンザウイルスが陰性で,その後,用いた臨床検体からRSウイルスが分離された事例を経験した。我々はこれを迅速キットの偽陽性反応と考えた。この偽陽性の原因について我々は,検体中に含まれる患者由来の抗体以外の何らかの成分が迅速キットで用いられているマウス由来の抗体に対し反応し,あたかもウイルス抗原が反応したかのような陽性ラインが出現したという仮説をたてた。そして,その証明を目的として,競合試験として当該患者検体に精製マウスIgGを反応させたのち迅速キットにかけたところ,陽性反応ラインは出現しなくなった。これにより,本例が患者由来の何らかの成分とマウス抗体との反応による偽陽性であったことが,強く示唆された。
著者
風早 康平 高橋 正明 安原 正也 西尾 嘉朗 稲村 明彦 森川 徳敏 佐藤 努 高橋 浩 北岡 豪一 大沢 信二 尾山 洋一 大和田 道子 塚本 斉 堀口 桂香 戸崎 裕貴 切田 司
出版者
日本水文科学会
雑誌
日本水文科学会誌 (ISSN:13429612)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.3-16, 2014-02-28 (Released:2014-05-28)
参考文献数
44
被引用文献数
13 20

近年のHi-netによる地震観測網により,我が国の沈み込み帯における地殻・マントル中の熱水流体の不均質分布による三次元地震波速度構造の異常や深部流体に関連する深部低周波地震の存在などが明らかになってきた。地球物理学的な観測結果に基づく岩石学的水循環モデルは,固体地球内部の水収支を定量化し,滞留時間の長い深層地下水中には検出可能な濃度でスラブ脱水起源の深部流体が流入していることを示す。また,内陸地震発生における深部流体の役割も,近年重要視されている。モデルは主に地球物理学的観測やシミュレーション等の結果に基づいたものであるため,地球化学的・地質学的な物質科学的証拠の蓄積はモデルの高度化にとって重要である。そこで,我々は西南日本の中国–四国–近畿地方において深層地下水の同位体化学的特徴の検討を行い,地下水系に混入する深部流体の広域分布について明らかにした。その結果,マグマ水と似た同位体組成をもつ深部流体,すなわち,スラブ起源深部流体のLi/Cl比(重量比)が0.001より高いことを示した。Li/Cl比は,天水起源の淡水で希釈されても大きく変化しないことが期待されるため,深部流体の指標に最適である。Li/Cl比の広域分布は,スラブ起源深部流体が断層・構造線および第四紀火山近傍で上昇していることを示した。また,深部低周波 (DLF) 地震が起きている地域の近傍に深部流体が上昇している場合が多く見られ,DLF地震と深部流体の関連性を示唆する。
著者
佐藤 健太郎
出版者
関西大学東西学術研究所
雑誌
関西大学東西学術研究所紀要 (ISSN:02878151)
巻号頁・発行日
pp.47-65, 2012-04

Milk and its by-products are naturally nutritious food, and people in ancient Japan enjoyed tasting them as foods, drinks, or medicines. On the other hand, milk and its by-products were closely related to the philosophy of Buddhism and were often supplied at Buddhist rituals. There have been many studies on ancient diets including milk and its by-products and we have obtained useful knowledge on nutritious foods in ancient Japan. Among the milk products, "So" (蘇), a type of dairy product made from layers of milk skin, has been re-produced, and Japanese people enjoy it as it was enjoyed in the ancient diet. Based on previous studies, in this article the author describes the use of milk and its by-products as well as the contribution system of offerings in ancient Japan. The newly found research materials including Kouninshiki's lost writings' formula (弘仁式逸文) that describe "So" (蘇), wooden plates (木簡), and clay pots (墨書土器) are used for discussion. Since materials useful for studying the contribution system of offerings (蘇) in the Heian Era are unavailable except for 延喜民部式貢蘇条 (a Japanese book of laws and regulations), the contribution system of offerings (蘇) earlier than Engishiki (延喜式) is not known. Thanks to Kouninshiki's lost writings' formula, the contribution system of offerings under regulation called Kouninsikisei (弘仁式制) has been clarified. By comparing the contribution system of offerings called Engishiki with that of Kouninshiki, every aspect of change, i.e., difference in systems and any historical factors for transformation, have been reviewed. It is not clear when the contribution system of offerings was changed from Kouninshiki to Engishiki, but it is certain that the contribution system of offerings (蘇) apparently existed until 887 (the 3rd year of Ninna) according to Kouninshiki.
著者
佐藤 陽子 休石 千晶 千葉 剛 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.268-274, 2017-12-25 (Released:2017-12-28)
参考文献数
19
被引用文献数
2

ビタミンB6はレボドパと相互作用を起こすとされているが,その具体的な摂取量は明確になっていない.そこで,レボドパとビタミンB6の相互作用に関する論文の系統的レビューにより,レボドパの薬効に影響を与える可能性が強いビタミンB6摂取量について検討した.論文は2017年8月に2つのデータベースにて検索し,11報を採択した.その結果,ビタミンB6摂取量が50mg/日以上でレボドパの薬効が減弱する可能性が高くなると考えられた.したがって,ビタミンB6欠乏がなく,かつ,レボドパとの相互作用が回避できるビタミンB6摂取量は日本人の食事摂取基準における推奨量と上限量の範囲と同等と推定された.以上より,ビタミンB6は通常食品からの摂取では特に留意する必要はなく,多量に摂取できるサプリメントや市販薬の利用に注意すべきことが示された.