著者
宮下 哲哉 斎藤 一賢 内田 龍男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EID, 電子ディスプレイ
巻号頁・発行日
vol.98, no.107, pp.23-28, 1998-06-12

筆者らは、メイクロカラーフィルタを使わずにフルカラー表示を行うカラーシーケンシャル方式の液晶ディスプレイを提案した。この方式は赤緑青の三色が高速で順次切り替わる光源と、広視野角・高速応答特性を有するOCBモードの液晶素子によって構成されている。本発表では、この表示原理と設計方針および表示特性について述べる。
著者
三苫 寛人 内田 誠一 迫江 博昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.657, pp.13-18, 2004-02-13
被引用文献数
1

DPマッチングなど,いわゆる弾性マッチングに基づくオンライン文字認識においては,合わせ過ぎによる誤認識が発生する.例えば入力パターンが「1」であっても,マッチングによって水平部が非線形伸縮された結果,「7」に誤認識される場合がある.本報告では,こうした誤認識の低減手法を提案する.合わせ過ぎの発生原因には,弾性マッチングが本来そのカテゴリでは起こりえないような変形も吸収の対象としていることが挙げられる.そこで本手法では,あらかじめ各カテゴリに生じ易い変形(固有変形)を統計的手法により求めておき,認識の際のマッチングの結果が,その固有変形からどれぐらい逸脱しているかを評価する.その逸脱量が大きければ,そのマッチングにより合わせ過ぎが起きていると判断できる。オンライン数字データを用いた認識実験により,本手法の有効性を確認した.
著者
梶 博行 森本 康嗣 相薗 敏子 山崎 紀之 飯田 恵子 内田 安彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.39, pp.97-104, 1999-05-17
被引用文献数
1

電子化されたテキスト情報の増加とともに情報アクセス技術の重要性が高まっている.本稿では,大規模テキストコーパスの探索を支援する,インタラクティブなテキストマイニングシステムを提案する.提案システムは,コーパスから関連シソーラスを自動生成し,コーパスに対応したシソーラスをナビゲーションできるようにする.関連タームのクラスタリング,シソーラスオーバビューの生成,オーバビューから詳細へのズームインという特徴機能によって,漠然とした情報要求しかもたないユーザや専門外のドメインの情報を求めているユーザでも,適切な情報を効率よく獲得することができる.プロトタイプの開発と新聞記事コーパスを用いた実験を通じて,提案システムの有効性を実証した.With the growing amount of textual information available in electronic form, information access technologies have become extremely important. This paper proposes an approach to interactive text mining that facilitates exploration through a large corpus of texts. The proposed system automatically generates an association thesaurus from a corpus, and enables users to navigate through this corpus-dependent thesaurus. Its novel functions, including the clustering of related terms, the generation of an overview of the thesaurus, and the zooming-in from the overview to the details of a specific part, allow users to get information efficiently even when their information needs are vague or they seek information in unfamiliar domains. The effectiveness of the system has been demonstrated through prototyping and an experiment with a newspaper article corpus.
著者
蒲地 正幸 内田 荘平 撫中 正博
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.443-450, 2001-12-01

タイで自動車事故により頸髄損傷をきたした患者を人工呼吸管理を行いながら日本まで搬送した.患者は55歳, 男性.タイへ出向中の自動車会社の社員.交通事故により頸髄損傷をきたし, 救急病院に搬送された.牽引整復後, 頸椎固定術が施行された.受傷後約1ヵ月が経過した時点で状態が安定し, 日本へ搬送することになった.神経学的には第5頸髄レベル以下の完全麻痺であり, 自発呼吸はみとめられるが十分な1回換気量が得られないため搬送中も人工呼吸管理が必要と判断された.人口呼吸器, 酸素ボンベ, 吸引器, モニター等を現地の搬送アシスタント会社に手配してもらい, 日本から持ち込んだ医療器具を併用して無事, 日本まで搬送することができた.飛行時間約6時間, 現地の病院を出発してから約11時間の医療搬送であった.重症患者の国際搬送, 航空搬送に必要とされる知識, 技術, 問題点について学ぶことができた.
著者
石井 隆寛 桑原 繁 桑原 誠 内田 武次 熊倉 充
出版者
東京農工大学
雑誌
フィールドサイエンス (ISSN:13473948)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.31-36, 2002-10-25

東京農工大学農学部付属広域都市圏フィールドサイエンス教育研究センター(FSセンター),FM大谷山(旧大谷山演習林),FM草木(旧草木演習林),FM唐沢山(旧唐沢山演習林),FM秩父(旧埼玉演習林)およびFM多摩丘陵(旧波丘地試験地)において,底生水生昆虫の種類と生息状況が2002年に調査された。その結果,61種の水生昆虫が,合計944頭捕獲され,標本として保管された。
著者
稲富 裕光 王 躍 菊池 正則 中村 龍太 内田 祐樹 神保 至
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-18, 2005-03

本報告では,半導体結晶の溶液成長過程における以下の研究成果を述べる.(1)半導体結晶の溶液成長過程における固液界面の形態変化に及ぼす基板結晶の面方位の影響を調べるために近赤外顕微鏡を使ったその場観察実験が実施された.その結果,対流を抑制することでGaP/GaP成長界面のステップカイネティクス係数の面方位依存性が得られ,結晶成長時におけるマクロステップの挙動が評価された.また,GaAs_xP_<1-x>/GaPヘテロLPE 成長初期の固液界面の表面形態変化が基板表面の面方位依存性の視点から議論された.(2)静磁場THM 法によりTe 溶液から育成したCdZnTe 結晶の成長界面が急冷法によって調べられた.その結果,浮力対流を抑制することで速い引き下げ速度でも良質なCdZnTe 成長結晶を得られることを示した.
著者
内田 英夫 川村 實 中込 和徳 野溝 春子 二木 克巳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.398, pp.7-12, 2003-10-24

射撃場から1km離れた別荘地域で騒音苦情が発生したため,射撃音の調査を行った.射撃音の指向性は,左右対称で,射撃の前方では後方に比べて25dB以上大きい強い指向性を示した.射撃場内で160mまでの地点で距離減衰を計算すると155-13.8×lo9(r^2)となり,倍距離6dBの距離減衰よりやや大きかったが,別荘地域までで計算するとさらに0.5dB/100m程度の減衰があった.射撃場の対岸にあたる別荘地域の標高別の調査では,射撃場が見通せる位置から射撃音が大きくなっており,遮音壁で問題となる別荘地が見通せなくなれば騒音が低減することが示唆された.しかし,射撃場斜面に遮音壁を作ることはコストがかさむので,指向性の点から一番騒音レベルが高くなる射撃地点を使用禁止にする処置で騒音レベルがどのように低減するかなどの検討も行った.
著者
内田 又左衛門 小川 邦彦 杉本 達芳 相澤 宏保
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.537-544, 1983-11-20

水面施用した[aniline環-^<14>C]flutolanilはイネによく吸収され, 27日後に葉身中の放射能は最高濃度(93.7 ppm ^<14>C-flutolanil相当)に達した.その後, 緩やかに減少し, 81日後では83.0 ppm相当となった.玄米中への移行はわずか(0.5ppm相当)であった.イネにおける代謝は比較的速く, 9日目以降の葉身中放射能は大半が抽出性あるいは結合性の代謝物に帰属できた.イネからは, 4′-hydroxy-3′-isopropoxy-2-(trifluoromethyl)benzanilide (2), 3′-(hydroxymethyl) ethoxy-2-(trifluoromethyl)benzanilide(3), 3′-hydroxy-2-(trifluoromethyl)-benzanilide(4), 4′-hydroxy-3′-methoxy-2-(trifluoromethyl)benzanilide(6), 3′-methoxy-2-(trifluoromethyl)-benzanilide (7)および2, 3, 4, 6の抱合体が得られた.キュウリの葉面に塗布した^<14>C-flutolanilは13日後でも70%以上が表面から回収された.しかし, わずかながらイネと同じ代謝物が検出できた.
著者
森 大樹 内海 章 大谷 淳 谷内田 正彦 中津 良平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.102-110, 2001-01-01
被引用文献数
27

非同期多視点画像を用いて人物追跡を行う手法を提案する.提案手法では, 多視点で非同期に得られる観測情報をカルマンフィルタにより統合し人物追跡を効率的に行う.試作システムは, 非同期に動作して各視点の画像を処理する複数の観測ノードと人物の追跡を行う追跡ノード, 発見を行う発見ノードからなる.各観測ノードは追跡ノードから送られる予測観測値に基づいて画像特徴と追跡モデルの対応付けを行う.モデルに対応づけられた画像特徴は追跡ノードに送られ, 追跡モデルの更新が行われる.対応づけられない画像特徴は発見ノードに送られ, 新規人物の発見に用いられる.本手法により, 同期型システムに見られる視点数の増加による処理効率の低下, 観測間の冗長性の増大といった問題の発生を抑制しながら, 大規模な追跡システムの構築が可能になる.実画像を用いた実験により, 本手法の有効性を示す.
著者
田中 真 内田 純平 宮岡 祐一郎 戸川 望 柳澤 政生 大附 辰夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. VLD, VLSI設計技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.478, pp.127-132, 2004-11-25
被引用文献数
4

レジスタ分散型アーキテクチャを用いると,レジスタ間データ転送を利用することによって配線遅延が回路の性能に与える影響を削減することが可能であるが,高位合成のスケジューリングの段階からフロアプラン情報を考慮する必要がある.本稿では,レジスタ分散型をターゲットアーキテクチャとし,(1)スケジューリング,(2)レジスタバインディング,(3)モジュール配置,の工程を繰り返し,(3)から得られたフロアプラン情報を(1),(3)の工程にフィードバックすることによって,解(合成結果)を収束させる高位合成手法を提案する.提案手法により,フロアプランを考慮したレジスタ間データ転送を用いた回路を解として得ることが可能となる.また,計算機実験によって,提案手法の有効性を示す.
著者
山岸 良一 内田 茂 久我 新一
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
no.384, pp.27-35, 1988-02-28
被引用文献数
10

We examined 1) relations between complexity-order and subjects' evaluation of visual environments, and 2) physical causes of complexity and order by different 3 stages of experiment. In 1st experiment, we employed semantic differential method using 30 color-slide pictures of residential environment in order to examine the 1st purpose. In 2nd experiment, we used 30 pieces of abstract pictures. In 3rd experiment we used 27 series of VTR pictures of abstract models of street environments. Both 2nd and 3rd experiments aimed to obtain the physical causes of complexity and order. As the result of these experiments we found; 1) An orderly and complex environment obtained higher evaluation in a residential environment; 2) The measurement of complexity and order is relative to the measurement of information theory.
著者
水野 千恵 四谷 美和子 北山 英子 山田 克子 荻野 正子 山本 由美 内田 真理子 梶田 武俊 安藤 孝雄 生野 世方子 芥田 暁栄 山下 英代 山野 澄子 川内 由美 奥田 展子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.275-280, 2002-08-20
被引用文献数
2

ガスコンロを用い,ガス加熱の条件設定について検討した。1. 都市ガス13Aはガス圧を1.50kPa,6Cは1.00kPa,プロパンガスは2.00kPaとなるようにガス流量を一定にし,水を被加熱体として3段階の火加減における昇温速度,ガス消費熱量の再現性を検討した。ガスの種類が同じ場合,異なった測定場所においても昇温速度,ガス消費熱量に高い再現性が認められた。2. ガスの種類が異なった場合,ガス圧を微調整することにより,昇温速度,ガス消費熱量に再現性かつ普遍性のある加熱条件を設定することができた。3. 設定した基準にしたがってあずきを加熱した場合,水加熱と同様に,いずれの火加減においても昇温速度の再現性があり,あずきの加熱に伴う煮汁の蒸発量,重量と容積の増加においても再現性が認められた。最後に本研究にあたり,終始ご懇切なご指導とご鞭撻をいただきました同志社女子大学名誉教授故林淳一先生に心から感謝を捧げます。
著者
黄瀬 浩一 大町 真一郎 内田 誠一 岩村 雅一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.740, pp.85-90, 2005-03-11
被引用文献数
2

デジタルカメラの小型化, 高解像度化, 一般化に伴い, これを入力手段として用いた文字認識・文書画像解析への期待が高まりつつある.本稿では, デジタルカメラを用いた文字認識・文書画像解析について現在の代表的な技術を俯瞰するとともに, バーコードなどの関連技術との比較によって, 文字認識, 文書画像解析の立場や将来への課題を浮き彫りにする.また, 将来に向けた試みの一つとして, 著者らが「バーコードリーダ並みに手軽で高精度な文字認識」を目指して行っている研究「複比を用いた文字への情報埋め込み」の一端についても紹介する.
著者
内田 雅己
出版者
広島大学
雑誌
Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (ISSN:13408364)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.175-177, 1998-12-28

第1章序論 北半球高緯度地方には,世界最大の森林帯(北方林)がある。北方林は,低温により分解速度が遅いために,土壌中に大量の有機炭素を蓄積しており,地球規模の炭素循環に重要な役割を果たしている。近年,地球の温暖化により,現在は炭素の吸収源であると考えられている北方林が,炭素の発生源になる可能性が懸念されている。しかし,北方林の土壌圏の炭素動態において,微生物のはたらきを量的に把握した研究は少なく,野外における分解の温度依存性に関する研究についても,ほとんどなされていないのが現状である。本論文では,北方林の土壌炭素のフローと,それに対する微生物の寄与を定量化し,温暖化による気候変動が,土壌有機物の分解におよぼす影響を明らかにすることを目的とした。第2章北方林における土壌微生物群集をめぐる炭素の動態 北方林における土壌炭素のフローと,それに対する微生物の寄与を定量化するため,カナダ,サスカチュワン州,キャンドルレイク(105°30'W, 53°50'N)付近のクロトウヒPicea mariana林内に調査区を設定し,有機物層から鉱質土壌層表面下50cmまでの各土壌層位毎の有機炭素量,微生物バイオマス炭素,土壌呼吸量,および根のバイオマスと呼吸量を調査した。コケ層から鉱質土壌層表面下50cmの深さまでの有機炭素量は,1平方メートルあたり7.2kgで,そのうちの47%が有機物層中に存在していた。土壌呼吸速度から植物根の呼吸速度を差し引いて微生物の呼吸速度を求めた。根の呼吸速度は,重量あたりの呼吸速度と根のバイオマスから求めた。その結果,全土壌呼吸速度にしめる微生物の呼吸速度の割合は46%になった。微生物の呼吸のうち,有機物層中の呼吸が約60%をしめた。L層,FH層,およびA層の微生物バイオマス炭素あたりの呼吸活性は,それぞれ1.35,0.44,および0.94mg CO_2-C g^<-1> microbia1 C h^<-1>であった。FH層は他の層にくらべて呼吸活性が低く,FH層の微生物の活性自体が低いと考えられた。採取した土壌中の微生物の呼吸速度の温度依存性からQ_<10>を求めたところ,2.4であった。この値と無雪期間(6月&acd;10月)の土壌温度(地表面下15cm)の変化から,L層&acd;A層までに存在する微生物の年間総呼吸量を推定したところ,221g C m^<-2>となった。Nakane et al. (1997)は,本調査地付近のクロトウヒ林の年間のリターフォール量が91&acd;128g C m^<-2>であると報告している。本調査地のL層の微生物の呼吸量(85g C m^<-2> yr^<-1>はリターの投入量に対してかなり大きい値となった。しかし,L層下部には菌根菌と思われる菌糸体が密に繁殖していたことから,外生菌根菌に由来する呼吸が,微生物の総呼吸量にかなり含まれている可能性も示唆された。第3章リター分解と温度環境 一般的に,リターの分解に対する温度の影響は,室内実験で調べられることが多い。しかし,自然環境における温度変化は,長期にわたって徐々に生じるため,実際の現象は短期間の室内実験では予測できないことが多い。そこで,北半球の高緯度地方を中心に,きわめて広範囲に分布している蘚類のイワダレゴケHylocomium splendensを用いて,実際にリターの消失率を推定し,温度環境との関係について調査した。イワダレゴケは,規則的な成長様式をもち,成長解析とリターの蓄積から年間のリターの生産量と消失率を容易に推定できる。サンプルは,上記調査地を含むサスカチユワン州のクロトウヒ林3地点,および富士山亜高山帯針葉樹林内の標高の異なる4地点(1,700&acd;2,400m)で採取した。富士山の調査地では,標高が高くなるほどリターの蓄積量は多くなり,消失率は低下する傾向が認められた。この際,各地点の年平均気温とリター消失率の対数との間には有意な直線関係が認められた。富士山の調査地の年平均気温とリター消失率との関係から求めたQ_<10>は8.7と大きな値となった。無雪期間の積算気温とリター消失率,およびリターの質との間に,統計的に有意な高い相関が認められた。野外におけるリター消失率は,わずかな温度の違いでも著しく変化することが推察され,そのことには,無雪期間の気温とリターの化学組成が影響している可能性が示唆された。第4章温度環境の変化と土壌微生物 第3章では,イワダレゴケのリターの消失率を広域に比較した結果,リターの消失率は温度に対して敏感に反応することが推察された。これは,長期的な温度環境の変化にともなう分解速度の変化が,実験室での短期間の微生物分解活性の温度依存性だけでは説明できないことを示唆している。本章では,野外における基質分解の温度依存性の実態を解明することを目的として,同質の分解基質(ろ紙とブナのチップ)を富士山の標高の異なる5地点(1,500&acd;2,400m)に埋設し,現地における消失率を詳細に検討した。