- 著者
-
仕子 優樹
原田 亜紀子
大橋 靖雄
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.9, pp.593-602, 2020-09-15 (Released:2020-10-10)
- 参考文献数
- 26
目的 本研究では乳がん検診データを用いて,乳がん発見率の年齢,期間,コホート,および地域差の検討を行った。方法 日本対がん協会21支部に対して乳がんの検診データの提供を依頼し,2004-2015年における1年ごとの「X線のみ」,「視触診とX線」それぞれの受診者数,要精検者数,精密検診受診者数,精密検診の結果の人数を得た。コホート表に基づきベイズ型Age-Period-Cohortモデルを適用することで年齢,期間,コホートの各効果を分離して推定し,がん発見率に与える影響を考察した。次いで,地域特性の検討を行うために地域を変量効果として組み込んだモデルを使用し再度解析を行った。結果 年齢効果の特徴としては,40代後半でピークを迎えた後に減少し,50代後半以降も上昇する傾向が見られた。期間効果は2004年-2007年にかけ減少した後は頭打ちの傾向であった。コホート効果は,出生年が1943年から1958年のコホートで高い傾向が見られた。また,宮崎県,福井県,栃木県,北海道では高い発見率であったが,鹿児島県,千葉県では低いがん発見率であった。結論 本研究では乳がん発見率の年次推移に対して,3要因(年齢,期間,コホート)のうち年齢が最も強く影響することが確認された。また乳がん発見率が地域により大きく異なることが明らかになった。したがって検診データによって先行研究と同様の乳がん罹患年齢分布および地域差を示すことが可能であると示唆された。