著者
島田 貴仁 鈴木 護 原田 豊
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.29, pp.51-64, 2004-10-18
被引用文献数
1

本研究では,東京都大田区南部の104町丁目に住む3,120名を対象にした社会調査データに構造方程式モデリングを適用して,犯罪不安と被害リスク知覚の認知構造とその形成要因を検討した.調査では12罪種を提示し,犯罪に対する情動的な反応である犯罪不安と,主観的な発生確率の見積りである被害リスク知覚とを区別して測定した.まず,確認的因子分析により,犯罪不安・リスク知覚はともに財産犯と身体犯の2因子構造を有し,空き巣やひったくりなどの財産犯は,一般市民には身体犯としても認知されていることが示された.次に,被害経験・見聞,地域の無秩序性,富裕度,家族内弱者の有無が犯罪不安,犯罪リスク知覚にもたらす影響を検討した.これら形成要因は被害リスク知覚を媒介して間接的に犯罪不安を生起させていたのに加え,直接犯罪不安を喚起していた.また,ゴミや落書きなどの地域の無秩序性が財産犯被害不安を生起させていることや,子どもや高齢者を家族に持つ回答者は,身体犯被害の伝聞情報によって犯罪不安を生起させていることが明らかになった.
著者
緒方 一喜 原田 節子 中村 光子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衞生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.100-110, 1954-12-30
被引用文献数
3

1. S. aokiiは本州, 九州に広く分布し, 平地から山脚地帯にかけての小流に発生する極く普通の種類である.屡々山間の溪流にもみられる.又, S. venustumと共に本邦に於て激しく人を襲う代表的な種類である.2.著者の観察によれば, 産卵は夕刻に多く, 水中の植物, 岸の上から垂れた草の葉或はコンクリート壁を問わず産卵場所は水表上の常に水沫で濡れる状態の場所であつた. 1〜数10匹で集団的に或限られた小面積の好適な場所に短時間に行われた.そして1〜数10個の卵塊は集合的にうみつけられた.1匹の雌による1回の産卵数は150〜300と考えられた.3月の室温で約10日で孵化を始めた.3.幼虫は川幅約1〜0.3m, 流速10〜30m/分, 水質は水底が見える程度の清流に最も多数みられた.4.幼虫が水中で吸着している基物は, 基物自体に対する選択よりも, 寧ろ基物のおかれている環境条件によつて選択される.自然界では水面下約10cm以内の植物に大部分吸着している.特に細長い葉面の裏面先端部に多い.5.幼虫は水中で, 好条件下では数日間同一場所に固着しているが, 又或程度尺取虫状匐匍運動或は分泌した糸に懸垂して移動を行つている.6.蛹の発生水域から1, 000mの距離迄100mおきに実験者が位置し, 刺咬する成虫を採集して活動範囲調査を行つた.発生水域附近が最も刺咬数は多く, 1, 000mの地点でも若干採集された.7.成虫の刺咬活動は周年みられるが, 特に3月から7月にかけて最盛活動を示した.8.雌成虫は最も人を好んで吸血するものと考えられた.牛, 馬及び山羊を用いて襲来成虫を採集したが, 馬で9匹, 牛で1匹採集されたに過ぎなかつた.
著者
村松 浩幸 杵淵 信 渡壁 誠 水谷 好成 山本 利一 川崎 直哉 紅林 秀治 松岡 守 関根 文太郎 田口 浩継 川原田 康文 松永 泰弘 吉田 昌春 大橋 和正
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

3年間の研究により,現実の技術開発を疑似体験させるロボット学習の教育システム(カリキュラム,関連教材)を開発した。技術観,職業観についても信頼性,妥当性のある尺度を開発できた。そして全国各地の中学校で複数の実践を行い,必修の授業での簡単なロボット学習であっても,現実の技術や技術開発と関連付けることで,生徒の技術観,職業観を向上させうる可能性を確認できた。
著者
原田 純孝
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

「平成の農地改革」を標榜した2009年の農地制度改正について、その課題並びに内容と特徴を農政改革の全体的な文脈のなかで分析し、(1)農地貸借の自由化により農地制度の方向性が逆転したこと、しかし、(2)それが農業の構造改革にどう寄与するかは未知数であるうえ、制度改正自体も「道半ば」の状態にあり、(3)その行きつく先の如何(とくに所有権取得の自由化の成否)によっては、土地法制全体にかかわる様々な問題が生じうることを明らかにした。
著者
野田 勉 原田 守夫 宮沢 寛 石黒 公 西山 光生 清水 信作 伊東 晋
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 : 映像情報メディア (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.1509-1516, 1997-09-20
被引用文献数
17 1

The Cable Television Conference working group conducted experiments on the 64 QAM signal transmission in a CATV system from 1995 to 1996. These experiments were based on the tentative specifications of the Telecommunications Technology Council of the Ministry of Posts and Telecommunications (MPT), to promote standardization of the Japanese digital CATV system. Experimental results showed that a C/N of more than 26 dB, a Composite Triple Beat (CTB) of less than -43 dB, and a single carrier interference of less than -30 dB were required to keep a BER of less than 1×10^<-4> without forward error correction. Cable reflection within the conventional CATV standard for NTSC-AM signals was low enough for 64 QAM signals. Experiments on adjacent channel interference between 64 QAM and NTSCAM signals indicated that the 64 QAM signal level needed to be lower than the NTSC-AM signal level by about 4-20 dB. Based upon these results, the Japanese standard was introduced by MPT on December 3,1996.
著者
原田 達也 中山 英樹 國吉 康夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.857-869, 2010-06-01

本論文では実世界でユーザの見たものを瞬時に記述・蓄積し,後で言葉を用いて検索可能とするAI Gogglesを提案する.これは,カメラを備えたゴーグル,タブレット型計算機とHead Mount Displayからなるウェアラブルシステムである.本システムは以下の五つの機能を特徴とする. (1)高速かつ高精度な画像アノテーション・リトリーバル機能, (2)画像の大域的な情報から画像に写る対象を推論する機能, (3)安定かつ高速な追加学習機能, (4)常にデータが増え続ける状況に対応可能な機能, (5)意味に基づいた特徴抽出を行える機能.標準的なデータセットを用いた実験では,本手法が精度の面で2008年度の最良手法と同等の性能を示し,計算速度では上回ることを示した.更に,屋内と屋外の双方における実験を実施し,提案システムは統制困難な環境において予測できない認識対象の追加に対応可能であり,安定して動作することを確認した.
著者
原田 和宗
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.836-833, 2004-03-20
被引用文献数
1
著者
久永 光司 原田 耕介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EE, 電子通信エネルギー技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.652, pp.7-12, 2004-02-05
被引用文献数
8

最近、通信機器用電源システムにおいて、複数の絶縁型コンバータを所望の電圧レベルに応じて設ける方式に代わり、1個の絶縁型コンバータ(中間バスコンバータ)で中間のバス電圧に変換し、その後に複数の非絶縁型コンバータ(Point of Load:POL)を負荷の直近に設け、所望の電圧レベルに変換する分散電源方式が、半導体LSIの低電圧化、電源電圧の多様化、システムの低コスト化に対応する為、種々検討されている。筆者らは、前回の報告で、この方式における系の安定性を、状態平均化法により解析し、個々のコンバータが独立に安定制御されている場合でも、初段の絶縁型コンバータの出力インピーダンスと後段の非絶縁型コンバータの入力インピーダンスにより、系に仮想的なマイナーループが生じ、系が不安定になる場合のあることを示し、ナイキスト線図により安定限界を解析した。本論文では、さらに、POLの個数と、各種の回路パラメータ、すなわち、フィードバックゲイン、平滑用フィルター定数(L,C)、平滑用フィルターのL/C比(√<L/C>)、及び、カットオフ周波数近傍のフィードバックゲインとの関係につき解析し、1)L/C比の小さい方が、安定性マージンが大きい 2)L/C比が大きい場合、大きなフィードバックゲインが必要である 3)L/C比に応じて、系が安定に動作する為の、通常のメジャーループにおける最大ゲインの他にマイナーループの影響による最小ゲインの存在することを示す。
著者
沢田 勇 原田 正史 織田 銃一
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.54, pp.19-27, 1995-12-25

1994年7月24日から8月6日までの間,南中央シベリアの2箇所にて3属7種からなる29種のトガリネズミ類が採集された.消化管を剖検した結果,9属12種の条虫類が寄生していた.その条虫類はSoricinia longisegmentalis,Ditestolepis diaphana,D.secunda,D.sp.,Lineolepis skrjabini,Skrjabinacanthus jacutensis,Neoskrjabinolepis singularis,Staphylocystis(Staphylocystis)naganoensis,Vampirolepis novosibirskensis,Cucubilepis skrjabini,Choanotaenia crassiscolex及びC.baicalensisであった.これら条虫類の寄生率は29頭のトガリネズミ類の62%であった.今回は前調査で寄生がみられなかった4種の条虫類(Skrjabinacanthus jacutensis,Cucubilepis skrjabini,Ditestolepis secunda,Choanotaenia baicalensis)について記載した.
著者
原田 正行
出版者
高知学園短期大学
雑誌
高知学園短期大学紀要 (ISSN:03894088)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.503-519, 1989-09-30

Der dritte Grundsatz enthalt die schwierigste Aufgabe in der Wissenschaftslehre ( 1794/5). Die ersten beiden Grundsatze sind nach Fichte unbedingt. Das bedeutet Absolutheit. Die Aufgabe des dritten liegt also darin, die beiden "Absoluten" zu synthesieren. Ist das aber moglich? Dies scheint logisch betrachtet unmoglich. So konzentrieren sich fast alle Fichte-Interpetation und Kritik ins Problem der Synthesis. Schon hat Hegel In 1801 kritisiert, daβ die Synthesis nicht moglich ist. Und wiederholt sich diese Kritik mannigfaltigerweise. Hier wird behandelt, ob diese Kriik oder Interpretation richtig ist. Dazu mussen Wir zuerst die Ableitungsweise des dritten Grundsatz nachgehen. Dann untersuchen wir dessen Sinn. Schlieβ lich wird die Kritik Hegels behandelt, weil sie den groβ en Einfluss auf fast alle Fichte-Interpretation ausgeubt hat. Durch diese Betrachtung wird gefolgert, daβ es eigentlich nur einen Grundsatz (d. I. Synthesis) gibt, daβ also die Frage, ob die Synthesis moglich ist, scheinbare Frage ist.
著者
武重 徹 矢口 有乃 花房 茂樹 原田 知幸 鈴木 忠
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.400-409, 2006-11
被引用文献数
1

PMX-DHP (direct hemoperfusion with polymyxin B immobilized fiber)は1994年にエンドトキシン吸着療法として日本で認可された治療法であり,現在敗血症症例を中心に広く臨床応用されているが,その臨床的有効性の評価および機序については今も議論のあるところである.筆者らは当センターでPMX-DHPを施行した敗血症症例に対し,近赤外線法(NIRS)を用いて測定可能なcytochrome a,a3 (Cyt a,a_3),酸化ヘモグロビン(Oxy-Hb),還元型ヘモグロビン(Deoxy-Hb),総ヘモグロビン(Total Hb)をPMX-DHP前後で比較することにより,細胞レベルでの組織酸素代謝と血液量の再分布の変化を検討した.対象は東京女子医科大学救命救急センター集中治療室に入室し,PMX-DHPを施行した18症例である.近赤外線装置は前額部,前腕部の2ヵ所に装着し,PMX-DHPを中心に約3時間連続して計測した.また,全身の組織酸素代謝の指標としてSwan-Ganz catheterを使いVO_2 (oxygen consumption), DO_2 (oxygen delivery), O_2EI (oxygen extraction index), SVRI (systemic vascular resistance index), SvO_2 (mixed venous oxygen saturation)を測定し,血液検査からはblood lactate concentration, base excess, IL-6を測定した.前腕部の近赤外線法による結果はPMX-DHP前後でCyt a, a_3(p<0.05), Oxy-Hb (p<0.01), Deoxy-Hb(p<0.05), TotalHb (p<0.01),すべてに有意差をもって増加した.前額部の前頭葉の近赤外線法による結果は,PMX-DHP前後でCyt a,a_3, Oxy-Hbに変化はなく,Deoxy-Hb (p<0.01), TotalHb (p<0.01)は,有意差をもって減少した.また,VO_2, DO_2, O_2EI, SVRI, SvO_2, blood lactate concentration, base excess, IL-6はPMX-DHPの前後での有意差は認めなかった.結論としてPMX-DHPにより全身の組織酸素代謝の指標に変化を認めなかった.しかし近赤外線法による測定結果は前腕骨格筋での血液量は増加し,さらにミトコンドリア内における電子伝達系の酸素代謝は亢進した.また前頭葉の血液量の分布はPMX-DHPにより改善された.これらの結果はPMX-DHPの有効性を示唆していると考えられた.
著者
井坂 行男 井賀 誠子 増田 朋美 仲野 明紗子 松岡 梨恵 原田 利子 内藤 志津香
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 4 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.33-49, 2006-09

本論文は聴覚障害を有する幼児の教育相談支援事例についての報告である。人工内耳を装用した幼児と他の障害を併せ有する幼児に対して,言語獲得支援を行った。その結果,コミュニケーション手段(手話)の獲得によって,情緒の安定,こだわりの減少,コミュニケーション意欲の向上が認められた。This paper is a case study of educational consultation support of infants with a hearing impairment. We gave support to an infant with Coclear Implant and an infant with other impairment for the language acquisition. As a result, It was admitted that they stabilized emotion, decreased the sticking to interesting things and improved the communications will by the acquisition of the communications means (Sign Language).
著者
高木 博志 伊従 勉 岩城 卓二 藤原 学 中嶋 節子 谷川 穣 小林 丈広 黒岩 康博 高久 嶺之介 原田 敬一 丸山 宏 田中 智子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本における近代「古都」を、歴史学・建築史・造園史などから学際的に研究した。奈良・京都・首里といった古都と、岡山・名古屋・大阪・仙台・江田島・呉・熊本など旧城下町や軍都とを研究対象とした。研究会の他に、各地でフィールドワークも実施しつつ、「歴史」や「伝統」と政治的社会的現実との、近代におけるズレや関係性を考察した。また学都や軍都などの都市類型も論じた。個別業績以外に、論文集『近代歴史都市論』を発刊予定である。