著者
金 成主 青野 真士 原 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.83, pp.19-24, 2010-06-11
被引用文献数
1

単細胞アメーバ・真性粘菌Physarumの光刺激回避行動に着想を得た「綱引きモデル」という並列探索アルゴリズムを提案する。このモデルでは、アメーバの複数の分枝が、環境情報を収集する探索エージェントとして機能する。アメーバは、その総リソース量(総体積)を保存しつつ、複数の分枝を伸縮させることで光刺激を受容し、どの分枝を伸長させるかを決定する。このとき、保存則を介して生じる分枝間の「非局所的な相関」が、「多本腕バンディット問題」における"exploration-exploitation dilemma"と呼ばれるトレードオフ状況の効率的解決に寄与することを示す。また、他の分枝から伝わる光刺激情報がパフォーマンスに及ぼす影響についても報告する。
著者
楊 静宏 川原 正広 五味 壮平 新貝 鉚蔵
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第20回全国大会(2006)
巻号頁・発行日
pp.2, 2006 (Released:2006-12-07)

人間乱数とは人間が作る乱数列のことである。人間が作る乱数については、その性質、構造、病気との関係、脳機能との関連など、様々な研究がなされてきた。本研究では、人間が作り出す乱数の性質がその生成方法によりどのように影響を受けるかを考察する。
著者
伊藤 謙 宇都宮 聡 小原 正顕 塚腰 実 渡辺 克典 福田 舞子 廣川 和花 髙橋 京子 上田 貴洋 橋爪 節也 江口 太郎
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.157-167, 2015-03

日本では江戸時代、「奇石」趣味が、本草学者だけでなく民間にも広く浸透した。これは、特徴的な形態や性質を有する石についての興味の総称といえ、地質・鉱物・古生物学的な側面だけでなく、医薬・芸術の側面をも含む、多岐にわたる分野が融合したものであった。また木内石亭、木村蒹葭堂および平賀源内に代表される民間の蒐集家を中心に、奇石について活発に研究が行われた。しかし、明治期の西洋地質学導入以降、和田維四郎に代表される職業研究者たちによって奇石趣味は前近代的なものとして否定され、石の有する地質・古生物・鉱物学的な側面のみが、研究対象にされるようになった。職業研究者としての古生物学者たちにより、国内で産出する化石の研究が開始されて以降、現在にいたるまで、日本の地質学・古生物学史については、比較的多くの資料が編纂されているが、一般市民への地質学や古生物学的知識の普及度合いや民間研究者の活動についての史学的考察はほぼ皆無であり、検討の余地は大きい。さらに、地質学・古生物学的資料は、耐久性が他の歴史資料と比べてきわめて高く、蒐集当時の標本を現在においても直接再検討することができる貴重な手がかりとなり得る。本研究では、適塾の卒業生をも輩出した医家の家系であり、医業の傍ら、在野の知識人としても活躍した梅谷亨が青年期に蒐集した地質標本に着目した。これらの標本は、化石および岩石で構成されているが、今回は化石について検討を行った。古生物学の専門家による詳細な鑑定の結果、各化石標本が同定され、産地が推定された。その中には古生物学史上重要な産地として知られる地域由来のものが見出された。特に、pravitoceras sigmoidale Yabe, 1902(プラビトセラス)は、矢部長克によって記載された、本邦のみから産出する異常巻きアンモナイトであり、本種である可能性が高い化石標本が梅谷亨標本群に含まれていること、また記録されていた採集年が、本種の記載年の僅か3年後であることは注目に値する。これは、当時の日本の民間人に近代古生物学の知識が普及していた可能性を強く示唆するものといえよう。
著者
菅原 正 高倉 克人
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

1)光学顕微鏡観察およびフローサイトメトリによるベシクル集団解析のデータより、ベシクル内でのDNAの自己複製とベシクルの分裂が連動するダイナミクスを解明した。2)親ベシクルの自己生産で生じる娘ベシクルに、枯渇したヌクレオチドを包みこんだ運搬ベシクルを融合させることで、娘ベシクルに自己増殖能を獲得させた。3)ベシクル型人工細胞には、外的および内的刺激に対して、それぞれ選択的に活性化される4つのステージ (摂取、複製、成熟、分裂) があること、さらに、各ステージでの内部的変化が、ベシクルを次のステージへと駆動していることを明らかにした。
著者
道前 洋史 若原 正己
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.33-39, 2007-03-31

表現型可塑性は生物が環境の変化に対して示す適応的反応であり、理論的にも適応進化できることが報告されている。この場合、自然淘汰は、個々の表現型ではなく反応基準を標的としているのである。しかし、表現型可塑性を適応進化させる生態的・環境的条件の実証的研究結果が十分にそろっているとはいい難い。本稿では、この問題について、北海道に生息する有尾両生類エゾサンショウウオ幼生の可塑的形態「頭でっかち型」を題材に議論を進め、表現型可塑性について、分野横断的(生態学的・生理学・内分泌学的)なアプローチも紹介する。
著者
石原 正雄
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会近畿支部研究報告集. 計画系 (ISSN:13456652)
巻号頁・発行日
no.17, pp.93-96, 1977-05-02

人類が住居に炉を作り主に採暖のために火を利用したことは、生産性・快適性の上昇でありまた生活圏の拡大を可能にし、さらに生産性を高めることになった。しかしそれは室内空気の汚染という現代まで存在する不利をもたらした。発生する煙に惱まされて、はじめて屋根に排煙口があけられたことは換気技術・空調技術の第一歩だといってよい。給気のための開口は出入口や多くの隙間であった。從って壁に孔をあけて換気を図るということは余り考えられなかったと思われる。窓はむしろ明り取りのためあけられ、雨・風の侵入を防ぐために角、雲母,石の薄片,クロスなどで被われ、はめ殺しであった。窓建具の普及は1700年代であろう.換気のため窓建具を開けたとき生ずるドラフトを防ぐ工夫は18世紀に多く、ホッパー窓の原型は1784年にst.Thomas Hospitalに設計られた.これにつづいて孔あき金属枝,ガラスルーバー,風車型ベンチレーターなどが用いられた.が多くは採光のロスがあり、全く満足できるものはなかった.ヴィクトリア時代,労働者階級の住宅の換気不良は社会の問題となった."室の換気は容易なことであるが大衆の大部分はその必要性を理解しておらず、またそれを彼らに教え、実際に設置する義務をもつ人々さえも分っていなかったのである.われわれの住居は換気不良であるというだけでなく、建築家が彼の芸術や才能を惜しまずつぎ込を建物は多くの部分において換気のたあの処置を全く欠いており、またそのような処置をおこなうことは極めて困難あるいは不可能であるように作られていた."(Tomlinson)その時代の衛生学者、技術者、物理学者によって、多くの関心がこの問題(建物の換気)に一致して向けられ、また政府(イギリス)の査問の対象ともなった.しかしそこでは住居の自然換気については殆んど述べられておらず事態の転換を政府に託すことはできなかった.自然換気の基礎は1850年にWalkerによって与えられた.(i)窓は光を入れるが空気は入れない、換気は別に調達せればならない.(ii)給気口と排気口が共に必要である.(iii)入ってくる空気はドラフトをさけるため温めるべきである.(iv)給気口と排気口はうまく配置されねばならない.(v)換気用開口は恒久的なものでなければならない.一旦閉鎖されると、そのまいになってしまう.これらの原則は今日でも改める余地はないし、また今日でも実行されていないものがある.(例(iii))Walkerは壁の中空部を給気シャットに用い給気を温めることを提案している.後の工夫であるTobin-Tubeは同じ目的のための器具である.孔あき煉瓦がすべてそれに代ったが、それがうまく作用したとはいえない.それはフリーエリアが小さく取入空気量は僅かなものである.当時,Walkerの原則はほとんど知られなかったが、住居換気改善の最近の計画は,恐らく特に意識せずに.彼の原則によっており.又Dr.Neil Arnottの教示によっている.風力だけにたよる換気が実際上うまくゆかないことは昔から知られており、他の方法が種々試みられた.16世紀,Aglicolaは鉱山の換気を,その立坑の底部の焚火によって行った.このアイデアが建築に応用されたのは1723年、Desaguliersが下院議事堂の換気を促進するために試みてからのことである.機械送風は1734年以来用いられたがDr.Reidは1836年に下院議事堂が再建された時,再びこの熱的換気法を用いた,De Chabannesはガスシャンデリアからの熱をCovent Garden劇場の換気に利用した.電動送国機が完成されると,他の換気促進の方式はほとんど消え去った.
著者
齋藤 克憲 橋田 秀明 岩代 望 大原 正範 石坂 昌則 近藤 哲 加藤 紘之
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.1829-1833, 2004 (Released:2011-06-08)
参考文献数
24

今回我々はIIc型早期胃癌と診断され, 病理組織所見にて直下にアニサキスによる好酸球性肉芽腫を認めた1例を経験したので報告する. 症例は77歳の男性. 20年来の胃潰瘍の診断にてH2-blocker, 消化性潰瘍治療薬を内服していた. 平成14年9月, 定期検診目的の胃内視鏡検査にて胃体下部大彎側にIIc+III型病変を指摘, 組織生検にてgroup Vと診断され, 深達度がsm以上の可能性があるとして外科紹介, 幽門側胃切除術を施行した. 腫瘍は0.8×0.8cmのIIc型乳頭腺癌で深達度sm1, またそのほぼ直下の固有筋層内に好酸球性肉芽腫を認め, この中心部にアニサキス虫体を認めた. 連続切片からアニサキスはIIc部分から刺入したと思われた. アニサキスが癌や潰瘍など粘膜の脆弱部から胃壁内に進入する可能性はすでに指摘されているが, 本症例のごとく慢性化した場合, 虫体が鏡視下に視認出来ないため好酸球肉芽腫を癌の一部と誤認する可能性があり, 診断上注意が必要である.
著者
吉原 正彦
出版者
青森公立大学
雑誌
青森公立大学経営経済学研究 (ISSN:13419404)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.36-51, 1996-03-11
被引用文献数
1

The purpose of this study is to give a clearer explanation as to what the Harvard Circle is, which emerged in the 1930s. It is based on the materisls I gathered at Baker Library Archives at the Harvard Business School searching for the locus to Lowrence J. Henderson's activities mainly during the period of 1927 through 1932. In 1927 Henderson encounterd Pareto's Traite de Sociologie Generale, which he praised as the greatest scientific construction in this century. He lectured on Pareto's Sociology for the course of "Mills Lectureship in Philosophy" at California University, and discussed the possibility of scientific approach to human behavior in some of his papers : "An Approximate Definition of Fact" (1932) ; "Science, Logic, and Human Intercourse" (1933). In these papers, he pointed out the organic characteristics of experience and the emotional involement in thoughts as the source of errors in scientific system of thought. In order not to fall into errors, we must not analyse things solely from the perspective of "cause and effect, " instead, we need to establish a conceptual scheme based on thorough investigation of independent nature of things and human emotions as well. He further claimed that even the analysis with that scheme, it is impossible to escaps from being the approximate approach to the fact.
著者
平田 圭二 東条 敏 浜中 雅俊 松原 正樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.20, pp.1-8, 2014-08-18

本発表では,現在我々が進めている計算論的音楽理論に関するプロジェクトについて述べる.我々が提案する計算機の存在を前提とした音楽の意味論とその意味論に基づいて構築された音楽に対する代数的な計算体系について,ゴール,設計思想を議論し,これまでの研究成果を紹介し,今後の課題や展望を述べる.
著者
石原 正恵 今西 亜友美 阪口 翔太 福澤 加里部 向 昌宏 吉岡 崇仁
出版者
京都大学大学院農学研究科附属演習林
雑誌
森林研究 = Forest research, Kyoto (ISSN:13444174)
巻号頁・発行日
no.78, pp.39-56, 2012-09 (Released:2013-10-08)

近年,日本各地でシカの採食による草地の植生改変が生じている。芦生研究林長治谷作業小屋の開地ではススキを主とする草本群落が見られたが,2007年以降シカの採食により衰退した。防鹿柵によるススキ群落の種多様性および現存量の回復過程を把握するため,柵設置1~3年後に柵内外で植生調査および刈り取り調査を行った。柵設置1年後から柵内は柵外に比べ種多様性が高く,機能形質を元に種を分類した機能群の多様性も高くなり,種組成にも明瞭な違いが見られた。調査地近辺で2003年に見られなくなったと報告されていた種を含む77種が柵内で見られた。群落高,植被率および現存量も2年後には一般的なススキ草地と同程度まで増加した。このようにススキ群落の多様性と現存量が早期に回復したのは,ススキ群落の衰退直後に柵を設置したためと考えられた。柵内では背丈の高いススキ,オカトラノオや小高木・低木種が優占し,一部の背丈の低い分枝型広葉草本は競争排除され,高木種の定着も見られなかったため,今後もしばらくはススキ群落が続き,多様性が低下すると予想された。柵外では不嗜好性のイグサと分枝型一年生広葉草本のトキンソウの被度が増加し,植生の単純化が進行した。
著者
萩原 正人 小川 泰弘 外山 勝彦
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.440-450, 2011 (Released:2011-04-01)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

Extraction of named entitiy classes and their relationships from large corpora often involves morphological analysis of target sentences and tends to suffer from out-of-vocabulary words. In this paper we propose a semantic category extraction algorithm called Monaka and its graph-based extention g-Monaka, both of which use character n-gram based patterns as context to directly extract semantically related instances from unsegmented Japanese text. These algorithms also use ``bidirectional adjacent constraints,'' which states that reliable instances should be placed in between reliable left and right context patterns, in order to improve proper segmentation. Monaka algorithms uses iterative induction of instaces and pattens similarly to the bootstrapping algorithm Espresso. The g-Monaka algorithm further formalizes the adjacency relation of character n-grams as a directed graph and applies von Neumann kernel and Laplacian kernel so that the negative effect of semantic draft, i.e., a phenomenon of semantically unrelated general instances being extracted, is reduced. The experiments show that g-Monaka substantially increases the performance of semantic category acquisition compared to conventional methods, including distributional similarity, bootstrapping-based Espresso, and its graph-based extension g-Espresso, in terms of F-value of the NE category task from unsegmented Japanese newspaper articles.
著者
柴田 昇 神田 和重 久田 俊記 磯部 克明 佐藤 学 清水 有威 清水 孝洋 杉本 貴宏 小林 智浩 犬塚 和子 金川 直晃 梶谷 泰之 小川 武志 中井 潤 岩佐 清明 小島 正嗣 鈴木 俊宏 鈴木 裕也 境 新太郎 藤村 朋史 宇都宮 裕子 橋本 寿文 御明 誠 小林 直樹 稲垣 泉貴 松本 勇輝 井上 諭 鈴木 良尚 何 東 本多 泰彦 武者 淳二 中川 道雄 本間 充祥 安彦 尚文 小柳 勝 吉原 正浩 井納 和美 野口 充宏 亀井 輝彦 加藤 洋介 財津 真吾 那須 弘明 有木 卓弥 Chibvongodze Hardwell 渡邉 光恭 丁 虹 大熊 直樹 山下 竜二 Liang Guirong Hemink Gertjan Moogat Farookh Trinh Cuong 東谷 政昭 Pham Tuan 金澤 一久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.15, pp.1-5, 2012-04-16

世界最小の19nmのデザインルールを用いて64Gb多値(2bit/cell)NANDフラッシュメモリを開発した。片側All-bit-Line S/A構成、1plane構成によりチップサイズは112.8mm^2。ビット線バイアスアクセラレーション及び"BC"State-First書込みアルゴリズムにより、書き込みパフォーマンスは15MB/sを実現。プログラムサスペンド機能とイレーズサスペンド機能により、リードレイテンシー時間は大幅に短縮。400Mb/s/pin 1.8Vの高速Toggle mode InterfaceをNANDフラッシュメモリとしては初めて搭載した。
著者
吉川 克正 浅原 正幸 松本 裕治
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.251-271, 2013-06-14 (Released:2013-09-14)
参考文献数
23
被引用文献数
4 6

本稿ではマルコフロジックを利用した日本語述語項構造解析について述べる.日本語述語項構造解析に関する従来研究の多くは,格毎に独立した解析器を用意し,他の述語項関係との依存関係を無視したまま解析を行っていた.これに対し,本研究では同一文内にある全ての述語項候補を同時に考慮して解析する手法を提案する.この手法は複数の述語項関係の間にある依存関係を考慮した上で,文内における全ての述語項関係の候補から,最適な状態を見つけ出すことができる.さらに,本研究では,述語の項として妥当でないものを削除するための新たな論理的制約を考案し,ゼロ照応も含めて正しい項を効果的に見つけ出すことができるように工夫した.NAIST テキストコーパスにおける実験で,本研究の提案手法は,大規模データを利用せずに,従来手法と同等の結果を達成した.
著者
長尾 敦 和田山 正 若杉 耕一郎 笠原 正雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論
巻号頁・発行日
vol.95, no.79, pp.49-54, 1995-05-26
参考文献数
6
被引用文献数
8

本稿では,近年,磁気記録符号の分野で重要性が高まりつつあるEPR4(Extended Partial Responce 4)チャネルに対して有効な符号化法を提案する.従来より,記録密度が低い場合の磁気記録系モデルである1-Dチャネルに対して,さまざまな記録符号が提案されているが,より高密度な記録系のモデルであるEPR4チャネルに対する検討は少ない.そこで,本稿では,基本的にはHoleとYtrehusらが提案している1-Dチャネルに対する符号を基礎として,EPR4チャネルに適した符号を探索した.またHoleとYtrehusらはプリコーダを用いる場合のみを考察しているが,ここでは新たにプリコーダのない場合も検討した.その結果として,特に符号化率の低い範囲で優れた符号が見出された.
著者
柴山 守 笠谷 和比古 加藤 寧 山田 奨治 川口 洋 原 正一郎 並木 美太郎 柴山 守 石谷 康人 梅田 三千雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、古文書翻刻支援システム開発プロジェクト(HCRプロジェクト)において、手書き文字OCR技術などを発展的に応用して、古文書文字認識システムの高精度化に関する研究を行うことである。平成14-16年度の研究期間において、主に古文書文字データベースを構築すること、及び日本語文字認識アルゴリズムの適用可能な範囲と問題点を洗い直し、以下の検討課題での研究をすすめ、成果を挙げた。(1)文字切り出し法、及び正規化法について:射影ヒストグラム、文字外形の曲率などの手法を検討し、レイアウト認識では、Hough変換による行抽出方式を提案し、文字データベースの基づく実験を進めた。(2)オフライン文字認識手法について:古文書文字認識に有効と考えられる文字切り出しと文字認識を連携処理させる方法について検討した。非線形正規化手法の研究及び実験を行った。(3)オンライン文字認識手法について:くずし字検索等に適用可能なタブレット入力によるオンライン古文書文字認識手法について検討した。また、『くずし字解読辞典』の文字画像から筆順を推定する手法の研究を行った。本成果は、電子くずし字辞典として平成17年度中に刊行する予定である。(4)東京堂出版『漢字くずし方辞典』の文字パターンを入力し、オンライン検索ソフトウェアの開発を行った。これも上記の(3)に含め、刊行予定である。(5)文字認識用文字パターン辞書として、9種類の古文書文字データベースを公開した。すべてがHCRプロジェクトのホームページは,http//www.nichibun.ac.jp/shoji/hcr/からダウンロード可能である。また、公開したソフトウェアは、2種類GetAMojiマクロ(古文書翻刻中に遭遇する不明文字(ゲタ文字)の正解候補を提示する機能)、及びWeb版GetAMoji(古文書翻刻中に遭遇する不明文字(ゲタ文字)の正解候補を提示する機能のWeb版)である。