著者
田中 翼 古川 聖
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1308-1318, 2013-04-15

本稿では,多声音楽の自動作曲において新しい旋律スタイルを自動生成する手法を提案する.本手法において旋律スタイルは,書き換え規則の集合からなる文法として表され,その文法規則は遺伝的機械学習システムであるクラシファイアシステムを用いて生成される.これまでの文法的なアプローチの自動作曲研究においては,多声音楽をいかに文法的に扱うかという問題や,オリジナルな旋律スタイル自体を自動生成する問題はあまり重点的に研究されてこなかった.そこで本稿では,多声音楽の生成過程を,各旋律が互いに参照し合いながら,声部間での書き換え規則の非同期的な適用によって成長していくプロセスとしてモデル化を行う.そしてモデルの要素としての文法規則をクラシファイアシステムを用いて自動生成することで,新しい旋律スタイルを創発させる手法を提案する.生成楽曲の評価実験の結果,文法ルール数を小さく設定することが複数の観点からの高評価につながることや,各声部が別々のルールに基づく「複数スタイル」の楽曲が「旋律の動きの豊かさ」において高評価を得ることが明らかになった.In this paper, we propose a method to generate new melodic styles in automatic composition of polyphonic music. In the proposed method, a melodic style is represented as a grammar that consists of rewriting rules, and the rewriting rules are generated by a classifier system, which is a genetics-based machine learning system. In the previous studies of grammatical approaches, the problem of how to treat polyphony and that of generating new melodic styles automatically haven't been studied very intensively. Therefore, we have chosen to tackle those problems. We modeled generative process of polyphonic music as asynchronous growth by applying rewriting rules in each voice separately. In addition, we developed a method to automatically generate grammar rules, which are the elements of the polyphony model. The evaluation experiment revealed that setting the number of grammar rules to a small number leads to high evaluations and that "multi-style" pieces, which have different melodic styles in respective voices, have higher scores than "single-style" pieces from the standpoint of "diversity of melodic movement."
著者
岩田 泰士 鈴木 育男 山本 雅人 古川 正志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.2752-2759, 2009-11-15

ネットワーク可視化技術は,ネットワークを大域的に俯瞰することで,その構造的特徴をとらえ,ノード間のリンク関係だけでは見えにくい新たな情報を見つけ出すうえで有用な技術である.本研究ではネットワークの可視化に対して,自己組織化マップ(SOM)の学習機構を利用した可視化方法を適用する.従来のSOMに基づくグラフレイアウト方法であるISOM(Inverted Self-Organizing Map)は,従来の力学的手法に比べ非常に高速であり,隣接ノードどうしが近い位置に配置されるという利点により,ある程度の意味を持つ結果が出力可能である.しかし,一方で可視化結果が信号領域で歪められる現象が起こる問題点を持つ.本研究ではこの問題点を解決する方法としてDSSOM(Dynamically-Signaling Self-Organizing Map)を提案し,その有用性を検証する.
著者
古川 公宣 下野 俊哉
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab1064-Ab1064, 2012
被引用文献数
16

【はじめに、目的】 表面筋電図は,非侵襲下での簡便な筋機能評価方法として用いられている.我々は第46回日本理学療法学術大会にて振幅確率密度関数(Amplitude Probability Distribution Function:APDF)を用いた表面筋電図波形分析方法を検討し,等尺性収縮時の筋出力の違いによる振幅データ分布帯の違いを報告したが,求心性収縮中の相違は確認することができなかった.そこで本研究においては,等速性運動中の筋機能の相違をAPDFを用いて解析する事を目的として実験を行った.解析にあたり,データ抽出範囲及び設定階級幅を詳細に検討して解析を行い,その他の指標との関連性を検討した結果,興味深い結果が得られたので報告する.【方法】 下肢の運動機能に障害を残遺する疾患や外傷の既往のない健常成人11名(男性8名,女性3名;平均年齢:19.0±2.8歳,平均身長:168.5±8.9cm,平均体重:60.6±9.8kg)を対象とした.測定機器はNoraxon社製表面筋電計TeleMyo 2400Tと等速性筋力測定器BIODEX System3をシグナルアイソレーションユニットにて同期させたものを使用した.測定対象課題は運動速度60,180,300deg/secの求心性膝関節屈曲伸展運動を5回反復することとし,標準化データとして膝関節屈曲70°での最大努力下の等尺性伸展運動を5秒間行い,課題遂行中の外側広筋,内側広筋斜頭及び大腿直筋の活動電位,膝関節伸展トルク,関節運動速度を測定した.5回の求心性伸展運動のうち中間3回の運動を対象に,目標運動速度が維持されている間の筋活動電位データを抽出した.最大等尺性伸展運動中に測定された2.5%毎の40階級を設定し,各階級に該当するデータ数の全データ数に対する割合を算出,ヒストグラムを作成して運動速度の違いによる相違を検討した.また,解析対象とした運動区間の平均振幅値及び平均発揮トルクも算出し,最大等尺性伸展運動中のピーク値で標準化したもの(%peak amplitude及び%peak torque)も検討対象として使用した.統計学的検定には分散分析を用い,有意水準を5%以下として比較検討を行った.【倫理的配慮、説明と同意】 一連の研究手順は研究者の所属する施設の研究倫理委員会にて承認を受けた後に開始された.また,研究の主旨と内容及び危険性の説明を事前に受け,同意書に署名をした被験者のみが実験に参加した.【結果】 内外側広筋の%peak amplitudeは運動速度の違いによる差を生じなかったが,大腿直筋は300deg/sec時が60,180deg/secと比較して有意に低かった(すべてp<0.01).%peak torqueは運動速度が速いほど有意に低下した(すべてp<0.01).APDF解析の結果では,内外側広筋の各階級において,運動速度の違いによる有意差はなかった.しかし,大腿直筋では0-5.0%の階級では運動速度が速い方が高値を示したが,15.0%以上の階級になると300deg/secが他の運動速度と比較して低値を示しはじめ,27.5-52.5%の階級では32.5-35.0%の階級を除いて有意に低値を示した.さらにこれ以降から80.0%までの階級においても60と300deg/secで後者が有意に低値を示していた.【考察】 %peak amplitude及びtorqueの結果より,運動速度の違いによる発揮トルクの変化は主に大腿直筋に依存していると考えられた.大腿直筋の%peak amplitudeを算出するデータの分布を見ると,運動速度の違いによって振幅データの分布帯が異なっており,運動速度が速く発揮トルクが低い方が,低い階級の出現率が高かった.関節運動速度ダイナモメータの抵抗によってコントロールされる等速性筋力測定器では,設定運動速度に到達するための筋活動が筋線維の同期ではなく交代によって制御されると考えられる.すなわち筋内の各部位で発生する活動電位を時空間的に加算して捉える表面筋電図では,設定速度に到達しそれを維持する際には,速い運動速度の方が筋活動電位の加重が少ないために,低い階級の分布が増加したことが一要因であると推察され,その分布域の変換点が25.0-37.5%階級付近に存在している可能性も確認された.今後はさらに条件を詳細に制御し,生理学的考察を加えることで,より明確な筋機能分析が可能であると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 筋機能を詳細に評価することは,理学療法プログラム作成には不可欠である.本研究で用いた方法は,非侵襲下での筋機能解析が可能であり,今後,疾患,障害特性をふまえたデータ解析と併せることで,より有効なツールとなると考えられる.
著者
設樂 真理子 宮 瑾 芹澤 凌 牧野 真人 西岡 昭博 古川 英光
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.81, no.829, pp.15-00008-15-00008, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
5
被引用文献数
2

The market of care food is growing for aging society and the personal version of care food will be needed for improving a fun of meal. On this occasion, 3D printing technologies have been developed and are being applied for food creation. In the present study, we prepare food ink for the world-first 3D gel printer designed by our group. The hardness of food is one of the most important factors that influence the texture of food. So that the jelly foods made by the 3D gel printer is designed being soft and easy to chew. Here four kinds of jelly food samples are prepared by using agar and gelatin as gelation agents. The mechanical strength of the jelly foods is evaluated by a compression test for foods. We measured the hardness (maxmum stress) of the jelly foods and succeeded in the preparation of various jelly foods of 8 ~ 45kPa in hardness. The gelation of agar is possibly controlled by temperature change. Thus by using the temperature change, the jelly foods are easily printed by the 3D gel printer. We hope these printed jelly foods will make it possible for elder persons to enjoy their fun of everyday meal and improve the quality of life for the elder persons.
著者
植田 英治 吉見 富洋 古川 聡 小野 久之 朝戸 裕二 登内 仁 井上 真也 黒木 義浩 雨宮 隆太 小泉 澄彦 長谷川 博
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.10, pp.2010-2013, 1996-10-01
被引用文献数
4

私たちは,患者がより良い医療を受けるためには患者自身が自分の病気について知っていることが不可欠であると考え,癌告知を積極的に進めてきた.告知に際して原発臓器・進行度・年齢・性別等は考慮しなかった.外科手術患者543人に癌告知を行い,生存していてアンケート実施可能な患者413人のうち366人(配布率89%)にアンケートを実施し,300人(回収率82%)より回答を得た.89%の患者が,「病名を告げられてよかった」と答えており,「癌では無いと嘘をついて欲しかった」と答えた患者は1%であった.告知により55%の患者がショックを受けたと答えていたが,回答患者の87%が3か月以内に立ち直ったと答えていた.現在当科では,癌であることを「知らないでいる権利」をも尊重する目的で,全初診患者を対象として,外来で告知希望の有無を確認した上で告知を進めている.癌告知を広く積極的に進めるべきであると考えられた.
著者
畑中 雅昭 中保 仁 岡 信恵 亀淵 興紀 笠井 保志 白川 理恵 富田 晃子 長 和彦 古川 宇一
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.79-90, 1998-02-10

本報告では,旭川市内にある小学校特殊学級の自閉的傾向と診断された男児へのIEP(個別教育計画),TEACCHプログラムの考え方を取り入れた関わりについて述べたものである。朝起きてから家を出るまでの特に歯みがきと洗顔を中心とした行動の習慣化をめざし家庭での指導とその支援を工夫した。少しずつだが自発的に行動がみられるようになってきた。個別学習ではコミュニケーション能力の向上をめざして課題や指導の工夫を続けた。課題が終わると,「まるをつけてください」と言葉で要求したり,動作を表す言葉を理解したりすることができるようになってきている。
著者
古川まどか
雑誌
JOHNS
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.895-900, 1997
被引用文献数
3
著者
古川 康一 升田 俊樹 西山 武繁 忽滑谷 春佳
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.29-44, 2013-03-20

本論文では、チェロの奏法について、多くのプレーヤーに納得できるような奏法を、スキルサイエンスの立場とプロのチェリストの経験を融合させて追及した試みについて報告する。具体的には、スキルサイエンスの研究者である第1著者とプロのチェリストである第2著者の論争とコラボレーションを通して、如何にして余分なエネルギーを使わない、体に無理のない運弓法に関する新たな知見が得られたのかを見ていく。本論文で取り上げる論争のテーマは、すばやい動作を含む困難な課題をこなすために、「首を振る」動作を意図的に行うべきか否か、という問題である。このテーマについて、第1著者が生体力学的な視点からプラスの評価を与えているが、第2著者は経験知からマイナスの評価を与えている。その論争を解決するためのいくつかの試みについて述べる。第1に、インタラクティブ・インタビューと呼ばれる著者らが開発したインタビュー法により、議論の中から問題点を抽出する試みについて述べる。第2に、生体力学的な考察に欠落していた鞭動作の起動に関する考察と、その実現方法についての新たな知見を紹介し、それが論争の一部を解決できることを示す。
著者
古川 和寛
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2009-02

制度:新 ; 報告番号:甲2829号 ; 学位の種類:博士(工学) ; 授与年月日:2009/3/15 ; 早大学位記番号:新5049
著者
桑本 暢子 菱沼 典子 中山 和弘 鈴木 和代 青池 慎一 佐々木 杏子 佐竹 澄子 品地 智子 中村 佳代 古川 優子
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

脳卒中患者に対する背面開放座位ケアプログラムの定着を目指した看護師支援ツール開発のために、普及理論をもとに質的研究を行った。結果、促進因子は,認定/専門看護師がオピニオンリーダーとなり,コアナースの育成,多職種/家族の協力,病棟文化,電子チャートにケア項目として入れる,プログラムをアレンジする,相対優位性/試行可能性,/両立可能性が高いことであった.阻害因子は,看護師の異動,採用拒否者の存在,教材不足,複雑性/観察可能性の低さであった.促進/阻害因子の多さ,強さによって,導入/実施継続,中断が起こっていた.定着には,プログラムの重要要素は保持した上で内容を変化させることが重要であった.