著者
太田 裕通 北村 拓也
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1_26-1_29, 2021-03-31 (Released:2021-03-19)
参考文献数
3

本プロジェクトは、京都大学東南アジア地域研究研究所の東棟改修に伴って、教職員や学生、留学生や訪問研究者など多様な人材が日常的に意見交換や交流ができるオープンスペースとして設置された、リサーチコモンズのインテリアデザインである。歴史的建造物である煉瓦造りの図書館と中庭への方向性を意識させる最小限の木造作を挿入し、カウンターテーブルや棚としての機能を充足させるだけでなく、この地に重層する時間が感じられる豊かな環境を顕在化させ、屋内外に一体感を与え、窓辺に光を受ける魅力的な中間領域をつくり出した。本稿は、実際に改変する物理的環境を超えてデザイン対象を捉え直し、場所や人々が抱く潜在的な価値を読み取り、それらをより高め顕在化するように秩序立てる建築的思考を応用したデザインプロセスを詳細に記述したものである。
著者
北村 陽子
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.55-75, 2010-05

第二次世界大戦後のドイツにおける戦争障害者をめぐる状況を確認することは,大変困難な作業となる。なぜなら,第二次世界大戦直後のドイツは,四つの国によって分割統治されており,それぞれの占領地区では戦争障害者を含む戦争によって損害を被った犠牲者への対応が全く違っていたことに加えて,こうした違いに起因して,1949年に成立した二つのドイツ国家の政策が異なっていたためである。これらの方針の違いを理解するには,それ以前の,戦間期における戦争犠牲者(おもに第一次世界大戦の戦争障害者・戦没兵士遺族)をめぐる援護政策や彼らの置かれた境遇をふまえた上で精査し評価することが必要である。本稿では,第二次世界大戦後の戦争障害者をめぐる状況を理解するための準備作業として,戦間期の戦争障害者の社会的な位置を描き出すことを課題とし,先行研究の成果を整理することとする。その際には,戦争障害者援護を規定する法令,戦争障害者の意見を代弁する組織,戦争障害者の自己意識と他者からの認識という三つの分野に限定して行なう。
著者
北村 次一
出版者
経営史学会
雑誌
経営史学 (ISSN:03869113)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.47-70, 1971-11-10 (Released:2009-10-14)

The main purpose of the article is to analize the last stage of developments in the modern entrepreneurship in Germany. After the foundation of the Reich, crisis in 1873 marked the gradual transformation of the lasses-faire economy of free competition into the monopolistic capitalism. Concentration movement was the main feature of the age. The writer describes the two instances. The one is Vereinigte Maschinenfabrik Augsburg und Maschinenbaugesellschaft Nürnberg A.G., a case of a<offene Fusion>of two mashine companies in Bavaria in 1898. The another case of merger between Hegenscheidt and Caro was more complicated. The two groups which had been highly competitive, were, through a trasitional form agreed in 1887, finally fused into Oberschlesische Eisenindustrie A.G. für Bergbau und Hüttenbetrieb in 1889. A typical metamorphosing entrepreneur was Einil Kirdorf, who was at the same time general manager of Gelsenkirchener Bergwerk-A. G., succeeded in joing the greatest coal cartel, Rheinisch-westfälisches Kohlensyndikat in 1893 and took up his post as chairman.The writer concludes that in the eighteen-nineties, with the advance of concentration into large scale enterprise (cartelisation, trustification), a new type of entrepreneurs began to be originated. A leading personalily, seating on the Pupervisory Board (Aufsichtsrat) or becoming a top (or a member) of Managing Board (Vorstand), fulfiled his entrepreneural tasks through cartel, trust or “Konzern”.
著者
北村 直彰 森田 紘平
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-22, 2019-12-30 (Released:2020-06-20)
参考文献数
27

Ontic structural realism (hereafter OSR) is one of the most significant ontological attitudes toward modern physics. On close examination, OSR can be classified into several versions in terms of the relative ontological status of objects and relations. Previous studies have not carefully dealt with the differences among the several versions of OSR, mainly because the meanings of some metaphysical concepts are ambiguous. Among them, one way to formulate OSR is to appeal to the idea of identity. However, “identity” can be regarded as either numerical identity or essence. In this article, the derivations of OSR’s minimal statements from the cases in quantum theory give a clear-cut explanation about relationships between metaphysical and scientific statements and show that the formulation of OSR should be based on essence.
著者
北村 明彦 阿部 巧 藤原 佳典 新開 省二 清野 諭 谷口 優 横山 友里 天野 秀紀 西 真理子 野藤 悠 成田 美紀 池内 朋子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.134-145, 2020

<p><b>目的</b> 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施が進められる中,生活習慣病やフレイル関連の各因子が地域在住高齢者の自立喪失に及ぼす影響の強さ(ハザード比)と大きさ(寄与危険度割合)を明らかにする。</p><p><b>方法</b> 群馬県草津町において,2002~11年の高齢者健診を受診した65歳以上の男女計1,214人(男性520人,女性694人)を対象とし,平均8.1年(最大13.4年)追跡した。自立喪失は,介護保険情報による要介護発生または要介護発生前の死亡と定義した。生活習慣病因子として,高血圧,糖尿病,肥満,腎機能低下,喫煙,脳卒中・心臓病・がんの既往等を,機能的健康の関連因子として,フレイル区分,低体重,貧血,低アルブミン血症,認知機能低下を採り上げた。フレイル区分は,phenotypeモデルの5つの構成要素(体重減少,疲弊,活動量低下,歩行速度低値,握力低値)のうち3項目以上該当をフレイル,1~2項目該当をプレフレイルと定義した。Cox比例ハザードモデルを用いた回帰分析により,各要因保有群における自立喪失発生の多変量調整ハザード比(HR),集団寄与危険度割合(PAF)を算出した。</p><p><b>結果</b> 自立喪失発生者数は475人(要介護発生372人,要介護発生前死亡103人)であった。対象者全体でみると,自立喪失の多変量調整HRはフレイル,プレフレイル,認知機能低下,脳卒中既往,喫煙において1.3~2.2倍と有意に高値を示した。自立喪失のPAFは,プレフレイルが19%,フレイルが12%と他の要因に比し高率であった。男性では自立喪失のPAFは,プレフレイルが19%と最も大きく,次いで喫煙が11%であり,女性では,フレイル,プレフレイルがともに18%,腎機能低下が11%であった。前期高齢者では,フレイル,プレフレイルの他に脳卒中既往,貧血,低アルブミン,認知機能低下,喫煙,糖尿病における自立喪失の多変量調整HRが有意に高く,自立喪失のPAFは,プレフレイルが18%,フレイルが13%,喫煙が11%であった。</p><p><b>結論</b> 高齢者健診の受診者を対象とした検討の結果,自立喪失に寄与する割合が最も大きい要因はフレイル,プレフレイルであった。前期高齢期からフレイル予防,ならびに生活習慣病の予防・改善を図ることが集団全体の自立喪失の低減に寄与すると考えられた。</p>
著者
北村 文雄
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, 1963-03-30
著者
澤原 光彦 北村 直也 末光 俊介 青木 省三
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1353-1359, 2015-12-01 (Released:2017-08-01)

わが国の自殺死亡者は年間3万人を超える事態が1998年から14年間続いた後,2011年から減少に転じ,2014年には25,000人台に減少したが,若年者の自殺死亡率は依然としてきわめて高い水準にあり,15〜39歳までの各年代の死因の第1位を「自殺」が占めている.本稿では,警察庁統計,自殺対策白書,自殺総合対策大綱,各種レビューを参照して,若者の自殺の特徴を紹介した.次いで,学校,地域,救命救急センターで現在行われている自殺防止活動の一部を紹介した.さらに,救命救急センターにおいて自殺企図者に精神科医が対応するときに,注意を要する点を述べた.最後に,思春期・青年期に自殺企図を生じ,そのために筆者が関与した症例のうち代表的な事例3例を提示し,それぞれに短く解説を加え,私見を述べた.
著者
塚本 克彦 柴垣 直孝 齋藤 敦 長田 厚 北村 玲子 今井 佳代子 樋泉 和子 島田 眞路
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.515-519, 1999-08-01 (Released:2010-10-14)
参考文献数
13
被引用文献数
4 5

ユーカリエキスを配合した入浴剤のアトピー性皮膚炎に対する有用性を検討するために, セラミド誘導体などの油性保湿剤を配合した入浴剤を対照とし, これにユーカリエキスを配合した入浴剤を用いて臨床試験を行った。対象はアトピー性皮膚炎患者31例(ユーカリエキス配合入浴剤使用群15例, 対照入浴剤使用群16例)で, 入浴剤を4週間使用してもらい, 2週間毎に診察した。その結果, 1. 皮膚所見に関しては, 「そう痒」, 「紅斑」, 「落屑」において両群とも有意な改善が認められたが, 両群間に有意差は認めなかった。2. 「全般改善度」, 「有用性」に関しては, ユーカリエキス配合入浴剤使用群の方が対照入浴剤使用群に比し優れた傾向が認められた。特に, 入浴剤を20回以上使用した患者においては, 「有用性」に関して, ユーカリエキス配合入浴剤使用群(13例)の方が対照入浴剤使用群(12例)に比し有意に優れていた。以上の結果より, ユーカリエキスを配合した入浴剤の使用は, アトピー性皮膚炎の治療において一つの有用な補助療法となる可能性が示唆された。
著者
山合 洋人 早貸 千代子 菱山 玲子 北村 篤司 小塩 靖崇 佐々木 司 Hiroto YAMAAI Chiyoko HAYAKASHI
出版者
筑波大学附属駒場中・高等学校研究部
雑誌
筑波大学附属駒場論集 = Bulletin of Junior & Senior High School at Komaba, University of Tsukuba (ISSN:13470817)
巻号頁・発行日
no.58, pp.130-138, 2019-03

成人の精神疾患全罹患者のうち50%は思春期で発症するといわれている1).しかしながら,現行の教育課程では精神疾患とその対処に関する正しい知識を学ぶ機会がないために,本人も周囲も不調になったことに気付きにくく,本格的な病気の進行・長期化といった状態を招いている可能性が高い.そこで,中学生を対象に心の不調や病気の予防・早期発見・早期対応の正しい知識と対処法(=メンタルヘルスリテラシー.以下,MHL)に関する教育プログラムを実践し,その教育的効果について検討した.MHL 教育プログラム実施前後の自記式質問紙調査で「精神疾患と対処の知識」「援助希求行動及び援助行動の認識・意思」「心の不調時における相談先」のそれぞれにおいて数値の向上・改善が示され,教育的効果が認められた.
著者
北村 英哉
出版者
関西大学大学院心理学研究科
雑誌
関西大学心理学研究 (ISSN:21850070)
巻号頁・発行日
no.9, pp.21-34, 2018-03

本研究はJSPS科研費助成,基盤研究(C)13610167「画像による説得的コミュニケーションの処理様式を規定する要因についての研究」(研究代表者:北村英哉)に基づいたものである。In this study, I investigated the effects of affect and multi-facet thinking style (MFTS) on the processing of persuasive messages in ads. First, the MFTS scale was constructed and its validity was tested. When MFTS was high, participants did not rely on and attribute the cause of an event to powerful others. And under the hypothesis that negative mood would facilitate a deliberative thinking style and rejection of a groundless message, an experimental study using TV shopping movie was executed. The results showed that those with higher MFTS scores were especially rejecting of rapid, groundless movie ads, although affective influence on thinking style was not observed. The validity of an effective MFTS scale was confirmed and affective influences were discussed.本研究ではメッセージ処理の自動的/熟慮的処理の2つの処理様式を取り上げ,これを規定するメッセージの受け手の感情状態および個人差変数である多面的思考傾向,認知欲求を取り上げた。研究1では多面的思考尺度を構成し,多面的に考えない者が事象の原因を権威ある他者のせいだと帰属しがちであることが確認された。研究2では,認知欲求が熟慮的思考様式の現れである複雑な刺激の中の矛盾する情報への着目の程度に影響を与え,不一致情報の再生を高めることが確認された。研究3において動画による説得的コミュニケーションである広告を刺激として速い動画,ゆっくりとした動画の2種類と文章広告を比べ,感情状態と個人差変数との関わりを調べた。その結果,多面的思考傾向は信憑性に欠ける速い動画メッセージへの評価を低下させることが示された。感情の効果は十分見られなかったが,今後刺激の感情価を勘案した研究計画の必要性が示された。
著者
幸福 智 久保 雄広 北村 立実 松崎 慎一郎 松本 俊一 山野 博哉 西 浩司 菊地 心 吉村 奈緒子 福島 武彦
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.235-243, 2020-09-28 (Released:2020-11-30)
参考文献数
27

本研究では,全国の一般市民及び霞ヶ浦流域の住民を対象にウェブアンケート調査を実施し,霞ヶ浦が有する生態系サービスについて,選択型実験(コンジョイント分析)を用いて経済価値評価を実施した.選択型実験では,漁獲量(供給サービス)・湖岸植生帯(調整サービス)・希少種(基盤サービス)及び水質(文化的サービス)の 4 つの属性からなる選択セットを提示し,望ましい案を選択してもらうようにした.調査の結果から,生態系サービスが劣化した状態,現状及び 2040 年の将来の値(良好な状態)の水準の値を設定し,値の変化に対する支払意思額(WTP)を求め,これに人口を乗じて生態系サービスの経済価値を求めた.霞ヶ浦の生態系サービスに対する経済価値は,現状は全国では 1 兆 302 億円,県では 253 億円,流域では 70 億円, 2040 年の将来(望ましい状態への改善)の場合は,全国では,1 兆 4,264 億円,県では 324 億円,流域では 89 億円という結果となった.
著者
西 浩司 久保 雄広 北村 立実 松崎 慎一郎 松本 俊一 山野 博哉 幸福 智 菊地 心 吉村 奈緒子 福島 武彦
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.245-256, 2020-09-28 (Released:2020-11-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究では,ベスト・ワースト・スケーリング手法(BWS)を用いて,霞ヶ浦が有する代表的な生態系サービス(農産物,水産物,飲料水等の供給サービス,気候の調整サービス,観光,景観等の文化的サービス,多様な動植物の育成等の基盤サービス)の重要度を明らかにすることを目的として,全国及び霞ヶ浦流域を対象にしたウェブアンケートを実施した.BWS では,霞ヶ浦の生態系サービス(恵み)の組み合わせを変えて選択肢として提示し,最も重要と思うもの(Best)と最も重要でないと思うもの(Worst)を選んでもらうことを複数回繰り返すという方法で実施し,Best と Worst の選択回数の比率を生態系サービスごとの重要度の評価の指標とした.霞ヶ浦については調整サービスの「水質の浄化」,供給サービスの「水の供給」,基盤サービスの「生物の生息場所」など,湖沼の水環境保全により維持される生態系サービスが重要と評価された.この結果を食料の供給(農産物,水産物)とのトレードオフの可能性も踏まえて,今後の施策の検討へ反映することが必要と考えられた. また,今後の観光振興策の検討に資する情報を得るために,同じ手法を用いて霞ヶ浦周辺の観光地を訪れている人に現地アンケートを行い,生態系サービスの重要度を評価した.「農産物」,「水産物」に加え「生きもの」が重要と評価されたされたことから,生きものの保全をブランド化した産物の創出等が振興策として有効ではないかと考えられた.