著者
西嶋 仁浩 坂本 浩 原田 耕介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.1701-1708, 2001-09-01
参考文献数
6
被引用文献数
8

バッテリセルを直列接続して使用する場合, 様々な要因からセル電圧にばらつきが生じ, これがバッテリの寿命や性能を低下させてしまう.本論文では, セル電圧を均等化するための簡単で高性能な電圧バランス回路を提案する.本回路は, nセルの直列接続に対しn-1個の双方向形コンバータを取り付け, それぞれのコンバータをPWM制御することによって高精度にセル電圧をバランスすることが可能である.また, 可変抵抗素子とダイオードで構成されたPWMコントローラを各コンバータに接続することにより, 一つのドライバと一つのバッテリマネージメント用マイクロプロセッサのみですべてのコンバータの駆動とPWM制御が可能である.本論文では, 提案する回路の動作説明及び状態平均化法を用いた定常解析を示し, 実際に作製した回路を用いて, 回路使用時, 未使用時のバッテリの充放電特性を測定することで回路の有効性を確認している.
著者
坂本 真士
出版者
大妻女子大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本年度は昨年度の成果をもとに、抑うつ的な自己注目のあり方と適応的な自己注目のあり方をモデル化した(この成果については、本年度の日本心理臨床学会および日本心理学会にて発表した)。そして、適応的な自己注目のあり方の指導を取り入れた、抑うつ予防のためのプログラムを作成し、女子大学生(1年生、社会心理学専攻)21名を対象に実施した。実施期間は平成13年4月から7月であった。本研究で1年生前期において実施としたのは、大学における適応・不適応を考える上で、入学直後から1年次前半が特に重要な時期だからである。この時期、生活リズムの変化、新しい人間関係づくり、勉学の問題など様々な変化に新入生はさらされている。自分について振り返る時間が増えた分、不適応的な自己注目のために抑うつなどの問題を発生させる可能性も高いと考えられる。申請者らは、本年度前期に週1回の割合で心理教育予防プログラムを実施した。実施は授業の単位とは全く関係のない「自主ゼミ」という形で行い、ボランティアで参加者を募った。前半では、参加者同士知り合うためのグループワークを積極的に取り入れた。また、自分を知るために様々な心理テストを実施した。実施した心理テストについては実施の翌週に申請者が解説した。これによって客観的に自己をとらえるようにした。また、ホームワークを課して、事態に対する認知の仕方を明確にした。後半では、認知療法的なパースペクティブから、自己に関するネガティブに歪んだ認知の修正、自己のポジティブな側面に対する注目などについて指導した。10月に実施した事後アンケートから、この予防プログラムは一定の成果を収めていることがわかった。
著者
御子柴 道夫 長縄 光夫 松原 広志 白倉 克文 清水 昭雄 大矢 温 加藤 史朗 清水 俊行 下里 俊行 根村 亮 坂本 博
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

18世紀後半から19世紀前半までのロシア思想史を、従来の社会思想史、政治思想史に偏る研究視点から脱し、それらを踏まえたうえで、狭義の哲学思想、宗教思想、文学思想、芸術思想の多岐にわたる面で多面的に研究してきた。その結果、従来わが国ではもっぱら思想家としてしか扱われてこなかったレオンチェフの小説にスポット・ライトが当てられ、逆に小説家としてしか論じてこられなかったプラトーノブやチェーホラが思想面からアプローチされた。またロシア正教会内の一事件としてわが国ではほとんど手つかずだった賛名派の騒動が思想ないし哲学面から解釈された。さらに象徴派の画家やアヴァンギャルド画家が哲学あるいは社会思想史の視点からの考察の対象となった。と同時に、これらの作業の結果、ロシアでは文学、芸術、宗教儀礼、あるいは社会的事件さえもが思想と有機的に密接に結びついているのではないかとの以前からの感触が具体的に実証されることとなった。また、文化のあらゆる領域を思想の問題としてとらえた結果、当該時期のロシア思想史をほとんど遺漏なく網羅することが可能になった。この基本作業をふまえて、いくつかのテーマ--近代化の問題、ナショナリズムとグローバリズムないしユニヴァーサリズムの問題、認識論や存在論の問題などが浮上してきた。分担者、協力者各自の研究の中で当然それらのテーマは咀嚼され発展させられてきたが、今後はこれらのテーマを核に、この4年間で蓄積された膨大な素材を通史的に整理し止揚する作業を継続してゆき、書籍として刊行して世に問うことを目指す。
著者
貝塚 隆史 作田 祥司 鈴木 雅人 坂本 俊彦 鈴木 栄 荻原 勲
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.269-275, 2008-04-15
参考文献数
19
被引用文献数
1

フィルム包装して給水処理を行ったコマツナを低温・弱光下に保存したときの新鮮重,葉色などの品質および葉内の硝酸態窒素濃度の変化を検討した.フィルム包装して給水処理をおこなったコマツナは,フィルム包装による蒸散の抑制と,主根からの継続的な吸水が行われるため萎れが観察されず,保存後に新鮮重が増加した.弱光照射によって葉緑体の形成などが行われたため葉の緑色は退色しなかった.光合成,呼吸,葉緑体形成などで窒素が代謝されるので,各葉位および各部位(葉身と葉柄)ともに硝酸態窒素濃度が低下し,特に,14℃の条件で保存4日後に約36%の減少が認められた.以上のことから,コマツナを収穫後にフィルム包装,給水処理,弱光照射および低温条件を組み合わせて保存すると,品質の低下が少なく,硝酸態窒素濃度の低い植物体の生産ができることがわかった.
著者
木下 謙治 山下 祐介 吉良 伸一 坂本 喜久雄 米澤 和彦 篠原 隆弘 岩元 泉
出版者
福岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1. 九州の農業は、国内での農業生産のシェアを伸ばし、生産額も全国平均をかなり上回る数値をあげてきた。しかし、農外所得が低いために、農家所得は都府県平均の8割程度にとどまっている。2. 九州の各地で、佐賀県の代表的な水田地帯のようなところまで含めて、有力な専業農家は稲作への依存度を低めている。土地利用型農業の衰退化といえるが、それとともに、水田を如何に維持してゆくかが大きな問題となってきている。集落営農、機械共同利用組合、農作業センターなど様々な共同が必要となってきている。3. 南九州を中心とする畑作地帯では、茶、疏采園芸、花卉、畜産など多様な生産活動が展開しており、水田地帯よりも見通しは明るい。畑作地帯が有望となってきた背景には畑地潅漑が進展してきたことが大きい。いっそうの潅漑施設の整備が望まれる。゛4. 中山間地の農林業については、大分県上津江村でみたように、複雑な山間立地にみあった複合経営が必須である。そして、それを補うものとして、地場産業起こしが必要である。いわゆる、官民一体の地域づくりの運動の中に農林業を位置づけねばならない。5. 九州の農業を担っている中核的農家は、直系的家族である。家的な構成は、やはり、農家では今後とも維持されてゆくであろう。家=家父長制と考える必要はない。21世紀においても、農業の中心的な担い手は農家であると思われる。6. グローバルにみれば、九州農業は、日本農業と同じく零細な小農経営にとどまっている。むらに関わる共同は、なお、必要である。しかし、自治組織と生産組織との乖離は進んでいる。新しい農村コミュニティの形成も視野にいれなければならない。
著者
佐藤 茂俊 坂本 一朗 白川 浩二 仲宗 根智
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.385-396, 1988-12-01
被引用文献数
4

イネ第7染色体に座乗する早生遺伝子がこれまでに見出されている(佐藤・新城1983)。この早生遺伝子と蔡岡(1968)が報告した早生遺伝子Ef_1^bとの関係を調べるとともに,この早生遺伝子の染色体上の位置を決めることを目的として,相互転座系統T3-7とRT7-11ならびに標識遺伝子系統HO775を早生遺伝子の供与親とし,台中65号を反復親とする9ないし10回の連続戻し交雑により,早生の同質遺伝子系統T65・ER-1,T65・ER-5およびT65・ER-6を育成した。T3-7は北海道の在来イネ品種である黒色稲-2をガンマー線処理して作出された系統であり(佐藤ら1975),RT7-11は長崎の原爆被曝イネから見い出された系統である(岩田1970).また,H0775は第7染色体に座乗する淡緑色葉遺伝子pglを持つ標識遺伝子系統である.なお,B_5F_1までの初期世代では出穂期と転座点あるいはpglとの連鎖を利用することにより,第7染色体の早生還缶子を確実に選抜した. 出穂期の遺伝分析の結果,上記の3早生系統はいずれも第7染色体に属する1対の完全優性の早生遺伝子をもつことを明らかにした.これら3系統ならびにTSAI(1976)の育成した北海道在来のイネ品種である坊主5号に由来する早生遺伝子Ef_1^bを持つ同質遺伝子系統の間で早生遺伝子に関する対立性検定を行なった結果,いずれの早生遺伝子も第7染色体のEf_1座に存在し,また類似した作用力を持つ遺伝子であることを明らかにした.
著者
坂本 旬 山田 泉 村上 郷子 新井 紀子 菅原 真悟 御園 生純 シヤピロウ ノーマン・P シエラ オフマン・ガーシュ 樋口 浩明 TEP Vuthy 高木 勝正 重松 栄子 中村 優太 佐々木 順子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の成果は、(1)「NetCommons」による文化探究学習の有効性を検証し、(2)文化探究学習理論を活用した「異文化理解」に国連やユネスコによる「メディア情報リテラシー教育」に関する最新理論を融合した教材の作成とその実践を行ないつつ、(3)日本及びアメリカ、カンボジア、中国の初等・中等・高等教育レベルの学校・大学とのICTを活用した協働的な文化交流学習の有効性を実証したことである。本研究の総括として、国際シンポジウム「文化葛藤時代のメディア・リテラシー教育-国連『文明の同盟』と日本の実践・課題」を開催した。
著者
高木 省治郎 須田 啓一 小松 則夫 大田 雅嗣 加納 康彦 北川 誠一 坪山 明寛 雨宮 洋一 元吉 和夫 武藤 良知 坂本 忍 高久 史麿 三浦 恭定
出版者
The Japanese Society of Hematology
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.12, pp.2274-2280, 1986

Five patients with malignant lymphoma in whom primary chemotherapy had failed were treated with high-dose chemotherapy using AAABC regimen, total body irradiation, and transplantation of cryopreserved autologous marrow. Complete remission was achieved in all five patients. In these patients, the recurrence of malignant lymphoma did not occur during the follow up time of 2 to 59 months after autologous bone marrow transplantation. Three of them are alive in continuous remission for 33, 49, and 59 months, respectively. In one of these three patients, acute lymphoblastic leukemia developed 44 months after bone marrow transplantation. However, successful chemotherapy resulted in a complete remission of leukemia, he is alive in remission. The remaining two patients died of pneumonia and respiratory failure 72 days and 82 days after bone marrow transplantation, respectively. Our results show that intensive chemoradiotherapy and autologous-marrow transplantation can produce a prolonged remission in patients with malignant lymphoma in whom conventional chemotherapy has failed.
著者
小黒 康正 浅井 健二郎 小黒 康正 杉谷 恭一 小川 さくえ 増本 浩子 桑原 聡 恒吉 法海 東口 豊 恒吉 法海 福元 圭太 杉谷 恭一 小川 さくえ 坂本 貴志 増本 浩子 濱中 春 山本 賀代 岡本 和子 北島 玲子 桑原 聡 クラヴィッター アルネ オトマー エーファ
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ドイツ現代文学は、言語に対する先鋭化した批判意識から始まる。とりわけホーフマンスタール、ムージル、カフカの文学は、既存の言語が原理的機能不全に陥っていることを確信しながら、言語の否定性を原理的契機として立ち上がっていく。本研究は、ドイツ近・現代文学の各時期の代表的もしくは特徴的な作品を手掛かりとして、それぞれの作品において<否定性>という契機の所在を突き止め、そのあり方と働きを明らかにした。
著者
坂本 雅彦
出版者
奈良工業高等専門学校
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

不織布の新たな技術的応用を図ることを目的に,本年度は,主に円管内流れの新たな流動抵抗低減デバイスとしての不織布の効果について検討した.実験は,不織布を含む7種類の布地を,内径が25mm,全長が6mのアルミニウム円管路壁面に被覆し,水道水と空気とを作動流体に,圧損から管摩擦係数を求め,これら結果を,アルミニウム滑壁面を持つ円管の結果と比較した.また,円管路内の速度分布の測定も併せて実施し,両者の結果を比較した.その結果,本実験範囲では,あるタイプの不織布が流体の種類で異なる管摩擦係数の特性を示すこと,あるタイプの不織布は,アルミニウム滑壁面を持つ円管の管摩擦係数にほぼ等しい結果を示すものの,全ての不織布で明らかな減少効果が認めらなかったこと,不織布を被覆した円管路内速度分布は,アルミニウム滑壁面を持つ円管路の場合に比べ壁近傍で速度の勾配を小さくし,乱れ強さの増加を抑制している効果を持つ,事など明らかにした.今後,摩擦抵抗低減少効果をより定量的に評価・検証するため,矩形管路を対象に,繊維を剛体と仮定して,繊維形状,繊維配列や分布(密度),そして繊維が一定の運動を伴う場合の効果について検討していく予定である.
著者
坂本 佳鶴恵
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.89-100, 2000

本稿は、ポストモダン・フェミニズムの理論枠組みの特徴とその展開の可能性を具体的に論じたものである。ポストモダン・フェミニズムは、デリダなどのポストモダニズムの思想の影響を受けながら、反本質主義と差異の重視を特徴として、独自に展開した90 年代の新しいフェミニズムの流れである。具体的には、意味カテゴリーや表象の問題に、新しい観点の分析をおこなっている。日本もふくめて、先進諸国では、自由主義の立場からフェミニズムに対する疑問や、フェミニズムがうまく取り組めていないさまざまなマイノリティの問題が提起されているが、ポストモダン・フェミニズムは、そうした問題に対処するための枠組みを提供しようとしている。ポストモダン・フェミニズムは、日本では、たとえば、近年のミスコンテスト、売買春をめぐる論争に対して、新しい観点を提供しうる。まだ多くの課題を抱えているが、これからの展開が期待される。
著者
川人 貞史 坂本 孝治郎 増山 幹高 待鳥 聡史 福元 健太郎 空井 護
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.国会運営ルールの形成と変化(1)予算国会の衆院予算委の審議日程等に関するデータを整理し,運営方式の変遷や争点の推移を概観できるようにした.(2)国会中心主義の国会制度と議院内閣制に関する法整備の分析を進め,国会制度の形成・変容とその政治的帰結を分析する研究を本にまとめた.(3)戦後国会における両院間調整の制度がどのように運用され,そこで参議院の意向がどの程度まで政策結果に反映されるかに関する論文を執筆し,衆議院の優越が条件付きにとどまることを示した.2.立法案件データの作成(1)法案の議事日程の資料整備を進め,会期延長と法案成立に要する日数の関係を分析し,また厚生省関連法案の動向と所管部局再編の関連を検証した.(2)両院間調整に至った議案についてのデータを,閣法,衆法,参法についても完成させた.(3)第119回〜141回国会の内閣提出法案審議状況を一覧形式で資料としてまとめた論文を公刊した.3.国会運営の制度と立法行動を説明するための理論と実証(1)国会法改正が法案の議事日程に及ぼした作用を検証した.(2)参議院議員は衆議院議員に比べてシニアとは限らないことを,全国会議員のデータ分析で明らかにした.(3)米連邦議会の予算編成改革を比較政治学的観点から分析した単著を公刊した.(4)国会における内閣提出法案を対象とした議事運営の計量分析を本にまとめた.(5)国会運営の制度分析を行う際に,諸外国や地方の議会との比較の視座を導入する意義を示した論文を執筆した.(6)内閣提出法案と議員提出法案の立法過程を法案個々の成立確率という意味において比較し,権力の集中と分散を規定する国会の憲法構造的作用を戦後の長期的な時系列変化という観点から検証する論文を執筆した.(7)日本の国会と内閣の関係を概説し,内閣が選挙や立法においてリーダーシップを発揮する状況を分析した論文を公刊した.
著者
五月女 格 鈴木 啓太郎 小関 成樹 坂本 晋子 竹中 真紀子 小笠原 幸雄 名達 義剛 五十部 誠一郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.451-458, 2006-09-15
参考文献数
21
被引用文献数
14 14

115℃のアクアガス,115℃過熱水蒸気ならびに100℃の熱水にてジャガイモの加熱処理を行った.加熱媒体からジャガイモへの熱伝達率を測定した結果,アクアガスの熱伝達率が最も高かったが,加熱処理中のジャガイモ中心部の温度履歴に加熱媒体間の差は見られなかった.また加熱処理によるジャガイモ中のペルオキシダーゼ失活の進行にも加熱媒体間の差は見られなかった.この原因は,いずれの加熱媒体による加熱処理においてもジャガイモ表面における熱伝達は十分に大きく,ジャガイモ内部温度変化はジャガイモ自身の熱拡散係数に律速されていたためであったことが,ジャガイモ内部における熱伝導シミュレーションの結果から確認された.<BR>また,それぞれの加熱媒体により加熱処理されたジャガイモの品質を比較した結果,アクアガスならびに過熱水蒸気により加熱処理されたジャガイモが熱水にて処理されたジャガイモと比較して,硬さも保たれ色彩も良好であった.走査型電子顕微鏡によるジャガイモ微細構造の観察結果,熱水により加熱処理されたジャガイモにおいては熱水への固形成分の溶出が推察された.このことから固形成分の溶出の有無が加熱処理されたジャガイモの品質に影響を及ぼしたと考えられた.またアクアガスによる加熱処理では過熱水蒸気処理と比較して質量減少を抑制することができた.更に,アクアガス処理によりジャガイモ表面に塗布した<I>B. subtilis</I>胞子を死滅させることが可能であった.<BR>以上のことからアクアガスを用いることにより,熱水による加熱処理と比較して良好な品質にて,また過熱水蒸気処理と比較して小さな質量減少にて,ジャガイモのブランチングを行うことが可能であると結論付けられた.またアクアガスを用いて加熱処理されたジャガイモを無菌状態にて保存することにより,高品質なジャガイモの長期間貯蔵が可能になると期待された.今後はジャガイモの酵素失活に必要な加熱温度条件等を詳細に検討し,アクアガスにより加熱処理されたジャガイモの貯蔵性ならびに貯蔵されたジャガイモの品質変化について解明していく予定である.
著者
坂本 美紀
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

研究代表者の転勤に伴い,新しい勤務校で,協力学生を募った。大学と教育委員会との提携に基づいて小中学校にスクールサポーターとして派遣されている学生を対象に,実態アンケートの依頼と協働学習への勧誘を行ったところ,アンケートの回収率が非常に低かった上,協働学習の参加学生を確保できなかった。やむなく今年度の研究計画を変更し,ボランティア配置校の担当教員への意識調査を実施した。まず,学生アンケートの回答のうち,現場での支援活動の実態と,彼らが体験した困難や問題点を,事業の設定,教育・研修,実践活動の調整,校内連携の4つの観点で整理した。その結果,教育研修,実践活動の調整ともに十分でなく,打合せがあっても予定を話す程度で,教師との協議やスーパービジョンの場になっていない事例が大半であること等,学生の活用を支える基本的条件が十分でない実態が明らかになった。この結果を元に,教員インタビューの質問項目を設定した。提携先の教育委員会からの許可を待ち,冬休みから3学期にかけて配置校を訪問し,学生の活動内容や,学生活用を支える条件の実態,学生および派遣元の大学,派遣コーディネーターへの要望について,担当教員等から意見を聴取した。インタビューの模様は,許可を得て録音した。録音記録は現在分析中である。結果の概要を以下に示す。活動記録が単なる提出・保管用で,一方通行となっている学校が大半であること,打合せが最小限であること,指導機会の不足を認識している担当者もいることが明らかになった。学生の活用に対する要望として,活動スケジュールなど派遣された学生に対する要望,制度や派遣元の大学での人選に対する要望を採取することが出来た。得られた結果のうち,学生のデータをH19年度の学会で発表した他,本年度の主要な成果である教員インタビューの結果を,H20年度の学会で発表予定である。
著者
サロインソン ファビオラ ベイビ 坂本 圭児 三木 直子 吉川 賢
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.15-20, 2006-08-31
参考文献数
15
被引用文献数
1 9

拡大しつつあるハチク林の動態を明らかにするため,落葉広葉樹二次林に隣接するハチク林で稈のセンサス調査を12年間継続した。落葉広葉樹二次林と接する部分では,稈の葉群が林冠木の樹冠より高い場合や樹冠と接する場合があり,ハチク林の拡大を可能としていると考えられる。ハチク林では,落葉広葉樹二次林へ稈を侵入させることによって,林分の稈密度と地上部バイオマスが増加し,最前線の稈の位置は落葉広葉樹二次林の方向へ12年間で7m距離を伸ばした。侵入している稈のサイズは,竹林内部の稈のサイズと異なっていなかった。一方,ハチク林拡大の過程で,ハチクによる被圧のため下層木の枯死が著しかった。