著者
永田 真 田部 一秋 山本 英明 丸尾 仁 木内 英則 坂本 芳雄 山本 恵一郎 土肥 豊
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.628-634, 1993
被引用文献数
6

ダニ抗原感受性の成人気管支喘息におけるrush immunotherapy (RI) の至適施行指針を確立する目的で, 筆者らはRIを施行した38症例についての臨床的解析を行った。全例で10日以内にハウスダスト (HD) 10倍液の0.10ml以上の維持量に到達可能であった。全身的副作用は10倍液の0.15ml以上の注射時に多くみられ, また注射部位の発赤・腫脹径が8cm以上を示した症例で高頻度であった。喘息発作の誘発に先行して気道系の前駆症状が高率にみられた。RIの臨床的な有効率は, 1秒率<70%の症例では明らかに低値であり, また。維持量が10倍液の0.10mlの群と0.20m以上の群との間では差はみられなかった。以上の成績からHDを用いるRIにおいては, 1) 非発作時の1秒率が70%以上の症例を選択すること, 2) 10倍液の0.10mlを原則的な到達目標量とすること, 3) 局所皮膚反応が8cm以上となるか, 気道の違和感などの前駆症状がみられた場合は抗原量の増量には慎重を期すること, などがその安全性と有効性を向上させる観点から推奨されると考えられた。
著者
坂本 貴彦 黒澤 博身 岩田 祐輔 村田 明
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

以前におこなった研究結果(Miura T, Sakamoto T, et. al. JTCVS: 133:29-36,2007)を踏まえて、軽度低体温〜常温体外循環中の脳循環生理を把握し現在汎用されている体外循環法の脳組織に及ぼす影響に関してpreliminaryな慢性実験を施行した。【対象と方法】Yorkshire pig(生後4-5週目、N=6、8.4-14.0kg)を用い、気管内挿管下に実験を開始、近赤外線分光器(NIRS: NIRO300,浜松ホトニクス)を前額面に装着した。全身麻酔下に、右開胸にて心臓に到達し、大動脈送血、右房脱血にて体外循環を確立した。脳循環生理に大きな影響を及ぼすと考えられる潅流因子の中で、臨床上汎用されている軽度低体温下でのalpha-stat strategyの脳組織に及ぼす影響を中心に実験をすすめた。軽度低体温(34℃)体外循環を90分間、Hct値30%、alpha-stat管理下に施行した。実験終了後、体外循環から離脱しカニューレを抜去し閉創をおこない、その後循環呼吸管理をおこない、人工呼吸器からの離脱をはかった。一週間経過観察をおこない、その間に毎日、実験内容を知らされていない獣医による行動評価をおこなった。行動評価にはNeurological Deficit Score(NDS)およびOverall Performance Categories(OPC)を用い、また一週間目に動物を犠牲死せしめ脳組織の顕微鏡的観察をおこなった。病理組織的診断は実験内容を知らされていない病理医がおこない、細胞レベルの虚血の有無を点数化し実験のendpointとした。【結果】NIRSは特別異常な経過を示さなかった。NDS, OPCともに一週間正常値を示し、豚は外見上異常行動を認めなかった。しかしながら脳組織Neocortex, Hippocampusを中心に虚血性変化を認めた。【考察・結論】Hct30%、軽度低体温下の小児体外循環において、現在多くの施設で汎用されているalpha-statstrategyでは組織レベルの脳障害を惹起している可能性が示された。行動評価が正常範囲内であることから、臨床上問題とならない軽微なものである可能性が高いが、脳高次機能の点では疑問が残り、良好な脳循環を確保しやすいpH-stat strategyの導入がこれを解決することが期待される。今後、血液希釈の程度との相互作用についての慢性実験の重要性が示唆された。
著者
澄川 喜一 長澤 市郎 小野寺 久幸 岡 興造 寺内 洪 小町谷 朝生 田淵 俊雄 坂本 一道 佐藤 一郎 大西 長利 増村 紀一郎 稲葉 政満 前野 尭 BEACH Milo C FEINBERG Rob 杉下 龍一郎 新山 榮 馬淵 久夫 中里 寿克 ROSENFIELD J 原 正樹 小松 大秀 中野 正樹 手塚 登久夫 浅井 和春 水野 敬三郎 海老根 聰郎 辻 茂 山川 武 福井 爽人 清水 義明 平山 郁夫
出版者
東京芸術大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

本研究プロジェクトは、広く海外所在の日本・東洋美術品の保存修復に係る調査研究の一環として、在米日本・東洋美術品の日米保存修復研究者による共同研究である。我が国の美術品は、固有の材料・技法をもって制作されるが、異なる風土的環境下でどのような特質的被害を生ずるかは従来研究されていなかった。たまたま米国フリーア美術館所有品に修理すべき必要が生じ、本学を含む我が国の工房で修復処置を行った。その機会に保存修復に関する調査研究が実施された。本プロジェクトの目的は、とくに絵画、彫刻、工芸についての保存修復の実情を調査することにあった。具体的には、本学側においては米国の美術館等の保存修復の方法、哲学、施設的・人員的規模等を調査し、フリーア美術館側は我が国の最高レベルの修復技術(装こう)とその工房の実態、すなわち施設、用具、手法、人員等を調査し、相互の研究結果を共同討議した。3年度間の研究成果概要を以下箇条書きで示す。1)フリーア美術館付属保存修復施設をはじめ6美術館(ナショナルギャラリー、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、ゲティー美術館、ロード・アイランド・スクール・オブデザイン付属美術館)の保存修復施設、及び3大学の保存修復教育課程(ニューヨーク大学保存修復センター、デェラウェア大学保存修復プログラム、ニューヨーク州立大学バッファロ-校)を調査した。2)美術館及び収蔵庫並びに付属の研究室、工房は、一定範囲の温湿度(フリーア美術館の場合は温度68〜70゜F、湿度50〜55%、ただし日本の美術品に対しては湿度65%で管理する等、その数値は美術館により若干変化の幅がある)にコントロールされる。我が国の修復は自然な環境下で行われるから、そのような点に経験度の関与が必要となる一つの理由が見いだされる。しかし、完全な人工管理環境下での修復が特質的な材料・技法を満足させるものであるか否かの解明は、今後の研究課題である。3)CAL(保存修復分析研究所)やGCI(ゲティー保存修復研究所)のような高度精密分析専門機関は我が国にも必要である。4)米国の美術館は保存修復施設並びに専門研究者を必備のものと考え、展示部門ときわめて密接な関係をもって管理運営し、コンサバタ-の権威が確立されている。その点での我が国の現状は、当事者の間での関心は高いが、配備としては皆無に近い。5)大学院の教育課程は科学な計測・分析修得を主としながら、同時に物に対する経験を重視する姿勢を基本としており、その点で本学の実技教育に共通するところがある。米国の保存修復高等教育機関のシステムを知り得たことは、本学で予定している保存修復分野の拡充計画立案に大変参考になった。6)保存修復に対する考え方は米国内においても研究者による異同があり、修復対象作品に良いと判断される方向で多少の現状変更を認める(従来の我が国の修理の考え方)立場と、現状維持を絶対視する立場とがある。現状維持は、将来さらに良い修復方法が発見された場合に備える、修復箇所の除去可能を前提とする考え方である。保存修復の理想的なあるべき姿の探求は、今後の重要な国際的な研究課題である。7)それは漆工芸等においてはとくに慎重に検討されるべき課題であり、彼らには漆工芸の基礎的知識不足が目立つ。そのような我が国固有の材料、技法面についての情報提供、技法指導などの面での積極的交流が今後とくに必要であろう。逆に建築分野は彼らが先進している。8)米国研究者は我が国の工房修復を実地に体験し、深く感銘した。それは装こう技術が脳手術のようだという称賛の言葉となって表れた。9)ミーティングにおける主要話題は、保存修復は現地で行われるべきであり、それを可能とする人材養成が必要である。保存修復教育には時間がかかることはやむを得ない、期間として6年位が目安となろう。科学教育は大学で行われるべきだが、日本画に限れば工房教育がよい、などであった。
著者
縄田 栄治 樋口 浩和 坂本 正弘 中西 麻美 小坂 康之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

現在、熱帯地域で急速に進行する経済発展とグローバリゼーションにより脅かされている、伝統的な植物資源利用を明らかにし、いくつかの植物資源をとりあげ、近年の分布域の変化、遺伝的多様性を明らかにすることを目的として4年間の研究を実施した。臨地調査により、伝統的な焼畑地では、休閑林の生態系が急速に変化しつつあること、ホームガーデンでは、種の多様性はある程度維持されているものの、利用に関する知識が失われつつあることが明らかになった。また、野生のマンゴーの利用は、東南アジア大陸部全域に広がり、今なお、多様な利用が見られるものの、地域差が大きいことが明らかとなった。
著者
後藤 純信 飛松 省三 坂本 泰二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、網膜変性による網膜機能障害を網膜全般の現象と捉え、網膜変性疾思の病態を明らかにするために、網膜色素変性症(RP)モデルのrdcラットやrdsマウス、錐体一杵体ジストロフィ症(CRD)モデルのCMYCマウスを用いて、1)杵体・錐体系細胞や網膜内層の経時的機能変化を網膜電図(ERG)で定量解析、2)光受容体細胞や網膜内層の経時的組織変化を細胞のアポトーシスを指標に解析、3)遮光や遺伝子導入による網膜残存機能の温存効果をERGと組織学的変化で検討した。本研究結果として、1)CMYCマウスの錐体細胞系ON型、OFF型双極細胞の機能が1ヶ月まで正常に近いが、6ヶ月では反応が消失、2)網膜内層の機能変化が早期より起こる、3)3ヶ月間の暗所飼育により網膜機能が通常飼育より保たれる、4)rcsラット網膜に、ウィルスベクターでFGFやその他の神経成長因子の遺伝子を導入したところ、長期間の機能温存を認める(Ikeda et al.,2003;Miyazaki et al.,2003)、5)暗所飼育CMYCマウスではベクター導入効果は明らかでなかった。以上より、杵体細胞や錐体細胞の機能変化は、網膜の外層と内層で多少の時間的ずれがあるものの、組織学的変性に準じて起こった。また、CMYCマウスやrcsラットの暗所飼育による網膜細胞変性の遅延(抑制)効果は明らかであったが、ベクターによる遺伝子導入効果は、種間で差があった。遺伝子導入は、現在眼科と共同研究を行なっており、手技等の改善により新しい治療法として近い将来確立できると思われる。本研究を通して、今までその詳しい病態や治療法のなかった網膜変性症に対し、初期からのサングラス等による光からの防御や遺伝子治療の可能性を提言できたことは、将来の網膜変性症治療への応用に向けて有意義な結果であったと考える。
著者
高野 吉郎 大島 勇人 前田 健康 馬場 麻人 坂本 裕次郎 寺島 達夫 花泉 好訓
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

口腔領域における抗原提示細胞ネットワークの全容を解明するための一連の研究の一環として、ラット切歯、臼歯、ヒト永久歯および乳歯を用いて、以下に示す項目について検討を行った。1.抗原提示細胞ネットワーク:マクロファージを含む抗原提示細胞ネットワークをMHC class II抗原に対する免疫組織化学と、ACPaseの酵素組織化学の二重染色法、ならびに免疫電顕法により精査した。歯根膜と歯髄で、樹状細胞郡とマクロファージ郡の2郡に大別し、両者の分布パターンの異同を大筋で明らかにした。幼若な個体では歯髄、歯根膜ともに樹状細胞は少数で、成長に伴って増加した。ラット臼歯歯根膜では樹状細胞と破骨細胞の棲み分けが確認され、歯髄では樹状細胞が頻繁に象牙細管に細胞突起を刺入していることが確認された。2.窩洞形成刺激が歯髄樹状細胞に与える影響:従来看過されていた窩洞形成後の樹状細胞の早期反応の詳細を明らかにした。窩洞形成直後から多数の樹状細胞が象牙細胞の傷害野へ集積し、修復象牙質の形成開始期まで溜まってダイナミックな動態を示すことが確認され、樹状細胞が外来抗原刺激の感受に加えて、歯髄修復に何らかの関与をしている可能性が示唆された。3.抗原提示細胞と破骨細胞の前駆細胞判別の試み:歯槽骨の骨形成野と骨吸収野が歯根の近遠心で明瞭に区別されるラット臼歯歯根膜では、同じ骨髄単球系細胞である樹状細胞と破骨細胞がやはり明瞭な棲み分けをしていることが確認された。そこで矯正的に骨の吸収と添加の方向を変化させ、樹状細胞と破骨細胞の局在性を変化させることで、in situでの両細胞の分化を誘導し前駆細胞の異同を検討した。4.ヒト乳歯歯髄の樹状細胞:健常、歯根吸収期、歯冠吸収期の乳歯歯髄に多数の樹状細胞の存在を確認した。樹状細胞はヒト永久歯歯髄やラット臼歯と同じく象牙細管に突起を刺入するものが多く、特に乳歯では歯髄側の象牙質吸収野に見られるセメント質様組織の形成との関係が伺われた。当初計画した歯髄樹状細胞の所属リンパ節への移動に関する細胞化学的検討と樹状細胞の抗原物質処理経路の免疫細胞化学的検討については、今後の検討課題とした。
著者
金坂 清則 山田 誠 新谷 英治 勝田 茂 坂本 勉 天野 太郎 小方 登 秋山 元秀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、19世紀の世界をリードした西欧の中でもとりわけ重要だった大英帝国の人々が行った旅や探険とその記録としての旅行記について、アジアに関するものに絞り、歴史地理学的観点を主軸に据えつつ、歴史学者や言語学者の参画も得て多面的に研究し、そのことを通して、未開拓のこの分野の研究の新たな地平を切り開く一歩にした。また、その成果を地理学のみならず歴史学や文学の世界にも提示して学問分野の枠組みを越えることの有効性を具体的に提示し、かつそれを一般社会にも還元することを試みた。このため、I英国人旅行家の旅と旅行記に関する研究、II英国人の旅と旅行記に関するフィールドワーク的研究、III旅のルートの地図・衛星画像上での復原、IV19世紀のアジアを描く英国人の旅行記文献目録編纂という枠組みで研究を進めた。Iでは、このような研究の出発点となるテキストの翻訳に力点を置く研究と、それ以外の理論的研究に分け、前者については最も重要かつ代表的な作品と目されるJourneys in Persia and Kurdistanについてそれを行い、後者については、最重要人物であるイザベラ・バードやその他の人々の日本・ペルシャ・チベット・シベリアへの旅と旅行記を対象に研究した。IIについては、イザベラ・バードの第IV期の作品であるJourneys in Persia and Kurdistanと、第V期の作品であるKorea & Her NeighboursおよびThe Yangtze Valley and Beyondを対象とし、このような研究が不可欠であり、旅行記の新しい読み方になることを明示した。またツイン・タイム・トラベル(Twin Time Travel)という新しい旅の形の重要性を提示し、社会的関心を惹起した。IIIでは縮尺10万分の1という従来例のない精度でバードの揚子江流域の旅のルートを復原すると共に、この種の研究に衛星画像の分析を生かすことができる可能性を西アジアについて示した。また今後の研究に必須の財産となる目録を編纂した(IV)。
著者
徳丸 勝悟 長谷川 洋 坂本 英至 小松 俊一郎 河合 清貴 田畑 智丈 深見 保之 秋田 昌利 都築 豊徳
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.521-526, 2005-05-01
被引用文献数
7

症例は61歳の男性で, 上腹部痛, 発熱を主訴に近医を受診し, 肝左葉に腫瘤を指摘され紹介となった.当院のダイナミックCTで肝外側区と一部内側区におよぶlow density tumorを認め, その辺縁部は徐々に不均一に造影された.腫瘍マーカーは正常範囲であった.胆管細胞癌を第1に疑い, 平成15年4月7日にリンパ節郭清を伴う肝左葉切除術を行った.病理組織像では腫瘍のほとんどが肉腫様構造を呈し, ごく一部に腺管様構造を認めた.また, その境界には移行部を認めた.肉腫様変化を伴う胆管細胞癌と診断した.術後経過は良好であったが, 外来通院中に残存肝へ転移が出現した.化学療法, 放射線療法にて一定の効果を得たが徐々に状態が悪化, 平成16年1月15日に永眠された.肉腫様変化を伴う胆管細胞癌の報告は極めて少なく, 本邦では我々が検索しえたかぎり13例を認めるのみであった.その臨床的特徴をまとめたので報告する.
著者
佐藤 節郎 舘野 宏司 小林 良次 坂本 邦昭
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.317-327, 1998-12-28
被引用文献数
4

1995年4月3日, 1996年4月28日および同年5月24日にハリビユ種子をそれぞれ, 17.8, 26.7および26.7g/aの量で播種した後, トウモロコシ(品種:Pioneer 3352)を666本/aの密度で播種した。リビングマルチとしてイタリアンライグラス(品種:タチワセ) をトウモロコシと同時に0.3および0.6kg/aの量で播種, または, アトラジン+アラクロールを10.0+10.8 a.i.g/aの量で土壌散布した。播種後5.5-11週に, トウモロコシとハリビユを定期的に刈り取り, リビングマルチ区および除草剤区の両草種の生長およびトウモロコシの窒素吸収の推移を無処理区と比較した。また, トウモロコシ収量と収穫時のハリビユの生長を同様に比較した。4月3日播種トウモロコシでは, リビングマルチは競合によりハリビユを十分に抑制したが(Fig. 1), 同時にトウモロコシとも激しく競合し, トウモロコシの生長は有意に減少し, トウモロコシの葉の窒素含有量も低下した(Fig. 2, Table 2, 3)。4月28日播種トウモロコシでは, リビングマルチは一定のハリビユ抑制効果を示し (Fig. 1), トウモロコシの生長と葉の窒素含有量にもほとんど影響を与えなかった(Fig. 2, Table 2, 3)。5月24日播種トウモロコシでは, イタリアンライグラスが出芽後の高温により十分に生長しなかったため, リビングマルチはハリビユを抑制できず(Fig. 1), また, トウモロコシの生長や窒素吸収に影響を与えることはなかった(Fig. 2, Table 2, 3)。いずれの播種日のトウモロコシも, 生育期の純同化量(NAR)は, いずれの調査日においても有意な雑草防除処理間差が認められず, イタリアンライグラスと激しく競合した4月3日播種におけるリビングマルチ区のトウモロコシにおいても, NARの明確な低下は認められなかった(Table 3)。リビングマルチ区トウモロコシの収穫時には, 4月3日播種ではハリビユが全く認められず, 4月28日播種ではハリビユが認められたものの, その密度と重量は無処理区に比べ有意に小さく, 5月24日播種ではハリビユの密度と重量は無処理区とほぼ同等であった(Fig. 4)。トウモロコシ収穫時の無処理区のハリビユの密度と重量は, 4月28日および5月24日播種において4月3日播種よりも小となった(Fig. 4)。リビングマルチ区のトウモロコシ収量は, 無処理区に比べ, 4月3日播種で34-40%, 4月28日播種で11%減少したが, 5月24日播種ではリビングマルチ区と無処理区の間に有意な差は認められなかった(Fig. 5)。アトラジン+アラクロールの土壌処理は, トウモロコシの生長, 生長期の窒素吸収および収量を低下させることなくハリビユを十分抑制できた(Fig. 1-5, Table 2, 3)。イタリアンライグラスリビングマルチは, 若干の減収を前提とすれば, 4月下旬に播種するトウモロコシにおいてハリビユの防除のために利用が可能であり, また, 有機物の連続的な投与により土壌処理剤の効果が不十分な圃場では有効な技術となりうると考えられた。
著者
坂本 清 三浦 行矣 植田 健 馬場 理香 鎌倉 敏子 坂本 理絵子 岡部 正和 中尾 宣夫
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.539-545, 2006 (Released:2007-02-23)
参考文献数
12
被引用文献数
11 6

We examined the low contrast resolution of cone beam CT (CBCT) equipped with an indirect-type flat panel detector and compared it with a commercial CT unit (Robusto). In CBCT, the X-ray tube voltage of 110 kV was used, and in the Robusto, the usual 120 kV was used for examinations. The computed tomography dose index (CTDI) of the two systems was measured, and images scanned at about the same exposure to radiation were compared. The modulation transfer factors of the two systems were measured, and the convolution kernel that was the nearest to the characteristic of CBCT was chosen among kernels of the Robusto. A water phantom with a diameter of 200 mm was scanned, Wiener spectra were calculated, and signal-to-noise ratios were compared. The low contrast resolution phantom was scanned, and detectability and contrast-to-noise ratio (CNR) were measured. In addition, we placed diluted contrast medium into a phantom, scanned the phantom, and measured the detectability and CNR. When the X-ray irradiation condition of CBCT was 75 mAs at 110 kV, the equal dose of radioactivity in the Robusto was 50 mAs at 120 kV. In the low contrast resolution phantom, detectability was 8.7%mm in CBCT, and 9.4%mm in the Robusto. In the low contrast resolution evaluation phantom, CNR was 1.39 in CBCT, and 2.69 in the Robusto. With diluted contrast medium, CNR was 1.28 in CBCT, and 0.60 in the Robusto. CBCT was inferior to the Robusto in a low contrast resolution phantom, but CBCT was superior to the Robusto using diluted contrast medium. We found that CBCT was useful in examinations using contrast media.
著者
リム ボン 東 自由里 大津留 智恵子 出口 剛司 吉田 友彦 轟 博志 デイビッド ウィリス 坂本 利子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究プロジェクトの成果は、主として、次の5つの点である。(1)NYのロワーイースト・サイド・マンハッタンで開花した文化力と地域再生力の本質を追跡した。とりわけ、歴史的建造物の保全と再生、さらにはこれらを活用した市民教育支援事業に熱心に取り組んでいるテネメント・ミュージアムやエルドリッジ・ストリート・ミュージアムの取材を重ね、それらの組織的基盤となっているNPOの役割を明らかにした。テネメント・ミュージアムは、近年新たな移民として渡米してきた人々に対する積極的な人権啓発と生活支援に関する教育事業を実施しているのであるが、同時に、地域の歴史的形成過程等の教育プログラムも実践している。(2)ミネソタ州における、アメリカで最も大きなモン系コミュニティの現状と政策の先進性を明らかにした。マジョリティとマイノリティの軋轢の原因をなすはずの「差異」を、むしろ積極的な社会資源として積極的に受け入れ、マジョリティによる一方的な押し付けではない多文化的市民像の構築を行った。(3)フランクフルトにおけるユダヤ文化の再生過程を分析し、その積極的な可能性を明らかにした。とりわけ、フランクフルトのヴェストエンド地区を舞台に展開しているユダヤ文化再生過程を分析することによって、多文化主義時代におけるマイノリティの可能性を明らかにしている。(4)大阪市生野区の御幸通り商店街(旧猪飼野地区)と東京都新宿大久保地区のコリアタウンをフィールドに、日本社会におけるコリアン・コミュニティの浸透状況と存在意義を考察し、さらには今後の可能性をも提唱した。(5)同和地区において過去40年の間に、隣保館、診療所、体育館、学習センター、公衆浴場、歴史資料館などの社会資本ストックが既に形成され、これら施設郡を有機的に活用するシステムを開発し、都市の魅力アップに貢献する拠点地区となり得ることを解明した。
著者
坂本 真里子 河野 一世 熊谷 まゆみ 赤野 裕文 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.427-434, 2007-12-20
被引用文献数
4

硬度の異なる3種の水,南アルプスの天然水,エビアン,コントレックスを用いて,かつお節だし,野菜スープ,牛肉のスープストックを調製した。総窒素,遊離アミノ酸,イノシン酸,グアニル酸,有機酸の分析および官能評価を行い,水の違いを比較した。かつお節だしでは用いた水の種類によって,遊離アミノ酸のパターンが異なっていた。官能評価では総合的な好ましさに有意の差は無かったが,エビアンと南アルプスの天然水が好まれる傾向にあった。野菜スープでは南アルプスの天然水に殆どの遊離アミノ酸が多く,次いでエビアンに多かった。官能評価ではこの両者が有意に好まれた。牛肉スープストックではコントレックスがアクを最も多く分離してスープは清澄であった。遊離アミノ酸合計量はエビアンに最も多く,ついでコントレックスであった。エビアンはイノシン酸,グアニル酸も有意に多かった。官能評価で最も好まれたのはエビアンであった。硬度の異なる水で3種の煮出し汁を調製すると,溶出成分に差があった。煮出し汁の好ましさは溶出成分だけでなく,水そのものの味も影響することから,溶出成分と水の味との兼ね合いで好ましさが決まるといえる。