著者
前田 菜緒 太田 尚孝 新保 奈穂美
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.20-23, 2023-06-09 (Released:2023-06-09)
参考文献数
16

近年、短時間強雨の発生回数の増大により洪水発生リスクが増大している。本研究では対策としてグリーンインフラの一種である雨庭を取り上げ、先進的に整備の進んでいる京都市における雨庭の導入、整備のプロセスと維持管理の成果・課題を主体間の関係性と防災・減災効果と共に明らかにすることを本研究の目的とした。GISを用いた立地分析、文献調査、ヒアリング調査、現地調査を通し、本研究では以下の三点が明らかになった。1.現状では日常的なレベルの降雨には対応できるが極端な水災害との関係性は薄いといえる。2.京都造園建設業協会からの提言があり京都市が主体的に整備することで雨庭整備が実現し維持管理を地域ボランティアが担っている。3.整備は途中段階であり、維持管理に際して行政とボランティア間のズレがある。
著者
三宅 茂太 芦刈 圭一 加藤 真吾 高津 智弘 桑島 拓史 金子 裕明 永井 康貴 亘 育江 佐藤 高光 山岡 悠太郎 山本 哲哉 梁 明秀 前田 愼 中島 淳 日暮 琢磨
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.2533-2543, 2022 (Released:2022-12-20)
参考文献数
27

【目的】消化管内視鏡検査(Gastrointestinal endoscopy:GIE)は,多くの疾患の早期発見および治療に有用であるが,GIEはコロナウイルス病2019(COVID-19)大流行期における高リスク処置と考えられている.本研究は,医療スタッフが曝露される唾液,胃液および腸液における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性割合を明らかにすることを目的とした.【方法】本研究は単一施設における横断研究であり,2020年6月1日から7月31日まで,横浜市立大学附属病院でGIEを受けた患者を対象とした.すべての研究参加者は3mlの唾液を提出した.上部GIEの場合,10mlの胃液を内視鏡を通して採取し,下部GIEの場合,10mlの腸液を内視鏡を介して採取した.主要評価項目は唾液,胃液および腸液中のSARS-CoV-2の陽性率とした.また,SARS-CoV-2の血清特異的抗体や患者の背景情報についても検討した.【結果】合計783検体(上部GIE:560および下部GIE:223)を分析した.唾液検体のPCRでは,全例が陰性であった.一方で,消化管液検体においては2.0%(16/783)がSARS-CoV-2陽性であった.PCR陽性症例とPCR陰性症例の間では,年齢,性別,内視鏡検査の目的,投薬,抗体検査陽性率に有意差は認めなかった.【結論】無症候性の患者において,唾液中に検出可能なウイルスを持たない患者であっても,消化管にSARS-CoV-2を有していた.内視鏡検査の医療スタッフは処置を行う際に感染に留意する必要がある.本研究はUMIN 000040587として登録されている.
著者
前田 洋介
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.425-448, 2008-07-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
56
被引用文献数
5 1

本研究は, ローカルに活動するNPO法人の担い手と成立ちを明らかにすることを通して, 東京大都市圏におけるNPO法人の分布の空間的特徴に説明を加えることを目的とする. 分析結果からは, 東京大都市圏では, 都心部にNPO法人が集中する一方で, 東京西郊を中心とする郊外にもNPO法人が広く分布しており, そこではローカルに活動するNPO法人の割合が多いという空間的特徴が示された. そして, 多摩市で実施したインタビュー調査からは, ローカルに活動するNPO法人は性別役割分業のもと, 既婚女性を中心に日常的活動が支えられていること, そして地縁を越え, 多摩市程度の広がりを持ったさまざまな選択縁ゐもとに成立していると特徴づけられた. これらの点は, 東京西郊を中心とする郊外にNPO法人が多いことの一っの背景として考えられる. また, ローカルに活動するNPO法人の分布は, 担い手レベルで東京大都市圏の社会地域構造と関係していると考えられる.
著者
前田 拓也
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.456-475, 2006-12-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
26
被引用文献数
4 1

1970年代以降, 「新しい社会運動」の一部として実践されてきた日本の障害者運動と, その成果を積極的に織り込んでいこうとする「障害学」の中て目指されてきたことは, 「障害/健常」の差異の相対化であり, また, 健常者に対し, 特権的な立場の相対化を迫ることであった.本稿で焦点を当てるのは, そうした潮流の最も重要な成果の1つである障害者の「自立生活」と, その中で最も身近な健常者として介助者を措定した上で用いられる「介助者=手足」というテーゼである.「自立生活」を志向する障害者が, 「感情の交流」を介助の本質とする健常者のフレームに距離を取り, 介助者の存在を匿名性のうちに留めておこうとしたこのテーゼの意義はいまだ有効である.しかし同時に, 介助者を手段として使うことで「できないこと」を「できる」ようにするという介助の技法のうちには, 「障害者の自己決定」に対する介助者という他者の介入が構造的にはらまれているのてある.本稿では, 筆者自身の介助現場への参与観察から得た知見をもとに, 介助者の存在を透明化することの不可能性を論じることを通じて, 「健常者/障害者」関係と「介助者/利用者」関係という, しばしは同一視されがちな2項軸の相違を指摘する.また, その指摘によって, ともすると「介助」を巡る議論に埋もれがちてあった「介助者のリアリティ」を前景化して論じる意義を示すことを目的とする.
著者
小牧 元 前田 基成 有村 達之 中田 光紀 篠田 晴男 緒方 一子 志村 翠 川村 則行 久保 千春
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.839-846, 2003-12-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
11
被引用文献数
3

われわれは先にアレキシサイミア評価のための構造化面接法を開発した.今回,引き続きアフレキシサイミアの自記式質問紙Toronto Alexithymia Scale-20 (TAS-20)日本語版の信頼性と因子的妥当性を検討した.対象は健常群347名と心身症・神経症などの患者群940名である.両群で3因子構造モデルは確証的因子分析により確認,再現された.質問紙全体としてほぼ満足できる内容であり,テスト-再テスト間の安定性も高いことから,日本語版TAS-20の信頼性および因子的妥当性は支持された.ただし,第3因子の外的志向に関しては内的一貫性が低く,その質問項目の均質性には問題があり課題として残された.
著者
前田 恭佑 土方 嘉徳 中村 聡史
雑誌
第8回Webとデータベースに関するフォーラム論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.32-39, 2015-11-17

Amazon.com や楽天市場のようなショッピングサイトでは,商品やコンテンツ (以降,アイテム) に対してレビューを簡単に作成・閲覧することができる.小説や映画などのストーリーを持ったアイテムに対するレビューには,レビュアの感想や意見が存在する一方で,そのアイテムのストーリーに関する記述が存在する.その記述の中には,実際にアイテムを見た時の楽しみや感動が減ってしまう記述(本稿では 「ネタバレ」 と呼ぶ) が含まれる場合があり,問題である. 本研究では,ネタバレがストーリーの進行における位置づけと関係があるのではないかという仮定のもとでネタバレの検出を行う.しかし,記述内容がストーリーの進行においてどの位置に対応するのかはレビュー文書単体からでは把握できない.これに対処するために,本研究では,レビュー文書とは別にアイテムのストーリーを記録した文書 (以降,ストーリー文書) も用いる.本研究では,まずネタバレとストーリーの進行における位置づけとの関係を知るために,ストーリー文書内のネタバレに関する記述について調査を行う.調査で得られた結果を基に,実際のレビュー文書からネタバレの可能性について考察する.
著者
前田 陽一郎 丹羽 俊明 山本 昌幸
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.507-518, 2006 (Released:2007-04-20)
参考文献数
20
被引用文献数
7 11

カオティックサウンドは, インタラクティブアート生成システムの1つとして人工生命の分野で研究が行なわれている. これにより, 人間の予想を超える多様性と複雑さをもつ音楽をコンピュータを利用して生成することが可能である. カオティックサウンドの研究目的は, カオス理論を用いることにより, 複雑かつ可変なサウンドを作り出す有効な手法を見つけることである. しかしながら, 単純にカオスで得た数値と対応する音を演奏する場合, 人間にとってただ音が鳴るだけの不協和音となることが予想される. そこで本研究では, カオス的非同期性や全体の同期性の制御が可能な大規模カオスを用いて音の生成を行い, さらにより自然な音に感じられるよう音楽理論の要素技術の一部を導入する手法を提案する. 本システムでは, 大域結合写像 (GCM) によって音高, 音長, 音量要素を決定し, 生成した音楽に小節, 調性, 休符, テンポ, エコー, 音色などの音楽的要素が追加される. これにより生成される音は自然音, 環境音楽などの, ヒーリングミュージックのような効果が予想される. また, この手法を用いてインタラクティブカオティックアミューズメントシステム (ICAS) を構築し, シミュレーションにより生成された音の感性評価を試みたので, これについても報告する.
著者
金田 眞理 望月 秀樹 前田 真一郎 小池・熊谷 牧子 中村 歩
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2022-06-30

結節性硬化症(TSC)はmTORC1(エムトールC1)の恒常的活性化で、全身に腫瘍やてんかんを発症する遺伝性疾患である。TSCの皮膚病変治療薬である、mTORC1阻害薬シロリムスの塗り薬を使用していた患者の中に、皮膚への少量塗布で血中シロリムス濃度の上昇なく、てんかんが改善する患者が現れた。そこでてんかんを有するTSCのモデルマウスで検討したところ、マウスでも同様の結果が得られた。皮膚塗布により、シロリムスが血液を介さずに、脳へ輸送された可能性が考えられた。本研究ではその機構の解明を行う。
著者
中村 尚世 石川 大樹 大野 拓也 堀之内 達郎 前田 慎太郎 谷川 直昭 清水 珠緒 福原 大祐 中山 博喜 江崎 晃司 齋藤 暢 平田 裕也 内田 陽介 鈴木 晴奈 佐藤 翔平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101334, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】膝前十字靭帯(ACL)再建術後に荷重制限を設けている施設が多い.しかし,全荷重開始時期に関しては各施設で異なり,未だ統一した見解はない.我々は術後4週にて全荷重を開始し術後リハビリテーション(リハ)を慎重に行うことで良好な術後成績を得たことを報告(2005年本学会)した.さらに,術後3週にて全荷重を開始するも変わらず良好な術後成績を得られたことを報告(2007年本学会)した.そこで今回,更に全荷重開始時期を1週早め,術後3週群と2週群で術後成績を比較検討したため,以下に報告する.【方法】2002年12月~2011年6月までに膝屈筋腱を使用した解剖学的2ルートACL再建術を行った596例のうち,同一術者にてACL再建術のみが施行され,12ヶ月以上経過観察が可能で,再鏡視し得た110例を対象とした.半月板縫合術を同時に施行した例,50歳以上の例,後十字靭帯損傷合併例,ACL再断裂例は除外した.2004年1月より3週で許可した68例(男性45例,女性23例,31.3±8.4歳:3週群)と,2008年4月より術後全荷重を2週で許可した42例(男性24例,女性18例,31.0±7.9歳:2週群)で術後成績を比較検討した.但し,術後リハプログラムでは全荷重開始時期以外はほぼ同一とした.検討項目は,術後6,12ヶ月での膝伸筋の患健比(60°/s),受傷前と術後12ヶ月時のTegner activity score,術後12ヶ月時の膝前方制動性の患健側差,再鏡視時の移植腱の状態,入院期間とした.なお,膝伸筋力は等速性筋力測定器Ariel,膝前方制動性はKT-2000を用いて測定した.再鏡視時の移植腱の状態については,移植腱の太さ,緊張,滑膜被覆の3項目を総合し,Excellent,Good,Fair,Poorの4段階で評価した.統計処理に関しては,術後6,12ヶ月での膝伸筋の患健比(60°/s)と,Tegner activity scoreは,それぞれ反復測定による二元配置分散分析,χ²検定を用いた.また,術後12ヶ月時のKT-2000患健側差 ,再鏡視時の移植腱の状態,入院期間はMann-WhitneyのU検定を用いた.統計学的検討にはSPSS Statistics 17.0Jを使用し,有意水準は危険率5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究の個人情報の取り扱いは当院の個人情報保護規定に則り実施した.【結果】術後6,12ヶ月での膝伸筋の患健比はそれぞれ2週群67.3±2.9%,82.9±2.6%,3週群70.2±2.2%,83.0±2.1%であり,筋力回復の変化量に有意差はなかった.受傷前と術後12ヶ月時のTegner activity scoreの平均値は,それぞれ2週群は6.26が6.26,3週群は5.91が5.88であり,両群にともに有意差はなかった.術後12ヶ月時のKT-2000患健側差は2週群0.13±0.7mm,3週群0.07±0.6mmであり有意差はなかった.再鏡視時の移植腱の状態は2週群はExcellent 31例(73.8%),Good 9例(21.4%),Fair 2例(4.8%),3週群は Excellent 41例(60.3%),Good 27例(39.7%)であり,有意差はなかった.入院期間は2週群22.4±5.6日,3週群25.7±3.2日であり,2週群で有意に短かった(p<0.05).【考察】矢状面断において脛骨は水平面に対し10°程度後方傾斜しているため,膝関節荷重時に脛骨は大腿骨に対し前方剪断力として働き,移植腱へのストレスが増大するとの報告が散見される.しかし,全荷重開始時期は各施設で異なり,可及的早期から5週程度で行なわれており,統一された見解はない.そこで当院では術後の全荷重開始時期を術後4週から開始し,3週,2週へと変更させ術後成績を比較検討してきた.全荷重開始時期を早めたことで術後早期の活動性が上がるため,膝伸筋の筋力回復とTegner activity scoreにおいては2群間に差があると仮定したが,本研究では有意差はなかった.KT-2000患健側差と再鏡視時の移植腱の状態においては2群間に差がなかったことから,術後2週で全荷重を開始しても膝関節の不安定性の増大や移植腱への悪影響がないことが分かった.また,入院期間に関しては2週群の方が有意に短かった.以上より,術後2週での全荷重開始が許容されることが示された.【理学療法学研究としての意義】ACL再建術に関する臨床研究の報告は多数存在するが,全荷重開始時期の違いによる比較検討されたものは少ない.ACL再建術後の全荷重開始時期を3週と2週で比較検討した結果,少なくとも膝関節の不安定性の増大や移植腱への悪影響がないことが分かった.また,入院期間は有意に短縮できることが分かったことからも本研究は有意義だったと思われる.
著者
前田 晃史 小林 正直 八田 圭司
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.545-554, 2018-08-31 (Released:2018-09-01)
参考文献数
40
被引用文献数
1

目的:胸骨圧迫の質を高める背板の研究は2006年以降さまざまな条件で行われてきたが,システマティックレビューやメタアナリシスはなかった。そのため,臨床現場で心停止患者に対する背板の有効性と今後の具体的な背板の使用方法を明らかにすることを目的に文献検討を行った。方法:主に各国の蘇生ガイドラインで背板使用の推奨の歴史について論述した後,Ovid,PubMed,CINAHL,MEDLINEを用いてキーワード「cardiopulmonary resuscitation」と「backboard」で検索した結果,16件の文献を抽出した。結果:文献を背板が有効,条件により有効,無効に分けて内容を検討した。結論:背板の効果は,背板の大きさや挿入方向,心停止患者の体重,マットレスの硬さにより異なるため,常に有効というわけではない。したがって,ベッド上での胸骨圧迫に背板をルーチンに使用しないとならないというものではなく,マットレスの変形が大きく,やりづらさを感じる場合には使用を考慮してもよい。
著者
前田 正憲 前川 祐介 戸谷 祐美 片井 聡 務台 均
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.415-423, 2021-08-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
28

要旨:慢性期脳卒中患者に対する2週間の反復性経頭蓋磁気刺激と作業療法による変化を調査した.その結果,介入後1ヵ月の上肢麻痺と生活の中での麻痺側上肢の使用頻度に有意な変化がみられた.介入前から1ヵ月後の臨床的に意義のある最小の変化量に関連する因子は, Fugl-Meyer assessmentでは介入前の麻痺が中等度,左側麻痺,Motor Activity Log-Quality of Movementでは手指の筋緊張が低いことであった.今回の結果から,作業療法を行っていく上で上肢麻痺が中等度で非利き手麻痺の場合はより麻痺の改善に向けた介入方法の比重を増やすこと,また手指の筋緊張の程度に注意を向け,その軽減に向けた介入方法や退院後の指導を行うことが有効である可能性が示唆された.