著者
大星 航 天川 雅夫 加藤 亮二
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.673-679, 2014-11-25 (Released:2015-01-10)
参考文献数
18

一般的に,体の調子を整えることができると称する食品を機能性食品と呼んでいる.最近では,予防医学的な観点から免疫賦活作用を示す機能性食品が利用され,中でも,βグルカン及び乳酸菌は腸管関連リンパ組織gut-associated lymphoid tissue(GALT)に存在するリンパ球を活性化するなど種々の免疫賦活作用を示すことから,この分野に広く利用されるようになった.しかしながら,βグルカン及び乳酸菌の単独での利用と比較して両者の混合物による免疫賦活作用の効果等について明らかにした報告がないことから,その有用性について検討した.方法はβグルカン及び乳酸菌それぞれ単独と,両者の混合物をマウスに経口投与し,抗原免疫時のアジュバント効果を複数の免疫部位について検討した.その結果,腹腔への抗原投与にβグルカン及び乳酸菌の混合物の経口投与を併用すると,それぞれ単独での利用と比べて有意に抗体価が上昇し,さらに,早期の抗体産生を促した.また,in vitroでのマクロファージの貪食能効果を検討したところ,βグルカン及び乳酸菌の混合物はマクロファージの貪食能を有意に増強させた.以上の結果から,βグルカン及び乳酸菌の混合物は,それぞれ単独での利用と比較して両者による協同的作用によって腸管免疫系を強く活性化することが示唆され,また抗体産生時のアジュバント物質として利用可能と考えられた.
著者
鈴木 栄幸 加藤 浩 佐々木 真理
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.93(1996-CE-041), pp.33-40, 1996-09-20

本報告では、プログラミング協同学習ソフトウェア「あるごありーな」を利用した実験授業のインタラクション分析結果について述べる。「あるごありーな」は、プログラミングを含むソフトウェア作成技術育成を目的とした対戦型相撲シミュレータである。学習者は、力士の動きをプログラム言語を使ってプログラムし、他人の力士と対戦させる。対戦を活動の中心におくことは、強い力士を作ることを共通に志向する実践共同体の形成を支援する。この共同体の中で生徒らは自分の位置、すなわちアイデンティティを確立するともに、ソフトウェア作成技術を身につけていくのである。ビデオ分析結果により、「あるごありーな」が生徒らによるプログラミングの実践共同体の形成・維持を支援すること、学習はその共同体内でのアイデンティティの変容過程として捉えられることが示された。
著者
小林 由実 和田 真 山田 和 加藤 邦人 上田 善博 小川 宣子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.164, 2012 (Released:2012-09-24)

【目的】天ぷらの衣は揚げる工程での具材やおいしさにも影響を及ぼす。すなわち天ぷらのおいしさは揚げた後の具材と衣の両面から評価を行うが、本研究では揚げ温度が衣の品質に及ぼす影響について衣の水分や物性だけでなく、異なる揚げ温度において水分蒸発により発生する気泡、油面の波を経時的に測定し、画像解析を行った。これにより油の中で起こる現象や天ぷらの状態を推定し、天ぷらの衣がおいしく出来上がる要因を明らかにすることを目的とした。【方法】天ぷらはさつまいも(直径46±1mm、厚さ8mmの輪切り)に衣(薄力粉:卵:蒸留水=30:12.5:37.5)をつけ、160℃、180℃、200℃で4分間揚げ調製した。天ぷらの衣をクリープメータによる破断応力測定から破断応力・もろさ、破断応力波形を微分波形(破断応力の差/ひずみ率の差)に変換し、得られたマイナスピークの数から衣の気孔数、値から気孔の大きさを推定した。また、衣をつけた具材の水分量を揚げ工程で経時的に測定するとともに気泡の発生による油の表面の揺らぎを画像処理によりコントラストとして捉え、水分蒸発の過程を推定した。【結果】180℃や200℃で料理された衣の破断応力は160℃に比べ値は大きく、マイナスピークの数は多かった。また、マイナスピークの値は油の温度が上がるにつれて大きくなった。これは、180℃・200℃で揚げた衣はグルテンが凝固し、そこに大きな気孔が多く存在していることが推定できる。この原因として180℃や200℃での揚げた場合の水分蒸発量は20秒までに顕著に見られ、それ以降は低下して行ったが、160℃の場合は細かな気泡が継続し水分蒸発が不十分であった。これより、具材を投入後、20秒までの水分蒸発量が衣の出来上がりに影響を及ぼしていることが考えられた。
著者
銭谷 誠司 加藤 恒彦
出版者
京都大学生存圏研究所
雑誌
生存圏研究 (ISSN:1880649X)
巻号頁・発行日
no.14, pp.62-77, 2018

宇宙プラズマ研究では、電磁場の中で荷電粒子の運動を解き進めるプラズマ粒子シミュレーション(Particle-in-cell; PICシミュレーション)が広く活用されている。本稿では、相対論的な粒子運動および全体運動を伴う相対論的プラズマ系をPICシミュレーションで扱うための数値解法を、大きく2つのカテゴリに分けて解説する。前半は、Sobol法などの粒子分布を静止系で初期化する数値解法を紹介する。そして、このような粒子分布にローレンツ変換を施す方法を解説する。後半は、粒子運動の時間積分法としてBoris法とvay法を紹介し、相対論的プラズマ流に特有の数値問題を議論する。This tutorial article describes numerical methods to deal with a relativistic plasma in particle-in-cell (PIC) simulation. We first overview numerical methods to in itialize particles that follow relativistic velocity distribution functions. Then we describe how to Lorentz-boost the plasma distribution. Next, we introduce two particle integrators, the Boris method and the Vay method. We further present a numerical problem in a magnetized plasma ow at a relativistic speed. It is found that the Boris solver leads to a numerical boost in the momentum space, which depends on the square of the timestep.
著者
加藤 祐三
出版者
東京大学大学院総合文化研究科附属アメリカ太平洋地域研究センター
雑誌
アメリカ太平洋研究 (ISSN:13462989)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.9-18, 2005-03

The aim of this article is to reconsider the meaning of the Treaty of Peace and Amity between Japan and the United States of America signed at Yokohama on March 31, 1854 and to place it in the context of world history and Japanese history. When proceeding with the analysis, I considered three issues: (1) war and diplomacy two expressions of international politics, which are still as important today as in the 1850s given current international politics; (2) a comparison of Japan-U.S. diplomatic power, which is the key when negotiations take place between states; and (3) the avoidance of outdated views of history, which is important to understanding modern history. Since Commodore Perry's expedition to Japan and the Japanese encounter with the West was a big event in our history, many documents and materials are reserved in both countries including pictures and prints. Although it is necessary to analyze this chain of events-the cause, the process and the results of the first official U.S.-Japan political negotiation-by a pluralistic approach, this article exclusively analyzes two factors: one is the purpose of Commodore Perry's expedition to Japan (cause) and the other is the negotiation between Japan and the U.S. (process), that enabled both sides to avoid war through the talks of Uraga in 1853 and of Yokohama in 1854. The Treaty of Peace and Amity (result), which eventually led to the opening of Japan, can be highly evaluated because it was a negotiated treaty that was not accompanied by war. Modern Japan was founded on "the modern international regime of four pieces of polity" (the Great Powers, the colony, the loss treaty nation and the negotiation treaty nation), which later changed its feature in 1895, 1905 and 1945.
著者
赤倉 貴子 東本 崇仁 加藤 浩一郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.42036, (Released:2018-06-29)
参考文献数
18
被引用文献数
3

本研究では,法令文を命題論理式で表現することができることに着目して,特許法学習のための問題解決過程モデルを定義した.そしてそのモデルを利用した学習支援システムを開発した.開発した学習支援システムは,法律条文を組み合わせて考えるような問題に対して,問題構造を直接計算可能な命題論理による表現として保持している.学習支援システムを利用する学習者は,同様に命題論理によって解答を組み立てる.学習支援システムは,システムが生成した正答と学習者の入力した解答の差分を計算し,学習者に誤りの箇所を段階的にフィードバックすることができる.システムの評価実験を行った結果,学習者は段階的フィードバックを高評価し,本研究で定義したモデルに基づいて問題を解く意識を強化できる可能性があることが示唆された.
著者
松澤 正 加藤 仁志 飯塚 直貴 久慈 晋也 高橋 宙来 田中 俊輔
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.271, 2011 (Released:2011-08-03)

【目的】 臨床的にマッサージは,生体に与える影響として,血液リンパ循環の改善,筋緊張の抑制,筋弛緩障害の改善などがあるが,生体に与える生理学的影響に関する科学的な証明がされていないものが多いとされている(松澤ら,2008).先行研究として,3分間の高強度運動後のマッサージによる筋硬度の変化と持続効果に関する研究(小粥ら,2009)によると,筋硬度が急激に低下し,その後30分までは有意に低下したと報告されている.マッサージ前後における筋硬度に関する研究(肥田ら,2010)によると,マッサージ施行後に筋硬度は低下すると報告されている.しかし,この研究は,対象者が7名と少人数であり,またマッサージの手技が不明であったり,持続効果の検討は行われていないなど,不十分な面が考えられた.そこで,本研究では,マッサージ施行直前,直後,15分後の筋硬度を測定することで,マッサージによる筋硬度の変化とその効果の持続を検討することを目的とした. 【方法】 対象者は健常成人20名とした.対象候補者に対して,予め十分に説明し,書面による同意を得た上で本研究の対象者とした.対象者は,下腿を露出できる服装で治療ベッド上に背臥位で10分間安静にした.その後,腹臥位になり,筋硬度を測定したのち,左腓腹筋のマッサージ(軽擦法,揉捏法)を,軽擦法1分間,揉捏法5分間,軽擦法1分間の順で,計7分間施行した.筋硬度はマッサージ直後と15分後に測定した.測定部位は両側の腓腹筋内側頭とし,最大膨隆部にマークし,その部位の筋硬度を5回測定しその平均値を採用した.統計学的分析はマッサージの有無と時間の二要因の二元配置分散分析を用いて,マッサージによる筋硬度の変化を検討した.有意水準は5%とした. 【結果】 マッサージ側と非マッサージ側のマッサージ直前の筋硬度には有意差は認められなかった.二元配置分散分析の結果,マッサージ側と非マッサージ側に有意な変化パターンを示し,マッサージ側の腓腹筋内側頭の筋硬度がマッサージ後に有意に低下し,その効果は15分後まで持続した. 【考察】 揉捏法の手技は指掌を皮膚に密着し,筋肉をつかみ圧し搾るようにして動かす手技(網本,2008)であるため,筋ポンプ作用に近い効果が得られたと考える.この効果により静脈還流量が増加することで,心拍出量が増加し末梢血管の血流が改善したと考える.血流改善することでATPの生産が促進され,筋小胞体上のカルシウムポンプが働くことで,アクチンとミオシンの科学的結合が切れ,筋硬度が低下したと考える.また外力が加わることで,アクチンとミオシンが引き離され弛緩すると言っている(黒川ら,2008).このことから,マッサージにより外力が加わったことで筋硬度が低下したと考える.
著者
井上 雅子 徳野 貴子 加藤 りか 池田 政身
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.15-17, 2012-02-01 (Released:2012-04-16)
参考文献数
8

56歳,男性。硝酸運搬船で作業中に98%の硝酸で受傷,作業服と長靴を取るのに手間取り約10分後より流水で洗い流し,着岸まで約1時間風呂で水につかっていた。着岸後近医受診しワセリンを塗布され,約48時間後に当院を受診した。初診時,左上腕,両側臀部から大腿,両側下腿にかけて受傷部周囲に水疱形成がみられ,中心部は黒色から黄色の痂皮が付着したII度深層からIII度の化学熱傷,両側手掌は水疱を伴い黄色に変化した化学熱傷がみられた。血栓性静脈炎の既往があり,ワルファリンカリウム,アスピリンを内服していた。入院2日目より38℃から40℃の発熱,炎症反応高値であったので抗生剤投与を行った。発熱は4日後より治まり,内服中であったワルファリンカリウム,アスピリンを中止して入院10日目にデブリードマンおよび mesh skin graft 施行した。真皮深層まで壊死に陥っていたため,移植皮膚の定着が悪く再手術を必要とした。化学熱傷の治療では,速やかに長時間洗浄することと,可能な限り早期にデブリードマンを施行することが重要である。本症例では,硝酸の濃度が極めて高かったこと,着衣をとり流水で洗浄するまでに時間がかかったこと,当院受診までに約48時間経過していたこと,さらに抗凝固剤を内服していたためデブリードマンを施行する時期が遅れたことなど,様々な理由によって深い潰瘍を形成してしまい治療に難渋した。

2 0 0 0 OA アイヌの酒 (1)

著者
加藤 百一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.285-291, 1968-03-15 (Released:2011-11-04)

本号より5回にわたリアイヌの酒の貴重な資料を著者にお願いしました。著者は北海道大学卒, 前札幌国税局鑑定官室長として北海道の実情にくわしいことはよく知られていますが, 本稿の資料の集成には多大の御苦心があったことと思います。
著者
加藤 隆雄
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.5-24, 2014-05-31 (Released:2015-06-03)
参考文献数
49

「ポストモダン」論によって影響を受けた1980年代後半の日本の教育社会学を「ポストモダン教育社会学」と呼ぶことにする。それは,「モダン」としての教育・学校制度の異化に向かったが,アリエス,ブルデューと並んでインスピレーションの供給源となったのが,『監獄の誕生』におけるフーコーの「規律訓練」の視点であった。しかし,1990年代以降の教育システムの変動によって,異化の手法で捉えられた教育・学校制度の理解は不十分なものとなり,ポストモダン教育社会学の訴求力も低下していく。他方,フーコー研究においては,2000年代以降,規律訓練の概念が「生政治」論の一部であることが明らかになるのだが,1990年代以降の教育システムは,まさにこの生政治論的視点からよりよく捉えうることをフーコー理論を概略しながら論じた。
著者
水沢 弘哉 小口 智彦 道面 尚久 小泉 孔二 三村 裕次 齊藤 徹一 加藤 晴朗
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1, pp.17-21, 2014-01-20 (Released:2015-01-30)
参考文献数
14
被引用文献数
2 3

(症例1)患者は28歳の女性.腹痛と頻尿・残尿感を主訴に産婦人科クリニックを受診した.MRI検査で膀胱頂部に接する5 cm径の腹膜外腫瘤を認め,尿膜管腫瘍の疑いがあると当科へ紹介された.下腹部正中に鶏卵大の硬い腫瘤を触知した.尿所見は正常,膀胱鏡検査で膀胱頂部の粘膜の一部に発赤を認めたが尿細胞診検査は陰性であった.尿膜管腫瘍の診断で手術を開始したが,術中迅速診断でデスモイド腫瘍と診断され,腫瘤摘除術を施行した.術後7年を経て再発転移を認めていない.(症例2)患者は71歳の男性.下腹部膨隆を主訴に当院外科を受診した.CT検査で15 cm径の腫瘍が膀胱前腔に存在し,尿膜管腫瘍の疑いがあると紹介された.下腹部に小児頭大の硬い腫瘤を触知した.尿所見の異常はなかった.膀胱鏡検査で膀胱頂部は著明に圧排されていたが粘膜面の異常はなかった.尿膜管腫瘍の診断で手術を行ったが,術中迅速診断は悪性所見なしであった.腫瘤は膀胱と連続していたため,腫瘤摘除術・膀胱部分切除術を施行した.最終診断は孤立性線維性腫瘍であった.術後5年以上経過しているが再発転移はみられていない.膀胱頂部に存在する腫瘍は尿膜管癌を念頭に手術を行うことになるが,良性腫瘍の可能性も考えて手術に臨み,過大手術とならないよう留意すべきである.
著者
加藤 新太郎
出版者
中央ロー・ジャーナル編集委員会
雑誌
中央ロー・ジャーナル (ISSN:13496239)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.3-28, 2017-06-30

民事訴訟において刑事判決の理由として認定された事実に反する事実を認定することは妨げられない。このことは、裁判の独立、両者の証明度の差異など原理的観点から正当化されるが、民事事実認定と刑事事実認定とが乖離する場合には、相応の論拠が求められる。実際には、刑事訴訟で被告が有罪となった場合には、刑事訴訟の方が民事訴訟よりも事実認定における証明度が高いことから、民事訴訟にも影響が大きく、証拠関係が大きく異なることがなければ同様の事実認定(民事責任も積極)がされることになる。これに対し、刑事訴訟で被告が無罪となった場合には、刑事無罪判決(その事実認定)は、その方向を示す有力な間接事実とされるが、直ちに民事訴訟においても責任なしとなるとは限らない。しかし、民刑それぞれの事実認定は異なっても差し支えないという原理を硬直的に捉えた審理判断であってはならない。個別ケースの当てはめにおける法的吟味・経験則の適用の適否や証拠評価の不徹底に起因するものは論外である。両者で認定・判断が異なり、ひいては結論が生じるケースについて、それが生じる契機となる要因をみつけ、相応の論拠のない乖離を可及的に発生させないようにする解釈論・運用論を確立することが必要である。
著者
加藤 淳
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.36-40, 2019-12-15

Virtual Reality特区の高校に通うカンナとキリは,ふだん誰も立ち入れない旧校舎への侵入を計画する.夜半過ぎ,工事用ロボットの開錠プロセスをハックして校舎内に入り込んだ二人の眼前に,見たことのない光景が広がる.さらに予期せぬイベントが発生し,二人の侵入劇は国家プロジェクトの命運を左右する大ニュースへ発展する.プログラムを実行したまま編集するライブプログラミングが当たり前となり,ソフトウェアのみならず物理デバイスや建物までもプログラミング可能となった未来で起きる事件の顛末を描く.
著者
畠山 正行 加藤木 和夫 石井 義之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.2567-2581, 2000-09-15

多様な科学/工学分野のドメインユーザの低いプログラム開発力を向上させるため,ユーザの母国語である自然日本語をベースとしてオブジェクト指向の構造化記述ができるオブジェクト指向記述日本語OODJを分析段階の記述言語として考案・開発した.OODJは自然日本語に対し強い構造記述性を持つオブジェクト指向の枠組みを記述モデルと構文規則の形で導入・設計された.オブジェクト指向記述環境もあわせて設計・実装してOODJに含めた.評価用に記述例を作成するとともに,数人のドメインユーザによる記述実験を行った.その結果,自然言語の持つ強い記述力の上にオブジェクト指向の構造化記述法を確立したことで記述力の高さに対する顕著な向上が認められ,設計の狙いは実現した.そのほか,プログラミング言語フリー,自然言語の範疇であることからくる記述の容易性・高い了解性,日本語一貫記述言語系の一環であることのメリットが認められ,かつ重大な欠点は見出せなかった.他の言語(主としてUML)との比較・評価も行われ改良案も提案された.以上からOODJがドメインユーザにとって十分有用な分析記述言語であることが結論された.