著者
乾 亮介 福島 隆久 斎藤 弦 森 里美 出井 智子 森 貴大 原田 美友紀 森 清子 中島 敏貴
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0792, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】近年日本では高齢化がすすみ,理学療法の対象患者の中には腰椎後彎変形を呈するものが少なくない。胸腰椎後彎変形は呼吸機能低下や体幹の伸展制限といった機能障害を引き起こし,日常生活能力(ADL)を低下させると報告されている。これら胸腰椎後彎変形の治療において整形外科的な手術による報告はあるが理学療法による報告はみられない。本研究の目的は胸腰椎後彎変形を呈する患者に対して腹部周囲筋である外腹斜筋,内腹斜筋ストレッチを実施し,その効果を検証することである。【方法】急性期病院入院中に理学療法依頼のあった患者で胸腰椎後彎変形によりADLが低下していると考えられた13名(85.5±6.8歳,男性:6名 女性:7名)を対象とした。疾患は誤嚥性肺炎6名,人工膝関節置換術3名,脳梗塞1名,腱板断裂の術後1名,出血性膀胱炎1名,肝性脳症1名であった。Minimal Mental State Examination(MMSE)の平均は17.9±8.0と多くの患者において認知機能の低下を認めた。患者には椅子座位が可能になった時点で,両足足底接地,膝関節,股関節90°になるようにして端座位となり,できる限り体幹を伸展した状態で正面を直視してもらうよう指示した。その後,自在曲線定規を患者の脊柱にあて,患者の脊柱の彎曲変形を定規に形状記憶させた後,彎曲を形状記憶した定規ですぐに紙面上にトレースし,Milneらの方法に従い,円背指数を求めた。計測後以降は各疾患別の標準的な理学療法に加え,週5回の頻度で約10分間Ylinenの方法に従い側臥位にて左右の外腹斜筋,内腹斜筋のストレッチを施行し,約4週後,同様の方法で再度円背指数を求めた。統計処理は介入前後の円背指数に対して対応のあるt検定を用い,Functional Independence Major(FIM)の運動項目についてはWilcoxon符号付順位検定を用いた。有意水準は5%未満とした。【結果】円背指数は介入前の17.4±5.1に対して,介入後15.5±4.7と有意に減少し(p<0.01),ADLではFIMの運動項目において介入前35.3±26.6に対し45.3±28.0と有意な改善を認めた(p<0.01)。【考察】外腹斜筋,内腹斜筋は肋骨から起こり,骨盤に付着し,体幹を屈曲させる作用がある。高齢者は習慣的な姿勢や脊柱起立筋群の低下により,これらの筋群を伸張する機会が少なくなり,結果として脊柱の器質的変化に加えて胸腰椎後彎変形を増悪させていると考える。そのため高齢者への外腹斜筋,内腹斜筋ストレッチは脊柱の器質的な変形等には影響を与えなくても,それらを増悪させる因子である体幹屈曲作用のある筋群の伸長により,骨盤の後傾や体幹の屈曲モーメントを軽減させ,より脊柱起立筋群の筋力発揮をしやすくすることで体幹伸展がしやすくなったと考える。そして各患者に残存している脊柱の可動範囲内で脊柱後彎変形を軽減させたと考える。【理学療法学研究としての意義】外腹斜筋,内腹斜筋を中心とした腹部周囲筋ストレッチにより胸腰椎後彎変形を軽減できる可能性が示唆された。腰椎後彎変形が要因となって下肢の可動性や筋力低下,或は呼吸機能の低下によりADLが低下している高齢患者は多く存在し,これからもさらに増えていくと予想される。従来,高齢患者の腰椎後彎変形の改善は困難であると考えられていたが,症例によっては改善できる可能性があり,胸腰椎後彎変形が原因でADL制限をきたしている患者にはその評価と介入の重要性が示唆された。また,今回の検証において疾患や男女差なく改善を認めたことより,今後検討を重ねることにより,高齢に伴う胸腰椎後彎変形に対する予防法を考案できる可能性があると考えられる。
著者
小田嶋 裕輝 河原田 まり子
出版者
札幌市立大学
雑誌
札幌市立大学研究論文集 = SCU journal of Design & Nursing (ISSN:18819427)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.15-23, 2015-06-30

国内外における首尾一貫感を改善する介入に焦点を当てた文献を整理し,患者の首尾一貫感を改善する上で必要な介入の示唆を得ることを目的とした.2014年6月までに発表された文献を対象に,CINAHL,医学中央雑誌を用いて検索した.Patient, Sense of Coherence に,Intervention 又は Program の用語を含む海外文献を,また,患者,首尾一貫感に,介入又はプログラムの用語を含む日本語文献を検索した.目的に該当した文献として,国内文献3件と海外文献5件を本研究に活用した.いずれの研究においても,介入前後で首尾一貫感の得点は有意に改善したことを報告していた.患者対象の研究内容は,患者の抱える具体的な問題や,健康的な生活習慣の維持に必要なことなどに焦点を当てていた.患者以外を対象とした研究内容は,禁煙という具体的な問題に焦点を当てるものや,具体的な焦点は定めず,健康増進のためのプログラムとして実施するものがあった.これらの支援には,患者が疾患をコントロールしながら生活していけるように支えること,患者に対する治療の選択肢や体の状態に関する理論的な情報提供をすること,患者の思いを分かち合えるようにすることなど,首尾一貫感の下位概念に即した支援の性質が認められた.患者の首尾一貫感を改善するためには,首尾一貫感の下位概念に即して,疾患コントロールのための療養生活支援,治療や体の状態に対する情報提供,患者との思いを共有する支援が必要であることが示唆された.
著者
日野 高睦 井口 哲弘 原田 俊彦 水野 耕作
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.11-20, 2000-12-20

目的 : 五十肩の病態を解明するためその器質的ならびに機能的変化をMRIを用いて評価し, 臨床症状と比較検討することである。方法 : 対象は38例42肩 (40〜69歳) であり, ほぼ同様の症状を呈する腱板不全断裂患者24例24肩 (40〜70歳) を対照群とした。MRI像にて肩関節周囲の浸出液貯留像, 腱板の輝度変化と厚み, 関節症性変化の有無につき評価し, これらの所見と疼痛の性状, 関節可動域, JOAスコアなどの臨床症状との関連を検討した。結果 : 五十肩に特有な器質的変化は見いだせなかったが, 異常所見としては関節内外の浸出液貯留像がみられた。また発病初期には上腕二頭筋長頭腱腱鞘周囲の貯留像が多くみられた。そして腋窩陥凹部に貯留のある群は有意に夜間痛を多く訴えていた。しかし腱板の輝度変化や厚さ, 肩峰下面の骨疎, 肩鎖関節の関節症性変化, 上腕骨骨頭の骨嚢腫像は臨床症状となんら関連がなかった。また腱板不全断裂群との比較では肩甲上腕関節内での浸出液貯留像はほぼ同様にみられたが, 肩峰下滑液包での貯留は有意に少なかった。結論 : 腋窩陥凹部での浸出液貯留は, 関節内圧の上昇を来たし, 五十肩の特徴である夜間痛の原因となっていると考えられた。また上腕二頭筋長頭腱腱鞘周囲の貯留は初期に多く見られ, 五十肩の初発像である可能性がある。
著者
藤垣 洋平 高見 淳史 トロンコソ パラディ ジアンカルロス 原田 昇
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.833-840, 2017
被引用文献数
2

本論文では、大都市圏向け統合モビリティサービスMetro-MaaSを提案し、利用意向調査によりMetro-MaaSの需要の特性を評価した。Mobility as a Service(略称MaaS)は、利用者が適材適所で交通サービスを組み合わせて使いやすくすることで、自家用車を保有し運転することの代替となりうるサービスを目指す概念であり、世界の各都市で導入に向けた検討が進んでいる。本研究ではMaaSの大都市圏への導入方法として、対象事業者数を抑制しつつ利用者の日常生活をカバーできる設計手法Metro-MaaSを提案し、その需要の特徴を評価した。Metro-MaaSは自動運転とは独立した概念だが、自動運転車を使用したオンデマンドバス等のサービスと既存公共交通を一体的に提供する方法としても活用可能である。調査結果の分析から、利用意向に影響がある個人属性や居住地、移動等の特徴を抽出し、その影響を評価した。その結果、「運転に対して少し不安がある人」「駅から自宅までの徒歩の所要時間が20分以上の人」「自家用車を2台保有している人」などが、サービスを利用したいと考える傾向が示された。
著者
多々良 大輔 吉住 浩平 野崎 壮 原田 伸哉 中元寺 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb0485, 2012

【はじめに、目的】 側臥位での股関節外転運動は、診療場面にて検査もしくはトレーニングとして使用することが多い。主動作筋である中殿筋の機能に関する報告は、腰椎の側屈、股関節屈曲などの代償運動を考慮して、背臥位での計測結果を報告したものが多いが、側臥位では腰椎-骨盤帯の安定性に関与する腹壁筋、傍脊柱筋の作用により固定筋としての作用が得られないと、効果的な外転筋の発揮は困難である。本研究の目的は、側臥位にて寛骨非固定、固定下での等尺性股関節外転運動を行った際の中殿筋、内腹斜筋、腰方形筋、腰部多裂筋の活動を表面筋電図にて計測・比較し、主動作筋である中殿筋と他の固定筋との関係性を明らかにすることである。【方法】 健常男性15名(平均年齢:25.9±3.0歳、身長:175.3±6.7cm、体重:66.4±7.5kg)、全例、効き足が右の者で、腰痛を有していない者を対象とした。被験筋は、中殿筋、内腹斜筋、腰方形筋、腰部多裂筋の4筋とした。表面電極は皮膚処理を十分行った上で、日本光電社製NCS電極NM-317Y3を使用し、Cynnの記述を参考に20mm間に貼付した。表面筋電計は日本光電社製NeuropackS1を用いて、サンプリング周波数1000Hzにて、上記4筋について、それぞれ徒手筋力検査(manual muscle testing:MMT)の肢位に準じて、各筋の等尺性収縮を最大随意収縮強度(100%MVC:maximal voluntary contraction)を計測した。測定肢位は側臥位、両上肢は胸骨の前面で組ませ、頭頂・耳孔・肩峰・大転子が一直線上になるようポジショニングを行った。股関節角度は伸展10度、外転25度の位置に膝関節外側裂隙から近位3cmの部位に接するように平行棒を設置・固定し、大腿遠位部が平行棒に触れる直前にて保持するように指示し、寛骨非固定下、骨盤固定下の2条件にて股関節外転運動を等尺性収縮にて行った。測定時間は5秒間とし、前後1秒間を除いた中間の3秒間にて、積分値が最大となる0.2秒間を1000Hzにてサンプリングし、各筋の随意収縮強度(%MVC)を算出、比較を行った。なお、各群ともに1分間の休息を挟んで3回実施し、平均値を算出した。寛骨の固定は同一検者にて、各測定前にハンドダイナモメーター(Hoggan社製:MicroFET2)を用いて、80Nにて圧迫を加えられるよう十分な練習を行ってから、上側となる腸骨稜から仙腸関節を圧縮する方向に徒手的に圧迫を加えた。統計処理は寛骨非固定下(以下、A群)、寛骨固定化(以下、B群)における各筋の%MVCについて、中殿筋・腰部多裂筋はt検定を、内腹斜筋・腰方形筋についてはWilcoxon符号順位検定を用い、有意水準5%未満にて分析した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の主旨を書面にて説明し、参加に同意を得た者を対象とした。【結果】 A群では中殿筋:43.3±13.1%、内腹斜筋:31.6±29.4%、腰方形筋:30.9±10.2%、腰部多裂筋:25.5±12.3%、B群では中殿筋:31.5±14.7%、内腹斜筋:19.2±15.6%、腰方形筋:29.6±16.6%、腰部多裂筋:28.1±14.8%となった。A群と比較し、B群では中殿筋、内腹斜筋が低値を示した(p<0.05)。【考察】 寛骨の固定により、主動作筋である中殿筋の筋長は変化しないにも関わらず、%MVCが低値を示したことから、起始となる寛骨の安定性が提供されることで、効率的な筋活動にて外転位保持が可能となったと考えられる。側臥位での股関節外転運動では、腰椎-骨盤帯-股関節複合体として、関与する筋群の協調した運動制御が重要であることが示唆された。診療場面において、寛骨の固定により非固定時よりも中殿筋の出力が容易となることが確認できた場合、寛骨の安定化に関わる固定筋の賦活も併せてアプローチすることが重要である。今後は同様の計測条件にて、寛骨固定の有無による股関節外転筋トルクの変化を算出・比較するとともに、周波数解析を用いて各筋の質的因子の変化について検討していきたい。
著者
竹下 治範 藪田 有沙 北 早織 若林 知子 猪野 彩 原田 祐希 中川 素子 中川 道昭 波多江 崇 濵口 常男
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
pp.nt.2019-0002, (Released:2020-01-30)
参考文献数
16

要 旨:PTP 包装から錠剤を押し出す際,高齢者や手指の不自由な患者に対して押し出しやすい方法を提案することは重要な課題である.今回,PTP 包装からの錠剤の押し出し方法について客観的な評価とともに,人を対象とした官能評価試験で検討した.調剤薬局に来局し,同意を得た患者64 名を対象に,PTP 包装からの錠剤の押し出し方法についての官能評価試験を実施した.その結果,『指の腹』が押し出しやすいと回答した人が18 名(28%),『爪』と回答した人が46 名(72%)であった.データ解析の結果,男性に比べて女性で,さらに年齢が増すにつれPTP 包装から錠剤を取り出す際は,爪の方が押し出しやすいという傾向が明らかとなった.高齢化社会を迎える本邦において,高齢患者への服薬支援の一環として,PTP 包装からの錠剤の押し出しやすい方法の提案についても薬剤師が積極的に関与すべきだと考える.
著者
原田三夫 著
出版者
誠文堂
巻号頁・発行日
vol.9 (飛行機の巻), 1925
著者
松田 徹 清水 恭平 原田 鉄平 原 泰裕 加藤 研太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0708, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】膝関節の安定性は大腿四頭筋と半腱様筋,半膜様筋,大腿二頭筋(以下ハム)の協調的な同時収縮が必要とされている。階段降段時においても同様に大腿四頭筋とハムの協調的な筋活動が必要になると思われる。階段降段時のハムと大腿四頭筋の筋活動の報告(清水2012)があるが,各筋の爪先接地~全足底接地間の最大随意収縮(以下%MVC)の報告は筆者の調べた限りでは見当たらない。そこで今回筋電図を用いて降段時の爪先接地~全足底接地間での大腿四頭筋(大腿直筋,内側広筋)と半膜様筋(以下内ハム),大腿二頭筋(以下外ハム)の筋活動量を明らかにすることを目的とする。【方法】対象は整形外科的疾患の既往のない健常人男性7名,女性3名(平均年齢:19.2±0.8歳)とした。測定は階段シミュレーター(蹴上20cm,踏み面30cm)を使用し,手すりなしの降段を本人が降りやすい速度(以下,comfort)と48拍/分のメトロノームに合わせた降段(以下,slow)の2条件で3回ずつ筋電図を計測した。測定条件は手すり未使用の1足1段で,十分練習した後に左下肢から1歩目を降り,2歩目の右下肢で計測した。筋電図は日本光電社製NORAXSONを使用し内側ハム,外側ハム,内側広筋,大腿直筋の筋活動を検出した。各筋の筋電図の導出部位は先行文献に準じた。同時に爪先接地から全足底接地までのタイミングを確認するため動画を撮影した。タイミングの把握のためにランドマーク(膝関節内側裂隙,内果,母趾中足骨底内側,母趾内側)に印を付けた。筋電図の解析の際にはwindows media playerを使用し,爪先接地~全足底接地間(以下,接地時間)における筋放電量の和を接地時間で割り3回の平均値を算出した。なお動画はサンプリング周波数1000Hzで撮影したものをコマ送りし目視にて爪先接地,全足底接地を確認した。算出した平均値とあらかじめ測定した各筋の安定した3秒間の等尺性最大収縮で割り,各筋の%MVCを比較した。統計学的解析には,統計ソフトウェアR-2.8.1を用い,Syapiro-Wilk検定にて正規化を確認し,正規化が認められたものにはt検定,無いものにはMan-whitney検定かけ比較した。優位確率を5%未満とした。【結果】各筋のcomfort,slowともに優位差は認めなかった。Comfortでは中央値が内ハム22.87,外ハム18.34,大腿直筋23.77,内側広筋22.96。slowでは平均値が内ハム19.35,外ハム14.23,大腿直筋14.87,内側広筋13.61であった。【結論】Comfort,slowともに階段降段時の爪先接地~全足底接地間では大腿直筋と同等の筋活動が内ハム,外ハムに認められた要因として2関節筋である拮抗筋同士が相反的に活動し合っていることが予測される。先行文献(市橋2001)では高齢者の階段昇降時の同時収縮の報告があるが本研究では健常人においても階段降段時の内ハム,外ハムの筋活動量の必要性が示唆された。
著者
山内 啓正 向坂 友里 原田 雅己
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.22-30, 2020-02-25 (Released:2020-04-24)
参考文献数
16

種々の野菜や果物(同じ科や属のものを含む計70品目)を用いて,飲料や乳製品への混入を想定した識別法について検討した.大きさ1~数mm程度の植物片からDNAを抽出し,色素体rpl16–rpl14リンカー配列(約550塩基対)をPCRで増幅した後DNA塩基配列を決定し,相同性解析およびSNP (一塩基多型)解析を実施したところ,供試植物は,近縁種間での識別が困難なものがあったが,属レベルあるいは種レベルで,38グループに分けることができた.本法は,一部の近縁種間での識別精度や酸性下でのDNA安定性に課題は残るものの,製品や原料などに混入した植物片異物の特定とさらにその混入原因究明への寄与が期待されるものと考える.
著者
原田 幹生 高原 政利 村 成幸 丸山 真博 大石 隆太 宇野 智洋 佐竹 寛史 結城 一声 鶴田 大作 高木 理彰
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.564-568, 2017

Lateral Scapular Slide Test(以下LSST)は,肩甲骨の位置を評価し,肩甲骨下角とその高さの脊柱との距離で示される.本研究の目的は,成長期の野球選手において,LSSTと関連する因子について検討することである.野球選手382名を対象とした(小学:185名,中学:133名,高校:64名).小中高の順序で,肩痛あり(26,29,44%),投球パフォーマンススコア(最悪0-100%最高)(80,79,70%)であった.LSSTは,小中高の順序で,投球側(7.8,8.5,9.5 cm),非投球側(7.8,8.4,9.3 cm),左右差(投球側と非投球側の差)(0.0,0.1,0.2 cm)であり,左右差が1 cm以上ある選手は(10,16,25%)であった.僧帽筋下部の筋力低下は,小中高の順序で,(23,58,45%)であった.LSST(左右差)は,中学生では関連する因子はなかったが,小学生では,投手,肩痛あり,および低い投球パフォーマンスと関連し,高校生では,投手と関連していた.LSST(左右差)は,小中高いずれにおいても,僧帽筋下部筋力と関連はなかった.
著者
宇野 智洋 高原 政利 原田 幹生 丸山 真博 高木 理彰
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.254-259, 2017

<p> 背景:本研究の目的は,野球選手における肘内側側副靱帯損傷(以下,MCL)の保存療法成績と,保存療法に反応しない危険因子を調査することである.</p><p> 対象と方法:肘MCL損傷を有する68名の野球選手を後ろ向き調査した.平均年齢は16.8歳(12~24歳)であった.診断基準は,肘内側痛,MCL直上の圧痛,moving valgus stress test陽性,以上3項目を満たすもので骨端線閉鎖前の内側上顆裂離を除外した.保存療法の平均観察期間は4.4か月(1~15か月)であった.3か月以内の野球への復帰状況を調査した.</p><p> 結果:3か月以内の完全復帰は23名(34%),不完全復帰は21名(31%),復帰不能は21名(31%),および不明は3名(4%)であった.</p><p> 結論:保存療法に反応しない危険因子は,初診時に高年齢,主観的評価の肘痛,KJOCスコアが不良,外反ストレスX線で不安定あり,MRIで靱帯高信号が50%以上,および肩甲上腕関節の柔軟性不良であった.</p>
著者
原田 幹生 高木 理彰 村 成幸 丸山 真博 宇野 智洋 佐竹 寛史 鶴田 大作 結城 一声 大石 隆太 高原 政利
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.548-551, 2018

関節内インピンジメント(インピンジ)は,投球動作の肩外旋時に,腱板と後上方関節唇が接触し,肩痛を生じる病態である.本研究の目的は,中学野球選手に生じるインピンジの頻度を調べ,後方タイトネス(タイトネス)とインピンジの関係を検討することである.中学野球選手154名を対象とした.投球側の肩痛(なし0点-最悪40点)の平均点は8.0点(1~36)であった.タイトネスは59名(38%)であった.fulcrumテストとrelocationテスト陽性をインピンジとすると,12名(8%)に認められた.平均の肩痛は,いずれもなし(n=87):2.3点,タイトネス単独(n=55):3.6点,インピンジ単独(n=8):9.1点,両者の合併(n=4):26.0点であり,タイトネスとインピンジの合併は,他の3群に比べ,有意に高かった(p<0.05).インピンジにタイトネスが合併すると,肩痛が有意に強くなっていた.タイトネスのため,インピンジによって加わる腱板への圧力がさらに増大し,肩痛が強くなったと推測された.
著者
原田 織子 加藤 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.Suppl., pp.53-56, 2020-02-20 (Released:2020-03-23)
参考文献数
5

本稿では,遠隔教育で学ぶ学生の孤独感の緩和と学習へのモチベーション向上を目的として開発したWeb システム「バーチャル自習室~オキ朗~」について報告する.システムは,WebRTCを用いた動画か画像のみ表示される「自習室」と音声通話とチャットのみの「休憩室」の2つの機能を中心として構成される.実験から,学生の孤独感の緩和には有効性が示唆されたが,独習支援に繋げるためにはさらなる改良が必要であることが明らかになった.
著者
伊藤 嘉章 小泉 恵英 木川 りか 原田 あゆみ 白井 克也 志賀 智史 楠井 隆志 河野 一隆 早川 典子 大橋 有佳 渡辺 祐基 川村 佳男 望月 規史 川畑 憲子 森實 久美子 酒井田 千明
出版者
独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

初年度である今年度は、情報収集を兼ねて多角的に調査を開始した。タイでは、国立の伝統文化財部で現在行われている王室の御座船の修理方法や伝統的人形劇の人形、漆工品、色ガラスを多用した木製品、布製品、石造彫刻等の製作・修理技法のほか、寺院の壁画の修理技法について調査を実施した。インドネシアでは伝統的な影絵であるワヤン・クリの製作技法や機織りによるイカットの製作技法、伝統的な青銅製品(ゴング)の製作技法についての聴き取り調査を実施した。ミャンマーではこの地域に特有な性質をもつ漆工品の調査を行い、ベトナムでは伝統的木製品の修理のための調査のほか、藕糸の製作技法に関する調査を行った。また国内に存在するアジア地域に関連する文化財についても積極的に調査を進めた。中国式寺院の独特な様式をもつ仏像や金工品や、国内で保有しているアジア地域と関連する染織品(藕糸を使用したと考えられる絵画やインド更紗)、韓国の伝統的絵画(綿布に書かれた絵画)の修理方法についての調査、響銅(佐波理)の製作痕の調査、インドネシアのガムランの音色にかかわる構造などについての詳細調査を実施したほか、出土した茶入などの陶器についても製作技法を解明するためにCTによる詳細な構造調査を行った。このほか、修理技法と係る基礎研究としては、アジア地域で伝統的技法に多用されてきた灰汁について文書の修理への利用を念頭に、成分分析と修理対象となる紙に対する影響調査を行った。
著者
原田 裕二郎 藤本 邦昭
出版者
電気・情報関係学会九州支部連合大会委員会
雑誌
電気関係学会九州支部連合大会講演論文集 平成27年度電気・情報関係学会九州支部連合大会(第68回連合大会)講演論文集
巻号頁・発行日
pp.180, 2015-09-10 (Released:2018-02-16)

可変分周器は,高周波のクロックを低周波のクロックに変換する回路であり,CPU,メモリおよび各種通信機器内において広く利用されている.近年,クロック信号の立上りと立下りの両方のエッジを利用して信号処理を行う事が増えてきており,出力信号のデューティ比を50%に保つことは,極めて重要な性能の一つとなっている.本稿では,分周比に関係なく常にデューティ比50%の出力信号が得られる可変分周器を提案する.提案回路は,ディジタル回路のみの極めて簡単な構成であるため,ハードウェア記述言語を用いて簡単に記述することができ,FPGA上に実装可能である.また,その動作は分周比の増大に関係なく安定である.
著者
平澤 宏祐 白松 直樹 山本 知仁 原田 久 三宅 美博
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.466-474, 2003-12-10 (Released:2011-09-05)
参考文献数
13

In radiotherapy, it is essential to focus the radiation on the affected parts of the internal organs, like lung, liveretc., while minimizing the exposure to healthy tissues. Although methods that apply the beam to affected parts in synchronization with the patients' breathing have been used extensively, irradiation accuracy is not sufficient when the respiratory status of the patient is unstable. In this paper, we propose a new irradiation system that features (1) stabilizing the patients' respiration by synchronizing the rhythm of his/her breathing with that of music being played, and (2) controlling the timing of the irradiation based on the predicted respiratory phase instead of the measured phase that has been used widely. From experimental results using 12 subjects, it is possible to clarify that deviation of the beam irradiation position from the targeted point has been decreased to one-third as compared to conventionalmethods, resulting in a dramatic improvement in the accuracy of the irradiation system.
著者
原田 晋
出版者
日本学術会議 「機械工学委員会・土木工学・建築学委員会合同IUTAM分科会」
雑誌
理論応用力学講演会 講演論文集 第58回理論応用力学講演会
巻号頁・発行日
pp.6, 2009 (Released:2009-10-22)

International Maritime Organization (IMO) had discussed for developing the harmonized requirements for ships navigating in ice covered waters from middle of 90’s and issued the “Guidance for Ships Operating in Arctic Ice Covered Waters” as MSC (Maritime Safety Committee) / Circ. 1056 and MEPC (Marine Environment Protection Committee) / Circ. 399, in 2002. After that, the International Association of Classification Society (IACS) issued the Unified Requirements (URs) for Polar Class Ships in 2006 in order to supplement the provisions regarding a hull structure and a machinery mentioned in the IMO Guidance. This paper describes the summaries of the IACS URs.