著者
山野 泰穂 田中 信治 菅井 有 松下 弘雄 斎藤 彰一 三澤 将史 堀田 欣一 竹内 洋司 佐野 寧 永田 信二 河野 弘志
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1648-1669, 2020-12-25

Introduction山野 本号は「大腸鋸歯状病変の新展開」ということで,本誌ではしばしば鋸歯状病変に関して特集されていますが,大腸鋸歯状病変,さらにはSSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)に関しては概ね市民権を得ており,多くの内視鏡医が知っている病変であると思います.SSA/PはMSI(microsatellite instability)陽性大腸癌の前駆病変であろうと分子生物学的にも解析が進んでおり,adenoma-carcinoma sequence,de novo pathwayに次ぐ第三の発癌ルートserrated neoplastic pathwayとしてmalignant potentialも高いのではと考えられています. 一方,実臨床では鋸歯状病変,特にSSA/Pは本当に悪性度が高いのかという疑問があります.これまで長い間,SSA/Pは過形成性ポリープと見分けがつかず,非腫瘍として扱われ放置されてきた歴史,むしろadenomaのほうが前癌病変として問題であると考えられてきた歴史があります.
著者
堀内 啓史
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.143-150, 2012-11-15 (Released:2015-01-06)
参考文献数
7

ブルガリアにおいてはヨーグルトが食文化の代表的な存在であり、その歴史は非常に古い。今日の工業的なヨーグルトの製造も、基本的には伝統的製法を踏襲して行われているが、製造技術の進化は絶え間なく続いている。また、乳酸菌に関する研究も日々新しい知見が得られている。本稿では、ブルガリアのヨーグルトの歴史・文化について紹介すると共に、ブルガリアの伝統的なヨーグルトを科学することで生まれた研究成果として、ヨーグルト用乳酸菌の起源を検証した結果および溶存酸素に着目した新規な発酵技術について紹介する。
著者
井堀 宣子 坂元 章 渋谷 明子 湯川 進太郎
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.34-43, 2008 (Released:2021-07-01)

テレビゲームが子どもに与える影響を調べるため、小学生を対象にしたパネル研究を実施した。 調査を2回実施し、子どものテレビゲーム使用量、シーン別接触量、ゲーム嗜好を測定するとともに、 攻撃行動、向社会的行動を測定した。交差遅れ効果モデルを用いて構造方程式モデル分析を行った結果、 男子において、平日のテレビゲーム使用量が多いほど、向社会的行動が抑制される傾向があった。また、 被調査者全体と男子において、向社会的シーンに接触する機会が多いほど、そして、非暴カゲーム嗜好が強いほど向社会的行動が促され、暴カゲーム嗜好が強いほど向社会的行動が抑制される傾向があった。
著者
日下部 修介 田村 大輔 小竹 宏朋 作 誠太郎 本間 文将 村松 泰徳 堀田 正人
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.353-359, 2013-08-31 (Released:2017-04-28)

目的:本研究の目的は,口腔ケアに用いる至適カテキン粉末緑茶濃度,口腔内細菌に対する抗菌性,およびカテキンの口腔内細菌に及ぼす影響について検討することである.材料と方法:本実験では,供試したカテキンとしてカテキン粉末緑茶(以下,カテキン),供試細菌としてStreptococcus mutans, Streptococcus sanguinisを用いた.抗菌性試験においては,カテキン濃度を1.9, 1.0, 0.75, 0.5, 0.25g/lとなるようTSBY培地に混和して平面培地を作製し,これらに菌液を摂取し,嫌気条件下にて37℃,48時間培養し,最小発育阻止濃度を判定した.また,カテキンの口腔内細菌に及ぼす影響についてSEMおよびTEM(ネガティブ染色)を用いて,S. mutans, S. sanguinisの菌液を1.9g/lに調整したカテキン溶液に滴下後1時間および3時間の細菌の状態を観察した.結果:抗菌性試験として,1.9g/lのカテキン含有TSBY培地に細菌発育が認められなかった.カテキンのS. mutansに対するMICは1.9g/l, S. sanguinisは0.25g/lであった.SEMによる観察では,カテキンを作用したS. mutansおよびS. sanguinisは,1時間および3時間作用後における菌数が少なく,残存している菌体の形態変化が認められる傾向にあった.TEM観察においても,カテキンを作用させた細菌の形態変化が観察された.結論:以上のことから,カテキン粉末緑茶は口腔内細菌に対して抗菌効果を有し,口腔ケアとそれに伴う局所的および全身的疾患の予防に有益であることが示唆された.
著者
堀江 新 下林 秀輝 齊藤 寛人 稲見 昌彦
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.402-411, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
43

In this paper, we propose a tactile display with multiple stimulus elements that present rotational shear deformation on the skin, and describe the design of a device that applies the proposed method to the back. Shear deformation stimulation to the skin can be used to perceive force in a small device, and numerous methods have been proposed. Among them, methods that present the distribution of spatial shear stimuli are expected to be a method to reproduce skin sensations with high reality. In this study, we propose a tactile display with multiple stimulus elements that present rotational shear deformation to the skin using a rotating motor. A rotary motor is a widely used actuator that is easy to control, and can be scaled to apply to various body parts. In this paper, we design a device that can present the distribution of shear deformation stimuli in the back as an example of the application of this method. In particular, we focused on the size of the rotating tactors and the distance between the tactors among the form factors, and conducted a perception experiment. It was found that when the size of the tactor was 20mm, the direction of rotation was not perceived and the dynamic range of the intensity of the stimulus was maximized, and spatially continuous stimuli could be presented to the back if the distance between the tactors was 60mm or less.
著者
白楽 ロックビル 福田 沙織 堀田 のぞみ
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.11-29, 2008 (Released:2008-04-01)
参考文献数
15

科学研究者の不祥事を実証的に研究する基盤として,日本の最近21年間(1987年~2007年)の「研究者事件データベース」を構築中である。そのデータベースに基づく分析を試み,改善策を提言する。まず,「研究者の不祥事」は「行為」→「漏えい」→「報道」→「確立」の4段階を経ることを明確にした。その過程で,マスメディアは重要な役割を果たしている。また,不祥事をなくすための政府,学協会の対策はおざなりに思えるが,根本的には,日本の科学者の閉鎖的価値観,形式に終始する行政,権力にすり寄る御用学者,などの旧弊な構造と文化風土を改善しなくてはならない。突破口の例として,各大学の理工系学部に科学技術文化学研究室を設置する提言にまとめた。科学研究者の現場の声を政策に生かす仕組みが必要である。
著者
青木 光広 林 寿光 若岡 敬紀 西堀 丈純 久世 文也 水田 啓介 伊藤 八次
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.270-276, 2017-08-31 (Released:2017-10-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

The superior semicircular canal dehiscence syndrome (SCDS), which presents with comprehensive symptoms such as hyperacusis, autophony, and pressure-induced vertigo, has been recently recognized in Japan. Three patients with SCDS, in whom severe vestibular symptoms were unable to be controlled with conservative treatments, underwent capping surgery through the middle fossa approach. The preoperatively air-bone gap (AB gap) in the audiometry, the decreased threshold of cervical vestibular evoked myogenic potentials (cVEMP) and bone dehiscence of the superior semicircular canal could be observed in all patients on CT imaging. All patients suffered from positional vertigo for about one week after the operation. However, their cochlear and vestibular symptoms associated with the SCDS were relieved within a few months after the operation. The capping procedure decreased the AB gaps and increased the thresholds of cVEMP in all patients. We suggest that capping surgery via the middle fossa approach for the SCDS is an efficient procedure without severe side effects.
著者
西堀 すき江 友松 滋夫
出版者
東海学園大学
雑誌
紀要 (ISSN:02858428)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.17-25, 1987-07-20

市販缶詰17品種, 40銘柄について開缶後のスズ溶出量の変化を原子吸光分析法で測定し, 次のような結果が得られた。1.果物缶詰のpHは3.22(ミカン缶)〜3.82(モモ缶), 野菜缶詰は4.44(タケノコ缶)〜6.95(スィートコーン缶)であった。2.保存温度によるスズ溶出量の違いを果物缶で検討した結果, パインアップ缶では室温保存の方がやや溶出量が多くなったが, ミカン缶やモモ缶では顕著な差が認められなかった。3.ミカン缶, パインアップル缶において開缶後6時間まで急激なスズ溶出量の増加が認められた。24時間後には厚生省の許容基準の上限である150ppmに近すき, ミカン缶では1銘柄, パインアップル缶では2銘柄がユ50ppm以上であった。4その他の果物缶についてはミックスフルーツ缶のスズ溶出量が高くミカン缶, パインアップル缶と同様のスズ溶出量の変化を示した。モモ缶, サクランボ缶, ブドウ缶, ミツ豆缶からのスズ溶出量は2珪時問後も100ppm以下であった。5.各種野菜缶詰の中でギンナン缶の開缶直後のスズ溶出量は低かったが, その後急激なスズの溶出が生じ, 24時間後には260ppmを示した。アスパラガス缶は銘柄による差が大きかったが, 開缶後の変化は類似し, 24時間後もスズ溶出量の増加が認められなかった。
著者
尾方 壮行 市川 真帆 堤 仁美 有賀 隆男 堀 賢 田辺 新一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.83, no.743, pp.57-64, 2018 (Released:2018-01-30)
参考文献数
35
被引用文献数
1 12

The globalization of people and things results in the short average distance of the networks and emerging infectious disease can spread immediately after the development in this world. Thus, preventive infection control measures are important. The infection risk should be evaluated to adopt effective infection control measures. In this study, the cough machine that can generate human-like cough to evaluate the infection risk in indoor environments were developed to evaluate infection risk. The cough expired volume, travel distance, velocity, total mass of droplets, and particle size distribution of the droplets of the cough machine were compared with the subject experimental data. The deposition of droplet on facial mucous membranes, such like eyes and a mouth, at various distances and horizontal surfaces at different heights were measured using the cough machine and thermal manikin. It was shown that the number of droplet deposited on the position of facial mucous membranes decrease drastically over 90 cm when the infected person and susceptible person faced each other. On horizontal surfaces, the droplet deposited most at 50-60 cm and more than 90% of the droplet deposited within 90 cm. The number of droplet deposited on the surface under 50%RH condition was larger than that under 30%RH condition. The effect of relative humidity was larger on the near surface because the propagation time is shorter than it takes to deposit on the distant far-surface. We provide experimental evidence to evaluate droplet and contact infection risk that enable to address a question of the relative importance of each infection route.
著者
佐藤 大記 二瓶 真人 堀野 智史 三浦 克志
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.573-578, 2020-12-20 (Released:2020-12-20)
参考文献数
11

【目的】食物アレルギー診療ガイドライン2016では,食物経口負荷試験(OFC)で重症度分類グレード1(軽症)の症状が見られた際には自宅での反復摂取を勧めている.本研究ではOFCで軽症症状を来した症例における自宅反復摂取の安全性を評価する.【方法】2013年1月から2018年4月に宮城県立こども病院で鶏卵,牛乳,小麦,ピーナッツOFCを受け,グレード1に相当する症状が見られた症例を対象に,自宅反復摂取時の誘発症状や転帰を後方視的に検討した.【結果】161例が解析対象となった.検査時年齢中央値3.9歳,総IgE値418 IU/mL,合併疾患はアトピー性皮膚炎または湿疹159例,気管支喘息69例であった.自宅でOFCと同量の負荷食品を反復摂取し症状なし144例(89.4%),症状あり17例(10.6%)であった.症状の重症度はグレード1が16例,グレード2が1例であった.【結論】OFCでの症状が軽症であった場合,自宅反復摂取は比較的安全であるが,症状誘発時の対応の指導が必要である.
著者
今堀 誠二
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.419-451, 1942
著者
堀毛 一也
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.116-128, 1994
被引用文献数
12 10

本研究では, これまで行われてきた異性関係スキル研究の問題点を整理するとともに, 1) 異性関係スキルの分類および基本的スキルとの関連性の検討, 2) 関係の発展・崩壊とこれらのスキルの関連性の検討という2点を目的とした調査研究を行った。そのためにまず, 現在進行中の恋愛体験について, 熱中度や, 類似性, 重要性などいくつかの項目で評定を求めた。また, 過去の失恋体験についても, ショックの大きさ, 関係から得た自信などについて評定を求めた。同時にオリジナルに開発した社会的スキル尺度 (ENDE2) と異性関係スキル尺度 (DATE2) により, 基本スキルと異性関係スキルの測定を行った。因子分析の結果, ENDE2では, 男子4因子, 女子3因子が得られた。このうち記号化スキルと解読スキルはどちらにも共通に含まれていた。DATE2の分析からは, 男子7因子, 女子6因子が抽出された。2つのスキル間の関連性を検討したところ, 女子では記号化・解読スキルと異性関係スキルの問に中程度の相関が見られた。一方男子では, 基本スキルのそれぞれが, 異性関係スキルの諸因子と別個の相関を示していた。この結果は, デート場面でイニシアチブを求められることにより, 男子は多様なスキルを早めに高め, 状況に応じて使い分けることが必要になるものと解釈された。<BR>また, 現在進行中の恋愛関係とスキルの関連を分析した結果, 異性・基本スキルとも関係の発展と共に高まる傾向が示されたが, その発展の過程には明確な性差がみられた。男性は, 発展の初期に相手への情熱を高め, スキルを洗練させてゆく傾向があった。これに対し, 女性は相手の特性を慎重に検討し, 関係が重要であるという認識を得た後に, 急速にスキルを発展させることが明らかになった。さらに, 過去の失恋体験もスキルの向上に影響しており, 男性では過去の失恋から得た自信やショックの大きさがスキルの向上と有意な関連をもっていたのに対し, 女性では自分から強い愛情を示しながら失恋した場合にはスキルが高まるが, それ以外に過去体験との関連はみられなかった。これらの知見はこれまでの恋愛や失恋に関する研究結果を支持するものと考えられる。
著者
水町 龍一 川添 充 西 誠 小松川 浩 五島 譲司 羽田野 袈裟義 椋本 洋 御園 真史 寺田 貢 高安 美智子 高木 悟 落合 洋文 青木 茂 矢島 彰 藤間 真 森 園子 船倉 武夫 上江洲 弘明 松田 修 森本 真理 井上 秀一 山口 誠一 萩尾 由貴子 西山 博正 堀口 智之 渡邊 信 近藤 恵介
出版者
湘南工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究に着手後9か月で国際研究集会を行い,当初の研究目標である学士力の基盤となる数学教育を,モデリングを軸にしたリテラシー教育として行うことの可否・可能性を議論した。結論は,解釈の多義性があるので「高水準の数学的リテラシー」とすること,モデリングではなく概念理解の困難を緩和する方向で近年の数学教育は発展してきたこと,しかしいくつかの留意事項を踏まえれば十分な可能性があるということであった。そこで「高水準の数学的リテラシー」とはコンピテンスであると定式化し,教育デザイン作成に際して価値,態度,文脈を意識する必要を明らかにした。微分積分,線形代数,統計等の諸科目で教材作成・科目開発を実践的に行った。